タイトル:【十三】大蛇の翼マスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/07/14 23:22

●オープニング本文


「音桐室長。『迦具土』エンジンの運送についてですが‥‥」
「どうかしましたか?」

 ここは銀河社、第十三開発室。元々は厄介者の集まりで、本部からは鼻つまみ者とされていたこの開発室は、送り出した開発プラン「オロチ」が傭兵たちの注目をそれなりに集めた事で、違う目で見られ始めていた。
 だが、それを快く思わない者たちも居る。

「護衛班、北アフリカ関連で多忙で今回の任務には就けないと‥‥スケジュールをチェックしましたが、がら空きですよ?」
「そうか。恐らくはあの老人たちが煽動したのでしょうね。まぁ、いい。ULTへ依頼を出してください」
「はい、ただいま‥‥」
「それと『テストタイプ』の整備を急いでください」

 この一言に、部屋を出て行こうとした男は足を止め、振り返る

「は、はい? 迦具土も搭載されていないアレを‥どうするんですか?」

 第十三開発室室長・音桐 令斗は静かに笑みを浮かべ――

「折角のチャンスですからね。実際に機体のテストを同時に行うのも良いとは思いませんか?」
「そんな!? 無茶ですよ? だって迦具土が搭載されていないのに――」
「通常エンジンでも機動性は劣りますが、可能でしょう。それに今回は水空の移動は行わない予定ですので」
「‥分かりました。整備班にはそう言っておきます」

 バタンと部下が出て行った後‥‥

「実際にKVで実戦飛行をするのも、何年ぶり‥でしょうか」

 この時、音桐は、輸送中にバクア側からの襲撃を受ける事を、知る由はなかった。

●参加者一覧

漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
リュドレイク(ga8720
29歳・♂・GP
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
水門 亜夢(gb3758
22歳・♀・EL
賢木 幸介(gb5011
12歳・♂・EL
白蓮(gb8102
18歳・♀・PN
YU・RI・NE(gb8890
32歳・♀・EP
ファリス(gb9339
11歳・♀・PN

●リプレイ本文

●Flight
「こちら王零。水中の様子はどうだ? 白蓮」

 護衛機の付近を巡回する、漸 王零(ga2930)が、今回参戦する中で唯一の水中機である白蓮(gb8102)のガウリティヘクセに連絡を入れる。

「今の所何もありませんねっ。警戒を続けますよっ」

 レーダーを確認し、周辺に敵影がない事を確認する白蓮。
 一方空中では、リュドレイク(ga8720)や賢木 幸介(gb5011)が、音桐の乗るオロチ試作機を観察していた。

「これがオロチですか‥この機体が、きびきび動く予定なんですね?楽しみです」
「もう飛べるところまで来てたのか‥あと少しだな」

 特に幸介にとっては、開発初期から関わってきた機体という事で、その感慨も他より深いようだった。
 だが、ここで‥‥試作型オロチのカメラが、遠距離から接近する影を捉えた。

(「まだ予測システムは起動できませんか‥‥演算システム、イメージ拡大」)

 拡大された画像からは、それがキメラだという事が分かる。
 ‥‥随時キューブワームからの干渉の可能性がある現在の戦場では、カメラシステムは寧ろレーダーよりも頼りになるのだ。

「皆様、出番ですよ。どうやら見逃してはくれないようです」

 音桐の一言に、傭兵たちは一斉に気を引き締め、戦闘行動に移行した。


●Open Combat

 襲い来る飛龍型キメラに対し、空中に居た傭兵たちは、3つに分かれて応対した。

「どっから来たって近づかせねえっての」
「新しいKVが完成するのはファリス、楽しみなの。だから、護衛のお仕事をきちんとやって、必ず護るの!」

 ファリス(gb9339)、幸介が輸送機の近くに留まり、

「YU・RI・NEさん、ミズキ君、よろしくねっ」
「護って見せますよボクの国の‥いや、銀河の技術を。‥オウガ乗りの言う事じゃ無いけど」
「さて、突破させてもらおうかしら」

 水門 亜夢(gb3758)、柿原ミズキ(ga9347)、YU・RI・NE(gb8890)の三名が、敵の群れに向かっていく。
 マシンガンで弾幕を張りながら、ソードウィングで飛龍を切り裂こうとYU・RI・NEが一直線に突進、敵が散開しそれを回避した所で、亜夢の迅雷がそれをライフルで狙い打った。
 バランスを崩した飛龍キメラを、ミズキのガトリング砲が打ち据え、飛龍キメラは海上へと落ちていく。

 だが、ここで格闘戦を狙い敵陣へと突っ込んだ亜夢とYU・RI・NEが、物量で優位に立つキメラに包囲される事態が発生する。
 ミズキがバルカン等で駆逐を試みるが、キメラは巧みに自分をミズキと残りの二機の間に移動させるなどして、それを回避する。

 そこへ、後方から一条の光が飛来し、キメラに直撃し‥‥陣形が崩れたその一瞬の隙を突き、包囲された二人は脱出する。

「弾が飛んできたら、反射的に避けるのが普通なの。避けたら、動きが鈍るの。そうしたら隙が出来るの。そこを狙い撃つの」

 後方のファリスのスナイパーライフル援護射撃である。一発目で直撃ししたが‥‥
 包囲を抜けられたキメラたちは一斉に傭兵たちの方を向き、火を吐こうとするが、

「口の中は弱いんじゃないかなー?」

 口内狙いのミズキのマシンガンが一体を打ち落とし、他が吐き出した火炎弾を、前線の3機は散開して回避する。


●Deep Under

 その頃、水中に居た白蓮は、ソナーに自分の方‥‥つまり輸送機の下方へ向かってくる影を捉える。

「こっちも来たみたいっ!援護よろしくっ!!」

 空中の王零とリュドレイクに連絡すると、緩速で迎撃に動き出す。
 魚雷とホールディングミサイルを、特殊能力『エンヴィー・クロック』を使用しながら複雑な機動を描き打ち出す。
 何発かは直撃する物の、それほど大きなダメージには至っていない。
 どうやら相当重装甲の機体であるようだ。

 水中を進むゴーレムの内、二機程が魚雷を用いて白蓮に反撃するが、重装甲故の機動性の低さからか、全て軽々と回避されてしまう。
 が、白蓮一人では、ゴーレム全機に致命打を与えるほどの火力はない。
 そこへ、水面を切り裂き、リュドレイクのグリフォンが着水、アサルトライフルで掃射を行う!
 この銃撃はゴーレムを怯ませ、砲撃を遅らせる事に成功する物の、やはりリュドレイク機の攻撃力では致命打に至っていない。
 水面まで上昇したゴーレムは、輸送機に向かって砲撃を開始する!

「ぐっ‥‥今エンジンを落とさせる訳には行きませんからね」

 試作型オロチが急に減速し、輸送機の下へ入り込み、代わりに砲撃を受ける。
 それは機体を大きく揺らす物の、オロチの水圧に耐えるための超重装甲に阻まれる。
 然し、いくら装甲が厚くとも耐えられる限界と言う物がある。これ以上食らっては―――

「リュドレイク、白蓮。これより爆撃を行う。退避してくれ」

 これを受けたリュドレイクは空中へと退避、白蓮もやや水面へ近づく。
 そして、第一波の爆雷が、王零機より投下される!
 爆雷を察知したのか、ゴーレムは水中へと潜行しながら、ミサイルを王零機へ放つ。
 それをK−02で迎撃しながら降下しようとした王零だったが‥‥
 高速で飛来するミサイルをミサイルで迎撃するのは、困難極まりない事であり、専用の調整を施されたミサイルでなくては難しい。
 故に、半分ほどのミサイルが迎撃の爆発を抜け、王零機を直撃した。

「くっ‥残念だが‥‥その行動は予測済みだ‥そして‥そこだ!!」

 ある程度降下した所で、再度爆雷を投下する。
 先ほど投下した爆雷は、やや深水で爆発し‥‥新たに投下された爆雷は、浅い所で爆発した。
 丁度、ゴーレムを挟み込むような形となった。
 そこへ、リュドレイク機が再度、飛び込む!

「トドメを刺させてもらいますよ!」

 至近距離からの魚雷とアサルトライフルのタンデム攻撃により、ゴーレムのうち、先ほど白蓮機がダメージを与えた機体が爆発する。


●Bet or not
「そろそろでしょうか‥‥」

 傭兵たちの奮戦により、輸送機は無事、包囲圏を脱しようとしていた。
 これを見た音桐は、脱出を援護するため、新兵器『閃光榴弾砲』のトリガーに手を伸ばす。しかし――

「それは使わないでくれ」

 危険性を危惧した王零に制止される。
 まだテストしていない兵器である。若しもここで傭兵側に不利な状況が起これば、輸送機が追いつかれ撃墜される可能性がある。
 最もな判断だった。

 だが、ここでバクア側もそろそろ輸送機が包囲圏を抜けかけている事に気づいたのか、飛竜型キメラが二体、捨て身の特攻を仕掛けてきた。
 被弾を気にせず、まるで自身を一個のミサイルとしたようなその特攻を、前線の三名は止められなかった。うかつに追えば、更に多くのキメラを通す可能性があるからである。
 その前方に賢木機の4連キャノンによる弾幕が展開されるが、1発の直撃を受け、片方のキメラが落とされるに留まる。残りの一体が、輸送機に迫る――!

「頼むぜ‥‥斉射っと」
「狙いはばっちりなの」

 ほぼ同時に、ファリス機のスナイパーライフルと、賢木機のツングースカによる射撃が、キメラを貫く。キメラは爆発、四散した。


●Escaped

 輸送機が安全圏へ脱出し、キメラが撤退、傭兵たちも戦闘態勢を解いた中、一息つく音桐室長。

「皆様、護衛お疲れ様でした。この機体は、我ら第十三開発室の名にかけて、必ず完成させて見せます」

 参加した傭兵たちは、皆、多少なりともこの機体に希望を見出した者たちだった為、それを聞いて悪い気がする者はいない。
 そしてYU・RI・NEが、横を飛ぶ試作型オロチの姿を見て、つぶやく―――

「早く生まれてらっしゃい。空も海もとても青くて深いんだから」