タイトル:アームド・フォースマスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/27 11:58

●オープニング本文


●アナウンス
「軍曹! お疲れ様です!」
「ああ、お疲れ。おめぇは最近ちゃんと飯食ってんのか?‥たく。そんなんじゃ、戦場でへばるぜ?」
「いえ‥‥軍曹は流石にあの‥‥‥『大きく』なりすぎでは‥」
「あぁん? 何か言ったか?」
「いえ、なんでもありません(汗」

 焼き鳥を齧りながら基地内を歩く、筋骨隆々の男。UPC所属、ショーン・デルカルロ軍曹である。
食いながらちゃんと挨拶できている辺り、器用な物である。

「軍曹、上からお呼びがかかってますよ。」
「まーたなんかやらかしたんっすか?毎日みたいに呼び出し食らうのは軍曹だけっすよ?」
「うっせぇなおめぇら。んなこと言ってる暇があったらさっさと訓練しろ!」
「イエッサー‥‥なんてね」
「お前ら‥‥!」

 等とジョークを飛ばしあっている内に、佐官の執務室らしき部屋へ歩いていく軍曹。
おおよそ5分後に、「何だってぇぇぇぇぇ!」とも聞こえるような轟音が執務室から聞こえてきたらしい。


●バトルブリーフィング
ブリーフィングルームで待つ傭兵たちの前に、デルカルロ軍曹が現れる。

「あー、なんだ。諸君、今回は来て頂いてまか‥まこち‥」
 
 言いかけて、何か詰まっているようだ。

「あー。もう、こういう堅苦しいのは苦手だ。ま、なんつーか、上の命令でな。傭兵たちと、『覚醒しないで戦え』って事らしい。お偉いさんの考えることってのは、わからねぇもんだ。」

 やれやれ、と言ったポーズを取り、傭兵たちを見回す。

「んで、ルールの方なんだが、上の要求でな。覚醒なしでの勝負らしい。ただ、こっちもプロの軍人だかんな。俺は素手だ。お前らは、どのように武器を選んでもいい。模擬戦用に刃潰したりゴム弾だったりするもんだがな。ま、寸止めの模擬戦ってヤツだ。」

 手をボキボキと鳴らし、腕を一周回す。

「お偉いさん方から出た報酬は少なめなんだが‥まぁ、なんてか、裏で『賭け』が行われてるらしくってな。俺に勝った奴らには、俺の方から少ないながらボーナスを出すぜ。まぁ、がんばれや。」

そう言って、にやりと笑った。

●参加者一覧

鳴神 伊織(ga0421
22歳・♀・AA
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
天狼 スザク(ga9707
22歳・♂・FT
風花 澪(gb1573
15歳・♀・FC
赤い霧(gb5521
21歳・♂・AA
ヒノコ(gb6188
10歳・♀・FC

●リプレイ本文

●フェイスオフ
 軍曹の前に集まった6人の男女。何れも軍曹と手合わせしたい(?)と願った猛者たちだ。
 だが、その者たちは、軍曹の姿を見て驚愕していた。

 上 半 身 裸

 だったのである。
 筋肉が、テカテカと光っている。

「でかっ‥‥マッチョ‥‥!暑苦しそー‥‥」

 とは、風花 澪(gb1573)が漏らした素直な感想である。

「まぁ、なんつーか、戦う順番を決めてくれ。俺はあっちで準備運動して待ってるからな」

 にやりと笑い、更衣室に入ろうとする軍曹を、辰巳 空(ga4698)が引き止める。

「私は単独で勝負するのですが、少し特別なルールでやりませんか?」

 と、軍曹に耳打ちする。軍曹は、親指を立て、それを承認した。

 相談した結果、最終戦を希望した空以外は希望がなかったため、3つの賽を振り順序を決める事となった。
 合計数字4だった赤い霧(gb5521)、ヒノコ(gb6188)ペアが、先に軍曹と手合わせする事となったのである。


●対赤い霧、ヒノコペア 〜虚実有無〜
「まぁとりあえず‥‥戦おうか‥‥」

 赤い霧の一言により、戦いの幕が上がる。
 さも余裕ありげにその場で構えを取る軍曹に対し、傭兵側の二人はゆっくりと近づいていく。が、

「いたいッス‥‥」

 ヒノコ、何もない場所で豪快に転ぶ。頭をぶつけたのか、痛そうにさすっている。

「おいおい、何やってんだ?」

 軍曹から発せられた怒声に怯えたのか、ヒノコは逃げ出し始めた。
 そんな相方を尻目に、下段に剣を構え、赤い霧は軍曹に更に接近する。そして、二人の間の距離がある程度縮まった所で、軍曹が動いた。
 低い体勢で前進し、赤い霧の腹を狙ってのストレートを繰り出す。だが、赤い霧はそれを半円を描くようなステップで回避し、背後に回りこんだ。そして、そのまま距離をとる。

「修堂流‥‥移動術‥‥青柳‥‥それにしてもトロい‥‥トロ過ぎる‥‥本気になれよ‥‥」
「へっ、言ってくれるぜ。逃げ回ってるだけじゃ、俺には勝てねぇぜ?」

 更に後退し、縛りつけた剣を外そうと、赤い霧は右手のベルトを緩める。
 だが、敵前で装備を付け直したりするのは、致命的な隙になるという事を忘れてはいけない。

「堂々と武器外そうなんざ、嘗めた真似をしてくれるじゃねーか!」

 突っ込む軍曹のラリアットを、寸前でしゃがみ、横飛びに回避する。
 無茶な体勢で、更に剣の柄で自分に一撃を入れ、伸ばされた軍曹の手をかわそうとするが、支えがない空中ではそれで更に横に動く事はできない。だが―――

「隙ありッス!」

 逃げ回っていたと思われたヒノコが、突如背後からナイフを構え軍曹に襲い掛かる。

「‥あっしは‥外見を武器にする事ぐらいしか‥取り柄がねぇんでさぁ」
「ちっ‥全部演技ってわけか‥やってくれるじゃねぇか、嬢ちゃん」

 迎撃しなければやられる。そう判断した軍曹は、赤い霧を手放し、両手を地面に付いて背後に蹴りを放ち、ヒノコの手に当て、ナイフを弾き飛ばす。
 その間に、赤い霧は右手のベルトを外し、剣を逆手に付け替えていた。

「そろそろ‥‥いこうか‥‥」

 そう呟くと、剣と短剣を交差させ下段に構える。そして、こちらを向いた軍曹に向かい、2本の兵器で同時に斬りかかった。
 軍曹はそれを両手の裏拳で剣の横腹を叩くことにより逸らし、そのまま左手で赤い霧の右腕を掴む。だが、これも赤い霧の予想内であったのである。

「修堂流‥‥陸の章‥‥黒蜥蜴‥‥卑怯とかいうなよ‥‥」

 そのまま、左手を懐に入れ、コートに隠した拳銃を取り出そうとする。しかし‥

「隙が大きすぎるんだよ!」

 軍曹の怒声と共に、右手でボディブローが繰り出され、赤い霧が取り出そうとした銃が吹き飛ばされる。

「ちっ‥‥まだ‥‥終わってないぞ‥‥」

 左足を上げ、回し蹴りで軍曹の首筋を狙う。だが、それも右手の裏拳によって防がれる。そしてそのまま持ち上げられ、地面に叩き付けられる事となる。

「やらせないッス!」

 軍曹の後ろから、ヒノコが投擲したナイフが飛来する。回し左裏拳でそれを撃ち落とす軍曹。右手が開いた赤い霧はそのままナイフを軍曹の首へ振ろうとするが、一歩早く、目の前で軍曹の肘撃ちが寸止めされていた。

「くっ‥‥これまでか‥‥」
「赤い霧さん、リタイアですわ」

 訓練場上部のスピーカーから、副官らしき女性の声が響く。
 それを聞いて満足そうに振り向いた軍曹の顔に、砂が降りかかった。

「ぐお‥‥野郎‥‥」
「使えるものは‥‥何でも活用するんでさぁ」

 拾い上げた赤い霧の銃で軍曹に狙いをつけるヒノコ。だが、次の瞬間、後ろからヘッドロックの体勢で、首をホールドされていた。

「一瞬見えただけでも、場所は十分分かるぜ。さっさと移動して奇襲するべきだったな、嬢ちゃん」
「ヒノコさん、リタイアですわ」

 軍曹が目を拭き、厳しい口調で言う。

「まだ経験が浅いから仕方ねぇかも知れんがな。連携がなってねぇ。
黒い嬢ちゃんは、最初逃げ回ってたせいで相方が苦戦してたしな。砂掛けを最初から狙われてたら、どうなってたかわからないぜ。
 銀色の兄ちゃんの方。黒い嬢ちゃんの援護に期待してたようだが、あれじゃぁな。しかも、敵が至近距離にいるのにで武器を変えたりするのは、余り褒められたもんじゃないぜ」

 お互い一礼して、傭兵側の二人は訓練場を離れた。



●対鳴神 〜全力? 半力?〜
「傭兵の鳴神伊織です。今回は宜しくお願いしますね」

 鳴神 伊織(ga0421)が礼儀正しく一礼する。構えのない状態で立っているにもかかわらず伊織は、歴戦の傭兵特有の殺気を軍曹に放っていた。それを察知した軍曹は―――

「へっ、久しぶりに手ごたえがありそうだぜ‥‥」

 両拳を打ち合わせ、にやりと笑った。

 試合は軍曹の先攻で始まった。伊織に向かって走り寄ったかと思うと、いきなり横に回り、横に倒れるような体勢から地面に手を付き足狙いの蹴りを放つ。伊織は素早く後ろに2度ステップを踏み回避し、踏み潰すような踵落としで軍曹の顔を狙う。

「っと、かわいい顔して意外と容赦ねぇんだな」

 軽口を叩きながら、軍曹は両手を交差させ、伊織の踵落としを受け止める。だが――

「軽いだと‥!? フェイントか!?」

そのまま足を掴もうとした軍曹の両手が空振り、伊織の掌底が軍曹の腹に向かって振り下ろされる。間一髪で軍曹は横に転がって回避する。

「よく、かわしましたね」

 伊織は後退し、再度構え無しの状態を取る。軍曹はそのまま走り寄り、右手で顔を狙ってのストレートを放った。伊織はそれを、左に払うことにより回避する。然し、軍曹は払われた勢いを利用して体を回転させ、左の肘撃ちを伊織の胸に叩き込んだ。

「しまったなぁ‥女には使いたくねぇ技だったんだが、すまんな」
「気になさらずに」

 後退し、地面に一旦手を付き体勢を立て直す伊織。そこを狙って軍曹が再度飛び掛るが、今度は伊織、回避せず、軍曹に右肩を掴まれてしまったのである。

「へっ、貰ったぜ!」
「掛かりましたね」

 伊織の狙い通りである。掴まれた瞬間、両手で掌底を軍曹の鳩尾狙いに打ち込む。軍曹は辛うじて右手で伊織の両腕を横に流し、打点をずらすが、それでも脇腹に一撃を受けてしまった。

「いってぇ‥が、問題はねぇ!」
「ずらした!?」

 軍曹、強引に脇腹に一撃を食らった勢いで横に回転。その勢いの猛烈な下段蹴りが、全力の一撃を放ち一瞬無防備になった伊織の足を払う。
 そのまま、馬乗りになり、首を押さえ込んだ。

「鳴神さん、リタイアですわ」

 起き上がり、軍曹が言う。

「惜しかったぜ。片手ではなく両手で掴みに行ったんなら、直撃を受けて俺の負けだったなぁ。そんだけの実力がありゃ、武器持ってりゃ俺に勝てたかもな
 後、全力は決して出さない方がいい。常に2分ほど、自分の身を守る力は残しておくもんだぜ」

「お疲れ様です。お陰で良い経験になりました」

 お互い一礼した後、伊織が更衣室へ退場した。


●対風花、天狼ペア 〜援護の心得〜
「どうも、今回はよろしくお願いします」

 紳士らしく、礼儀正しく一礼する天狼 スザク(ga9707)に対し――

「お兄ちゃん、負けた時はどうなるか‥‥わかってるよね? ね?」

 チョコを食べながら観客席で観戦していた風花 澪は、訓練場から飛び込むなりいきなりスザクに対し脅し(?)をかけていた。

「おいおい、敵を前にしながら緊張感のねぇ奴らだな」

 軍曹は、めちゃくちゃ呆れていた。


 試合は傭兵側の先制で始まった。銃を持った澪が、軍曹に向かって乱射する。それを左右に大きく動いて回避しながら、軍曹は澪に肉薄する。だが、その前に、スザクが立ちふさがった。

「澪ちゃんには手出しさせませんよ」
「へっ、成る程な。そう言う戦法か」

 そう。傭兵側はスザクが軍曹と接近戦を繰り広げ、澪がそこへ銃で援護や牽制をすると言う戦法を取っていた。
 覚醒状況ならば、恐らくは有効な戦法であっただろう。だが―――

「お兄ちゃん邪魔! 狙えないじゃなーい」

 非覚醒状態の身体能力では、至近距離で交戦を繰り広げている2名の中から敵だけを狙うのは至難の技。
 牽制しようにも、先読み射撃で軍曹の動きを制限すると言う事は、同時にスザクのその方向への移動をも妨げる事になるのだ。
 軍曹は、銃撃を考慮し、常に自分と澪でスザクを挟み込むような位置取りをしていたため、なお更だった。

「よそ見していて、いいんですか?」

 位置取りに気を取られていた軍曹に、スザクの左手の刀が襲い掛かる。だが、反撃を警戒し間合いギリギリでの攻撃を狙っていたため、簡単にバックステップで回避されてしまう。
 その後の軍曹の前に踏み出しての手刀を、右の刀で打ち据えようとするが、その前に軍曹が手を引っ込める。
 澪の援護の効果が薄い以上、このままでは埒が空かない。そう判断したスザクは、両手の刀を共に振るい、猛攻に出た。ラッシュで一歩ずつ、軍曹を追い詰めていく。そして、トドメの一撃とばかりに、両手で挟み込むような一撃を繰り出す。ガードしても、腕がしびれる。そう確信した上の一撃だった。

「誰が素手で剣を受け止める真似をするかよ!」

 軍曹は怒声と共に、連続攻撃が途絶えた一瞬を付いて、前に大きく踏み出しスザクの懐に入る。
 そして、スザクの上腕部に向かい裏拳を当てることにより、一撃を防いだのだ。そのまま、両腕を抉じ開け頭突きを放つ。だが、その一撃は、空気を切っただけだった。

「下が留守ですよ‥‥貰った! 澪ちゃん!」

 スザクはしゃがみ、下段蹴りで軍曹の足を薙ぎ払っていた。
 それを確認した澪も、大鎌に持ち替え、軍曹の背後から襲い掛かる。このまま勝負が決まる、そう思えた一撃だった。しかし―――

「甘く見るなよひよっこども!」

 足を横に薙ぎ払われた勢いで軍曹は、横にそのまま重心を移動させ回転、地面に手を付き逆立ちのような体勢となる。そしてそのまま足をスザクの首に回し挟み、前転のような体勢で澪に投げたのだ。
 衝突の勢いで、澪の鎌の振りが僅かに遅れ、体勢を低く落とした軍曹の頭上を掠める。

「あっぶねぇ。首真っ二つにはされたくねぇな」
「戦いのプロだっけ? 僕は殺しのプロだもんねー♪」

 再度鎌を縦に振る。だが、軍曹は鎌の柄に向かい左の掌底を叩き込むことで止め、そのまま鎌を掴む。そして、空いた右手で澪の首を掴んだ。

「ちょっと、離してー!」
「大振りの兵器は振りが遅いんでな。懐に入られると弱い。覚えておくといいぜ」

 そこへ、起き上がったスザクが、両の刀を振りかぶる。が、寸前で止まった。軍曹は、掴んだ澪を盾にしたのだ。

「まだ、続けるか?」
「‥‥やめておきますよ」

 澪に兄のように慕われているスザクにとって、この状況は非常に戦いにくい。
 スザクは、大人しく武器を置いた。

「味方が敵と混戦中に、正確に狙うってのは難しいもんだぜ。能力者の視力があるなら別だけどな。最初から二人でリーチを生かした近接戦で来れば、勝てたかも知れねぇな」

 軍曹がにやりと笑う。

「天狼さん、風花さん。共にリタイアですわ」

 副官の声が、訓練場に響いた。


●対辰巳 〜剛柔共済〜
「それでは、よろしくお願いしますね」

 辰巳 空は、事前にルールの変更、つまり「直径10mの円から出たら負け」と言う物を、軍曹に申し込んでいた。
 軍曹は、それを了承し、事前に部下に他の訓練場で準備をさせていたのだ。
 二人は、円の中心に歩み寄ると、お互いに構えを取る。

「プロレスと、少林拳ですか‥」
「やってみれば分かるぜ? かかってきな」

 先制は空。細かい拳打や蹴りで、軍曹の動きを牽制し、体力を削る戦法のようだ。しかし、その殆どは、軍曹に流されてしまう。正面から受け止めず、拳や足の『横から』力を加える事により、軌道を逸らす戦術を取っている。

「これは‥‥太極拳!?」
「そうだ。『柔』が足りないと師匠から言われたからだぜ」
「柔なら、こちらの方が一本上ですよ!」

 柔道の心得があった空は、軍曹が受け流しに使った右手をそのまま掴む。そして一気に踏み込み、足を引っ掛け軍曹のバランスを崩す。
 そのまま押さえ込もうとするが、軍曹は左手を地面に付いて、右手を掴んでいる空の腕に向かい蹴りを入れる。空は腕を引っ込めてそれを回避するが、軍曹の腕を放すことになる。

「中々やりますね‥」
「そちらもだぜ。日本の、柔道ってもんか?」

 先ほどの攻防で、両側は共に多少体力を消耗した。お互い、相手の手の内も見えた。次の一撃で、決まる。

「ちっ‥‥埒があかねぇ。こうなったら‥‥」

 何の変哲も無い、ストレートを空の顔面に繰り出す。

「ついにヤケになりましたか?貰いましたよ!」

 その腕を掴み、辰巳はそのまま、自然な流れで一本背負いを繰り出す。
 地面へ、軍曹は叩きつけられた‥‥かのように、見えた。

「へっへ、賭けは俺の勝ちみてぇだな」

 軍曹は地面に足で着地していた。ちょうどブリッジのような体勢である。足はおおよそ、ラインから約30cm。ギリギリである。

「体鍛えてるってのは、こういう時に役に立つもんだぜ!」

 腕でそのまま空の肩と腰を掴む。強引にそのまま腹筋を使い180度パイルドライバーに持ち込んだ。

「しまっ‥!」

 着地の寸前で、軍曹は動きを止める。その顔には笑いが浮かんでいた。

「辰巳さん、リタイアですわ」

 副官の声が響く。そして、軍曹は空をゆっくり下ろす。

「読み間違いだったな。カウンターを狙っているのは、おめぇだけじゃねぇぜ?カウンターに、カウンター投げする事だってできるんだよ」

しかし、手を差し出し、握手を求める。

「でもアレは賭けだったな。巴投げみてぇなもんだったら、受けれなかっただろうからな」


●後の宴
 その後、夜に酒宴が行われた。
 ヒノコは軍曹の部下から軍曹の武勇伝を聞き、スザクは軍曹と飲み比べをした。

 後に、スザクは「あれは、悪魔だった‥‥」と回想している事を追記しておく。