●オープニング本文
前回のリプレイを見る●素人は悩む
「こういう例えは、好きではないが。もしこれを一つの『ゲーム』に見立てるのであれば、向こうが手を引くに到る条件というのは何であろうか」
コーヒーカップを手に机へ腰を降ろしたティラン・フリーデンは、コルシカの地図と睨めっこしながら足をぷらぷらと振っていた。
「占拠しているメリットは、ヨーロッパへの牽制。あとは‥‥前哨基地、にしては基地らしい施設が見当たらぬようなのだよ」
「前哨基地なら、サルディニアの方が可能性は高いかなぁ。スペインに展開していたバグアの勢力は、もうそれなりに衰えてるんだろ?」
確認するようにドナートが顔を上げれば、書類の束を揃えながらチェザーレは首を縦に振った。
「ああ。UPCの発表では、主に海岸沿いが競合地域に指定されているそうだ。ただし、あくまでも目安としての発表だが」
「サルディニアとコルシカは距離が近いですから、落とされたくないってのはあるかもしれませんね‥‥もしサルディニアがキングなら、さしずめルークといったところでしょうか」
ティーカップをソーサーに置いたアイネイアスが、ティランの『ゲーム』に倣ってか、チェスの駒に例えてみる。
「ルーク、ねぇ‥‥ホントに砦でもあって、ソレを壊して終わるんなら、話は早いんだろうけどさ」
溜め息混じりで、ドナートはぽしぽしと頭を掻いた。
実際の戦況は、ボードゲームのように簡単にはいかない。
何より『Bet』されているのは、本物の人の命だ。
「とりあえず、『自分が敵だったとして、撤退するならその条件は何か』って事だよね」
「そうだな。そっちの専門家じゃないから何ともいえないが、戦略的な意味を失うか、重要な施設を破壊されるか、指揮する拠点がダメになるか‥‥そんなところか?」
おもむろにチェザーレが指折り数えると、ドナートはティランが眺める地図へ目をやる。
「北部の主要都市なら、カルヴィが最有力だよね。南の方はヘルメットワームの数からいっても、やっぱりアジャクシオかな」
「いずれにしても、人的被害を少なくしたいものであるがな‥‥」
貧乏ゆすりをするように、地図を前にしたティランの頭は、左へ右へゆらゆら揺れていた。
「被害が少ない方法なら‥‥能力者の方に潜入してもらって、情報を集める事になるんでしょうか。それとも思い切って大きな船で乗り付けて、少しでも島民の人達に避難してもらいます?」
指を口元に当てて思案するアイネイアスへ、男三人が一斉にぱちぱちと目を瞬かせた。
「クルーズ客船で、定員がだいたい2000人前後‥‥でしたっけ? ちょっと難しそうですか」
「大型船は、いい標的だと思うけどね。もっと小さいフェリーを数隻使って、被害を分散する事も出来そうだけど‥‥住民側でパニックが起きる可能性もあるのがなぁ」
「いずれにしても、能力者諸氏の力を借りねばならぬ事に変わりはない。彼らにも得手不得手があろうから、如何なる手段で、何を行うかも問題ではあるがな」
ドナートの指摘に、カップを置いたティランも腕を組んで考え込む。
悩んでも、答えは出ない。
軍人ならば、多少の『容赦のない手段』は辞さないだろうが、彼らはあくまでも研究者で、戦略家でもなければ戦術家でもない『戦争の素人』だった。
かといって関わってしまった以上、他人事のように手を引く事は選択肢に入らず。
「次の『手』が最善となるのか、悪手となるのか。事と次第によっては、我々もハラをくくらねばならんのだろうなぁ‥‥」
肩を落とし、ぼそりとティランが呟いた。
●選択肢
――バグア支配下にあるコルシカの現状を打開する為、三度傭兵達を募る。
今回、提案されるプランは二つ。
第一案は、重要な拠点と思われる北部のカルヴィ、あるいは南部のアジャクシオへ潜入し、バグア側の主要施設を把握する事。
第二案は、カップ・コルスおよびパスティア、コルシカ東岸へ複数の船舶を派遣し、島民を出来る限り避難させる事。この場合、船はUPCや民間船舶会社により手配される。
なお、過去にコルシカの状況を見た者によっては、第三案を提示する可能性を有している者もあろう。当方としてはこの可能性について、否定しないものとする――。
ティラン・フリーデンの名義で提出されたUPCへの協力要請は、速やかに受理された。
地中海に浮かぶ島は、初夏を迎え。
雪に覆われていた山岳地帯も緑に包まれて、静かに佇んでいた。
●リプレイ本文
●死んだ水底
キャノピー越しに見える光景は、静かだった。
顔を上げれば、ずっと高い場所で淡く青い光が揺らめくのが見える。
非常時に不謹慎かもしれないが、ある種の感慨すら抱く幻想的な光景が広がっていた。
一瞬、友人にも見せたいという思いが頭の隅を掠める。
たが目の前の光景には、不気味な違和感があった。
彼女と遠い光の間を横切るものが、何一つない。
『魚とか、全然いないね。逃げちゃったのかな』
同じ事に気付いたのか、通信機越しで潮彩 ろまん(
ga3425)が呟いた。
『そう、ですね』
仕草は見えないだろうがアグレアーブル(
ga0095)は彼女へ頷き返し、レーダーを確認する。
今のところ、水中型ワームもゴーレムも影は見えなかった。
『それにしても‥‥よく、一緒になりますね』
『うん、そうだね。でもやっぱり、水中ならテンちゃんの出番だしっ』
いつも明るいろまんだが、愛機の話となればその声は更に弾む。
ろまん機テンタクルスと、アグレアーブル機KF−14改。
二機の水中用KVは、仲間から離れてリグリア海――コルシカ北西岸の沖に身を潜めていた。
目的は、海中における敵の戦力調査。
これまで海中の戦力は未調査だったが、過去の作戦でバグアは対空からのアプローチに警戒を強めている。その為に海より北部を攻略する可能性を探り、船で島民の避難を行う事も想定しての偵察を行う事となった。
もっとも、偵察の段階で発見され、警戒されては元も子もない。
隠密性を重視し、二機のKVは用心深く海中を進んでいた。
進路はまずカルヴィを目指し、そこから東進してカップコルスを回り、バスティアへ到る。カルヴィとバスティア、そして途中のリール=ルッスの港に展開する戦力の調査と、住民を避難させる場合に備えて、港以外で接岸できるポイントを探る予定だ。
『あの先生の事、心配だけど‥‥絶対助ける為にも、無茶は出来ないもん‥‥今は我慢だもん』
呟いて、ろまんはぎゅっと口唇を噛んだ。
前回島を去る直前に見た、連行されるコルテの大学講師の姿が脳裏をよぎる。責任を感じながらも、彼女は助けに行きたい気持ちを抑えていた。
『皆が空で注意を引いている間に、ボクらも出来るだけの事はしなきゃ‥‥あの先生や島の人達の為にも、テンちゃん、ボクに力を貸して』
その言葉に、アグレアーブルは少しだけ目を伏せた。
これは戦争だ。講師の安否は気になるが、多少の犠牲は仕方がない。
無責任だと自分でも思うが、今はそう割り切るしかない。
自分へ託された願い――あの命懸けの手紙に、応える為に。
『あれ、何だろ?』
不意に何かに気づいたろまんの声が、思考の海に沈むアグレアーブルを引き戻した。
『どうかしました?』
『うん。あそこに、白い何かが見えるんだけど』
テンタクルスが機首を向けた先、魚もいない海底の一箇所に、細長く白い金属製の物体が無造作に積み上がっている。海に沈んでそれなりに時間が経ったらしい物体はどれも半壊した状態で、見える限り『原型』を留めているものはない。
座標を確認して地図と照らし合わせれば、カルヴィの西にある岬に近い海底だと判った。
‥‥そこまでは、判るのだが。
『壊れたから、捨てられた物なのかな? 捨てられてから、壊れたのかな?』
『判りません‥‥』
ろまんが首を傾げて尋ねるが、当然アグレアーブルも理由を知る筈もなく。
『だよね』
う〜んと唸るろまんだが、レーダーの接近警報で我に返る。
『何か来た? 見つかる前に、逃げた方がいいよね』
『はい。一時的に離脱します』
ある程度の深度を保ちながら、戦闘を回避する為にも二機のKVは沖へと進路を取った。
『現在までに確認できたのは、定期的な哨戒と機雷による港の封鎖‥‥ですか』
敵との接触をやり過ごし、用心深くカルヴィ近海の調査を重ねた結果をアグレアーブルがまとめる。
『北側のお船ばかり沈めたのは、こっちの守りに自信なかったからなのかな? 南だと、サルディニア島もあるし』
『かもしれません』
考え込む様子のろまんに、まだレーダーを見つめたままアグレアーブルも同意した。
『思ったより水中に展開する部隊が少ないですし、こちらへ回す戦力を抑えたかったのかもしれません』
『悪い宇宙人も、戦力不足とか?』
『あるいは‥‥もっと重要な拠点が別にあるか、ですね』
考えるが判らず、長く悩んでいる時間もない。
『アグさん、がんばろっ。ボク絶対、悪い宇宙人を追っ払う糸口、見つけるもん!』
『‥‥はい』
カルヴィ近海から離れたテンタクルスとKF−14改は、東へ向けて進路を取った。
●抑圧された町の外殻
数機のKVが上空を通過したカルヴィでは、数本のサーチライトの光が夜明け前の暗い空へ伸びていた。
「随分と、空気が物々しいですね」
双眼鏡で町の様子を窺うソード(
ga6675)に、ちらりとUNKNOWN(
ga4276)が懐中時計を確認する。
時刻は、既に午前4時を回っていた。
夜明け前、陽動班と共にソードはカルヴィ上空へ侵入し、僚機による煙幕の援護を受けてシュテルンをカルヴィの南東にある山林へ垂直降下させた。
陽動班はそのまま南へ向けて飛び、残ったソードは周囲の緑に紛れ込ませる為のネットカバーで機体をカモフラージュ。その後、同乗したUNKNOWNと共にカルヴィへ向かったのだ。
KVを隠した位置からはそれなりに距離があり、移動に幾らかの時間を費やしたにもかかわらず、人影のない町の空気はピリピリとした緊張感が漂っている。
「鉄道が動く気配は、ないか。幹線道路に車両や人の行き来もないという事は、住民の避難は行われなかったようだね。ついでに港は船影なし、だ」
同じ様に小型双眼鏡でUNKNOWNも町の動きを観察し、更に手がかりになりそうなものを探した。
カルヴィの重要な施設といえば、新市街地に建つ市庁舎と、海へ突き出した岬にそびえるシタデル(城砦)だろう。城壁に囲まれた旧市街にはUPC仏軍の施設があった筈だが、今も無事かは不明だ。
かつて沢山のプレジャーボートが停留したヨットハーバーに、船は一隻もなかった。シタデル近くには客船の発着場がある筈だが、彼らの位置からは見えない。
「ここから見る限り、新市街も旧市街もアジャクシオのような大規模な破壊はないようです」
首府の惨状を直接目にしたソードは、記憶にある被害の差を比較していた。
「バグアが制圧する際、南を抑えてから北上し、住民を投降させたんでしょうかね。それなら、北部の方に多く住民が残っているという話も頷けますが」
「先に港を潰して逃げ道を塞いだなら、可能性もあるか。とにかく、もう少し調べてみないと、だ」
「単独行動、くれぐれも注意して下さい」
やや心配そうな顔をするソードへ答えるように、いつものほぼ黒づくめな服装のUNKNOWNは黒い帽子を僅かに持ち上げる。
「行けそうなら、バスティア、コルテ、アジャクシオまで足を伸ばしてみよう」
「それ、足はどうするんです?」
「適当に考えるよ。なければ、歩くだけだね。では、そちらも気をつけて、だ」
問われた側は双眼鏡をコートの中へ収め、新市街へ足を向けた。
その黒い後姿に、見送る側は一抹の不安を覚える。
KVで潜入してから約12時間が、彼らに与えられた行動時間だ。
その間にUNKNOWNが単独で調査を行い、ソードはKVで待機となっていた。もちろん、途中で何らかのアクシデントが発生すれば、この12時間は切り上げられる。
‥‥30km以上離れても、アクシデントを伝える方法があるなら、だが。
「本当に、北東部や南部まで足を運ぶ気でしょうか」
残されたソードは、ぽつりと懸念を口にした。
先の住民との接触で、コルシカ鉄道の利用は限られていている事が判っている。中部では車は日常的に使用された形跡がなく、バスも走っておらず、敵地で車を盗むとなればリスクは大きい。
そんな状況の中、たった12時間で北東部や中部、南部と主要な町を回り、細かい調査するのは困難だ。
それを判っての事だとは思うが、単独での調査を任せた以上は仕方がない。
「もうすぐ、夜明けですか‥‥夜が明ける前に俺も戻らないと」
細い目を更に細めてソードは白む東の空を見やり、人目につかぬうちに来た道を引き返した。
●意思と力
「ジェノバを発った後、カルヴィの南、197号線あたりで潜入班が降下。その後、こちらはアジャクシオで陽動と前回投下したコンテナの確認を行い、東進してイタリアへ抜ける‥‥以上が、往路になります」
コルシカと周辺を拡大した地図を前に、飯島 修司(
ga7951)が今回の作戦ルートを示す。
「復路はイタリアからバスティア方面へ飛び、バスティアの手前で西進。カルヴィ付近で再降下し、潜入班を回収。ブースト全開で全機スペイン方面へ脱出。フライトプランは、これで問題ないですかな」
「ああ、いつもありがとう」
一つ頷いて霧島 亜夜(
ga3511)が礼を告げれば、すっかり『説明役』が板についた修司は腕組みをした。
「礼には及びませんよ。しかし、どうにも引っ掛かりますな‥‥」
「引っ掛かる、でありますか。自分はこう‥‥靴の上から、虫刺されを掻いてるような塩梅ですが。実に歯痒い」
苦い表情の稲葉 徹二(
ga0163)に、思案する修司は顎の髭に手をやる。
「前回コルテでのHWどもの対応も、ね。わざわざ南部方面から来ているにしては、消極的に過ぎるかと。それに、北部と南部での船舶に対する連中の処置の差‥‥北部の港湾あるいは沿岸部に何かがある、と考えるのは穿ち過ぎですかね?」
「う〜ん‥‥確かに、ガツンと決め手になる情報が欲しいよな。コルシカ解放の為の、明確な足がかりってのが」
ぽしぽしと髪を掻く亜夜に、考え込んでいたフォル=アヴィン(
ga6258)も重い口を開いた。
「流石に、潜入もそろそろ厳しくなってきていますしね。俺達の力でどこまでが出来るか、それを見極める必要があるかも知れません‥‥妥協、とは言いたくないですけど」
可能ならば、全島の解放を目指したい。
そう願っているのは自分だけではないと、仲間の様子にフォルは確信を持つ。
だが、問題は‥‥。
「後は、UPC軍を動かす事が出来れば良いのだけど。ティランさんには、無理なんでしょうかね‥‥?」
この場に来る事が出来ない『依頼者』を催促する必要がありそうだと、彼は腕組みして考え込んだ。
そうこうしている間にも、作戦の開始時間は迫ってくる。
そして、彼らは飛んだ――一年前に奪われた島を取り返す手掛かりを求めて。
○
再び目にした夜明け前のアジャクシオは、以前と変わりなく。
迎撃するHWもまた、同様に現れた。
地上の情報を収集する為に低空で飛ぶ亜夜機ウーフーを、フォル機雷電がカバーする。
その間、徹二機ナイチンゲールと修司機ディアブロが、HWの相手をしていた。
『一機は残してわざと撤退させて、敵の増援地点のアタリを付けるか?』
『もし相手が撤退する様なら、それもいいですがね』
提案する徹二に答えながら、修司はレーダーを何度も確認する。
『コンテナを投下したポイントは、この辺りでしたか』
雷電からの通信に、キャノピーから見える風景へ修司は視線を向けた。
『パラシュートは、さすがに残っていませんね』
『だが、コンテナらしきものは‥‥捉えられそうだ』
亜夜の言葉を聞いて、彼は僅かに肩の力を抜いて一つ息を吐く。
もっとも、そのまま放置されているかどうかを確かめるには、帰還してから画像の分析をしなければならないだろうが。
短い安堵の間にも、視界の隅で新たな爆発が起きた。
ワームのレーザーに落とされたAAMの煙を、KVの翼が裂いて飛ぶ。
『南から接近する増援を捉えた。相変わらず、手厚い歓迎をしてくれるよな』
『困りましたね。こちらは前回より、お相手するメンバーが少ないというのに』
言葉とは裏腹に、まったく困っていない口調でフォルが苦笑し。
直後、機体を不気味な振動が揺らし、コクピットにアラートが響いた。
『大丈夫か!?』
『はい。この程度でどうにかなる雷電では、ありませんから』
レーザーを被弾した雷電へ徹二が呼びかけ、落ち着いた声で答えながらフォルは損壊の程度をチェックする。
幸い、被害は軽度で飛行や戦闘に支障はない。
だが雷電と言えど、無限に攻撃を耐えられる訳ではなく。
しかもフォルはそれが最善と判断すれば、あえて回避行動を取らずにいた。
『無理はするなよ。ここで落ちちゃ、元も子もねーぜ』
自機を守るように飛ぶ仲間の機体を、亜夜が気遣う。
『そう、ですね。向こうが手加減をしてくれる気配もなさそうですし、データが取れているなら通常戦闘へ移行し、空域から離脱した方がいいでしょう』
前回と比較して出現するHWの数は決して多くはないが、数は減る様子を見せず、長期戦も辞さない様に見えた。
『ひとまず、データは集めた。打上式無線中継局の信号が捉えられなかったのは、残念だけどな‥‥』
僅かな望みをかけて、電波が拾えないか注意していた亜夜が、口惜しそうに呟く。
住民の手に渡っていないのか、バグアに察知されるのを警戒していたのか。
それとも単に間に合わなかっただけなのか、あるいは機械の故障か。
無線局を打ち上げた気配がない理由を考えれば、いくらでも想定しうる事態は考えられる。
『それでも今までやってきた事、無駄にはしねぇ』
亜夜は操縦桿を軽く握り直して、ウーフーの機首を上げ。
『通してもらうぜ!』
行く手を遮るHWへ、進路を切り開く様に高エネルギーの弾丸が放たれた。
●早い帰路と掴んだコイン
当初の予定であった12時間の調査期限は、結果から言えば大幅に短縮される。
カルヴィの警戒態勢が解除されなかったのか、元から警備が厳重だったのか、あるいは潜入手段に問題があったのか。
いずれが原因かは不明だが、イタリアへ一時帰還した四機のKVは戦闘の被害を確認し、最低限の整備を受けてから再びコルシカへ飛んだ。
潜入班よりもたらされた情報は、出歩く住民の数よりも、警備する兵士の数が多い事(おそらく、彼らも本来は住人であろうが)。特に兵士が多い場所はコルシカ鉄道駅、市庁舎、新市街と城砦の間にあるコロンブス広場およびスピンコーネ門の三箇所(ただし城砦内部は未踏の為、除外している)。
そして北西の海に面した側で、城砦を囲む城壁と建造物の一部破壊が確認された。
一方、水中班は予想より水中型ワームとの遭遇が少なかった事もあり、カップ・コルス周辺までの調査を完了。
港の海底には破壊された船の残骸が山積し、巡回を行うワームや機雷の存在を確認した。
ただしキメラの分布や生態状況は、遭遇例がない為に不明な点が多い。
なお、アジャクシオの状況と支援物資のコンテナの状態については、画像データはUPCが回収して分析を行う為、結果が出るには幾らかの時間を要するという――。