タイトル:【炎鎧】甦りし悪夢の龍マスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/19 16:13

●オープニング本文


 中国、バクア支配地域にあるとある研究所の中――

 ガシューと言う蒸気の音と共に、とある一室のドアが開き‥‥中から一人の少年が歩み出る。
 それに正面から歩み寄る、白衣の男。

「‥‥私が誰か、認識できますか?」
「‥お父様」

 それを確認した白衣の男の顔に、微笑が浮かぶ。

「よし、良い子ですね。‥‥ではこれから、私たちの安全を脅かしている、『人間たち』を排除する仕事をします。大丈夫ですか?」
「はい、お父様」

 そう言った少年の皮膚は腕から、まるで侵食されるかのように‥‥銀色に変化していったのだった。

「流石だ、我が傑作‥‥『アイン・アームブレイズ』」

―――――――――――

 森の中。
 ここで、一隊のUPC調査隊が、緩慢ながらも確実に前進していた。

「おい、警戒を怠るんじゃない!」
「だって、こんな所、何もいませんぜ?」
「その油断が命取りになるのだ! ここはバクア支配区‥‥しかも研究所が近くにある可能性を忘れてはならん!何のために能力者で調査隊を組んでいると思っているのだ‥!!」
「へーい」

 気の抜けた返事と共に、後方の男は振り向いた。
 それが、その男の行った、最後の動きだった。

「‥‥先ずは一人。‥‥流石に奇襲としては派手すぎたかな」

 爆発音に振り向いた調査隊が見たものは、爆炎から歩み出る少年の姿。
 まるで炎のような色の左腕を翳し、猛然と突進してくる。

「っ、あの腕に触るな! 斉射で撃ち殺せ!」

 指揮官の一喝によって調査隊は統制を取り戻し、スナイパーと思わしき各メンバーが一斉に連射系の銃器で掃射を行う。然し、少年の全身が銀色と貸し、弾丸はまるで鋼の壁に直撃したかのように、弾かれた。

「防御能力、か‥‥!?」

 これを見た調査隊側は大口径銃火器を使用、さらには近接タイプのクラス‥‥グラップラーなどによる重い一撃、直後に離脱の戦法を取る。然し、また少年の全身の色が変化したのと共に‥‥攻撃した者は異変に気づいた。

「まるで‥‥空中に浮かぶ羽を攻撃しているみたいだ‥‥っ」

 少年は、まるで重量がないかのごとく、攻撃を大きく吹っ飛ぶことによって受け流す。そして、大きく振りかぶった一撃の気流に乗るかのように、近くの木にバウンドして空中へ飛び上がる。

「これで‥‥私たちの家から、出て行ってください」

 地面に何か煙玉の様な物を3発、投げつける。

「さて質問です。最もシンプルな元素で、尚且つ可燃‥‥これは何でしょう?」
「!? ‥まさか、す―――」

 回答が得られる前に、当たり一帯は、爆発に包まれた。

―――――――――――

UPC軍。調査隊の信号をロストした軍は、その原因調査、及び研究所位置の探索を、改めて傭兵たちに依頼する。
調査隊隊長からの最後のメッセージ「体色の変化で能力を変える敵」と共に‥‥

●参加者一覧

藤村 瑠亥(ga3862
22歳・♂・PN
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
旭(ga6764
26歳・♂・AA
天宮(gb4665
22歳・♂・HD
布野 橘(gb8011
19歳・♂・GP
御闇(gc0840
30歳・♂・GP

●リプレイ本文

●Face Off
 強化人間、アイン・アームブレイズ。
 バクア科学者、フェルナンデス・グローリアの『新作』であるこの少年は、森に入った自身の獲物を、無表情で見つめていた。

「やれやれ、また来ちゃったか」

 木々の上を跳び回り、着実に目標へ接近していく。狙うは前回と同じ、最後尾に居る者。真上へ跳躍し、腕を真紅に変え、振り下ろす――


――一時間前

「赤が炎、透明が軽量化、銀が装甲化かな」

 御闇(gc0840)は、改めて調査隊の送ってきたビデオを確認していた。戦闘のシーンは既に3度以上チェックしている。
 敵の能力を、確実に脳内に叩き込もうとしているのだ。

「この能力・・・雷火龍の奴か。くそが!!あの時、奴の遺体を回収・・・いや完全に破壊出来ていれれば!!」

 悔しさに歯軋りする緑川安則(ga4773)。 
 幾度と無く強化人間「雷火龍」と拳を交えた彼には分かる。この強化人間の戦い方は、雷火龍の物を解析して改良した物だと。
 だが、今は悔やんでいてもしょうがない。今一度、ビデオを見ようとした彼の元に、目標地点への到着を示すアナウンスが響いた。


――現在

「そう来ると思ってたよ!」

 最後尾に居た能力者――御闇は、上方からの襲撃に特に注意していたため、素早く地面を転がって一撃を回避。体勢を立て直した。
 地面に直撃したアインの拳は爆発を起こし、クレーターを作る。

「奇襲か!!防御しろ!」

 前衛に居た安則の指揮の下、傭兵達は急いで陣形を反転させ、御闇を陣内へ取り込んだ。

「兄さん、すごいね。完全に気配を消したはずなのに。名前を教えてもらえるかな?」
「御闇です‥よろしく。少年‥‥‥名前は?」
「ああ、僕だけ名乗らないのは失礼だったね。僕、アイン・アームブレイズ。よろしくね。」
「初めに1つ‥‥退く気はある?」
「僕はお父様の『武器』。武器が自分から退いてくれると思う?」

「なら、容赦はいらないね」

 最後のセリフを聞いて、心に覚悟を決めた旭(ga6764)が、迅雷、円閃を発動させて、大剣を振りかざし引きずるようにして横に凪ぐ。
 然し――

「くっ、浅い!?」

 忘れてはならない。ここは森林内である。
 木々が多く、長大な武器は、その威力を完全には発揮できない事が多い。
 案の定、旭の剣は木に引っかかり威力を殺がれ、硬化したアインの腕に防御されてしまう。
 藤村 瑠亥(ga3862)による弓の連射を同様に腕で防御、そのまま瑠亥に向かって突進する。恐らくは、武装が地形の制限を受けている旭は大した脅威ではない、と判断したのだろう。

「中々、珍しい能力だな‥‥‥」

 感心しながら、二刀小太刀「疾風迅雷」に持ち替え、相手の胸へと突き刺す。硬化した体には通じなかったが、更に連続で刺しまくる!

「兄さん、ウザいね」

 同じ所を狙ってくる瑠亥に対し、アインは一瞬だけ硬化を解除。横にひねるようにして小太刀の直撃点をずらすと、右腕を紅にしてストレートを放つ。
 この一撃は瑠亥に直撃し、爆炎が瑠亥を後方に吹き飛ばす!
 瑠亥の小太刀も硬化を解除したアインのわき腹に突き刺さったはずであるが、アインはそれを意に介する気配をまるで見せない。

「‥‥痛覚がないのでしょうか?」

 アナライザーで解析を行っていた天宮(gb4665)が呟く。解析が終了した彼も、アインの後方に回りこむような行動を取った。


●Blow Out

 尚も瑠亥への追撃を行おうとするアインに対し、布野 橘(gb8011)が、背後から追いつく炎剣「ゼフォン」で足元をなぎ払う!
 ジャンプし、後方へ変形ドロップキックを放つアイン。橘はそれを剣で受けるが‥‥

「なっ‥‥!」

 紅の足を橘が目の当たりにした瞬間、接触点から爆発が発生。ダメージは小さかった物の橘は後方へと吹き飛び、反動力でアインは更に前方へと加速する。
 だが、橘の行動は、瑠亥に立ち直る時間を十二分に与えていた。飛び込んでくるアインをほぼ伏せるようにして回避する瑠亥。その後方で、旭が大剣を縦に構える!

「この体勢なら‥!」

 木に引っかからないよう、縦振りから全力で切り下ろす旭。右腕切断が狙いのようだ。自身が爆発で得た加速度も合わせてあの剣に切られれば、大ダメージは免れない。
 そう判断したアインの体色は、透明に変わっていた。

「回避能力が高いわけか‥‥だったら、こうする!」

 安則が瞬速縮地で後方に回り込み、SMGスコールを構え至近距離から連射。
 変換が間に合わなかったのか、硬化する前に弾が連続でアインの体を削っていく。
 体勢を崩した所を、橘と、木の上に移動した御闇の連射が襲い掛かるが、既に硬化変換が完了していたので大きなダメージにはなっていない。

 だが、アインの注意が、射撃を行った二人に移動した瞬間――

「また、同じことだと思ったか‥‥?這い蹲れ」

 硬化したアインのボディに天拳「アリエル」が叩き込まれる。ダメージは軽い物の、瑠亥の目的はダメージではなった。

「!?」

 そのまま足を引っ掛けられ倒され、踏みつけられるアイン。煙幕弾を警戒しながらも小太刀を振り下ろし、降伏を迫ろうとするとする瑠亥だったが‥‥

「引っかかったのはどっちだったかな?兄さん」

 アインの両腕が、踏みつけている瑠亥の足を掴む。

「っ!! 瑠亥さん、脱出を!」

 雷火龍の戦法を一番よく知り、アインの意図に気づいた安則が瑠亥に脱出を促すが一歩遅い。
 アインの両腕はそのまま紅色に変わり、爆発が起こる!

「大丈夫ですか?」
「ああ、死にはしない。だが‥‥」

 ダメージは中程度。だが、耐火性の防具をつけていない脚部にダメージを集中して受けてしまったため、瑠亥は機動性に大きなペナルティを受けることとなる。


●Smoke Fight

 爆発で巻き起こる砂煙の中。天宮のアナライザーは、飛来する二つの球体を捉えた。

「ガス弾です!皆様、気をつけて!」

 警告を受けた旭がエアスマッシュを放ち、煙を吹き返そうとする。傭兵たちの狙い通り、爆発は起きなかった。

「あっちゃー。やっぱり読まれてたか。けど、アレは狙いの半分だよ」

 砂煙に紛れ、いつの間にか木の上へ移動したアインは、御闇の背後を取っていた。

「っ!」

 振り向き、アインのこめかみに銃を突きつける御闇。
 だが、トリガーを引く前に胸に爆発拳を叩き込まれ、落下する。
 幸い、橘がキャッチに成功。そのまま救急セットで回復を行う。

「兄さんたち、僕があれを使わないと爆発起こせないって思ってるようだけど」

 両腕をぶつけ、小さな爆発を起こすアイン。

「あの水素弾は、爆発を広範囲に広げる物だよ。僕の体だけでも、爆発は起こせる。‥そして、こんな芸当も出来るんだ」

 言葉が終わると同時に、アインの全身が、真っ赤に染まっていく!

「っ、散開してください!」

 アナライザーからこの行動の意味を察した天宮。鎌を構えながら後退。傭兵たちも各々防御行動を取りながら後退するが、次の瞬間、アインが地面めがけて落下する!
 先ほどまでとは比べ物にならない程の爆発。それは周囲の木々をなぎ倒し、平地に夷した。

「これで死んだかな‥‥‥‥っ!?」

 勝ち誇るアインの顔が、初めて驚愕に変わる。傭兵たちはそれぞれの方法――防火ジャケットで炎を振り払う、龍の翼で脱出するなど――で、防御に成功していたのだ。
 砂埃に紛れ突撃した天宮の鎌のアッパーの一撃を食らい、上へと吹き飛ばされる。素早く透明となり軽量化で追撃を回避するが‥次の瞬間目の前には閃光手榴弾が飛来した。

「コイツの代金は後で別途要求してやるぜ!」

 目潰しを受けたアインにスコールを乱射する安則。更に空中から、旭が大剣を振り下ろし、アインごと地面にたたきつける。

「このまま真っ二つに‥‥!」
「そう簡単に、切られてたまるか!!」

 両腕で地面を叩き爆発を起こすアイン。わずかに大剣が浮いた隙に、両手をそれぞれ旭の両足へと伸ばす。

「しまっ‥‥!!」

 またもや爆発。先ほどの瑠亥と同じく、旭も大ダメージではないものの足を負傷する。

「はー危なかった。ここまでやってくれたお礼、しないと‥‥ん?」

 通信音。

「研究所のデータの消去は終わりました。もはやここに用はありません。撤退してください」
「えー、それじゃ僕が負けたみたいで嫌だよ」
「ワガママをいわないでください。また戦えるチャンスもあるでしょう」

 何やら、しぶしぶと言った感じで、アインが後ずさる。

「今回は僕が負けたわけじゃない。覚えておいてね、兄さんたち!」

 そして一目散に撤退する。追おうとする傭兵たちだが、瑠亥、旭の足の負傷から断念。
 それでも、橘は密かにペイント弾をアインの足に打ち込む事に成功したので、そこから後ほど追跡することとした。


●Follow Up

 この一件の後日の進行は以下となる。

 調査隊の遺留品を回収しようとする傭兵たち。だが、水素爆発の威力が相当大きかったようで、何も残っていなかったのが実情だった。

 ペイントの跡は、とある空き地で途絶えていた。どうやら空の移動手段に切り替えたらしい。
 そう、追跡部隊から報告を受けたUPC本部は、一度この案件を切り上げることとした。

 その裏で、御闇はとある人に、雷火龍が扱っていたと言う「火龍流」の調査を依頼する。
 安則が語った雷火龍とアインの相似点が気になったからだ。

 いずれ、調査結果が出る頃には‥‥また連絡する。そう調査者は言い残した。


――――

「インナーエレメント。まだ実装してあるのは二つですが。感想はどうですか、アイン」
「やっぱり同時に使えないのが問題かな」
「その分色々な能力が使えるのが魅力ですからね。さて、今日はもう一つ実装いたしましょう」
「はい、お父様」