タイトル:ふわふわ綿毛の恐怖マスター:風華弓弦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/05 04:12

●オープニング本文


●たゆたう綿毛
 天気は快晴、気温は適温。緑鮮やかなピクニック日和。
 青い空から初夏の緑野へ、風に揺られてひらりゆらり‥‥と。
 一片の白いものが、舞い降りてくる。
「‥‥あれ、何だろ?」
 最初に気づいたのは、緑の上を走り回っていた子供の一人。
 足を止め、丸い瞳が見つめる先で、軽やかな白い綿毛は地に落ちず。
 ふわりそよりと風にのって、タンポポの種や鳥の羽毛のように宙を踊る。
 立ち止まった友達に、興味を引かれた子供達が集まってきた。
 風に漂う綿毛へ息を吹き、手で風を送って、その行く先を追いかける。
 無邪気な歓声と、はしゃいで駆ける黒いレトリーバー。
 戦いなんて遠い世界の穏やかな光景を、レジャーシートに座った大人達は暢気に眺めた。
 しばらく揺らいでいた綿毛だが、大地に引かれる力には逆らえず。
 ゆらゆらゆっくり、子供達が囲んだ輪の中へ落ちていく。
 輪の外に取り残されていた犬が、尻尾をふりふり子供達の足の間をすり抜ける。
 やっと中へと抜け出すと、匂いをかぐように濡れた鼻をひくひくさせ。
 奇しくも犬の鼻面へ、綿毛はふわりと着地を果たす。
 ぷしゅんと、小さなくしゃみが一つ。
 犬の仕草に、子供達は明るい笑い声を上げて。

 すぐにそれは、悲鳴に変わった。

 犬の鼻にくっついた綿毛は、見る間に黒い鼻を白いふわふわで覆い尽くし。
 黒い毛並みを、まるでカビのように白く蝕んでいく。
 悲鳴を上げながら、飼い主の子供が慌てて愛犬を助けようと綿毛を懸命に手で払う。
 だが綿毛は剥がれるどころか、小さな手にも張り付いて。
 泣き出す子、泣く事も出来ないくらいに驚いた子の違いはあれど、まるで蜘蛛の子を散らすように、小さな足が一斉に逃げ出した。
 のどかな光景は一変し、親達が血相を変えて我が子を呼び、手を引いて逃げ出す。
 パニックの真ん中には、犬の形と人の形をした白い綿毛の塊が二つ。
 手足が綿毛を振り払うたびに、小さな欠片がちらほらと辺りに舞い散っていたが、やがてぱったりと動かなくなった。
 びっしりと表面を埋めた白い綿毛がざわざわと波打つと、ぎゅっと縮まって丸い二つの塊に変わり。
 二つの白い塊がずりずり動いてくっつくと、ぶよんと合わさった一つの塊になった。
 一つになった塊は、さわさわと吹く風に白い綿毛を揺らしつつ。
 逃げてしまった人々を追うように、そしてくっつく次の相手を探すように、ごろごろ草地を転がり始めた。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
鏑木 硯(ga0280
21歳・♂・PN
御山・アキラ(ga0532
18歳・♀・PN
鯨井起太(ga0984
23歳・♂・JG
国谷 真彼(ga2331
34歳・♂・ST
イシイ タケル(ga6037
28歳・♂・EL
アズメリア・カンス(ga8233
24歳・♀・AA
オブライエン(ga9542
55歳・♂・SN

●リプレイ本文

●緑野に綿玉
 青空と緑の狭間に、白くて丸い物体が存在していた。
「アレ、ですか」
「アレだね」
 半ば茫然と呟く鏑木 硯(ga0280)に、鯨井起太(ga0984)が答える。
 もっとも、どこか浮世離れした光景は白い球体がある丘陵地帯の中心だけで、周囲は騒然としていた。人が近付かぬよう地元の警察が一帯を封鎖し、キメラに『遭遇』した人や混乱で怪我をした人々の治療に当たる医療班、それから野次馬などでごった返す。
「それで、あの白いヤツの内部に、犬と子供が取り込まれている可能性がある‥‥と」
「情報では、そうみたいですね」
 険しい表情の白鐘剣一郎(ga0184)に、遠くに見える球体をじっと観察しながら国谷 真彼(ga2331)が答えた。彼の隣で同じように塊を見つめるイシイ タケル(ga6037)は、もどかしそうにぐっと拳を握り締める。
「子供は、まだ‥‥生きていますよね」
 こぼす言葉は疑問ではなく、そうあってほしいという願い。
「寄生型のキメラなら、希望はあります。宿主が死んでしまえば他を探さねばなりませんから、生かさず殺さずという可能性も」
 真彼が見解を説明すれば、黙ってタケルは首を縦に振った。
 一方で、相反する見方をする者達もいる。
「救助できれば、目付け物といったところだろうがな」
 生存は困難‥‥と、言外に含めて小さく息を吐く御山・アキラ(ga0532)は、一瞬アズメリア・カンス(ga8233)と目が合った。見返す黒い瞳は生存に関する私見を明かさず、アズメリアは小さく肩を竦める。
「助け出したいって気持ちは大切だとは思うんだけど、ね‥‥」
 被害者の生死判断については、ここに到るまでに能力者達の間で意見の衝突があったのだが。
「後は任せておけ。子供を見捨てる訳には、いかんからな」
 仲間達を促しながら、オブライエン(ga9542)は混沌とした人だかりを見渡した。この中から、子供の親を探し出さねばならない。
「よろしくお願いします」
 改めて、タケルは集まった者達の父親ほどに歳の離れたオブライエンへ、丁寧に頭を下げ。彼の肩を軽く叩いて、オブライエンが励ます。
「くれぐれも、頼んだぞ」
「それは勿論! とゆーか、もし誰か乱入しそうなら、『僕らがバッチリ解決するから心配無用』って伝えてね!」
 いい笑顔の起太が、びしっと親指を立てた。

●観察
「まず、キメラの特性を知る事から始めるのかしら?」
「はい。毛の一つ一つがキメラという群体なら、かなり厄介です。下手をすると、拡散の可能性もありますから」
 緑を踏んで『標的』との距離を詰めるアズメリアに答えた真彼は、周囲の状況を確認する。
 広げたレジャーシートの上に転がる、食品や飲料。子供向けの遊具やボール。人々が逃げた時に放り出した物が、そのままになっていた。
「幸い、この程度の風では飛び散る危険はなさそうだね」
 緩く青い髪を撫でる風に、双眼鏡を取り出した起太が白い塊を観察する。
 レンズで拡大されたソレは、風にふわふわした白い毛をざわめかせつつ、ごろごろと転がっていた。勾配を無視している辺り、何らかの意思は窺わせるが、それ以上は読み取れない。
「見た目は軽そうだけど‥‥ボディそのものがふわふわなら、決してあんな感じに「ごろごろ」と転がらないよね。綿菓子というより、アレは繭玉に近い存在じゃないかな」
「ある程度、質量があるという事か。毛玉が移動した跡は、綿毛に侵食されているか?」
 双眼鏡で見た印象を伝える起太へ、思案顔の剣一郎が尋ねた。
「いや、そんな感じには見えないね。転がる時に、綿毛が剥離する様子もないし」
「となると、土や植物には影響なし‥‥という事か」
 折れた草の様子を観察した起太の返答に、手を口元へやって剣一郎は唸る。
「生きて動いている物、つまりは動物が『標的』ってトコかな。飲み込んだ対象が増えるに従って、自分の体積を増やしている危険も考えられるから、周囲の鳥なんかを追っ払う必要もありそうだね。もっとも、それは任せてもらうよ」
 指を振って、起太は腰に帯びたカプロイアM2007を示した。
「なら、やるべき事をやるぞ」
 フェイスマスク越しのぐもった声で促すアキラは、長い黒髪すらマスクとBDUジャケットの下に収め、露出箇所を最低限の目の周りにまで抑えている。
 大股で放置された忘れ物へと歩み寄ると、身を屈めてレジャーシートの端を掴み、勢いよく緑の上から引き剥がした。重石代わりに置かれていた日傘や水筒などが振り落とされ、てんでんばらばらに散らばる。
「足らなければ、エマージェンジーキットの防寒シートも使うといい」
「有難い。いずれにせよ、俺達も素手での接触は厳禁だ。注意して行こう」
 同意する剣一郎もまた、近くにあったビニール製のシートを回収した。

「急がなきゃいけないのは判ってますけど、ちょっとだけ時間を下さいね」
 着物の端より作った和柄のリボンを取り出し、硯は束ねた髪をぎゅっと結わえる。
「表面からサンプルを取るだけなら、これで何とかなる‥‥かな?」
 彼が手にした金属製の長い棍棒を、心配そうにタケルが見つめた。少し思案するようにアズメリアは間を置いてから、口を開く。
「だといいけど。刀や剣ならあっさり削れそうだけど、勢いあまったら中までザックリやりかねないし」
「それはマズイだろ」と、起太がからから笑い飛ばす。
「ま、もし硯が毛だらけになったら、綺麗に剃ってあげるさ」
「なんか嫌です、その表現」
 起太の友情に、別の意味で目頭が熱くなる硯だった。

「子供達と親との照合は、どうですかな?」
 現場に居合わせた人々は、ショックと混乱で動転していた。その応対をする一人へオブライエンが話しかければ、振り返った若い警官は慌てて居住まいを正す。
「家族が無事との確認が取れた人から、救護班へ回ってもらっています。ほぼ八割までは、判明しました」
「そうか。聞いているじゃろうが、もし子供と犬が見つからぬという親がいれば、教えてもらえますか」
「判りました」
 敬礼する警官に気を遣わぬよう身振りで示し、オブライエンはキメラと遭遇した者達を見やった。
 目の前で起きた尋常ならぬ『怪異』は、子供ならず大人もパニックに陥らせた。オブライエンがいる場所には、逃げる途上で家族を見失った者や、互いを見つけ出せなかった者達が集まっている。警官達が丘陵地帯周辺を捜索して、はぐれた子供を見つけては保護し、あるいは子供を捜す親を誘導した。だが居合わせた全ての人々をフォローできたかどうかは、誰にも判らない。
(「あるいは‥‥まだ、どこかで子供を捜しているのか」)
 疲れた表情の人々から、オブライエンは緑野へ視線を移した。キメラのいる場所から半径500mは、立ち入り禁止となっている。
「警察からの情報を待つ間に、聞いてみるか」
 家族を探す人々へ、おもむろにオブライエンは足を向け。
 彼の背後、遠くで銃声が響いた。

●救う手立て
「二分だ」
 二本の指を立てて、一人一人の顔をアキラが見回した。
「キメラに直接対処を開始して、二分が経過。もしくは、キメラの行動を抑えていた者が戦闘続行不能となるまでに対処法が見つからなければ、すっぱり救助を諦め、キメラの完全な殲滅を第一目的にする。それでいいな」
 まとめた彼女に、異論を唱える者はいない。
 それが、被害者の生存に賭けて救出を考える者達と、生存への疑念を抱く者達の間で成った、最終的なプランだった。

 銃声に驚いた鳥達が、離れた草むらから一斉に飛び立った。
 鳥達の行く先を見送った起太は、空へ向けたカプロイアM2007の銃口を下ろし、万が一に備えてシエルクラインへ持ち換える。
 一方、銃声を合図として、六人の仲間は直径1mほどの白い綿毛の塊を囲んでいた。
「いま我々が助けますから、安心しなさい。それまで、私と遊びましょうか!」
 片手にガード、もう片手には鍋のふたを盾代わりにしたタケルが、白い塊に呼びかけを続ける。残る三方は剣一郎とアキラ、そしてアズメリアが重ねて張り合わせたレジャーシートを広げて牽制した。そうして、転がるだけの塊を草の上に敷きつめたシートの上まで誘導する。
「小突いた程度では、綿毛は剥がれませんね」
 棍棒の先端を確認した真彼は、浮かない表情で首を横に振った。
「時間もありませんし、ぶっつけ本番しかないようです。不測の事態も考えられますので、気をつけて」
「解りました。お願いします!」
 真彼へ頷いた硯は、託す言葉と共に用意したペットボトルのうち三つを宙へ投じる。
 剣一郎とアキラが振るう刃と、起太の放つ数発の弾丸が、それらを両断あるいは粉砕し。
 空中でぶちまけられた水は、一瞬の雨のように毛玉へ降り注いだ。
 濡れた綿毛が、表面にべったりと張り付き。
 肝心の塊は、形の変わる様子がない。
「気をつけて下さい」
 緊張気味に声をかけたタケルへ硯は笑顔を返し、塊へ手を伸ばした。
 伝わる触感は、濡れた動物の背に触ったようなもので。
 濡れた綿毛のすぐ下に弾力のある感触があり、綿毛を掴んだ程度では引き千切れる気配がない。
「鏑木、これを使え」
 手こずる硯へ、持っていたアーミーナイフを剣一郎が差し出す。
「お借りします」
 礼もそこそこに、硯は受け取ったナイフで綿毛の根元を削り取った。
 しかし削った後から、新たに乾いた綿毛がすぐさま伸びてきて。
「これでは、キリがありません」
 濡れた綿毛を掴んだ硯が、唇を噛む。
「形状から、それは表のガワなのかもしれない。突き刺さずに、浅く裂いてみるとか」
「やってみます」
 アズメリアの後ろから見守る起太のアドバイスに、短く硯が応えた。
「残り時間は?」
 タケルに聞かれた起太は、SASウォッチへちらと視線を走らせる。
 文字盤を差す針は、彼の最初の発砲から一分半を経過しようとしていた。

 刃を押し返していた弾力が、ぷっつりと断たれる。
 濡れているためか白い塊に大きな『動き』はなく、シートで塊の動きを抑える者達にはそれが逆に不気味でもあった。
「上手く、行くのかな‥‥」
 じっと硯の動きを見守っていたアズメリアだが、水を含んでべったりと寝ていた綿毛の異変に気付く。
「毛が、乾いてきてるみたい。いくら陽が照っているとはいえ、早いよ」
「集めた水筒で、使えるヤツを取ってくれ」
「判った」
 振り返ったアキラに比較的手の空いている起太が応え、固めて置かれた水筒の数々から、中身が茶や水のモノを拾い上げた。中栓を開けると囲んだ者達の間から手を伸ばし、中身を塊へとかける。
 その間にも、硯は塊を少しずつ切り開き。
 何かが噴き出してくる事もなく、腕が一本入る程の『穴』をようやく開けた。
「中は、どうなっていますか?」
 後ろから問いかけるタケルに、戸惑い気味の硯が束ねた髪を左右に揺らした。
「暗くて、よく判りません」
「そろそろ、二分だ」
 淡々と、アキラが制限時間を告げる。
 意を決して、硯は切り裂いた穴へ手を突っ込んだ。

「両親と思われる人が、見つかりました!」
 事態を見守る人々を分け、大声を上げた若い警官がオブライエンへ駆け寄ってくる。
 案内されて向かった車では、青ざめた若い夫婦が不安を抱えつつも互いを励まし合っていた。
 近付く彼の姿に気付くと先に母親が口を開くが、言葉を紡ぐ事も出来ず。細い肩を叩いてから、父親が立ち上がる。
「まさか、うちの子が‥‥」
 言葉はすぐに切れ、震える手には犬のリードが握られていた。束ねたリードの種類からみて、大型犬用のものだろう。だが繋ぐはずの犬は、どこにも見当たらない。
「お子さんは、現在わしの仲間が救出に尽力しとりますじゃ」
 出来るだけ落ち着いた口調を心がけて、オブライエンは状況を説明した。自分がUPCの能力者である事を明かせば、UPCの軍服という出で立ちもあり、やっと両親は納得した様子をみせる。
 しかし我が子の無事を信じようとしていた二人の表情は、次の言葉で一変した。
「ただ、極めて困難な状況であり‥‥最悪の場合も、考慮に入れておいて下され」
「最悪って‥‥」
 それ以上の言葉を失って失神する母親を、慌てて父親が支える。
 すがるような目を向けられたオブライエンだが、ゆっくりと説得の言葉を重ねた。
「心情は、御察し致します。どうかわし等を信じ、ここで待っていていただきたい」

●希望を守るという事
 約束の二分は、とうに過ぎていた。
 鈍い痛みが、腕に食らい込む。
 痛みを無視して、手が触れたぬるりとした感触を掴んだ。
 そのまま引き抜こうとするが、肘近くまで差し込んだ腕は動かない。
 支えに付いたもう片方の手の間から、ざわりと白い毛が粟立った。
「鏑木さん!」
 抜けない腕をタケルが片手で掴み、ガードで塊を押して引き剥がそうとする。
 タケルだけでなく、剣一郎とアズメリアもシート越しに力を加えていた。
 隙間なくぴったりと捕らえた穴から、僅かだが腕が抜け始める。
 しかしそれを上回るスピードで、綿毛は腕や手から『増殖』し。
 球体の表面から腕へと駆けた電磁波が、新たな増殖箇所を焼き切る様に弾いた。
「キリがないぞ」
「続けて下さいっ」
 超機械一号を手に淡々と告げるアキラへ、硯が真紅の瞳を向ける。
「まだ、生きてるんです!」
 訴える硯に、タケルもアキラを見つめ。
 剣一郎とアズメリアが、互いに視線を交わした。
「『皮一枚』だ。斬れるか?」
「斬ってみせるよ」
 投げられた問いにアズメリアは即答し、彼女の右腕から黒色の模様が現れる。
 模様は揺らめく炎のように、全身へと渡った。
「ならば、上等」
 相対するように、淡い黄金の光が月詠を抜いた剣一郎の身体をまとう。
 ヴィアと月詠が、銀色の弧を描き。
 白い表面に、直線的な亀裂が走った。
 タケルが硯に力を貸せば、引きずられるように丸い塊は形を崩す。
「子供をっ」
 硯の声に、彼のダメージを軽減していた真彼が、救いの手を伸ばそうとして‥‥表情を強張らせた。
 直径1mの、球体。
 その内部に、如何なる形で大型犬と10歳程度の子供が取り込まれていたか、想像しなかった訳ではない。
「鯨井さん、オブライエンさんに連絡を。イシイさんは僕と鏑木さんを移動して、後の人はキメラの『処理』を」
 指示を飛ばした真彼は、硬い表情で『生存者』を見下ろした。
 シートの上では、赤黒い粘液に塗れた『人のパーツで出来た塊』が、微かに蠢く。
 ――ぱ‥‥ぱ、まま‥‥?
『口』から漏れた空気に、苦心してタケルは笑顔を作る。
「大丈夫。パパもママも、無事ですから‥‥」

 綿毛の『処理』は、能力者達によって徹底的に行われた。
 被害者の遺体は家族が引き取り、諸々の片付けは地元警察が担当する。
「キメラに襲われた者は、死体も残らん事もある。それを思えば、まだ‥‥な」
 複雑な表情の仲間へ、オブライエンが労わりの言葉をかけ。
 八人は、緑野を後にした。