タイトル:ブート・フォースマスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/03 17:29

●オープニング本文


「はぁ‥新人たちの訓練っすか」

 何時ものように呼び出されたUPC軍所属、ショーン・デルカルロ軍曹は、毎度のように上からの『お達し』に頭を押さえた。

「うむ。最近、バクアとの戦闘が激化しているのは、お前も知っている通りだろう。いくら訓練場やシミュレーターをやらせても、実際の戦場に出てもらわなければ分からない事も多い。そこで、ULTと協力して‥‥あそこでのキメラ退治を任せることになった」

 地図上の一点を指差す、上官の男。

「既にこの場所の周辺は、偵察隊による徹底的な調査が行われ‥‥少数の犬タイプのキメラが潜んでいる以外の脅威は全くない事が確認された。が、それでも一般人に対しては十分に脅威になるので、掃討する必要がある。‥‥訓練には最適だと思わないか?」
「‥ったく、弱いといってもキメラだぜ? 危険が出ないとも限らねぇだろ」
「その為にお前が監督するんだ」

 その言葉を聴き、何時ものように『厄介事を押し付けられた』と悟ったデルカルロ軍曹は、再度頭を押さえた。

――――――――

「あー。まぁ、そんな訳で、おめぇらには軍と共同でキメラの掃討をやってもらう事になったぜ。新兵たちはあくまでお前さんたちのサポート‥重火器とかで長距離攻撃だな」

 集まった傭兵たちに、軍曹が宣言する。

「ま、新兵訓練もかねてるんでな。安全の為俺も参加する事になってんだが‥‥」

 にやりと笑みを浮かべ――

「命の危険があった場合以外は、手は出さねぇぜ。俺がやっちまったら訓練にならないからな」

●参加者一覧

Dat(gb9035
12歳・♂・SN
アセリア・グレーデン(gc0185
21歳・♀・AA
如月 芹佳(gc0928
17歳・♀・FC
鹿島 灯華(gc1067
16歳・♀・JG
汀良河 柚子(gc1084
16歳・♀・DG
天小路 皐月(gc1161
18歳・♀・SF
アンナ・キンダーハイム(gc1170
22歳・♀・SF
ネーナ・C(gc1183
10歳・♀・HG

●リプレイ本文

●On Site Breifing
「よぉーしひよっこども! 今回はんなに危険な任務じゃねーが‥‥油断すんなよ!?実戦だと思ってかかれ!」

 新兵や傭兵を前にしデルカルロ軍曹が檄を飛ばした所で、状況解説等のブリーフィングは終了し、各員戦闘準備に取り掛かった。

「皆さん、よ、よろしくお願いしますです〜」

 緊張しながら挨拶するDat(gb9035)に、飽くまでも何も言わず、軽く頭を下げて応じるアンナ・キンダーハイム(gc1170)。

「頭上にも注意をしないといけないかもしれないですね‥地形的に回り込んでの襲撃警戒も必要か‥」

 と、周辺の状況を地図を持ちながらチェックするアセリア・グレーデン(gc0185)。
 その歩みが街の入り口へと近づいた時、

「よし、これで準備はばっちりだね♪」
「よーし、皆準備ができたようだな。んじゃ、訓練開始!」
「皆、がんばろーね! ぐんそーさんや砲兵の皆もよろしくだよー♪」

 軍曹の宣言と、汀良河 柚子(gc1084)、ネーナ・C(gc1183)の声が合図となり、2隊に分かれた傭兵と一般兵たちは、キメラが潜んでいるコンクリートのジャングルへと出発した。

 今回、傭兵たちは2隊に分かれているものの、デルカルロ軍曹の支援を受けるため、またお互いに支援する為2隊共にお互いそれほど離れない、と言う陣形を取っていた。
 が、それでは‥‥

(「オイオイ、こりゃぁ一隊と殆どかわらねぇんじゃねぇか?」)

 ビルが立ち並ぶ市街地である。お互いを視認、支援する為には、2隊の距離は必然と非常に近くなっていた。
 故に外周から囲むように内部へ追い立てる効果は殆ど得られず、通常通りの進軍となったのである。
 瞬天速を使用しビルを登り、3階の窓枠を掴んで高所から見下ろした軍曹は――

(「ま、固まってた方が戦力が集中してやりやすいしな。これはこれでいいか」)

 と、何も言わなかった。


●LineA

 Aチーム。先頭を切って進んでいたアセリアは、服の肩部分に縫い付けたトランシーバーを通し、BチームのDatと連絡でお互いのチームの状況を確認しながら、堂々と前進していた。
 チーム内で最も防御能力に優れるファイターとして、自らの身を囮としてキメラを誘い出そうと言う魂胆である。
 案の定、前方から、餌を探していたと思われる犬キメラ2体がアセリアを発見、猛突進してくる。

「目の前にいる分は引き受けます。回り込んでくるのがいるかもしれないので、後方警戒はよろしく」

 そう言うと、一回転し勢いをつけ、大剣状態の『インプレグナー』を飛び込んでくる犬キメラに叩き付け、そのまま剣ごとビルの壁へと叩き込み潰す。
 だが、キメラの片方は僅かに出るのが遅れたお陰か、迫り来る大剣を更に前足で踏みつけジャンプする事により、空中からアセリアの背後に回りこむことに成功する!然し――

「援護します。邪魔な敵は御任せ下さい」

 着地と同時に反転し飛び掛かるキメラは、然しイルファ(gc1067)の援護射撃により僅かに怯み、アセリアはその隙を突いて大剣を地に寝かせ、それを軸にして横に転がる事で飛び掛りを回避した。
 そのままM−121ガトリング砲で掃射を仕掛けるイルファ。が、キメラは機敏な動きで瓦礫の中を跳び回り、直撃だけは回避する。
 ガトリング砲が空転を始め、リロードの為イルファが弾倉に手を伸ばした直後、真横のビルの上層のガラスが割れ、犬キメラが1体空中から飛び掛ってくる!

「わわっ、迎撃しないと」

 イルファとリロードのタイミングが重ならないよう控えめに攻撃していたネーナがガトリング砲を振り上げる。キメラは、運が悪い事に‥‥丁度その砲口の上に着地した。
 トリガーが引かれると共に、大量に吐き出された弾丸が一瞬で降りてきたキメラを肉片と化す。

「何やってんだ! ロケット砲持ってるヤツぁさっさとさっきの窓を爆撃しろ!まだ居るかも知れねぇんだぞ!!」

 軍曹の怒声が響くと共に、後方の一般兵の内RPG(Rocket Propelled Granade、ロケット噴射式榴弾砲)を持っていた兵士が一斉に先ほどの窓に向かってロケット弾を発射。
 爆炎と共にその場所を完全に黒焦げにする。
 一方、この爆撃に僅かに気を取られ、瓦礫から頭を出した最初のキメラの1体は‥‥飛来した一条の光によって蒸発した。

「また奇襲されてはたまりませんからね」

 天小路 皐月(gc1161)が、キメラを撃ったエネルギーガンを握り締め、振り返る。
 今の所一般兵を襲撃しているキメラは居ないようだ。
 初の戦闘で固まっていたその表情が、僅かに緩んだ。


●LineB

 一方。Aチームが第一波を迎撃しているのと同時に、Bチームもその戦闘音に驚いてビルから飛び出したキメラの奇襲を受けていた。
 後方のビルの地下室の、外へ通じる小窓から這い出したキメラが、新兵の一人に目をつけた。
 恐怖で立ちすくむ新兵であったが――

「やらせないよー! がおぉぉっ!!」

 竜の咆哮を起動させ、槍を突き出しキメラを吹き飛ばす柚子。
 そのキメラに向かい、地面、ビルの壁、街灯の支柱と‥順に蹴りつけて跳び、更に迅雷で加速した芹佳(gc0928)が、地面すれすれの蛍火の一振りで、足を断つ。
 が、そのままビルの壁へと着地した瞬間‥壁を体当たりで打ち破り、キメラが飛び出してきたのだ。
 落下する芹佳に爪を向けるキメラ。が、その攻撃は超機械「ビスクドール」から放たれた電磁波により阻止される事となる。

「‥‥‥」

 マスクで隠された顔から、その表情は窺い知れない。
 アンナは、更に電磁波を放ち、キメラを灰塵と化す。

 一方、それを見ていながらも、聞き耳を立て奇襲を警戒していたDat。

(「ふ、不意打ちだけは来ませんように‥です‥」)

 然し、こういう時にタイミング悪く問題は起きるという物。
 望みむなしく、ゴミ箱から――食料を漁っていたのか――犬キメラがDatに向かって飛び掛る!

 Datはそれに気づいていた物の、事前に覚醒していなかったため―――能力者の覚醒状態の身体能力と、覚醒前では、かなりの差があるのだ―――僅かに反応が遅れる!
 負傷を覚悟して目を閉じるが―――

「オイオイ、敵地で覚醒なしったぁいただけねぇな」
「ごめんごめん」

 轟音と共に、犬キメラは付近の瞬天速を使いビルの上を駆け、落下したデルカルロ軍曹に文字通り「踏み潰されて」いた。
 覚醒により性格がやや荒くなっているDatは、謝りながらも、悪びれない様子である。

 が、直後、軍曹の後ろに犬キメラが出現した際は‥‥

「いい加減にしろよ?」

 素早くライフルの柄でそのキメラの顎を打ち上げ、そのままライフルを一回転させ銃口をキメラの腹に向ける。そして――

「‥‥おすわりッ!」

 8発の銃声‥そしてカチャンと言う金属音の後、キメラの命は絶たれた。


●Combined Lines

 傭兵たちが、大よそ半分以上のエリアをクリアした時の事である。
 前方から出現したキメラにAチームの傭兵たちが気を取られている間に、再度開いている窓から後衛の3人を狙ってキメラが這い出る。
 後衛の3人にとっては真上であったこと、また前衛のアセリアにとっては後方であったため、Aチームは誰一人としてそれに気づかなかった。

「危ない!」

 トランシーバーに向かい叫ぶと、Datがライフルによる長距離狙撃でキメラを狙う。同時に、後方の一般兵も砲撃で援護する。
 が、高速で落下するキメラに当てることは不可能だった。然し、砲撃音、銃声等は、Aチームに異常を気づかせるには十分であった。

「っ! やらせない!!」

 後方へ仰向けに跳ぶようにキメラの下に入り、大剣の厚みを利用し一撃を受けとめるアセリア。
 元々アセリアと交戦して居た方のキメラがその隙に前進するが、イルファが制圧射撃によって動きを止め、その間にネーナが強弾撃を使い蜂の巣にする。
 アセリアはそのまま流し斬りで両断しようとするが、キメラは大剣の面を蹴って素早く空中に跳びそれを回避した。大剣は空を斬り、そのまま道路を割る。

 だが、キメラに取っては不運な事に‥着地地点を読んだ皐月が、後方の一般兵に向かって叫ぶ。

「あの場所へ砲撃お願いします!」

 と同時に、自らもエネルギーガンで射撃する。
 辺り一帯が爆炎と爆発に包まれ、キメラはたまらず着地の瞬間逃げ出す。
 だが、煙を払った先では‥巨大な槍が突き出されていた。

「お願い! レイジングソウル! いっけぇーーっ!」

 竜の爪、竜の瞳を起動し更にアンナから練成強化を受け、装輪走行で正面からキメラに槍を突き刺した柚子が、そのままキメラごとビルへと槍を突き刺す。そして――

「レイジングソウル・エクセリオン、シューティングモードっ!」

 台詞と共に槍が変形し砲となり、

「ソウル‥‥ブラスタァァーーっ!!」

 叫びと共に、零距離からの砲撃が、キメラを吹き飛ばした。

 瓦礫と灰が降り注ぐ中、接近した軍曹が、ぽん、と柚子の肩を叩く。

「お疲れ。しっかしまぁ、その砲‥射程、みじけぇみてぇだなぁ。今のままじゃ精々届いて10mってとこか‥‥」


●Aftermass

 その後、傭兵たちは一般兵と共に区域を探し回ったが、軍曹に奇襲しようとして腕一本で掴まれ地に文字通り『埋められた』一体を除いて、それ以上のキメラの出現は無かった。
 撤収の直前、傭兵たちは再度軍曹に挨拶しにくる。

「敵の全滅を確認、これで作戦行動は終了かと思われます」
「まだまだ課題が残るね‥‥」

 反省しているイルファ、芹佳をよそ目に、柚子は軍曹と話していた。

「柚子達も結構やるもんでしょ? ぐんそーさんっ♪」
「ま、ひよっこにしちゃぁな。もうちっと経験積んだら、俺が模擬戦で相手してやってもいいってくらいはな」

 豪快な軍曹の笑い声と、芹佳のハーモニカの音色をその場を残し――一般兵も含め、今回の作戦に参加した者たちは、全員無事に帰還した。