タイトル:Clockworksマスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/03/11 22:20

●オープニング本文


 九州、○○市―――

 ここはバクアと人間側が日々争奪を繰り返す、所謂「激戦区」だ。
 ‥最近、バクアから街を奪い返したUPC軍は、残党掃討のため町外れのとある館に進入する。

「何だこの館は‥‥」

 先頭を歩いていた探索隊隊長が驚愕する。
 館の中は、『時計』で一杯だったのだ。
 この館がバクアに少し前まで占領されていた事は事前のブリーフィングで確認済み。
 誰一人として、油断はしなかったはずなのだが――

――――ゴーン――――

 突如とした鐘の音に、全員がそちらに振り向き警戒する。
 ‥だが、その大時計に付いた鐘は3回鳴ると静まり、周囲は静けさが戻る。

「まったく‥脅かしやがって」

 そう言った隊員は、自らの背中が濡れている事に気づく。
 冷や汗か、そう思って触ってみた自らの手が、真っ赤になっていた事に直後、気づく。

「‥血!? おい、アキラのヤツはどこ行った!?」

 最後の隊員の居たその場所には、ただ血の跡が残っていただけであった。
 その血が、『三つに分かれて、それぞれ違う』時計に続いていた事を確認した直後、また鐘がなる。

――――ゴーン――――

 鐘が鳴るごとに、一人一人…消えていく。
 小隊からの映像通信が途絶えたのを機に、UPC軍はULTに依頼し、能力者の協力を仰ぐ事にした。

●参加者一覧

緋沼 京夜(ga6138
33歳・♂・AA
綾野 断真(ga6621
25歳・♂・SN
アンジェリナ・ルヴァン(ga6940
20歳・♀・AA
抹竹(gb1405
20歳・♂・AA
フェイス(gb2501
35歳・♂・SN
ナンナ・オンスロート(gb5838
21歳・♀・HD
杠葉 凛生(gb6638
50歳・♂・JG
エイミ・シーン(gb9420
18歳・♀・SF

●リプレイ本文

●The Dark Mansion
「先入観を持たずに、色々調べてみる必要がありそうですね」

 入り口で洋館を見上げ、綾野 断真(ga6621)がため息を付く。
 その後ろから、近くに駐屯してあった車から降りた抹竹(gb1405)と、アンジェリナ・ルヴァン(ga6940)が近づく。

「もう一度映像を見直してみたのだが‥敵は相当早いみたいだ。痕跡が見当たらなかった」
「カメラが装着者の視点と同調するタイプだったのが仇となった、とでも申しましょうか」

 更にその直ぐ後に続き、杠葉 凛生(gb6638)とエイミ・シーン(gb9420)も車から降りてくる。

「‥ふむぅ。奇怪で状態だけじゃ何とも言い切れないのが不気味なのです‥」
「せめて誰か一人でも時計の反対側を向いてたら、正体が分かったかもしれないんだがな」

「とすると‥後ろの時計からの攻撃でしょうか。あれだけの時計の数なら、館の何処にいても攻撃範囲にいることになってしまいますね」
「血痕‥‥引き裂かれ、引きずり込まれた?」

 考え込む抹竹とフェイス(gb2501)の肩を、凛生がぽんと叩く。

「いずれにせよ結論は変わらん。バグアは狩るのみだ‥」

 そう言った凛生を、前方から緋沼 京夜(ga6138)が呼ぶ。

「さて、仕事を始めようか‥‥‥杠葉」
「いいぜ、付き合おう」

 そして、AU−KVを着込み、見取り図を片手にしたナンナ・オンスロート(gb5838)を先頭にし‥傭兵たちは館へ向かっていった。

「幽霊やら魔女やら悪魔やら‥‥そういう幻想事は趣味じゃない。トリックもろ共すべて破壊させてもらう」

 そう、アンジェリナは呟いた。


●Intrusion

 先ず最初に、斥候班である傭兵たち――ナンナ、アンジェリナ、凛生、京夜の四人が、正面玄関から館へ侵入する。
 館に入るやいなや、ナンナは「隠れる場所は少しでも減らさないとダメですよね」と、付近の窓を開け始める。
 この動作には、外にいる援護班からの援護を受けやすくする、と言う意味合いもあるのだ。
 窓から見える廊下の調度品をナンナと凛生はじっくり調べるが、特に不自然な場所は見つからなかった。
 仕方なく、傭兵たちは内側の方の部屋に侵入する。この部屋は窓から部屋の門を通し、半分くらいが見渡せる仕組みになっていたのだが、死角になっている部分もあった。 

 アンジェリナはその部屋にある大時計を調べていたが‥時計は全部通常通りに動いており、また時刻も同じだった。
 ケースを開いて中を調べようとするが、何故か開かない。
 それに気づいた京夜は――

「‥どいてな。こうすればいいんだ」

 大時計に歩み寄り‥義手に力を込めて全力で叩き付ける。
 瞬間、その大時計は瓦礫と化した。
 その瓦礫を調査しようとしたアンジェリナ。火をつけたタバコを銜えた京夜。二人の後ろで、大時計の鐘が鳴り響いた。

「っ!」

 咄嗟に反応して、音の方を見るアンジェリナ。だが、京夜のタバコの煙の揺らめきが、本当の危険の方向を示していた――

「「そこか!」」

 京夜の死角をカバーしながらも事前に探査の目を展開し、音の反対側から攻撃が来るだろうという目星をつけていた凛生。タバコの煙から攻撃の方向を判断しようとした京夜。
 この二人は一斉に先ほど京夜が作った瓦礫の方を向き、武器を構える!

 ――そこから伸びた物は、緑のスライム状の触手だった。だがその触手は、不定形なスライムにしては不自然な、片方が平ぺったくなっている形をしていた。
 アンジェリナに向かって振りかざされた触手を、京夜が義手で掴もうとするが、余りの勢いに掴め切れずに横に弾いてしまう。
 壁に衝突した触手は‥その壁に、まるで刃物のような切り跡を残した。

「刀みたいに硬化してるのか?」

 その切り跡を見て、京夜が舌打ちする。
 衝撃音に、部屋内の別の箇所を調査していたナンナも振り向き、拳銃に持ち替え凛生と共にスライム触手へ一斉射撃を仕掛ける。
 が、大部分が軟体であるスライム触手には銃弾の効き目が薄く、また屋内で銃を使った為に跳弾が発生。ドアを通って窓を飛び出したしたため、外から援護しようとした抹竹、フェイスの二名――エイミは電気関連を、断真は通風孔関連をチェックしていた為その場に居なかった――が、一斉にしゃがんで回避する事となった。
 これに気づいた傭兵たちは、銃を持っていた二名は銃を下ろし‥剣を構えたアンジェリナと京夜が、触手の根元、つまり瓦礫の方へと飛び掛る!
 急速に、まるで瓦礫に吸い込まれるように引いていくスライム触手。京夜の刃は空を切り、アンジェリナの一撃は触手と接触する物の、硬化部分に命中したため、大したダメージは与えられなかった。

 銃弾が頭上を去った事を確認し、窓から館の中を覗き込むフェイス。

「これは失敗でしたね‥跳弾を考えると、そううかつに銃は使えません」

 大部分の傭兵が銃器中心の装備を持って居る事を考えると、この事実は非常に大きな問題となった。
 外からの援護射撃でさえも、万一にも当たらなければ、調度品の多い館内で跳弾を引き起こし、味方に危険を及ぼす。
つまり、この時点で外からの援護は意味を成さなくなったのである。


●Multiple Hands

 再度触手が飛び出してくる事を警戒し、アンジェリナと京夜がそれぞれ得物を構えた下で、瓦礫を掻き分け調査するナンナ。
 瓦礫の裏が、空洞になっていることを発見する。空洞と言っても、人は通れず‥辛うじて大型犬一匹が通れるかどうかのサイズの物だったが。

「軟体のスライムだからこそ出来る芸当ですか」

 外で、映像のシーンを思い浮かべるフェイス。血痕が3つに分かれていたのは、恐らく刃の触手が兵士たちを3つに切り分け、その後3本の触手が―――

「っ!!気をつけてください!触手は一本ではありません!」

 中に向かって叫ぶフェイス。
 その瞬間、先ほど鳴った大時計‥ナンナが調べているのと『反対側』になった大時計の面が開き、その中から槍のような触手が飛び出す。
 この襲撃で鳴るべきであった大時計は既に京夜によって壊されていた為に、事前の警告はなかったのだ。
 後方を探査の目で警戒していた凛生はそれに気づいたが、跳弾の問題で銃撃する訳には行かず、拳銃の柄の部分で触手を叩き落そうとする。

「く‥っ!!」

 その打撃は、高速列車の横に投げられた小石のように弾かれ、僅かに槍触手の軌道を逸らしたに過ぎない。
 ‥硬化した触手に対し、元々打撃に向かない拳銃による一撃は、効果が薄いのだ。
 槍触手は、まるでレイピアが鎧を貫くかのごとく、ナンナのAU−KVの隙間から深々と突き刺さる!

「野郎‥っ!」

 京夜の闇剣「サタン」が振り下ろされ、オーラと共に触手を断ち切る。引こうとした残りの部分を狙ってアンジェリナが苦無を投擲。その場に縫い付ける。更に氷雨、夏落の二刀流に切り替え根元に向かって飛び掛り、十字に切りつける。
 痛みを感じたのか、スライムは暴れだし‥強引に苦無に縫い付けられた己の体を引きちぎり、引く。その間にちぎられた部分を鉤爪の形に変形させ、アンジェリナを引きずり込もうとする!

「‥まだだ‥っ!」

 二刀で鉤爪を受け止め、引きずり込まれるのを防ぐアンジェリナ。壁を背につばぜり合いをしている感じだ。
 そこへ京夜が下段に構えた闇剣を引きずるように走りこみ、切り上げの一閃を以って鉤爪を両断したが、残りの部分は壁へと引き込んだ。

 そこへ、「ナンナが負傷した」と凛生からの連絡を受けた援護班のうち、フェイスとエイミが援護の為正面玄関から進入する。


●Lets Escape 

 正面玄関から進入して間もなく、フェイスは四方の大時計が一斉に鳴り響いている事を聞く。

「厄介なことになりましたね‥」

 チンクエディアを抜き放ち、構える。同時にエイミもロケットパンチを装着、攻撃に備えるが‥
 ―――周囲の大時計から、3本同時に触手が伸びてきたのだ。

 エイミはロケットパンチを発射せずに横に薙ぎ、フェイスはチンクエディアを横に滑らせるようにして突きの軌道をずらし、直撃を避ける。
 ‥直撃を回避したとはいえ、肩を触手に刺されたフェイスの後ろから、刀のような形をした触手が更に振り下ろされ、フェイスは背中を切られ倒れる。

「今、治療します‥っ!?」

 超機械から拡張練成治療でフェイスを治癒しようとしたエイミ。その一瞬の気の散りが原因となり、両脇からそれぞれ斬撃と突きを受けてしまう。
 そのまま刀のような触手はエイミの体を引き裂こうとするが――

「やらせねぇ!!」

 更に後ろから進入した抹竹が洒涙雨を以って触手を切断、引きずるようにしてフェイスとエイミを玄関から救出する。
 その後ろを触手が追いかけるが――

「いい加減にしやがれ!」

 試作型ガンズトンファーを前に向け、跳弾覚悟で一斉に乱射する。
 何発かは自分にも跳弾で当たるが、跳ね返る弾は触手を怯えさせ、引っ込ませるのには十分だった。

 一方、斥候班の方は、最も体力に優れる京夜がナンナを担ぎ、最初にナンナが開けた窓からダイブし館外の安全地帯へ着地する。
 直後に凛生も同様にダイブして飛び出す。
 最後に残ったアンジェリナを狙って触手が殺到するが、それを二刀で受けた反動を利用し、アンジェリナも無事に脱出に成功する。

 襲い来る触手の群れに向かい、断真が二丁拳銃で弾をばら撒き、跳弾もあって触手たちはまた引っ込む事になる。

「とりあえず目的は果たせた。敵の正体は分かったし、これもあるしな」

 脱出時に咄嗟に義手で掴んだ、切断されたキメラの触手の一部を握り締める京夜。

 その後、負傷したナンナ、フェイス、エイミは搬送され‥今回の情報や、京夜が持ち帰った組織情報を元にキメラの正体が解明された。
 どうやら、含まれている金属元素を体表に瞬間的に集結させる事により、硬化させる事が出来る特殊なスライムキメラらしい。

 これを元に、外部から壁を慎重に取り壊し、キメラの逃げ場をなくした上での攻略作戦が実施され、キメラは無事に退治された。


●Inner Elements
「‥どうやら館に残してきた『置き土産』が、壊されたようですね」
「いいのか?そんな余裕で。倒されたんだろ?」
「ええ、アレはあくまでも試作型ですので。‥貴方に頂いた技術、実に役に立ちましたよ‥‥」
「ま、こっちもいいもん貰ったからな。しっかし、あの技術を『元素』と組み合わせるなんざ、あんたも考えたもんだ」
「フフフ‥‥」