タイトル:【雷】最後の焔マスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/03/22 09:22

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


「‥‥行くのですか?」
「ああ、この体が治る見込みはないんだろ?」
「‥‥残念ながら。貴方は以前から、体を酷使しすぎです。それに加えてまだあの闘術を――」
「あーあー分かってる分かってる。ちょっと確認しただけだ。‥俺の指示したアレ、搭載は終わってるんだろうな」
「それは勿論。ですが‥」
「話はそこまでだ。お互い長話する仲でもないだろ?‥‥んじゃ、最後に、奴らに一矢、報いてくるとするかね」

――――

 街の郊外。ここはバクアとの激戦区であるため、常に厳戒態勢が敷かれている。
 無論、ヘルメットワームからの襲撃の可能性もあるため、少数ながらKV部隊も配備されている。
 いざと言う時は全力で足止めに徹し、その間に援軍を呼ぶという寸法だ。

「隊長、今日も平和ですね」
「‥無駄口を叩くな。俺たちは後ろの街に居る、俺たちの家族を守っている事を忘れるな」
「へいへい」

 通信を切る。部下の余りのやる気のなさに、ため息の一つも付きたくなるものだ。
 全員、自分たちが油断すれば家族に危険が及ぶという事を忘れているかのようだ。ここで油断すれば――

「っ!?」

 警告音に思考がかき消される。急いでレーダーをチェックする。北側から接近する光点が一つ。速いっ――!?

 次の瞬間、爆炎と共に、隊長機は破壊される。
 その炎の中から、立ち上がる影が一つ。

「最後の大舞台だ。全力で‥‥演じてやろう」

 コックピットの中で、強化人間、雷火龍は、微笑んだ。

●参加者一覧

榊 兵衛(ga0388
31歳・♂・PN
ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
井出 一真(ga6977
22歳・♂・AA
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER

●リプレイ本文

●一戦
「‥また来たか。しぶといね。その根性だけは買うけど、諦めが肝心だってこと」

 装輪走行で滑るように移動する陸上形態の阿修羅のコクピットで、ミア・エルミナール(ga0741)は呟く。
 二度に渡り雷火龍と激戦を繰り広げた彼女としては、今度の一戦で決着をつけたい所。

「あの爆薬馬鹿が。今度こそ決着をつけてやる。‥今、決着をつけなければ永遠に決着がつけられなさそうだからな」

 同じく因縁を持つ緑川安則(ga4773)も、それに同意する。
 前回奇襲で機体を破壊された恨みも相まって、今回は負けるわけには行かない。

「別段、雷火龍に対して因縁があるわけではないが、放置しておく訳にもいくまい。俺が出来る範囲で協力する事としようか」
「因縁ある奴に華持たせる為にも、俺は全力で活路を切り開くまでッス」

 左右を同じく走る榊兵衛(ga0388)と六堂源治(ga8154)がそう言った所で、前方に、細身のゴーレムの姿が見えた。


●突攻
「孤立を避け、互いをカバーしあいましょう!近接時は極力回避、チェーンとノズルの警戒も怠らないように!」

 シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)の号令と共に、傭兵たちは二つに分かれて散開した。

「へっ、また貴様らか。良いぜ、俺の最後の一戦に、ふさわしい!」
「久しぶりだな。雷!あいにく私は死ににくいらしいのでな。まだやられておらんよ!今回は従兄弟の兵器庫から武装を分捕ってきておいた!」

 ゴーレムが確かに雷火龍の物と確認した安則は、大きく、(借りた兵装であるらしい)ハイディフェンダーを掲げて挑発する。
 接近する雷火龍のゴーレムに対し――

「んじゃ、迎え撃つとするか」

 傭兵たちは一斉にスラスターライフルやバルカンなど、連射系の兵器を連打する。
 雨の様な弾幕が雷火龍に迫るが‥‥

「おいおい、俺が怖いのか?‥寄って来ないなら、こっちから行くぜ」

 下に向けブースターを吹かせた雷火龍のゴーレムの四方からノズルが出現し、その全てが下に向けられる。
 次の瞬間、強烈な風圧と共に、ゴーレムは傭兵たちの上空へと移動していた。

「誰がそんな弾幕まともに受けるかよ!食らいやがれ!」

 ノズルから今度は火炎を噴出し、それを纏い猛然と急降下するゴーレム。狙いは安則の雷電。

「‥きやがれ!」
「この加速度の攻撃を受けるとは、いい度胸だ」

 機盾「バックス」を構え、攻撃を強引に受ける事を選んだ安則。
 この一撃自体は防げた物の、そのまま盾に爆薬パイルバンカーを打ち込まれ‥爆発の勢いによって盾を吹き飛ばされてしまう。
 そのまま拳打で追撃しようとしたゴーレムの拳を、回転する槍が上に弾いた。

「‥この槍の榊兵衛がお相手しよう!」

 槍を回転させて拳を弾き、無防備になったゴーレムの細身のボディに、機槍「ユスティティア」で突きを入れる。
 雷火龍は全速後退して間合い外に出ることによりこれを外そうとするが―――

「‥見誤ったな!」

 超伝導アクチュエータによって増加された反応速度でそれを確認した榊兵衛は、ハンズ・オブ・グローリーを発動。
 と共に彼の雷電‥『忠勝』の腕がまるでグンと伸びたように見え‥槍が、ゴーレムの胴体に突き刺さった。

「‥なっ‥けど、甘い!」

 僅かに驚愕した雷火龍だが、直ぐに風圧ノズルを吹かせ‥‥榊兵衛の忠勝を吹き飛ばす。
 その為、損害は腹部装甲のみで済んだ。だが、風圧で後ろに飛んだ雷火龍のゴーレムの背後に向かって、反転した前衛の井出 一真(ga6977)が猛然と接近する!

「ただのゴーレムってわけには行きそうにないですね‥けど!」

 クラッシュテイルでの攻撃と共に、ソードウィングを広げ、僅かに動きが止まったゴーレムに体当たりするように背後から斬りつける。と同時に、体勢を立て直した安則も、超伝導アクチュエータを起動して、ハイディフェンダーを横に振りかぶってなぎ払う!
 この二人の攻撃はまるで鋏のようにゴーレムを挟み込み、そのまま両断するかと思われたが――

「まだだ、まだ今は死ぬわけには‥いかねぇんだよ!!」

 全身のノズルから大量の火炎を噴出し、一真と安則の機体を包み込む。怯んだ二機に蹴りを入れ爆裂パイルバンカーを撃ち反動力を利用し脱出する。
 火炎によって雷火龍も同様に視界を遮られたせいで、このパイルバンカーは刺さり具合が悪く‥二機に致命的なダメージは与えていなかった。


●乱舞の連携

 脱出したゴーレムは、然しシンのスナイパーレーザー撃たれ、空中で体勢を崩すことになる。
 そこへ‥

「ここで決着つけようか」

 ミアの阿修羅がジャンプし、クラッシュホーンで体当たりを仕掛ける。

「ぐっ‥だが!」
「しまった!?」

 体当たりを敢えて受け、風圧を吹かせ後ろに飛ぶ事で衝撃力を減らすと共に、腰部のチェーンを発射、ミア機に巻きつけた。次の瞬間、チェーンが爆発し、ミア機を粉砕するはずだった。
 が、然し、それは飛び込んだ一真機のソードウィングによって切断される。このためミア機に巻きついたチェーンは爆発しなかったが、残りのチェーンの爆風が一真機を巻き込み、地面に叩きつける。
 上から踏みつけるように落下し、パイルバンカーを叩き込もうとするゴーレムを、今度は安則機の重機関砲が阻み‥

「俺もパイルバンカー使いなんでね‥!」

 源治機がルプス・ジガンティクスでその足を掴み、逆の腕で機杭「エグツ・タルディ」をチェーンを放つ腰部に向かって叩き込む。

「面白い!」

 雷火龍も、逆の足で機杭に向かって正面から蹴りつける!
 バンカーの起動音が両機から何回か響いた後。爆薬による爆発音が一帯に響く。
 爆発の煙幕から飛び出た両機のうち‥ゴーレムは右足の膝から先を失い、源治機の片腕はだらんと垂れ下がっていた。

「すまん、駆動システムをやられたッス。衝撃力に耐えられなかったみたいで」

 風圧を吹かし猛然と源治機に接近するゴーレムの前に、またもや榊兵衛の『忠勝』が立ちはだかる。と同時に、風圧が後ろに向いているのを好機と見た、ミアとシンが、一斉に各所のノズルを狙って攻撃を放つ。
 しかし――

「二度も同じ手は食わないぜ」

 風圧を急激に下に向け、慣性制御システムで前進を止め、全速で上昇するゴーレム。シンとミアのレーザー、弾丸は空を切り、榊兵衛は一瞬、相手を見失う。

「っ、上か!」

 安則と一真がゴーレムに重機関砲とスラスターライフルでそれぞれ連射を加えるが、ゴーレムはそれをまるで意に介さず、自らの機体を火炎放射の炎に包んだまま急降下の蹴りを源治機に加える!
 炎を纏った一撃を、源治は機盾「アイギス」を構え防ぐが、次の瞬間、機体は盾ごとチェーンに巻きつかれていた。
 ゴーレムごと、炎に包み込まれている源治機。視認できないこの状態で支援しようとすれば、源治機に当たる可能性もある。その為、傭兵たちは手が出せなかった。
 連続した小さな爆発の後、大きな爆発が起こり‥崩れ落ちる源治機。だが、その最後の力を振り絞って放ったスラスターライフルは、ゴーレムの逆側の足をも粉砕した。


●燃えし最後の焔
「やりやがったな‥!」

 怒りに燃える安則がハイディフェンダーを振りかぶり、切り上げる。足を失ったゴーレムが回避行動を取るには、風圧やブーストを吹かせ浮遊移動するしかない。ギリギリでハイディフェンダーを回避した物の、背後には榊兵衛の槍が迫っていた。
 体を捻り直撃だけは回避した物の、背部装甲を削り取られる。
 更にミアのヘビーガトリングの弾幕の後ろから、ソードウィングを展開した一真が体当たりする。ゴーレムは遅延式爆薬拳を遅延なしで撃ち、ソードウィングにぶつけ相殺すると共に一真の蒼翼号を弾き飛ばすが、不安定な体勢で行った為、爆発の反動で姿勢制御が困難となり機体が傾く。
 そこへシンの狙撃が入り、左側の風圧ノズルを1つ、破壊されてしまう。ノズル数は多かったので、大した影響はなかったはずなのだが‥

(「ぐぁっ‥っち、もう時間か‥」)

 コックピットで吐血する雷火龍。多数の薬品でドーピングした彼の体は、最早限界に達していた。
 血に塗れた手で、ボタンを押す。

 ゴーレムの動きが鈍くなったのを見た傭兵たちは、ここぞとばかりに一斉射撃を行う。だが、ゴーレムはそれを回避しようともせず、火炎放射に身を包み、一直線に町の方へと飛行する!

「「自爆か!?」」

 『奥の手』が自爆装置だと推定していたミア、安則はいち早くそれを阻止しようと走る。

「もう成仏しなよ!」

 だが、ミアの射撃は、捨て身の特攻を決意したゴーレムの装甲を穿ち煙を上げさせるものの、その進攻を止める事は不可能だった。

「これで最後だ‥貴様のその名、雷火龍を我が機体に刻み込み、永劫に覚えよう!」

 ハイディフェンダーを正面から振りかぶり、大上段で真っ向からゴーレムに振り下ろす!

(「ちっ‥最後まで、勝てなかったか‥」)

 ゴーレムの機体が両断されると共に大爆発を起こす。まだ距離があったため街は無事だった。
 ‥最も、巻き込まれた安則の雷電は、大破したが。


●終わらぬ悪夢

 傭兵たちが、負傷者を回収し送院した四日後。
 彼らは驚くべき事実を上層部から聞かされる事となる。

 雷火龍の遺体と、ゴーレムの残骸が‥UPCの回収チームが到着する前に、何者かによって回収されたことに。
 

「フフフ‥貴方には、まだまだ役に立ってもらえる事がありますからね‥」
「悪趣味だな。フェルナンデス」
「お褒め頂き光栄ですよ。雷火龍が死した以上、あの実験を遠慮なく行えるという物ですからね」