タイトル:【TG】愚者マスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/12 14:39

●オープニング本文


「‥‥やっと、完成したか」
「ええ、時間はかかりましたが」
「‥‥能力は? 予定通りかな?」
「ご指定通り、でございますよ。パワーとタフネスだけに、特化いたしました‥‥」

●暴れまわる脅威
「うわぁぁぁ!? なんじゃありゃ!?」
「きゃぁぁぁ!?!?」
 轟く悲鳴と破壊音の中、市街地に突如現る、まるで映画に出てくる巨大ゴリラのようなキメラ。
 その6mはあろうかと言う巨体で、猛然とビルを押し倒し、車も、―――人も、押し潰していく。
 通った後には文字通り、廃墟しか残らない。

 間も無く、パトロール中であったUPC軍が現れる。
 「撃てぇぇぇぇ!」と言う叫びの元、重火器による砲撃が一斉にゴリラキメラに浴びせられる。
 ‥‥幾らフォースフィールドがあるとは言え、常規兵器による攻撃が全く通じないと言うわけではない。
 駐留軍が携行した数々の火器は、一般的な中型、小型キメラならば跡形もなく消し飛ばすほどの威力を持っていた。

 ―――はずだった。
「な、なんだと‥‥!?」
 長官の驚愕の声と共に、煙の中から黒い影が現れる。見れば、それは体毛全てをまるで鋼の針の如く硬くし尖らせ、強固な鎧と化していたゴリラキメラ。
 体毛を軟化させ、まるで何事もなかったかのように、改めて雄たけびをあげるキメラ。そしてその目は、駐留軍に向けられた。
「撤退、撤退だ!!」
 この一言を合図に、軍が一斉に後退を始める。武器がほぼ通用していない状態に置いては、その判断は正しかった、とも言える。
 キメラの足の遅さも相まって、一人たりとも軍に犠牲者は出ていなかったのだから。
 撤退していく軍を追うキメラ。
 が、ビルの残骸につまづき、盛大に転ぶ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥」
 そして、起き上がろうとして、瓦礫の一部を踏みつけてしまい、滑ってまた転ぶ。
 ―――間抜けである。
「‥‥‥これは、傭兵の助けが必要だな」
 いくらキメラが間抜けだからと言って、攻撃が通らないのでは正規軍では手出しのしようがない。
 長官は、連絡を出すよう、通信兵に指示した―――

●ブリーフィング
 見るからに堅物そうなULTオペレーターが、傭兵たちを出迎える。
「早速ですが、ミッション内容です。」
 全く表情が変わらないポーカーフェイスで、オペレーターが切り出す。
「今回は巨大ゴリラ型キメラの退治となります。キメラは表面体毛を硬化させる能力があるらしく、近くでパトロールしていたUPC軍が攻撃を行いましたが、撃退には至りませんでした。何とか工夫し、撃退してください。」

●参加者一覧

御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
紅 アリカ(ga8708
24歳・♀・AA
織部 ジェット(gb3834
21歳・♂・GP
水無月 春奈(gb4000
15歳・♀・HD
九頭龍・聖華(gb4305
14歳・♀・FC
秋津玲司(gb5395
19歳・♂・HD
フローラ・シュトリエ(gb6204
18歳・♀・PN

●リプレイ本文

●バトルプラン
 暴れまわるゴリラキメラ。それより少し離れたビルの残骸の下で、傭兵たちは作戦会議を行っていた。

「堅い相手かー。なんとか防御を突破しないとならないわね」

 キメラのデータを見て、尚陽気そうに言っているのはフローラ・シュトリエ(gb6204)。UPCよりの情報だと、物理攻撃は硬化された体毛により無効化されてしまうそうだ。
とすれば、毛の無い部分を狙うのが有効と言うのは、傭兵たちの一致した認識でもある。
 その隣では、織部 ジェット(gb3834)と秋津玲司(gb5395)が、キメラを誘い出す場所の選定を行っていた。

「あそこなんかどうだ?」
「ふむ。そうですね。それなりに広くて‥障害物もありますし。いいのではないでしょうか」

 選定された場所は、付近の公園だった場所。付近にあったビルの残骸が落下し、廃墟さながらの形相を呈している。
 足場の悪い地帯、と言う条件に合致していた。

 傭兵たちはお互い目配せすると、事前に相談した作戦プランの通りに、散開した。


●見参
 傭兵たちが取った戦術は以下である。

A班
ゲシュペンスト(ga5579
紅 アリカ(ga8708
織部 ジェット
水無月 春奈(gb4000

B班
御山・アキラ(ga0532
秋津玲司
フローラ・シュトリエ
九頭龍・聖華(gb4305

 と分け、交互にキメラの注意を引き、もう片方の班が背後から攻撃する、と言う物であった。

 B班が先回りし、公園の中に潜伏したのを確認したアリカは、真デヴァステイターを構え、ゴリラキメラの足を狙って射撃する。
 が、体毛は重力によって『垂れ下がって』いるため、毛にカバーされていない足の部分は極僅かであり、アリカの攻撃は硬化した体毛によって弾かれてしまう。

「‥‥どんなに固くとも、その一点に攻撃を集中したら‥‥どうなるかしら?」

 一点を狙い、連続射撃を仕掛けるが、効果が出る様子は無い。
 が、注意は引けたようで、キメラはアリカのいる場所に向かい、真っ直ぐに歩いてきた。

「巨大ゴリラか、ゴーレムに変形したり美女を攫ってビルに登ったりしないだろうな‥」
 
 ゲシュペンストが周囲のビルを見回して言う。確かにこの状況でビルに登られたら戦いにくいことこの上ないが、恐らくは何か別の意味合いもあるのだろう。
 そう言っている間も、小銃「S−01」による攻撃の手は休めていない。『急所突き』を乗せた銃でキメラの顔や手を狙い、着実に射撃していく。

「このキメラの毛を全部剃っちまえれば楽なんだろうな」

 攻撃の効果のなさに毒づくジェット。体毛の無い部分を狙ってはいるが、如何に間抜けているキメラとて、痛ければ本能的にそこを押さえる。
 4拳銃「ルドルフ」による銃撃は体毛に阻まれて、大した効果は出せていなかった。

 B班のうち、唯一遠距離攻撃の手段が無い春奈は、一発ずつ死角から当てていく戦術を取る。
天剣「ラジエル」による攻撃は、体毛の上からでもゴリラキメラにダメージを与えていた。どうやら幾ら体毛を硬化させようと、知覚兵器への耐性は付かないらしい。が――

「よっと‥大振りなので避けるのは楽ですが‥当たったら洒落になりませんね」

 キメラが振り下ろした拳は、春奈のすぐ横にあった車を、まるでアルミ缶のようにぺしゃんこにしていた。
当たっていたのなら、無事ではすまなかった事だろう。
そう悟った春奈は、急いで竜の翼を起動して後退し、距離を取った。


●残骸の利弊
 A班が公園に入ったのに続き、キメラが公園へ侵入する。
 それを確認したB班がキメラの後ろから接近する。

「道化が踊る、自らが主役と信じて‥。踊らされているとも知らず」

 誘導の成功を確信した玲司が、にやりと笑いを浮かべる。
 ‥‥が、ここで少々想定外の事態が発生する。

「スリル満点のハードル競争だ‥‥って、障害物踏み倒してどうすんだ!?」

 ジェットが驚愕の声を漏らす。
 そう。キメラの移動を困難にするために瓦礫地帯に誘い込んだはずが、6mを超えるキメラの巨体の前では、殆どの瓦礫が意味を成さず、逆に傭兵たちが動きにくくなる要素となっていた。
 全員足元には注意しなくてはいけないため、攻撃や回避の手が鈍る事となったのである。
 が、ここで今更計画変更をするわけにもいかない。
 B班は、キメラに向かって一斉攻撃を開始した。

●インパクト
 先手を取ったのはフローラ。
 注意を引くため大声を上げながら、キメラに向かって突き刺し攻撃を行う。
 が、身長のためか、突き出された機械剣はキメラの尻の中心に向かって―――

 ―――閑話休題。
 流石に痛がったキメラが少し跳ね上がる。腕を振り回すが、既にフローラは瞬天速で離脱していた。
 そして、キメラは腕を振り回したために丁度Bチーム側に顔を向けた形となる。
 そこを狙って、大量の弾幕が降り注いだ。

「お前はそのまま死の海に堕ちろ‥‥」

 冷静な顔とは裏腹に、玲司のシエルクラインからは大量の弾丸が吐き出されている。
 聖華も、誘導に集中しているのか、剣を使わずクルメタルP−38で狙撃している。
 そして、弾幕を張る二人とは正反対に、アキラは着実にキメラの目に狙いをつけた。

「もらった‥!」

 弾丸は、そのままキメラの左目に吸い込まれた。
 絶叫を挙げながら仰け反り、上を向いたキメラに、隙ありと見た春奈が行動に移る。
 龍の翼を使い、猛烈な勢いで斜めに倒れたビルを駆け上がり―――

「ふふ、もう片方の目も、もらっちゃいますよ」

 大ジャンプし、上からラジエルで突き下ろす。
 バハムートの重量、竜の角での増幅を乗せた、飛竜の騎士の如きその一撃は、キメラの右目を潰すのには十分すぎたのである。
 そのまま小ジャンプし、再度竜の翼を使って距離を離す。
 両目を潰されたキメラは、痛みからか見えない恐怖からか、本能的に見境なく暴れ始めたのである。
 付近の全ての建築物は瓦礫と化し、破壊された瓦礫が傭兵たちに向かい飛来する。

「攻撃力はありそうよねー。当たりたくないわ」

 付近に落ちた瓦礫によって空いた大穴を見て、フローラが呟く。
 無差別攻撃を行い始めたこの状態に置いて、近づくのは非常に危険であった。
 幸いにも、付近に居た者は全員『竜の翼』や『瞬天速』と言った移動系スキルで、範囲外に退避できていた。


●バーサーカー
「‥‥これでは近接攻撃は無理か。」
「遠距離攻撃で削るしかないだろうな‥‥」

 考え込むゲシュペンストに、アキラが答える。
 A班は、春奈を除き再度全員が遠距離兵装を構え、一斉射撃を行う。
 激しく暴れまわるキメラの毛に覆われてない部分に当てるのは非常に困難だったが、それでも衝撃自体は体毛を通して伝わっていたようで、キメラはA班に向かい歩み寄る。
 ―――が、またしても不測の事態が発生する。
 目が見えなくなったキメラは、瓦礫につまづいてしまい、転んだのだ。
 本来なら、これは傭兵たちの攻撃のチャンスであるのだが‥‥

「まずい、避けろ‥!」
 
 アキラの叫びが響く。キメラは、転んだそのままの勢いで、前転のように転がり始めたのである。
 こうなれば、巨大な岩が転がってくるのとほぼ変わりは無い。キメラの背後から接近していた聖華はキメラが転んだ勢いでの後ろ蹴りを食らい吹き飛ばされ、移動技を持たなかったアリカと、運悪く足場を踏み外したゲシュペンストは体当たりを正面から受ける事となった。

「ちっ‥‥しくじった‥‥」
「‥‥まさか、こんな攻撃があったなんてね」

 ‥‥多分、キメラの意識した攻撃ではない。単に運が悪かった、としか言いようが無い。

 が、これによって、キメラは地面に倒れ伏す格好となる。
 ここぞとばかりに、傭兵たちは一斉に攻撃を加える。
 アキラと玲司のエネルギーガンが表皮を焼き、体勢を立て直した聖華が『スマッシュ』を使用し、再度キメラに向かって攻撃を仕掛ける。が、今回は伏せた姿勢であるため、聖華の暗剣の一突きはキメラの尻に向かって――

 ―――閑話休題。
 衝撃と痛みによりキメラは跳ね起き、再度暴れだす。が、度重なるダメージのためか、先ほどのような元気を失っていた。
 そこへ‥‥

「足元がお留守だぜ!」

 キメラが暴れ、瓦礫が排除された場所から、ジェットがスライディングを仕掛ける。サッカーの動作を基礎にしたその一撃は、見事地面すれすれの、体毛がカバーしていない足の部分を捉える。
 そのまま、オラオラと言う台詞が聞こえてきそうな連蹴を加えるジェット。
 同時に、アリカも、ゲシュペンストが弾幕で注意を引いている間に、高速でビルの残骸を蹴っての三角ジャンプでキメラの顔の高さまで上がる。

「そろそろ終わらせましょう‥‥。馬鹿は死ななきゃ治らないというし、望み通りにしてあげないと‥‥」

 顔に向かって、ガラティーンの一閃。上下から同時に攻撃を加えられたキメラは、後ろに向かって倒れこんだ。

「おっと、潰されたらしゃれにならんぜ」

 ジェットは間一髪で瞬天速で脱出する。倒れ伏したキメラの顔面の傷に向かい、フローラと聖華が同時に武器を真っ直ぐに振り下ろす。
 耳を押さえたくなるような絶叫の後、キメラは完全に行動を停止していた。


●破壊の爪痕
 戦闘後、傭兵たちは各々の感想を漏らしていた。

「終わりましたね‥‥‥‥。これで依頼は完了ですか」

 周囲の状況を調べながら、玲司が呟く。

「相手の行動を読むのは難しい。だけどそれがタクティクスでもあるんだ。力押しだけじゃ、無理な事は多すぎるのかもしれねぇ」
「単独‥新型キメラのテストか何かか?」
「‥‥実験という奴でしょうか。コンセプトを絞ってキメラの開発‥私たちと同じことを‥‥?」

 アキラ、ジェット、春奈は、キメラを調べていた。
 そこへ、聖華が鍋を持ってやってくる。
「何をするんだろう?」と言う目線を他所に、嬉々として火をたき始める。

「旨いかどうかは、食ってみれば判る」



 後日。キメラを食った傭兵の中で、激しい腹痛を訴えた者が続出したと言われている。