タイトル:【雷】砂塵舞いし龍マスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: やや難
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/04 16:23

●オープニング本文


前回のリプレイを見る


「ちっ‥まだ足りねぇ。もっと何かが‥」

 雷火龍は、一人作戦室で目の前のスクリーンを睨む。
 前回の交戦に際して、傭兵たち6人のうち2名を機体大破に追い込んだものの、自らも機体の両腕をもがれ戦闘不能に陥り撤退したのだ。
 修理中の機体の様子と、前回の戦闘録画の様子を交互に見る。

「フィールドを利用して‥超硬装甲への対策、っと後は刀剣類の対策、『観察者潰し』かねぇ」

 そう言って、スクリーンを消すと、一番近くに居た部下を呼び寄せる。

「フェルナンデスに申請してこい。1番、4番、5番の武器をこれらに変えるってな」

 部下が去った直後、雷火龍が激しく咳き込む。

「げほ‥がはっ‥くっそ、持ってくれよ‥旦那、てめぇの敵討つまでは死ねないんだからな‥!」


 ――――――――――――――――――――――
 ゴビ砂漠。
 ここは砂漠ながら、ごく偶にキャラバンが通過し、近隣の村へ商品を運んだりしていた。
 だが、近頃、ここを通るキャラバンの間では、変な噂が立つようになっていた。
 砂塵に紛れ、妖怪が襲ってくると言うのだ。

 襲い来る妖怪の伝説は3つ。
 巨人が現れ、その問いに正しく答えないと次の日身が粉砕されるという物。
 鮫が砂中から現れ、噛み付かれると烈火と共に地獄へ連れて行かれると言う物。
 罪人は鎖に巻かれ、裁かれるという物。

 これを奇怪に思ったUPCは、一帯を集中的にレーダーなどで観察。結果、新型ゴーレムが出現している事が判明。外形等から以前に出現した「雷火龍」のゴーレムの亜種だという事が分かり、再び、傭兵たちに撃退依頼が出される事となった。

●参加者一覧

ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
緑川安則(ga4773
27歳・♂・BM
音影 一葉(ga9077
18歳・♀・ER
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
鳳覚羅(gb3095
20歳・♂・AA

●リプレイ本文

●開戦

 一望しても全く障害物の無い砂漠の荒野の中、6機のKVが慎重に進軍している。

「聞く所によると‥‥けっこう厄介そうな奴のようだね‥とはいえエース相手‥‥楽しませてもらおう」
「あの爆薬馬鹿はロサンゼルスのことを気にして無茶しているというわけか。ま、壮絶な死に様だったからな。ステアーのパーツ奪取阻止のために仲間を爆弾にしちまうんだから」

 アルファ班、漸 王零(ga2930)駆る『闇天雷』と、緑川安則(ga4773)の雷電。

「おそらく、噂の1つはアースクェイクか砂漠でも使える魚雷のような自走型地雷だと思われる。一応、役立つかどうかわからんが設置しておく」

 目標のゴーレムの操者であると予測される人物と因縁がある安則は、地面に『地殻変化計測器』を設置しながらの進軍である。

「敵のフィールドですから、注意するに越した事はありませんね」
「雷火龍‥再び現れたか‥慣らし運転には不足はないね」

 やや後ろを警戒しながら歩くベータ班、鳳覚羅(gb3095)の『黒炎凰』と、音影 一葉(ga9077)のディスタン。

「‥‥また来たか。前回の借りはしっかりと返してやらないとね。」
「今度こそ‥」

 遊撃のように周囲を旋回するガンマ班、ミア・エルミナール(ga0741)の阿修羅と、シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)のアンジェリカ。

 この3班は同時に、遠距離からブーストで砂を巻き上げながら接近する機影を捉えた。


●突撃

 突っ込んでくるゴーレムに対し、中距離から覚羅、王零、一葉の3名がそれぞれ射撃兵装を構え、攻撃する。
 その交差射撃を慣性制御による急激な横への機動で回避するゴーレムであったが、一葉と覚羅の連射兵器による弾幕に気を取られた隙に王零の放ったエニセイが付近に着弾、破片によって装甲が削られる。

「ふむ‥‥適当な砲撃に当たってくれるとは見掛倒しか‥‥つまらん」

 挑発する王零に向け、機体を旋回させ加速するゴーレム。が、その足は突き刺さる一本の尻尾により、止められる事となる。

「鎖で裁かれる? ならこっちは裁きの雷で対抗してやる!」

 電流を流し込み一時的にゴーレムの足を止めるミアの阿修羅。この機に、シンが胴体狙いで正面から斧を横に薙ぐ!

「‥‥あんまり調子に乗るんじゃねぇぞ!」

 拳で斧を受け止め、爆発で衝撃を相殺させる。そのまま仰け反ったシンのアンジェリカに向け、腰横のチェーン2本を発射するが、ガトリング砲で逆に迎撃、相殺される。直後、銃声と共に、ゴーレムの頭部センサーの横を弾丸が掠めた。

「久しぶりだな。雷火龍、貴様のおかげでロサンゼルスではステアーのパーツは奪えないわ、工場全壊で報酬が減ったとか散々だったが、そっちは仲間の仇打ちか。結構なことだな」
「へ‥へへっ、あの時のビーストマンか。貴様と会えるとは幸運だ」

 しゃべりながらも、僅かにゴーレムの足元の辺りから音が響く。
 その直後、安則機の地殻変化計測器には、地底から何かが一直線にこちらに向かってくると言う事実が表示された。

「ちぃっ!」

 ストライクシールドを構え、防御する。
 直後、安則機目の前の地中から2発の魚雷が文字通り『飛び出し』、シールド表面に直撃する。

「ぐっ‥貴様も武人の端くれならば仇打ちにいそしむのも間違いではない!」

 シールドを隔てたとはいえ、そのダメージは決して軽くは無い。
 が、その攻撃の隙をついて、シンのアンジェリカがブースト空戦スタビライザーを発動。崩された筈のバランスを立て直し、レーザーアイで頭部を狙う!

「ぐぁ‥」

 辛うじて頭部の全壊を免れたものの、ゴーレムの頭部約3分の1と‥肩部装甲を破壊される結果となった。

(「だんだんと動きが鈍くなっている‥‥何かトラブルが起きているな」)
「今だ!組み替えて畳み掛けるぞ!」

 やや動きが鈍いゴーレムを見た王零が号令を下す。
 それに伴い、傭兵たちは3班に分かれた状態から、2班へと組み替える。武器も、より攻撃的な物を構えて。

 ミアの足元狙いのヘビーガトリングをジャンプする事により回避し、一葉機のブリューナクの狙撃を空中で慣性制御により紙一重で回避した雷火龍は、その機動に体が耐えられなかったのか‥コックピット内で吐血する。

「ちっ‥‥あいつ等がいねぇからって、甘く見てたようだ。‥速攻で行かせて貰う」
(「こっちも、時間がねぇしな」)

 自らの方に一直線に向かってくる覚羅、シンの姿を見ながら、雷火龍は前回の火炎放射機の位置に装備されている兵装を起動させる。
 機体の全身から、ノズルが現れる。直後、戦場全域は、激しい風と、砂塵に包み込まれた。


●砂嵐だ!
「‥‥これはまずいですね」

 コックピット内でシンが一人、呟く。
 この砂塵により視界がほぼ完全に遮られ、またレーダーも探知可能距離が著しく減少している為、2班居た傭兵たちは、ほぼ完全に分断された形となった。また、その2班の内でも、接近、中距離戦を挑む為前進していた者は後衛から分断された。
 シン、一葉の2機が孤立、ミア機と覚羅機が纏まり、王零機は緑川機をガードするためその場に踏みとどまった。
 通信も完全に遮断された訳ではないものの、ノイズ交じりの物となっていた。
 傭兵たちの中でも、砂塵を警戒しブリューナクの射程ぎりぎりから射撃していたため砂塵の影響が軽めの場所に移動できた一葉は、冷静に考える。

(「分断された状況は危険ですね‥‥先ずは合流しないと」)
「緑川さん、地殻変化計測器で皆さんの位置を推測してください」

 砂嵐の中でも、地面の振動によって位置を判別する地殻変化計測器ならば、その影響を受けない。
 だが、問題は、『誰がどの振動に該当するか』確認できないという事と、位置の精度が低い、と言う事、振動で測定するが故に『動かなければ測定できない』と言う事である。

「全員、周囲を警戒し‥移動しないでくれ。一人ずつ移動することで、先ずは皆の位置を把握する」

 そうしてモニターを覗き込み、

「よし、シン。前進してみてくれ」
「分かりました」

 シン機が前進し始める。同時に、モニター上で光点が『2つ同時に』動く。

「なっ!?」

 片方の光点はあらぬ方向に向かっており、もう片方は安則機に向かってきているのだ。

「シン、止まれ!」

 その一言と共にあらぬ方向へ向かっていた光点は消失し、振り向いた安則機は、目の前に迫る巨大な鎖を見たのだった。


●強攻〜砂に潜む刃〜

 奇襲により、盾をかざす間も無くチェーンに巻きつかれる安則機。剣を抜こうにも、雷電の両腕は既に体に縛られている状態である。

「この‥離せ!」

 ガトリング砲で応戦するが、砂塵のせいか微かに装甲に当たる音がするだけで、チェーンは緩まる気配はない。
 次の瞬間、チェーンが大爆発を起こし、直後、爆風で晴れたエリアから‥ゴーレムの蹴りが放たれ、『ガコン』と言う音と共に杭が雷電に打ち込まれる。

「フルアロイの旦那の無念、食らいやがれ‥!」

 雷火龍の台詞と共に、杭が爆発を起こし、雷電を破壊した。

「緑川!」

 爆発で砂塵が晴れた一瞬を突き、スラスターライフルで弾幕を散布しながらジャイレイトフィアーを持って突っ込む王零機。
 ゴーレムはその弾幕で装甲を削られながらも、慣性制御装置でジャンプし、突き出されたジャイレイトフィアーにチェーンを巻きつけ動きが止まった一瞬を突き、王零機の横を『すれ違いざまに』通り再度砂塵に紛れ込んだ。

「緑川がやられた。ヤツはこの砂塵に紛れ込んで奇襲してくるからな。気をつけろ」

 瞬時に傭兵たちは全員周囲を警戒しながら移動し始める。というのも、地殻変化計測器の信号を受け取れる安則機を失った今では止まっている意味は無く、移動しなければ格好の的となる可能性もある。
 これにより、偶然にも一葉機とシン機は合流に成功した。

 そんな中、ミアの阿修羅のセンサーが、前を歩く覚羅の右側から出現する影を捉える。

「危ない!」

 それに覚羅が反応、機体を横に向ける事で双機刀「臥竜鳳雛」でぎりぎり爆裂パイルバンカーを受け止める。

「君の動きは見せてもらったからね‥蹴りでの奇襲、その動きは想定内だよ‥」

 そして直後、超限界稼働を起動し、光刃「凰」、剣翼装甲「黒翼」を同時に展開して切りかかる。
 奇襲とも言えるこの一撃にゴーレムはダメージを受けながら後退しようとするが‥後方からクラッシャーホーンで突っ込んだミアの阿修羅がそれを阻む。更に射撃を行おうとする覚羅だったが――

「嘗めんじゃ、‥‥ねぇぞ!」

 機体周囲のノズルが一斉に覚羅とミアにそれぞれ向く。砂嵐を起こすほどの強烈な『風圧』に直撃されたミア機と覚羅機は、バランスを崩し後ろに吹き飛ばされる。
 この一瞬の隙に、雷火龍は体勢を立て直し、両足で二機にそれぞれ蹴りを入れ、再度砂嵐に紛れ込んだ。幸いにも砂嵐の中に逃げ込むのが主目的だった為、爆裂パイルバンカーの刺さりが浅く、ミア機、覚羅機共に致命的なダメージは受けていない。

 一方、雷火龍が送風ノズルを攻撃に転用した為に僅かに晴れた砂嵐の中から、王零の位置を確認した一葉とシン。合流すべく、そちらに向かうが‥次の瞬間、シンの頭上からゴーレムが落下してくる!

「今のうちに下がってください、少しなら耐えられる筈‥‥っ!」

 ゴーレムに体当たりし、シンを救った一葉。そのディスタンに向かいゴーレムは連続で殴りつけるが、大して効いた様子は無い。
 回避から体勢を立て直したシンは、再度レーザーアイの照準をゴーレムにつけ始めている!

「こう見えても意外と装甲あるんですよ」
「‥へっ、俺がただ殴ってるだけだとでも思ったか?」
「‥‥!?」

 シャー、と言う音と共に、チェーンがディスタンに巻きつく。次の瞬間、チェーンの爆発と共に、ディスタンの装甲の一点に、連続で爆発が起き始める!

「8連発、貼り付けて置いた。バイバイ、だぜ」

 そういうと共に、ひときわ大きな爆発が起こる。シンがメガレーザーアイで射撃するが、爆発により更に巻き起こった砂塵に遮られ、雷火龍のゴーレムには当たらなかった。


●苦渋の決断

 戦況は、決して良くない方向に向かっていた。
 機体が破壊された安則と一葉は砂嵐の為行方不明であり、覚羅機は超限界稼働の状態下で攻撃を2発受けた為生命力が20%を切っており、ミアの状況もそれより良くはない。
 シン、王零はまだ継戦可能な状態だったが―――

「一度、撤退しましょう」

 シンが提案を出す。この状態で次に攻撃を受ければ破壊されるだろうミア、覚羅は撤退せざるを得ず、残りの二機だけでこの悪状況の中ゴーレムとやりあうのは致命的に不利なのだ。
 苦渋の決断に、傭兵たちは‥それぞれ先ほど砂塵が晴れた瞬間に見えた、砂塵の中心に一番遠い方向に向かって走り出した。

「おおっと、今逃がすわけには行かないな」

 王零機にゴーレムが襲い掛かる。
 サイドに急ブーストして、ぎりぎりでそれをかわす。そのままジャイレイトフィアーで襲い来るチェーンを切り払い、スラスターライフルを撃ち込む。長時間の戦闘に、パイロットの反応神経が鈍った雷火龍のゴーレムはそれを回避できず、片腕を犠牲にしそれを防ぐ。
 直後に襲来した蹴りを王零機はハイ・ディフェンダーを抜き放って防ぎ、ジャイレイトフィアーを突き出す。回転する刃がゴーレムの腹部横装甲を削るが、それをやり過ごしたゴーレムは、損傷した片腕の代わりににチェーンを王零の闇天雷の腕に絡みつき、固定した!

「しまっ‥!?」
「もらった!!」

 拳の連打と共に、次々と爆弾が貼り付けられていく。
 そして離れたゴーレムが、最後の爆裂パイルバンカーの蹴りを放つと共に‥‥貼り付けられた全ての爆弾(最初に王零機とすれ違った時の物を含む)が爆発し、闇天雷はその場に崩れ落ちた。

「ちっ‥逃げられたか」

 重力波レーダーで残りの傭兵たちが既に表示圏から離脱したのを確認した雷火龍。シンのレーザーアイで頭部のセンサーを一部破壊され、表示範囲が低下したのが一因である。
 足を振り上げ、パイルバンカーで王零機にトドメを刺そうとするが―――

「そこまでです。急いで帰還しなさい、雷の」

 急に、回線に連絡が入る。

「何だ、フェルナンデス。こいつを完全に破壊したら直ぐに行く」
「今直ぐ、です。これ以上もたつけば貴方は帰途の途中で野たれ死ぬでしょう」
「それでもいい!こいつを―――」

 同時に、ゴーレムが勝手に動き、戦場から離れていく。

「何をした!? フェルナンデス!」
「貴方の機体のコントロールを私の権限で乗っ取りました。忘れたのですか?その機体を改装したのが誰なのかを」
「くっ‥‥」
「今、貴方を失うわけにはいきませんからね‥‥」


●砂龍の爪跡

 その後、シンが出した救援信号により、ULTから救援、回収部隊が派遣され、撃破された王零、一葉、安則の三人は機体共々無事に回収された。三人重傷とは言え、死者が出なかったのは非常に幸いな事である。だが、決して完全とは言えぬ勝利に、傭兵たちの表情は暗かった。


 一方、バクア側のとある実験室―――

「ふむ。これでは、もはや乗れて一回、と言うことでしょうか」
「次で決めろって事か。‥上等だ。例え、この体が火龍派の始祖と同じように灰になろうが、旦那の敵が討てれば、俺に悔いはねぇからな‥!!」