タイトル:南仏戦描〜Scout corpsマスター:風華弓弦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/27 23:24

●オープニング本文


●偵察派遣
「6月に成功したマドリード奪還作戦の影響が、じわじわと及んでいるせいか‥‥南仏においてのバグアの動きは、当初に予想されていたそれよりも緩慢になっている」
 南仏カルカッソンヌにある、ブラッスリ『アルシェ』。
 その店内ではテーブルに広げた地図を前に、コール・ウォーロックは咥えた煙草に火を点けた。
 テーブルを囲む者達――ブラッスリを拠点として活動する、競合地域下レジスタンス支援組織『ブクリエ』に参加する者達――が、緊張した面持ちで地図を見つめる。
 5月、カルカッソンヌの北に広がる中央山岳地帯にまで及んだバグアの侵攻をみて、フランスはその後の動向に長く警戒を続けてきた。『ブクリエ』もその動きを受け、トゥールーズから東へと続くA61を防衛線として、哨戒や防衛活動を行っている。
「その為、ピレネー山麓一帯でのバグアの動きを探る偵察を行う事が決まった。ただしトゥールーズから部隊が動くと、バグアに察知される危険もある。よって、正規戦力に属していない『ブクリエ』より偵察隊を編成し、南へ送る事になった」
 男達が互いに見合わせた顔には、様々な表情がよぎった。
 期待や疑問、懸念‥‥だが、停滞する戦況を進める為に動くという事への緊張は、誰も同じだ。
「場所と状況をふまえ、ULTにも能力者の助力を要請する。彼らと共に民間人に扮してピレネー山麓へ向かい、バグアの動向を探る。何かあっても‥‥なくても、出来るだけの情報を集めて戻る事。それが、今回の『役目』だ。『援軍』が到着次第動けるよう、準備を始めておいてくれ」
 立ち込める紫煙の中で、男達は頷き。
 そして、店から出て行った。

「‥‥俺達も、何か出来ないかな」
 階段で耳をすませていた五人の少年のうち一人が、ぽつんと呟いた。
「ダメだよ。リックはまだ、ギプス取れないんだから」
「そうだけどさ」
 年下のエリコに言われ、松葉杖のリックは恨めしそうに固定された足を見下ろす。
「俺達が何かしても、かえって邪魔になるかもしれないだろ。それより、お前ら勉強しないと。計算くらいちゃんとできないと、ロケット飛ばすどころか紙飛行機も飛ばせないぞ」
 年長者のイヴンが、弟分達をたしなめる。
 カルカッソンヌでも『修理屋』として、車や農作業用の機械の修理や調整を続ける一方、何故か自発的に『勉強』もするようになっていた。育った教会の孤児院で最低限の事は教えられてきたが、競合地域下の混乱もあって就学せずにいる。
「これじゃあ、ダメだよな」
 最近、真剣な表情で悩むイヴンに、ほとんど同じ歳のミシェルは逆に「今更」と開き直っていた。
「下の三人はともかく、俺は今更になって学校とか、いらねーよ。それにあいつらがもし学校に行く事になったら、金がいるようになるだろ。金の事まで、オッサンに頼ってらんねーよ」
 開き直ったミシェルに、複雑な笑みをイヴンが返す。
 年下の仲間の為に出来る事を、年長者二人は模索し始めていた。

●参加者一覧

稲葉 徹二(ga0163
17歳・♂・FT
煉条トヲイ(ga0236
21歳・♂・AA
鏑木 硯(ga0280
21歳・♂・PN
御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
シャロン・エイヴァリー(ga1843
23歳・♀・AA
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
ゴールドラッシュ(ga3170
27歳・♀・AA
緋室 神音(ga3576
18歳・♀・FT

●リプレイ本文

●南への偵察隊
「ピレネー山麓一帯の、偵察か‥‥バグアの動きが緩慢になっている隙に、停滞する戦況を打破する目算か?」
 出発の準備を進める者達の姿に、煉条トヲイ(ga0236)が思案を巡らせる。
「そうかもしれませんね。敵の動きを知る事で、平和な世界に少しでも近付けなら、いくらでも力になるつもりですが」
 二丁の小銃「S−01」の弾倉を確認した流 星之丞(ga1928)は、重く息を吐いた。
 次の行動への手掛かりを得るという点では、今回の偵察は重要だ。その為、今回の依頼を受けたメンバーは、『ブクリエ』の男達と共にピレネー山脈の麓を回るチームの他、能力者のみでスペインとの国境である山脈の稜線を越える事にした。
「国境に沿って尾根を伝う道はないから、車で越える道がある場所をピックアップして回る感じになるわね」
「歩いてでは、リスクと時間がかかり過ぎるからな。要所まで車で回って、不審な点があれば徒歩で確認‥‥か」
 緋室 神音(ga3576)はジープのボンネットに地図を広げ、御山・アキラ(ga0532)とルートを検討している。彼女らとトヲイ、そして稲葉 徹二(ga0163)が山越え班となっていた。
「こちらからは、あまり情報が出せなくて申し訳ないな。もう少し、動きの目星でも付けられればよかったんだが」
 水や携帯食料などをジープに積んだコール・ウォーロックが、苦い表情で嘆息する。
「その為の偵察だから、問題ないわ」
 アメジストを思わせる瞳でちらとそれを見、淡々と神音は返事をした。
「無論、その結果は有効に使ってもらわなくてはね」
「ところで、徹二は‥‥見なかったか?」
「ああ。さっき、『知り合い』へ声をかけに行ったようだが」
 積まれた物を確認しながら聞くトヲイに、コールは背後のブラッスリを振り返る。
「そういえば、シャロンと鏑木もまだ戻ってこないわね。様子、見てこようかしら」
 ゴールドラッシュ(ga3170)も顔を上げ、フレームに指を添えて眼鏡の位置を整えた。

●小さな葛藤
「これは、どこへ出かけるのかな〜?」
 細い腰に両手を置き、にっこりと笑顔でシャロン・エイヴァリー(ga1843)が尋ねた。
 彼女の足元、床の上には中型程度のリュックが二つ転がっている。口を開いたリュックからは水やビスケット、懐中電灯やタオルなどの中身が見え、二人の少年はバツが悪そうに視線をそらしていた。
「何だか、『家出』の用意さながらだね」
 屈んでリュックを拾った鏑木 硯(ga0280)は、軽く汚れを叩いて払い、苦笑しながら二人へ差し出す。
「もしかして、偵察に同行するつもりだったとか?」
「それは‥‥俺達で、出来る事がないかって、思ってさ」
 答えるイヴンの脇を、咎める目でミシェルが肘で小突いた。そのやり取りだけである程度は意図が想像ができて、困った表情で硯は肩を落とす。
「気持ちは、判らなくないけど‥‥」
 歳が近いという親近感もあり、彼らの心情は理解できるが、それには危険も伴う。特にキメラの前では、例え護身用の銃器があっても一般人は無力だ。
 傍らのシャロンを窺えば、同じように思案する彼女と目が合う。見返す青い瞳に浮かんだ反応に、彼は意を決したように小さく頷いた。
「二人とも、キメラもワームも直に見た事あったわよね。人手が欲しいの。手伝ってくれる?」
 人差し指を立ててシャロンが提案すれば、急な話に少年達は戸惑った視線を返す。
「俺達もピレネーの麓を偵察に行くから、どうせなら同じ班の方がいいと思うし」
「ええ。立場は‥‥そうね、私の弟になりなさい」
 ぽんぽんと段取りを決めるシャロンと硯に、戸惑っていた二人は呆気に取られ。
「お前等、やってたんだな。ロケットの勉強」
 あまり歳の変わらない三人と話をしていた徹二が、声をかけた。
「勉強ったって‥‥このご時世にちゃんとした学校とか、金もアテもツテもねぇし、頭だって良くねぇから、大したモンじゃないけどな」
「学校か‥‥」
 頬を膨らませたミシェルに、唸って徹二は髪を掻く。
「なぁ、『ラスト・ホープ』は世界一安全な場所なんだろ? ちゃんとした学校もあって、能力者ならそこに家族を呼べて‥‥」
「あァ、ちょっと待った」
 連ねる言葉に嫌な予感がして、慌てて徹二はミシェルの話を遮った。
「約束したろ? 斬ったはったは俺の仕事で、能力者にはなるなって」
 口をつぐんでミシェルは消沈し、黙ったままイヴンが受け取ったリュックを閉じる。
「さぁて、そろそろ出発よ。Time is money,時間を無駄にしてる暇はないんだから」
 話の切れ間をみて、様子を窺っていたゴールドラッシュが一同を明るく急かした。

「やっぱり、こういうのって、その土地で暮らしている人の感覚が、とても大事だって思うんです。だから、宜しくお願いします。僕では気づけない事も沢山あると思いますから」
「でも、俺達もコッチにきて間もないから‥‥判んないけど」
 会釈をして頼む星之丞に、頼りにされたイヴンが口篭りながら答える。
 能力者達と一緒に現れた少年二人に、コールは特に驚きも咎めもしなかった。
「あいつら、連れて行くのか」
「はい‥‥自分達にできる事があれば手伝いたい、誰かの役に立ちたいっていう気持ちも判るし」
 山越え班と話をするイヴンとミシェルを見ながら答える硯の肩へ、トヲイがぽんと手を置いた。
「あの二人の事、よろしく頼む。何か突飛な行動に出る可能性が無いとは、言えないからな‥‥」

「そっちはピレネー、越えるんだ」
「心配すんなって、お前等の眼もちゃんと連れてくからさ」
 軽く徹二が叩いた傷だらけの双眼鏡は、去年のクリスマスに彼が少年達から受け取った物だ。
「じゃあ、出発するぞ」
 断りを入れてから、ジープへ乗り込んだトヲイがアクセルを踏み。
「無茶をせず、いざって時は鏑木やシャロンの指示に従うんだぞ」
 少年達へ言い含める徹二の言葉を置いて、ジープは走り出した。
 見送る仲間や少年、そして男達の姿が遠くなり、やがてブラッスリも見えなくなる。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず。されど虎穴に虎児居るとは限らず。さて‥‥どう出るかな?」
「『機を見るに敏』とも言うし、良い結果に繋がると良いんだが‥‥」
 助手席で地図を広げたアキラとハンドルを握るトヲイの会話を聞きながら、神音は借りたコンパクトカメラのレンズを窓へ向け、ファインダーを覗き込んだ。

●情報探索
 ピレネーの麓は緑濃く、遠くには高い山々が連なっていた。
 東西に伸びる山脈の長さは、約430km。東京を基点とすれば、広島近辺までの直線距離に相当する。
「かなり広域を偵察する事になるわね。数人単位で車両を中心に偵察範囲を決めて、時間を合わせて集合した方がいいかしら」
「大まかな移動は車で、一定のポイントごとに徒歩で周囲の状況調査みたいな感じなのかな。偵察については、『ブクリエ』の人達が慣れているだろうから‥‥」
 広がる風景にシャロンは考え込み、同行する者達へ意見を求めるように硯が顔を上げた。
「こちらの案はスペインに展開するバグア拠点の一つに近い東部方面、欧州攻防戦でアースクエイクが出現した中部方面、スペインからの難民が多く流入する西部方面の三班に分かれ、各方面でそれぞれに情報を集めるというものだったんだが」
「それだと、こっちも三方面に分かれる事になるんでしょうか」
 確認するように星之丞は仲間の顔を見やり、腕組みをしたシャロンが肩にかかった金髪をかき上げる。
「こっちは全員で山脈に沿って移動していくつもりだったけど、どうなのかな?」
「偵察は人目につかず、かつ迅速に行った方がいいと思うのだが‥‥能力者のあんた達が思うところがあってそう言うなら、俺達はプランに従うだけだ」
「ここまで来て、どうこうも出来ないもの」
 心配そうに会話を見守る少年二人へ、ゴールドラッシュが肩を竦めた。
「確かに、そうですね。では、行きますか」
 セダン車の運転席のドアを開けて、星之丞は仲間を促す。
 四人の能力者に二人の少年、そして数人の男達は複数の車へ分乗すると、ピレネー東部から西を目指して進み始めた。

   ○

「東側はいいとして‥‥残りで街道を重点的に回るなら、西側はポーかバイヨンヌあたりか。後は、真ん中をどうするかだな」
 地図に描かれた山脈の一部を、赤褐の細い指が辿る。
 マドリードは奪還できたとはいえ、スペイン内での地中海沿岸はまだバグアの勢力が強い。カルカッソンヌから近いペルピニャンとフォワ方面から南を探った山越え班だが、駐留部隊もいる為か目立ったバグアの動きは察知できず、重い緊張が続いている。
「山脈の真ん中は、ないのかしら」
「抜ける幾つか道はあるが、幹線道路ではない。時間もかかるから、全てを回る訳にはいかないのだが」
 地図を覗き込む神音に、アキラは地図の山脈を南北に跨ぐ細い線を示した。それは、彼女らが今いる場所の最寄りに引かれた線よりも、ずっと細い。
「どれを選ぶか、取捨選択が重要でありますな。その前に‥‥天候が悪くなれば、視界確保が困難となるであります」
 周囲を窺っていた徹二が、手にした双眼鏡を下ろして天を仰ぐ。
 変わりやすい山間の空には、低い雲が集まり始めていた。
「そうだな。探知センサーがなくても、風向きや天気が変わればキメラに気付かれるかも知れない」
 カメラをアーマージャケットのポケットにしまうと、しゃがんでいたトヲイは立ち上がり、息を潜めて近くの岩に身を寄せる。
 場所にもよるが、山肌には木があまり生えておらず、遮蔽物が少ない。見晴らしはいいが、逆に言えば相手からも発見されやすい状況だ。
「特に、キメラがいる気配はないな」
「上空も敵影なし。今の間に、車まで戻るわね」
 声をかける神音より一足先に、身軽なアキラが先に立って後方の安全を確認しながら進む。
 なおも異常がない事を確認してから、少し遅れて徹二とトヲイも後退を始めた。

   ○

 避難民ならば、少しでも安全な場所へ逃げようと、ピレネーを越えた後は真っ直ぐに北上していく。あくまでも土地から離れず暮らす者達ならば、パレードの様に何台も車を並べて走る事はあまりない。
 どちらの行動も取らず、一列に連なって付かず離れず走る車の群れを見かけた者は、その違和感や珍しさに首を捻った。
 その後を追うように、『新聞記者』を名乗る男が方々で住民に話を聞いて回っているという話が、キメラを恐れながらも平凡に暮らす人々の間での話題に上った。

 ――何の目的で、話を聞きにきたのか。
 ――そもそも、本当にその人物が『新聞記者』なのか。

 例え平和な時代であっても、普通に暮らす人々にとって『新聞記者から話を聞かれる』という事自体が珍しい体験だ。それが恐怖に怯える非常時で、話題の乏しい田舎ならば、ひと時の恐怖を紛らわせるいい『話のネタ』になる。
 昼間の住人同士の会話で、あるいは夜の酒場の席で。
 憶測は噂を誇張し、珍しい話題に餓えた人々の間を転がっていく。

 ――『新聞記者』は、数台の車を連ねて町に来た連中の一人だそうだ。
 ――集団で来た連中は、他の町にも立ち寄っているらしい。
 ――何の理由で、町を回りながら西へ移動しているのだろう。

 偵察隊が通り過ぎた後、その経路を追う様に、噂は西へと広がっていった。

●タイムオーバー
「何だか、西にくるほどあまり話をしてくれないんですよね。東の人の方が、気さくなんでしょうか」
『新聞記者』を名乗って人々から話を聞いて回っていた星之丞が、首を傾げる。
「聞き方が違うとか、それとも警戒されてるんじゃない?」
「さぁ、どうなんでしょう?」
 思い当たる線をとりあえずゴールドラッシュは口にしてみるが、星之丞に心当たりはないらしい。
「ポーか‥‥ここで、最後になりそうかな」
 見えてきた町と地図を照らし合わせて、硯が小さく嘆息した。
「最後まで付き合えないのは、申し訳ないわね」
 ハンドルを握るシャロンもまた、複雑な表情で前方を見つめている。
 道中の町や村に立ち寄って話を集めながら、西へ走ってほぼ三日。西端に辿り着くには、更に一日か二日は必要だろう。
 だが、稀有な存在である能力者達は多忙な身だ。
 世界のあちこちでは、彼らでしか倒せないキメラやワームの被害報告と出動要請が、日々ULTへ伝えられている。
「懸念されたトラブルもなく、無事にここまで偵察が進められたのも、君達のお陰だ。残りの距離も少ないし、後はこちらで何とかなるだろう」
 時間のかかり過ぎた偵察に、『ブクリエ』の一人がそう切り出した。
 ULTに打診した協力の、予定日数も過ぎる。どうか、危険に晒されている者達を、少しでも助けてやってくれ‥‥と。
「ピレネーの自然を眺めながらの『旅行』も、悪くなかったのにね」
 ウィンドウに肘をつき、ゴールドラッシュは残念そうに流れる窓の風景を眺める。
「山越え班の方も、手間取ってるようですから。こうして目にすると、本当に広いですよね‥‥ピレネー山脈は」
 しみじみと、星之丞はスペインとフランスを隔てる――長く、バグアが越える事のなかった――山並みを見上げた。

「完全に、調査が完了したわけではないのだがな」
 木陰へ隠すように止めたジープで、口惜しそうにトヲイが無線へ視線を落とす。
 山越えの四人は、ピレネー山脈のちょうど中間点付近にいた。
 幹線道路に沿って国境へ近付き、キメラやワームに注意しながら動向を探る。だが開けた場所の多い山間では、発見されない事を優先する為、移動に時間がかかり。幹線道路のない中央部へ差し掛かれば、国境へ赴くだけでも困難を要した。
「仕方ない。時間をかけ過ぎたし、山麓沿いの連中の方も切り上げる事になったんだ。中途半端で放り出すのは、私も気に入らないが」
 忌々しそうに、アキラが灰色の岩肌の険しい山を見上げ、彼女に倣った神音はふっと溜め息を落とす。
「ここまでのキメラの数量分布について、少しでも調べる事ができたから手ぶらって訳ではないのが、幸いかしら。このデータが、今後の助けになればいいのだけれど」
「東部より、中央部の方がキメラの数が多く見られた‥‥という件でありますか。西部の動きも気になるところでありますが、本部からの帰還命令では仕方ありませんなぁ」
 気持ちを切り替えるように、ぐいと徹二は帽子のツバを掴み、深く引き下ろす。

 複雑な思いで山を後にする能力者達の肩を、糸のような雨が叩き始めた。