タイトル:【雷】災い呼びし龍マスター:剣崎 宗二

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/10/14 12:42

●オープニング本文


「今だ! 雷の小僧!!」

 強化人間・雷火龍の脳裏に、仲間であったバクア・フルアロイの最後の言葉が蘇る。
 ロサンゼルスでステアーのパーツを巡る一戦の中で、フルアロイはパーツが奪取されるのを防ぐため自らの体に爆弾を仕掛け、命と引き換えにパーツを破壊したのである。

「旦那‥待ってろよ、絶対に、唯では‥済ませない」

 あれ以来、雷火龍の人を小馬鹿にしたような口調は消え、その目には常に怒りの炎が点っている。
 そして、資料を探り、地形を調査し‥綿密な作戦計画を練る。

 そんなとある日、全ての条件は揃った―――

「おい、俺のゴーレムの準備はできたか?」
「はい、科学チームにも協力を要請し、必要な装備はできましたが‥」
「ならいい。行って来るぞ」

――――――――――――――――――

 中国、江蘇省。ここは平原が主な地形となっている場所であり、大きな起伏は少ない。
 だが、同時にUPC軍とバクア軍が攻防を繰り返している激戦区でもある。

 そんな中、岩龍、イビルアイズなどを中心にしたUPCのパトロールKV部隊が付近の哨戒のため、草原を通過する。

「いつ見てもここの草は濃いなおい」
「ま、KVの進行には問題はないのが幸いですけどね」
「そりゃそうだ」

 ガハハ、と笑いあう哨戒部隊の面々。
 ―――しかしそのひと時は、前進していた先頭の機体が突如として爆発した事により中断される事となる。

「なっ‥敵はどこだ!?」

 急いで索敵を開始する隊長機。そのレーダーには、哨戒部隊の後方遠方から、急速に接近してくる機体が捉えられていた。

「くっ、迎げ―――!?」

 隊長機が迎撃命令を下す前に、細身の人型の機体は接近して回し蹴りを放った。ガコン、と何かが打ち込まれる音と共に、隊長機が爆発する。
 そのまま拳を横にいた別の機体に振り下ろす。装甲と装甲が接触した瞬間爆発が起こり、もう一体機体が地に伏せた。

「くそぉぉぉ!!」

 と、武器を構える機体もいる。だが、その機体に、敵機の腰部から発射された巨大なチェーンが巻きつき動きを封じる。

「‥終わりだぜ」

 一言と共にチェーンが爆発し、巻きつかれた機体を大破させる。

「こいつを使う必要もなかったか」

 自機の両肩についていた折りたたみ式の長い砲を真っ直ぐに伸ばす。遠方に照準をつけ、発射する。
 着弾と共に、一帯が火の海となる。

「さぁ、来いよ‥」

 その口元に、微笑が浮かんだ。

●参加者一覧

ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
ヴァイオン(ga4174
13歳・♂・PN
月神陽子(ga5549
18歳・♀・GD
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
鳳覚羅(gb3095
20歳・♂・AA

●リプレイ本文

●燃え盛る大地
「やっと来たか」

 自らのカスタムゴーレムに乗る雷火龍は、長距離レーダーに映った影を見て、にやりと笑う。
 偵察部隊の全滅の知らせと、その最後に送られてきた情報を見た傭兵達がやってきたのだ。背中の長距離砲を展開して笑う。

「精々、足掻いておけよ」

 そう呟き、傭兵達のど真ん中に照準を付け、砲撃した。

「っ! 皆、散って!」

 砲撃を最初に探知した鳳覚羅(gb3095)が叫ぶと共に、傭兵達は一斉に散開する。放物線を描いて飛んできた砲弾は先ほどまで居た場所を直撃し、大きな爆発を起こす。

「大型の‥‥グレネードランチャーの類ですか」

 シン・ブラウ・シュッツ(gb2155)が冷静に分析する。先ほどまで立っていた場所には、大穴が開いていた。覚羅の早期の発見によって誰一人として直撃は受けなかった物の、グレネード‥‥つまり範囲攻撃である事を予測する事は出来ていなかったため、全機多少なりともダメージを受けていた。

「罠があるかも知れないからねー! そ〜れ消毒だー!‥‥なんつって」

 伏せたまま弾丸の放物線の下を潜ったミア・エルミナール(ga0741)の阿修羅が、口から炎を吐き出す。
 ‥決して、本物のドラゴンになった訳ではない。装備した火炎放射器『零九式口部小型火炎放射装置』の効果である。たちまち炎は燃え広がり、草を燃やし尽くす。だがそれは‥同時に豪炎と共に、濃煙が立ち昇ることをも意味していた。
 濃煙に紛れ、ゴーレムの姿が視界から消失する。そして、また砲弾が飛来する。今度の狙いは覚羅のディアブロ。先ほど攻撃を探知されたため、電子戦機だと思われたのだろうか。

「ッ‥!」

 大きくブーストを後ろに吹かし、間一髪で今度も砲撃を回避する。その間に―――

「場所柄、あまり時間はかけられません。多少の損害と引き換えにしてでも、即時殲滅を目標とします」

 月神陽子(ga5549)、ヴァイオン(ga4174)、如月・由梨(ga1805)、シンがそれぞれの機体を駆り砲撃の飛んできたと思われる方向へ猛進する。

「‥‥‥避けられない罠なのならば、避ける必要などありません。あえて踏み込んだ上で、打ち砕くまでです!!」

 先頭を切るのは陽子のバイパー。機盾「レグルス」を上段に構え、飛んでくるグレネードを防御する構えを取りながら前進する。その機体の硬さは並ではなく、グレネード弾が2発ほど直撃した物の、僅かにその機体を揺らしただけで大きなダメージには至っていない。
 その横から回り込むように前進したヴァイオンのアヌビスのカメラは然し、煙幕の中で僅かに光を反射した物体を発見した。

「地雷かっ!?」

 バルカンで一帯を掃射する。金属のぶつかる様なカキンカキンと言う音が暫く響いた後、爆発音がする。
 連絡を受けた由梨も、グレネードランチャーを陽子の前方に撃ち、爆発で一帯の地雷をクリアする。レーダーの情報を頼りに、傭兵達は確実に雷火龍のゴーレムに近づいていた。
 その中、陽子のやや後方で状況を観察していたシンは、ある奇妙な事に気づいた。

(「この地雷、先端が尖って‥‥ドリルのようになっていますね。踏みつけたら装甲を貫通する‥んでしょうか?」)


●トリック・オア・フレイム

 火炎放射を停止したミアと、回避のための後退を中止し前進に切り替えた覚羅も後方から雷火龍に向かう。それを狙い撃とうと砲を再度展開したゴーレムを―――

「撃たせる訳には行きません」

 射程内まで接近したシンのアンジェリカの高分子レーザー砲が、ゴーレムの砲身を狙って放たれる。砲を収納しこれを回避したゴーレムだったが、その隙に陽子、ヴァイオン、由梨の三機に取り囲まれてしまう事になる。

「この場で粉砕させてもらいます‥!」

 機槍「ロンゴミニアト」を車輪のように回し、そこから突きを繰り出す陽子のバイパー。その勢いは、雷火龍に脅威と認識させるのには十分であった。

「それを食らうわけにはいかんな」

 槍が自らの機体に突き刺さる直前、両拳を槍の両サイドに斜めにぶつけ、爆発を引き起こす。同時に足を地より離して、爆発の反動力を利用して後方に回り込んだ由梨の振りかざした機刀「獅子王」の柄の部分に体当たりし、由梨のディアブロごと突き飛ばす。
だが、それは同時に大きく体勢を崩す事をも意味しており―――

「逃がさない‥‥!」

 チャンスと見たヴァイオンが、アヌビスを駆りフレキシブル・モーションを始動。チェーンソーを使い雷火龍の背後の長距離砲の砲身目掛け切りつける!
 金属の擦れあう音が響き渡り、2本あった砲身の片方が切断される。そして、バックステップを取りラージフレアを展開し、再度斬りかかる!

「嘗めんなよ野郎が‥‥!! 俺の流派が‥『火龍』と呼ばれる所以、見せてやる!」

 雷火龍の罵声と共に、ゴーレムの両脇下からノズルの様な物が伸びる。
 そして、そのノズルから‥高温の火炎が吐き出された。

「くっ‥!!」

 視界を遮られ、一瞬怯んだヴァイオンのアヌビスのチェーンソーを持った腕が、ゴーレムの両腕にガッチリとホールドされる。そしてゴーレムの腰部分からチェーンが伸び、アヌビスに巻きついた。

「しまっ――!」

 視界が阻まれてしまったが為に予定通りルプスでの受けが行えなかったヴァイオンのアヌビスは、急いでそのルプスでチェーンを引きちぎろうとする。だが、それが成される前にチェーンが爆発し‥そしてゴーレムの全身から次々と伸びる火炎放射器によって放たれた轟炎に飲み込まれ、アヌビスはその場に崩れ落ちた。後方より接近していた覚羅は急いで脱出したヴァイオンを回収するが、それでも脱出時に火に炙られていたようで、かなりの火傷を負っていた。
 その炎に紛れ、連続で風切り音がし‥ゴーレムの肩装甲が削り取られる。陽子の放ったスラスターライフルだ。

「復讐を否定するつもりなどありません‥‥。ですが、貴方は何に対して復讐をするつもりなのですか?」
「へっ、全ての能力者‥全ての人間に決まってるだろう? 例え俺が今、アイツをパイロット毎粉砕できてたとしたら‥貴様らも、俺を探して復讐しに来るだろう?」

 まるで、嘲笑うかのように、雷火龍は陽子の問いに答える。

「それでも‥ただ自暴自棄になって戦うだけの者に、わたくしは負けるつもりなどありません」
「勝てば官軍、ってもんだ。その台詞は、俺を殺してから俺の墓に向かってでも言うんだな!」

 残った一門の砲で陽子に向かい射撃しようとするゴーレム。だが発射直前に、シンの高分子レーザー砲がその砲身を破壊した。

「撃たせる訳には‥行きません!」
「シンさん、ありがとうございます」

 そして背後に回りこんだ由梨とミアに僅かに雷火龍が気を取られた隙に、陽子のバイパーはロンゴミニアトを構え猛然と突進する。
 それに対しチェーンを射出して巻きつかせたゴーレムだが、陽子はブースト空戦スタビライザーを発動させ、急激にブースト方向を反転させ、ゴーレムの体勢を崩そうとする!
 ―――が、ここで誤算が一つあった。バクア機に搭載されている『慣性制御システム』である。
 雷火龍のゴーレムはそのままの体勢で地面から足を離し、引っ張られるがままに―――そして背後から火炎を噴出した、反作用力をも乗せて、急速でミアと由梨のリーチを離脱し陽子のヴァイパーに肉薄する!
 シンがガトリングで迎撃を試みるが、ゴーレムは両腕で上半身を庇うだけで‥弾丸を物ともせずに突進していく!

「確かに貴様は強い。だけど、その強さを‥過信しすぎなんだよ!」

 叫びと共に、ゴーレムは両足でバイパーの両肩をドロップキックのような体勢で蹴り付ける。そして猛然と背後から炎を噴出しながら、脚部の兵装――爆薬付きパイルバンカーを、連続で打ち込んだ。
 ドンドンドンと、次々と響く轟音と爆発音。だが、凡そ100mほど滑った所だろうか。2機の移動は突如停止した。

「それでもわたくしは‥負けません。負けられないんです、あなたの様な人には・・!!」
「何だと!? あれでも機能停止させられなかったのか‥っ!?」

 ブーストを全開にしこれ以上押されることを押し留め、一喝し、至近距離からスラスターライフルを掃射した陽子機。その弾丸はゴーレムの脚部装甲を抉り、機体を吹き飛ばす。

(「くっ‥これではロンゴミニアトと盾は使えませんね」)

 ゴーレムの両肩への連撃により、致命打こそ受けなかったものの‥陽子のヴァイパーの両腕は動かせない状態にあった。
 吹き飛ばされた雷火龍のゴーレムの横から、猛然と獲物を狙う狼のごとく走る影が一つ。――ミアの阿修羅であった。

「装甲も削られてるしね‥その腕貰ったー!」

 クラッシャー・ファングでゴーレムの‥最初に陽子に装甲を削り取られた肩へ猛然と噛み付く。そしてそのまま、口部から猛烈な火炎を噴き出す!
 まるで溶接にかけられた鉄のように、ゴーレムの肩関節は溶解し、分解する。

「ちぃっ!! 来いよ、お前ら!」

 雷火龍が意味不明の命令を下す。煙の晴れたこの状況。周囲をチェックしていた覚羅は、突如ドリル地雷の先が一斉に傾いた事に気づく。
 ―――そう。ミアの阿修羅に向かって。

「やはり、罠か‥? ミアさん、避けて!」
「え!?」

 一瞬遅れて、周囲の地雷が一斉に後方から気流を噴射し、ミアに向かって飛来する。
 ――噛み付いた阿修羅が後退した、その更に後ろから。
 何とかドリルミサイルを回避した阿修羅だったが、その頭上からは体勢を立てなおしたゴーレムが落下してきていた。

「やってくれた、お返しはしなきゃな‥!」

 ストレートに落下したゴーレムは拳から阿修羅の背中の部分に衝突。そして、その拳が爆砕すると共に‥阿修羅はその場に崩れ落ちた。
 その機に乗じ、ゴーレムの後ろから接近する由梨のディアブロに向かい、ゴーレムの腰から再度チェーンが射出される。それを由梨はワザとディフェンダーで受け―――

「その剣は差し上げます。お代はいただきますが!」

 ディフェンダーを手放して投げつけ、更に突進する。予想に反して爆発は起きなかった物の、それを深くは考えず‥由梨は機体を突進させ、機刀「獅子王」を構え、袈裟切りに一閃!
 ゴーレムの頭部の半分と片腕を切断し、背後へ抜ける。

「ちぃ‥センサーも半分やられたか‥こいつの改良点も見つかったし、そろそろ引き時かな」

 大きく機体を回転させ‥先ほどチェーンに絡んだディフェンダーをまるでハンマー投げのように回し、背後から由梨のディアブロにぶつける!
 ‥そしてそのまま、チェーンを爆破する。

「きゃぁ!?」

 ディアブロがよろめいた隙を突き、全身に残った火炎放射機から炎を噴出する。自らの機体を炎に包んだ後、火炎放射のノズルを後ろに向け‥猛烈な噴射で止めようとした覚羅のディアブロを押しのけ、戦線を離脱した。

「こちらも急いで撤退しましょう。バクアの増援が来る前に」
「ええ、装甲関連は兎も角、攻撃方法に関連するデータは収集できたようですしね。」

 シンが、データ収集に回っていた覚羅の方を見る。
 これで、次に相対する時は少しは有利になるだろう。そう考えて、傭兵達はとりあえずは、帰途についた‥‥