●リプレイ本文
「音桐さん、こんにちわー」
「かなり癖の強い機体ですね。今回はよろしくお願いします」
「実際問題水中機が飛べない事で運用に悩んだ事が有るからね。この機体があれば、そう言う問題も解決するかもしれないわね」
先ず、アーク・ウイング(
gb4432)とアルストロメリア(
gc0112)、百地・悠季(
ga8270)の三人が、迎えに来た音桐に挨拶する。
「どうも、皆さん、来ていただいてありがとうございます。こちらはコーヒーくらいしかお出しできませんが‥‥」
「うちが持ってきてるから大丈夫です」
音桐の言葉に、そう答えたのは守原有希(
ga8582)。彼女は今日のため、数々の料理を作ってきていたのだ。
その中で最初に出された『蒟蒻里芋の雑煮』をつまみながら、会談は進む。
●価額帯
ここで先ず口火を切ったのは秋月 祐介(
ga6378)。
「自分は100〜120万前後を推奨します。と言うのも、水中でのアンチジャミングは今迄無かった故に需要はある。しかし、海が主戦場になる機会は少なく、サブ機になるとすれば、予算的にはあまり出せないのが実状です。ここは情報処理機という扱いにして、他の機能を削って特化させる事を提案します」
「俺は200万辺りでもいいと思うんだな」
「うちも200万辺りでいいと思う」
と、丁度次の料理、『牛タン』を運んできた有希が砕牙 九郎(
ga7366)の意見に賛成する。
それに、音桐も頷く。
「この機体は、ブースターを主とした新技術を多く採用しております。それの価額を下げるのは、少々困難だと思います。情報処理特化機‥は、また当社にアイデアを頂ければ、次の機体を開発する際、参考にいたします」
そして一息つき、牛タンをつまみ――
「200万辺りで何とか努力してみましょう。ただ、多少は偏差が出るかもしれませんが‥」
●能力値
「移動は平均的ということだけど、現在のKVと比べた場合、どの機体くらいの値になりますか?」
「戦闘能力を考えると逃げ足は早いにこした事は無いです。緊急離脱用の手段が無いならば地力を上げておきたいものですな。」
祐介とアークがまず注目したのは移動値。これについては‥
「そうですね‥目指しているのは雷電辺り、でしょうか。『迦具土』の出力が予定通りだったら、ですが‥」
「それなら多分大丈夫でしょうな」
二人とも、思い浮かべた最低値をクリアしたのか、それ以上は何も言わなかった。直接言いはしなかったが、移動能力は気になっていた悠季も、この回答に満足したのか、異議は呈さなかった。
「練力はどうだろうか。特殊能力がそれを消費する物なら、なお更重要となる。」
「ご心配なく、そこら辺は考慮に入れております。ただ、流石に練力消費兵装を使うとなると、足りなくはなりますが」
「兵装については‥ラックは空海併用武装が無い現状では、水中用・空中用・照明や煙幕用、出来れば3つ欲しいですな。2という選択もありますが」
と言うのは、祐介の意見。カルマ・シュタット(
ga6302)や有希は『水陸兵装が無い場合』ラック4つ欲しいという意見を提示したが‥
「また後ほど討論いたしますが、水陸両用兵装については現在研究中です。故に、とりあえず現在は秋月様の意見を取り上げる方向で進めて参ります」
と言うのが、音桐の意見だ。
同様に要望が多かったアクセサリースロットは‥
「支援機だからアクセサリースロットで、補助的なもんを入れたほうがいいんじゃないか?」
「そこら辺は兵装ラックとの兼ね合いとなりますね。元々機体の余剰スペースはあまり多くはないので。ただ、検討はしてみます」
●特殊能力
今回の主な募集要項の1つ、3つの候補から特殊能力を選ぶ件については、傭兵たちの意見はかなり分かれた形となった。
「アンチジャミング装置を推したい。今まで水中機にはなかった能力だからな」
と言う祐介の意見に賛成したのは、
「水空両用撮影演算システムは、高くなりそうだから‥」
と、価額を心配していたアルストロメリアであった。
が、然し、
「撮影演算システムの方が応用性があるんじゃないかなー?偵察にも使えるしね」
「既存のジャミングシステムと重複できるのもいいものよ?」
アークと悠季を初め、傭兵の半数以上は寧ろ演算システムに一票を投じていた。
そんな中、
「スクリュークラッシュについては誰も賛成して無いようですが、私は敢えてそれを推奨したいと思います」
今まで黙っていた夕景 憧(
gc0113)が口を開いた。
今までこういう特殊な機体はなく、画期的な試みを満載した機体だと言う事で、常識的判断をあえてせずに思い切ってやってみてはどうか、と言う意見なのだ。
「それに、回避や防御関係を強化する特殊能力を追加すれば‥」
だが‥
「回避や防御関連の特殊能力は、大抵の場合コーティングによって成されます。水中でも応用できるタイプの物を開発するにはそれなりの時間と、予算が必要とされます」
と音桐は特殊能力の開発に難色を示し、スクリュークラッシュについては面白そうだが必要とされる場面が少ないと言うカルマ、機体自体が腕部を持っていないため接近戦に向かない、と言う悠季と有希。有希は深水域における推力減少による使用不能も理由に挙げていた。
アルストロメリアはこれを通常武装化して他機体で使用させてはどうか、と言う意見を上げたが、システムの複雑さと「重装甲」「大推力」「細かい推力の調整ができるだけのスラスターの数」と言う条件から、現存する他機体でこれを使用するのは非常に難しいと言う結論が出た。
「それでは‥‥賛成数から見て、撮影システムを第一、アンチジャミング装置をバックアップ候補として、研究を進めようと思います」
「撮影システムで光学迷彩のゆがみが見えれば最高なのですが」
「そこは、実物ができてから実際の光学迷彩を撮影してみないと、分かりませんね。」
ここで砕牙が手を挙げ――
「あ、あと、奉天の方でC.Or.Eと言う脱出システムが開発されていたがよ、それを使うのはどうだ?」
「‥一応掛け合って見ますが、余り期待はしないでください。今回のアンチジャミング装置の技術提供でも、相当の代価を支払いましたので‥」
●武装
「水陸共用兵器の開発は現在進めておりますが‥他に、武装については何かありますでしょうか?」
議題を切り替える音桐に、
「ソードウィングとソードフィンを兼ねた固定武装なんかあると武器スロット節約できていいんですけとね」
「それでは、先ほど挙げたスクリュークラッシュへの否定意見が全てそのまま当てはまる事になりますが‥」
アルストロメリアの意見に、音桐はやや眉を吊り上げた。既に否定した案を掘り返すような物であるからだ。アルストロメリア自身、スクリュークラッシュを否定した一人でもある。
「スクリュークラッシュを応用して、キネティックミサイルにしたら如何です?」
「この技術はあの大型ブースターと細かい姿勢制御スラスターがあってこそ成る物ですので、作れたとしても価額の爆増、及びミサイル自体の巨大化は否めません。‥残念ながらとても実用的な物には‥」
と、有希の意見も否定される。
「通信関係の補助アクセサリーはどうかな?」
「それは考えて見ましょう」
音桐は、左にいた助手の男に記録するようを指示する。男は素早く意見を提示した砕牙から詳細を聞き、それをノートに書き下ろした。
他にもかく乱専用の武装を提案した者がいたため、それも音桐はノートに書き記すよう指示していた。
●最後に‥
「皆様、貴重なご意見ありがとうございました。若しかしたら、またご意見を頂く事になるかもしれませんが、よろしくお願いします」
一礼する音桐に、悠季が静かにファイルを差し出す。
「これは‥?」
「MSIで開発されている艦載機『グリフォン』のデータよ。水面離着陸可能な機体だから、あちらに掛け合って共同開発としたらどうかしら」
然し、音桐は静かにそのファイルを押し返した。
「‥これは所謂商業スパイ、と言う物です。残念ながら、そのデータは頂けません。‥今回は、見なかった事としましょう」
悠季はそのファイルを仕舞い、静かに他の傭兵たちに続いて、銀河社の門を出た。