タイトル:【MS】Limelight:夏宴マスター:風華弓弦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 1 人
リプレイ完成日時:
2008/08/15 22:54

●オープニング本文


●Limelight(ライムライト)
 1)石灰光。ライム(石灰)片を酸水素炎で熱して、強い白色光を生じさせる装置。19世紀後半、欧米の劇場で舞台照明に使われた。
 2)名声。または、評判。

●夏といえば野外?
「戦意高揚キャンペーンで、野外ライブ?」
 咥え煙草で奇妙な表情をしたライブハウスのオーナーに、涼しい顔の音楽プロデューサーはコーヒーカップを手に頷いた。
「このご時世だからね。本意不本意はさておいて、こういった仕事は仕方ないというか、ナンと言うか」
「だがなぁ。音楽をそういう方面に使うってのは、非常に不本意なんだが」
 取り落としかけた口元の煙草を咥え直し、オーナーは古い友人に忌たんなく明かす。
「その辺りは、私も異論はないよ。どこかのアレのように、異文化接触のインパクトで『敵』が怯んでくれるなら別の話だけど、そんな希望的展開な状況でもなさそうだしね。ただ‥‥」
 言葉を切って、音楽プロデューサーがカップを傾けた。漂う珈琲の香りと友人の所作に、オーナーは渋い表情を顕わにする。
「このクソ暑いのに、よくもそんな泥珈琲が飲めたもんだ」
「淹れる方も、淹れる方だと思うけど」
「『客』の注文なら、仕方ねぇだろ。で?」
 話の続きを促され、音楽プロデューサーはやたら濃くて熱いブラックコーヒーのカップを置いて、カウンターの上で指を組んだ。
「ただ、命がけで戦っている人がいる事は確かだし、厳しい状況下で希望を求める人がいる事も然り。そんな世界で、私達に出来る事といえば‥‥」
「生きている音を届ける事、か」
 意味ありげに見上げた視線に、ぷかりとオーナーが紫煙をふかす。
「援護の銃弾でもなく、何の腹の足しにもならないが、何にも遮られない‥‥」
 煙と共に吐き出す言葉に、音楽プロデューサーは一つ頷いた。
「『希望』は生きている事を。いつか差し伸べる手を。彼ら自身に彼らの言葉で伝えてもらうのが、一番じゃないかな。戦略的なプロパガンダ云々は、さておいて」
「ま、そういう事なら手伝ってやるか。つーか、話を持ちかけた時点で俺に降りる線はないんだろ、川沢?」
「さぁて?」
 苦笑する佐伯 炎(さえき・えん)に、しらばっくれた表情で川沢一二三(かわさわ・ひふみ)はコーヒーのカップを干した。

 ひと夏の宴、手の届かない彼方の誰かへ、音で希望を届けよう。
 そして、いつか――。

●参加者一覧

ジーラ(ga0077
16歳・♀・JG
ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
伊河 凛(ga3175
24歳・♂・FT
小鳥遊神楽(ga3319
22歳・♀・JG
聖 海音(ga4759
24歳・♀・BM
ミカエル・ヴァティス(ga5305
23歳・♀・SN
篠田 裕貴(ga5426
26歳・♂・BM
アンドレアス・ラーセン(ga6523
28歳・♂・ER
乾 幸香(ga8460
22歳・♀・AA
ラシア・エルミナール(gb2204
18歳・♀・BM

●リプレイ本文

●集まる音達
 空っぽの客席を前に、様々な音が交錯する。
「思いっきり歌えるのね‥‥わくわくするわ」
 ミネラルウォーターで喉を潤し、リハーサルを終わらせたケイ・リヒャルト(ga0598)は黒髪をかき上げた。
「ケイさまとはまたご一緒出来て、嬉しい限りです。素敵な歌を、お聴かせ下さいませね‥‥!」
 目を輝かせた聖 海音(ga4759)に、彼女は照れて微笑んだ。
「海音の歌も、楽しみにしているわ」
「頑張ります。今日は、裕貴さまとご一緒させていただきますし‥‥よろしくお願い致しますね」
 改めて丁寧に一礼する海音へ、「こちらこそ」と篠田 裕貴(ga5426)は礼を返した。
「野外ライヴって中々やる機会がないから、楽しみだよね。俺の曲を聴く層にも聴かない層にも‥‥新たな俺を知って貰えると、嬉しいな」
 期待を込めて、裕貴はステージの方向を見つめる。
「今日は、他のメンバーがいないけど‥‥IMPとして、一人のアイドルとして頑張らないと」
 緊張気味にジーラ(ga0077)が顔を上げれば、アンドレアス・ラーセン(ga6523)と目が合う。
 彼女の『バックバンド』も担当するアンドレアスは、にっと笑って親指を立て。
 少女はこっくりと、頷いた。

「それにしても、『希望』だの『プロパガンダ』だの‥‥あたし個人としては、音楽を音楽以外の事に使って欲しくないんだけどな。そういうのは、音を聞いた奴らの感性にゆだねるものだろ」
 微妙に憤るラシア・エルミナール(gb2204)へ、ミカエル・ヴァティス(ga5305)は口唇の間からチラと舌を覗かせた。
「頭の固い人向けに大義名分があった方が、文句ないのかもね」
「まぁ‥‥誰がどんな大義名分を謳おうと、あたしはあたしの音を出すだけさ。雑念は、音を乱すし」
 確たる意思で答え、ラシアは空の赤い星を睨み上げる。
「音楽に壁はないからな。たとえ戦争中でも、な。」
 彼女の仕草に倣うよう顎を上げた伊河 凛(ga3175)は、提げたベースのボディへ手をかけた。
 深い藍色をたたえた愛用のベース。そのピックガードには、雪の結晶をモデルにしたステッカーが貼られている。彼が、学生の頃に加わっていたバンドのものだ。
「またこれを使う時がくるなんて、思ってもいなかったが」
 ――もし傭兵になっていなかったら、多分俺は‥‥。
「おーい。可愛い『お客さん』が、差し入れにきたぞ」
 思考を遮る野暮な声に見やれば、佐伯 炎の傍らで女性が銀髪を揺らし、お辞儀をした。
「応援に来ちゃいました。人を楽しませる事が出来るのは、とても凄い事だと思うのです。皆さん、どうぞ頑張って下さいませね」
「真琴‥‥来てくれたのか」
 手にしたトレイに十人分の飲み物を用意した不知火真琴へ、慌ててアンドレアスが手伝いに行く。
「せっかくの、アスさんのお誘いですし。ケイさんとユニット、客席で楽しみにしていますね」
「ありがとう。しっかり聞いていってね」
 手を振るケイに、「はいっ」と真琴は笑顔で頷いた。

 一方、佐伯の後から姿を見せた川沢一二三へ、乾 幸香(ga8460)と小鳥遊神楽(ga3319)が揃って頭を下げる。
「まさか『ラスト・ホープ』に来て、もう一度川沢さんのプロデュースでライブが出来るなんて、思ってもいませんでした。頑張りますから、あたし達の事きちんと覚えていて下さいね」
「いいえ。ぜひ私だけでなく、沢山の人が忘れられないライブにして下さい」
「もちろんです!」
 神楽は幸香と視線を交わし、互いの意気込みを再確認した。
「川沢さま、佐伯さま、大変ご無沙汰しております‥‥! お逢い出来て、嬉しいです。どうぞ宜しくお願い致しますね」
 二人に続いて、海音と裕貴も軽く会釈をする。
「こちらも、久しぶりに大きな『仕事』ですしね。個人的にも楽しみにしていますから」
「ん。そろそろ、時間じゃねぇか?」
 佐伯が時間を確かめ、「あの」とジーラが片手を挙げた。
「ちょっとだけ、提案。こう‥‥皆で円陣を組んで、気合を入れない? このステージ、絶対に成功させたくて。ボク達の歌が届くように、皆が元気になれるように」
「ん〜、円陣つっても‥‥こっちにするか」
 ぐいとアンドレアスが拳を突き出し、「そうね」とケイが拳の上に手を置く。
 ジーラも二人に手を重ね、他の者達も後に続いた。
「ほら、折角だから」
 円陣を楽しげに見ていた真琴に、アンドレアスが手招きする。
「え、うちも?」
「お客さん代表って事で」
 戸惑う真琴を裕貴が促し、ラシアも頷き。
「さぁいこう、It’s a Showtime!」
 ジーラの言葉に一同は声を上げ、重ねた手を掲げた。

●ジーラ〜Demain
『皆、今日は来てくれてありがとう!』
 無人のステージへ、微かに残照を残す空から声が降ってきた。
 待ちかねた歓声があがり、聴衆が声を辿れば、白い機体が舞い降りる。
 降下しつつ歩行形態に変形するアンジェリカは、地上から迎える幾条ものスポットライトを受け。
 悠然とステージの奥へ着地して、膝をつく形で静止した。
 コクピットが開けば、小麦色の肌の少女が金髪を揺らし、精一杯大きく手を振る。
「ライムライトに照らされた真夏の夜の夢を、キミ達に贈るよー!」
 ジーラの呼びかけに合わせ、ぱんっと銀の紙吹雪が炸裂し。
 疾走感の溢れるポップロックを、凛とアンドレアスが奏で始めた。
 コクピットに立ったままリズムを取り、ジーラはマイクを握る。

「 辛いことばかりが溢れてる そう言って瞳を閉じたキミ
  痛みも悲しみももういらない 夢の中ならそれもないから

  だけど 醒めない夢はない 明けない夜はない
  だってキミは知ってる 教えてくれた人がいるから
  今もその手に触れている 暖かさに瞳を開いて 」

 どんな夜でも、明けない夜はない。
 だから明日を目指そう‥‥そんな思いを、音にのせて。

「 そこにあるのは 大きな空と太陽
  白む空に 月と星は隠れるから
  瞳を開けば 何時かそれが見える
  だから瞳閉じないで 前を向いて 辛くたって明日が来るから 」

 遠く響き渡るよう、眼下の観客へ手を差し伸べ。
 ストレートなジーラの応援ソングで、ライブは幕を開けた。

●Twilight〜Fight!!/明日を信じて
「参加して良かったわ。能力者の前にあたし達はやっぱりミュージシャンなんだ。だから、今日も最高の舞台をしましょう」
 相棒の言葉に、幸香は大きく二本の三つ編を揺らす。
「こうやって音楽やっているのが、本当のあたし達だよね。だからもっともっと良いライブをして、お客さん達と一緒に楽しもう」
 そして二人は、揃ってステージへと飛び出した。
「まず、あたし達『Twilight』の代表曲『Fight!!』から。その元気、受け取って!」
 既にお決まりの一言を、神楽が客席へ投げる。

「 突き進め! 切り開け! 明日を!

  立ち止まっていて、何が得られるの?
  過ぎ去っていく 影だけ見つめて
  目で追うだけじゃ何も変わらない

  だから 今は前を向いて進もう!
  俯いて 膝を抱えて
  立ち止まっていたら 何も見付からないから!

  友と共にいざ進もう!
  今はその手に思いを込めて!

  友を信じていざ進もう!
  僕らはいつもひとりじゃないから! 」

 緩急を付け、エレキギターを提げた神楽が高らかに歌い。
「続いては『明日を信じて』。明日へ踏み出す勇気を、受け取って!」
 神楽から、コーラスを担当していた幸香へライトが集まる。
 打って変わって穏やかに、幸香がキーボードで弾き語るのは、一歩踏み出す勇気。

「 下を向いてばかりじゃ きっと何も見つからない
  だから思い切って あたしは前に踏み出すわ!
  立ち止まっていたら 何かを失ってしまうから
  その一歩は今は小さくとも その勇気がきっと何かを変えてくれる
  わたしは一人じゃない
  きっと笑い会える人が居ると信じて!

  空元気だっていいじゃない!
  今は笑顔を思い出して
  いつかきっと自然に笑える日が来るから 」

 ジージャンに色違いのシャツとジーンズで合わせた二人は、最後に仲良く手を振って聴衆へ応えた。

●le lien〜Believe
「不思議なご縁もあるものですね」
 水色の地に、淡く白のラインが入った着物姿の海音は、にっこりと裕貴へ微笑む。
 ユニットの意味は、日本語で『絆』。
 貴重な縁を、心に刻むかの如く。
「そうだね。せっかくのライブ、楽しもう」
 答える裕貴は、ポップな東洋龍の和柄Tシャツにジーンズ、右手首にリストバンドとスニーカーと、海音に合わせて和を意識しつつ、彼風に纏めていた。
 緩やかに歩を進めて、海音はグランドピアノの前に座り。
 裕貴はアコースティックギターを提げて、静かにスタンドマイクの前に立つ。
 昼の暑さとライブの熱気が篭った空間に、一陣の涼風の如く、ミディアムテンポの爽やかな旋律が吹く。

「 誰も見たことないような 小さく淋しげな瞳
  殻に閉じこもって 人生は苦いだけ
  そんな風に信じているんだね 」

 柔らかく伸びる裕貴の歌へ、そっと控え目に海音の声が寄り添う。

『 もっと自分を信じなきゃ
  そこから抜け出して 良く見てごらん
  抜けるような空と 君に与えられたものとを
  君が思うよりも 世界はもっと希望に満ち溢れてるものなんだ
  だからさぁ駆け出そう 輝ける未来へと 』

 穏やかなコーラスを編み上げ、視線を交わして区切りの息を合わせる。
 拍手と歓声が波のように寄せて、遠のき。
 一拍おいた裕貴が、静かにマイクへ向き合った。
「この、夏の宴にもう一曲‥‥出来たばかりでタイトルもないけど、美声の歌姫と是非歌いたいな、と」
 裕貴がちらりと見やれば、驚いた表情の海音が頬を染め。
 照れながらも、白い指を鍵盤へ落とす。

『 Through the darkness I can see your light‥‥ 』

 流れる時間を忘れさせる、しっとりしたメロディに乗せて。
 澄んだ二重奏は、緩やかに夜の空へ広がっていった。

●Titania〜The Enchanteress/夜香
 白シャツの下、いつも身に着けたロケットを外すと、アンドレアスはそれをテーブルへ置き、代わりに十字架のチョーカーをつけた。
「もう、『戒め』は必要ねぇか‥‥今日は後ろで見ててな」
 低く声をかけ、赤いエレキギターを手に背を向ける。
 黒い革パンで大股に歩いてステージ脇へ向かえば、クラシカルな黒のゴシック系衣装を纏ったケイが、彼を待っていた。

 流れるようなピアノへ、キツめディストーションがかかった硬質な電子音が重く絡む。
 クラシカルな旋律と、叩きつけるようなビートが身体の芯を震わせ。
 歪んだハードな音律に、ケイが歌を紡ぐ。
 後ろには、夜の闇になお黒く浮かび上がる――二機のディアブロ。

「 Hear my voice
  Look into my eyes

  Fly with me into the night 」

 妖艶さと熱っぽさを帯びながら、どこか硝子の様な透き通る声で。

「 Call my name
  Feel my love 」

 一瞬だけの音の空隙に、囁きを落とし。
 気まぐれな猫の如く、旋律が翻る。

「 You’re my eternal prisoner
  I’m the enchanteress − Queen of the night 」

 グランドピアノのケイへ訴えるように、アンドレアスが速弾きで音を繰り出し。
 白と黒の鍵盤の上で踊る指が、鮮やかにリフをあしらう。
 リズムは一転し、重く音を軋ませてバラードへ移行した。
『The Enchanteress』から、『夜香』へと。

「 爛漫の星屑の園
  月夜の影絵 その香は濃密で
  熱が醒めない 」

 演奏を聴く者の中に想う相手を見出せば、自然と弦を扱う指に力が篭る。
 胸に抱く熱情を吐露するかの如く、アンドレアスの音は鋭くなる。

「 瞬いた瞬間の一閃
  胸に突き刺さり その身に鮮烈で
  輪郭が消せない

  闇夜に辿り着くその場所に 何を見付ける? 」

 ひとつ、呼吸を置いてから、ケイは最後の言葉を紡ぎ。
 名残も残さず、ただ鮮明に音が掻き消える。
 静寂を埋めるよう、少し遅れて拍手と歓声が続き。
「こんなに音楽性が合うなんて、吃驚だわ!」
 存分に音を発散したアンドレアスの『本音』に、ケイは緑の瞳を猫の様に細めた。

●flicker〜In the blue sky
 そのバンドの名に、客席からはどよめきにも似た声が上がった。
「何か‥‥凄いな」
「気にする事でもないさ」
 驚いた風の凛に、ラシアは短い黒髪を左右に振った。
 そう。演奏するのは、バンドの『名』じゃない。
「さぁて、それじゃ演らせてもらおうか!」
「OK、抑えずに全開でいくわよ!」
 気合いを入れるラシアにミカエルが片目を瞑り、力強く凛も一つ頷いた。

「In the blue sky!」
 噛み付くようなラシアの叫びに、音が応える。
 刻むようなリズムを追って、エレキギター。
 1フレーズ待って、ベースがスライドし。
 更にキーボードが加わって、電子音が大気を揺るがす。
 曲は軽快で突っ走るような、アップテンポのロックチューン。
 オープンフィンガーの長手袋をはめた指で、ピックを握り。
 ベアトップにカットジーンズ姿のラシアが、エレキギターを弾きつつボーカルを取る。

「 灰色に染まってた あの空蒼く澄み渡る
  優しい日差しが差し込んで アツイ元気が湧き上がる 」

 リズムに飛び跳ね、キーボードを叩くミカエルは、黒のホットパンツに赤のジャケットを羽織っていた。
 前を肌蹴たジャケットからは、挑戦的にチラチラとビキニが覗き。
 演奏に加えて、更に観客を煽る。

「 遥か遠くにまで 広がっていく青空を
  飛行機雲が通り過ぎる まるでおいでと誘うように 」

 彼女の性格そのままに、弾けるキーボードの旋律へ絡むのは凛のベース。
 彼は腕に黒のリストバンドをはめ、黒のTシャツにダメージパンツを履き。
 その弦は確かな旋律を太い低音で叩き出し、時にビートを効かせた明るい音でハネる。

「 さあ勇気を出して その手を握り
  もう一度踏み出そう 何処までも道が続く限り
  邪魔する雨(もの)は 今はない 」

 吹き抜ける疾風のように、音の奔流が駆け抜け。
 鳴り止まぬ拍手の渦へ、ラシアと凛はピックを投げ込んだ。

●Finale
 ライブを締めくくるステージでは、電子音の応酬が繰り広げられていた。
 アルペジオをスローテンポから、徐々に早弾きへ。
 タッピングを加えて軽やかに音を弾く裕貴に対し、アンドレアスは嵐のような音の塊を紡ぐ。
 大仰に呆れた仕草をしていた凛だが、ベースの音を引っさげて、ハンマリングで『参戦』する。
 そんな男三人のバトルを、引き裂くようなラシアのエレキギターが決着をつけた。
 ピアノを弾く海音と笑いながら、ケイはタンバリンを大きく振って、観客と共に拍を取り。
 ミカエルが奏でるキーボードに神楽と幸香は肩を並べ、ジーラは前に出てマイクを客席へ向けて歌う。
 賑やかなアドリブ・セッションは、過ぎる時を惜しむようにいつまでも続き。
 夜の闇を震わせて、遠く遠く響いていった。