タイトル:また、明日。マスター:風華弓弦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/03/20 23:29

●オープニング本文


●夕暮れの町で
「ばいばーいっ!」
「またね〜!」
 夕闇が迫る公園で子供達は声を張り上げ、互いに大きく手を振り合う。
「転ばないよう、気をつけて帰るんだよ」
「はーい。おじいちゃんも、またね」
 遊ぶ子供達をベンチに座って見守っていた老人が声をかければ、明るい返事が返ってきた。
 走って公園を出た小さな影達は、石畳の道を滑るように家路へと駆けていく。
「ママが怒るから、あたしも帰らなきゃ」
 友人を見送った少女は、砂場で遊んでいた友達へ振り返った。
「ぼく、もうちょっと遊んでる」
 カラフルなボールを手にしたソバカス顔の少年が答えれば、ブランコを漕いでいたポニーテールの少女もこっくり頷く。
「エルヴィンがいるなら、あたしもいる〜」
「ふ〜ん。じゃあね」
 別れを告げて少女が手を振れば、残る二人も笑顔で手を振った。
「うん、また明日」
「ばいばい」
 踵を返した後姿は公園の門から出ると、石畳の道を曲がって見えなくなる。
「二人は、まだ帰らないのかい?」
 最後の二人となった少年と少女にベンチから老人が尋ねれば、子供達は顔を見合わせた。
「ママ、帰ってくるのがおそいから」
「エルヴィンひとりだと、さびしいモン」
「だがね。帰ってきて君がいなければ、ママが心配するんじゃないかな。お嬢ちゃんのママも、晩御飯の支度をして‥‥」
 家路につく事を促す老人の言葉を、不気味な振動が遮った。
 少年がドリブルしていたボールが、明後日の方向へ跳ね。
 鎖がたわんで、ブランコの少女がバランスを崩す。
「ああ、危ない! こっちへ!」
 揺れる地面に、慌てて老人が腰を上げた。
 地面の一部が急に盛り上がり、あるいは陥没して遊具が傾く。
「ボールが‥‥っ」
 地面に尻餅をついた少年が、手を伸ばした。
 持ち主の手から離れたボールは、転々と不規則にバウンドし。
 ボールの転がる先、芝生が覆う地面から突然、硬質で棒状の物体が突き出した。
「うわぁぁぁっ」
「きゃーっ!」
 目を丸くして子供達が叫び、一斉に老人の方へ駆け出す。
 その後ろでナニカは引っ込み、ボールが地中へ飲み込まれた。
「大丈夫。大丈夫だから、ここから逃げよう。な」
 しがみついてきた子供を老人がなだめる間に、今度はブランコの支柱が軋みながら傾く。
 その音に、子供達は悲鳴をあげて自分の両耳を塞いだ。
「さぁ、こっちだ。こっちへ逃げよう、さぁ」
 子供達にしがみつかれた老人は、小さな背を撫でてなだめながら、足を引きずるように公園の門へ移動する。
 老人が座っていたベンチの辺りの土が、ぼこりと盛り上がり。
 その土の盛り上がりが、退く三人へと進み始めた。
 地中から向かってくる異変に、老人は慌てて足を早め。
 三人は転がるように、公園から石畳の道へと飛び出す。
 ずんっと、敷き詰められた石の下から振動が突き上げる。
 老人と子供達は反射的に息を止めて身を強張らせるが、振動はそれっきりで。
 再び公園では土が陥没し、あるいは植えられた木が傾き、倒された。
「さぁ、今のうちに君達は早くおうちへお帰り。ここでの事は、ワシが警察へ知らせておくから」
 恐怖に青ざめた二人の子供は老人へ無言で頷き、立ち上がると手を繋いで駆け出す。
 公園で起きた『異変』に、周囲に住む住人達も何事かと窓から顔を出しては、その光景に息を飲んでいた。

●地に潜む脅威
 UPC本部の斡旋所にあるモニターには、今日も世界で起きる数々の『事件』内容が表示される。
 そのモニター群にまた一つ、新着の『事件』が加わった。
『ポルトガル南部の町でキメラが目撃され、公共施設の一部が破壊される事件が発生した。幸いにも、現在まだ被害者は確認されていない。至急現地へ赴き、被害者が出る前にキメラの排除を請う‥‥』

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
幡多野 克(ga0444
24歳・♂・AA
ロジー・ビィ(ga1031
24歳・♀・AA
二階堂 審(ga2237
23歳・♂・ST
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
レーヴェ・ウッド(ga6249
23歳・♂・EL
ナオ・タカナシ(ga6440
17歳・♂・SN
綾野 断真(ga6621
25歳・♂・SN

●リプレイ本文

●現地確認
「う、わぁ‥‥」
「これは‥‥凄い、というか‥‥酷い、というか‥‥」
 近付く春の気配を感じさせる陽光が、空から降り注いでいる。
 そんな日差しを浴びながら口を開いたリゼット・ランドルフ(ga5171)と幡多野 克(ga0444)は、文字通り開いた口が塞がらない状態となっていた。
 支柱の片方が地中深くまで引き込まれたブランコを始めとして、遊具も多くが損傷を受け。
 縦にひっくり返ったベンチが、標識の様に土の中から突き立ち。
 周囲を囲む木々は傾き、あるいは根を天に向けている。
 そして平らだった地面はあちこちで隆起し、もしくは陥没していた。
「キメラに‥‥襲われた人が、無事で‥‥本当に‥‥良かった‥‥」
「そうですね‥‥」
「あ。公園に入らないよう、気を付けて」
 しみじみと呟く二人へ、念のために二階堂 審(ga2237)が注意を促した。
 六人が立っている歩道の敷石も、場所によっては少し浮いているような感覚がある。不安定さを覚えたレーヴェ・ウッド(ga6249)が黙って数歩ほど脇へ移動した。彼とは逆に、観察しようとドクター・ウェスト(ga0241)は公園と周囲を隔てる柵に手をかけ、中をよく見ようと伸び上がる。
「ふむ。話に聞いた棒状の物質というのがよく判らないが、キメラはハリモグラの類に似たモノかもしれないね〜」
「被害状況からすると、ターゲットは『釣り』甲斐のある相手のようです」
 局所的に地震が起きているかのように、一部で揺れている木々を確認した綾野 断真(ga6621)が、審へ振り返った。
「準備の方、始めますか」
「そうだね。情報収集に向かった二人が戻ったら、すぐに作戦に取り掛かれるようにしておかないと」
 眼鏡のフレームを指で押し上げた審は、住民達が避難した施設のある方角へ、ちらと視線を投げる。
「まずは丈夫なワイヤーと、出来ればトラックのような馬力のある車ですね」
「ん‥‥そうだね‥‥。話が通っていれば、いいんだけど‥‥」
 リゼットや克の会話を聞きつつ、仲間達と『準備』へ向かった。

●作戦準備
 避難場所となっているコミュニティの会館には、不安げな表情の人々が集まっている。
 競合地域から遠くない場所とはいえ、まだ一応は情勢が安定しているといっていい場所なのだ。
「じゃあ、おじいさんはこちらに避難してないんですか」
「ええ。あの人が住むあたりは、まだ避難指示が出ていないからねぇ」
「もしかして、住所をご存知ですか?」
 愛想よく頷く女性に、ナオ・タカナシ(ga6440)は急いで紙を取り出し、メモを取る。
 説明をする女性の後ろでは、おそらく娘なのだろう。四歳か五歳くらいの女の子が、ぎゅっと女性のスカートを握っていた。それに気付いたナオがにっこりと微笑めば、恥ずかしそうに女の子は女性の後ろへ隠れる。
「こぉら。このお姉ちゃんとお友達が、公園に出た悪いキメラをやっつけてくれるのよ?」
「あは‥‥はは、いいですよ。すぐにまた、みんなと公園で遊べるようになりますからね」
 ちょっと強張った笑いを返したナオは、小さく女の子へ手を振ってみせた。
「では、ありがとうございました」
 女性へ礼を告げてから、彼は足早に公衆電話へ向かう。
 メモを取り出し、書かれた番号のボタンを押せば、数回の呼び出し音の後に男の声が電話に出た。
「あの、ロジーさんはいらっしゃいます?」

「代わりました。場所の方、判りました?」
『はい、彼の住所ですが‥‥』
 受話器を肩と手で押さえながらロジー・ビィ(ga1031)はペンを走らせ、ナオの言葉を紙へ書き取った。
『後はお任せ致します。お手並み、拝見しますね』
「ええ、任せて下さいな。子供達の方は、お願いしますわ」
 静かに受話器を置くと、ロジーは住所を書いた紙をメモブロックから剥ぎ取る。
「すみません。こちらの住所なんですが‥‥」
「了解しました」
 頷く警官に案内され、ロジーは目撃者である老人の元へ向かった。

「みんなが帰って、エルヴィンと遊んでたら、急に地面ががば〜ってなったんだよ」
「‥‥うん」
 気の強そうな少女の言葉に、おとなしそうな少年がこっくりと首を縦に振る。
「じゃあ、友達が帰る前は、特におかしい事はなかったんですね」
 重ねてナオが尋ねれば、ジェシカとエルヴィンは顔を見合わせてから、再び揃って首肯した。
「二人とも、怖かったでしょう。話してくれて、ありがとうございます」
 笑顔で礼を告げたナオだが、まだ二人の子供は何か言いたげな微妙な表情をしている。
「どうか、しましたか?」
 促すようにナオが重ねて問えば、おずおずとエルヴィンが口を開いた。
「お兄ちゃん達、悪いやつらをやっつけてるって‥‥ママが言ってた」
 友達に続いて、ジェシカもまた小さな手を祈るようにぎゅっと組んだ。
「うん。頑張って、やっつけてね!」
「はい、頑張ります」
 子供達を安心させるように、ナオは笑顔で即答する。それから顔を上げて周りを見れば、やや遠巻きに様子を窺う子供達と、不安げな表情を向けている親達の姿が目に入った。エルヴィンやジェシカと同じ年頃の子供もいれば、それよりも年上や年下の子供もいる。
 ナオはきゅっと口唇を結ぶと、その期待と不安の瞳を見返し、真剣な表情で透き通る様な白い髪を揺らした。
「大丈夫ですよ。明日からはきっといつも通り、公園で遊べますから」

「どうだった‥‥と言われても、ワシはただ子供達を助けねばと必死だったからのう」
 椅子に深く腰掛けた老人は、組んだ指を見下ろして深く息を吐く。テーブルを挟んで座るロジーは、膝に肘をついて僅かに身を乗り出した。
「直感的なもので、構いませんわ。実際に遭遇された方の情報は、貴重ですから」
「とはいえ‥‥そうだなぁ。後で、モグラに似ておるとは思ったが」
「キメラの移動のスピードなどは、どうでした?」
「命からがら、ワシらが逃げ延びたんじゃ。少なくとも、車の様に早い訳ではないのかもしれん」
「確かに‥‥そうですね」
 世の中には、老いてもなお老いを感じさせない者もいるが、少なくとも目の前にいる相手の身のこなしは、経年による年齢相応の衰えを感じさせる。気が動転していたというのもあるだろうが、二人の子供達を庇いながらでは、成人男性と比べても走るのは遥かに遅いだろう。
「では、地面から突き出した『何か』については?」
 話の切り口を変えたロジーに、老人は皺だらけの手の甲をもう片方の手でさすった。
「それもなぁ。巨大なもんではないが、小さくもない。蔓のような軟体でもなければ、針や爪のような硬い物でもない。アレがナニか、ワシにはさっぱりのう‥‥潜望鏡に似とるとは、思うたが」
「となると、それは地表の獲物を探す感覚器のようなもので、それとは別に地中を進むための爪や何かがあって。それが地表に出せないから、公園内に留まっているのでしょうか」
 仮説を立てるロジーの言葉に答えられる者は、当然いない。
 どこからそれが放たれ、どうやって町まで辿り着いたかは不明だが、町から逃してはならない存在だという事だけは、はっきりしていた。
 ふぅと深い息を吐き、彼女は椅子から立ち上がる。
「皆さん、ご無事で何よりでした‥‥きっと、元のような公園に戻るよう、尽力致しますわ」
「ああ。お嬢さんも、気を付けてのう」
 心遣いに笑みで答えたロジーは老人の家を出ると、案内役の警官が待つ車へと向かった。

「ウィンチは、なくてよかったんですか?」
 大型ダンプを前に役場の職員が尋ねれば、コピーした地図を広げていた審は「あ〜」と小さく唸ってぽしぽし頭を掻く。
「まぁ、ウィンチが壊れて逃げられる可能性も‥‥否めないしな」
「ワイヤーも、丈夫なのを借りてきたしね‥‥」
 空っぽのトラックの荷台へ抱えていた鉄製のワイヤーを乗せると、克は金の瞳を閉じた。次に目を開いた時、彼の瞳の色は本来の黒に戻っている。
「怖い思いは‥‥もう‥‥させない‥‥。公園のキメラは‥‥必ず‥‥倒すよ‥‥」
 その隣に、断真が小さな段ボール箱を置いた。
「せっかくの公園なのに、遊べないのは残念ですからね。迅速に、コトにあたりましょ」
「‥‥そうだね‥‥」
 断真の言葉に、覚醒を解いた克がゆっくりと頷く。
「それにしても、随分といろんなボールを貸してくれたのね」
 彼の横から箱の中身を覗いたリゼットが、くすりと笑った。段ボール箱の中には、児童向けのカラフルなボールから、テニスや野球、そしてバレーやサッカーに至る各種スポーツ用まで、様々なサイズと種類のボールが入っている。それに混じって、数個の接着剤も放り込まれていた。
「はい。ドレが効果的なのか迷っていたら、いろいろ持っていけばいいと、職員の人が」
 箱の中からテニスボールを手に取ったリゼットは、感触を確かめるように何度かボールを握る。
「ナオさんとロジーさんが戻ってきたら、二人の話からドレを使えばいいか絞れますね」
「あの‥‥お話中、すみません。車の方は、大丈夫でしょうか?」
 案内していた職員が、四人の背中へおそるおそる尋ねた。
「それなら、大丈夫です。たぶん」
 おそらくは、能力者と同行するならば、キメラト出くわす事になると心配していたのだろう。断真が答えれば、職員は安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ、行こうか」
『物資』が揃った事を確認した審が、ダンプの助手席側の扉を開く。
「これで、キメラを引きずり出せればいいですね。キメラの監視をしている人達へ地図を渡してきましたし、作戦に使えるようなルートを見つけてくれればいいんですが」
 大型ダンプを眺めていたリゼットの呟きに、黙ったまま克も頷いた。

 公園の前ではウェストとレーヴェがキメラの動向を監視する一方で、地図を地面に広げていた。
「地中から引きずり出すとなると、純粋に力勝負になるだろうから、速度を上げられる直線が望ましいね〜」
「曲がると、角になる建物が損傷を受けかねないからな」
「できるだけ直線になるようにするなら、こっちからこう引き付けて‥‥」
 検討したルートをウェストが地図の上でなぞり、運転を担当するレーヴェが実際の風景と照らし合わせる。
「幸い、今回は二人もサイエンティストがいる『恵まれた環境』だ。多少の無理もきくか‥‥」
 現場を検証する二人の耳へ、力強いエンジンの音が届く。
「どうやら、無事に調達してきたようだな」
 気付いたレーヴェが周囲を見回せば、一台の車に追走する大型のダンプが角を曲がって姿を見せ。
 続いて別方向からも、仲間達を乗せた車が戻ってきた。

●キメラ一本釣り作戦!?
「準備はいい? じゃあ‥‥いくよ」
 覚醒した克の、その言葉が合図だった。
 接着剤で、靴下−−剥ぎ取られた不幸な人物が誰かは、置いといて−−を貼り付けたカラーボールを手に、克が大きく振りかぶる。
 ワイヤー付きのボールは、それでも軽々と空中へ放たれる。
 ボールはむき出しの地面の上でバウンドすると、てんてんと転がり。
 足元の振動と共に、土が盛り上がった。
 輪にして束ねていた余分がどんどん解け、レーヴェがダンプのアクセルを踏む。
 見る間にワイヤーはピンと張り詰め、アクセルの感触が重くなった。
 武器を構えた者達が見守る先で、地中からソレが引きずり出されてくる。
 ワイヤーに喰らいついたキメラの頭部は先細りになり、一本の角のようなモノが突き出していた。
「今です!」
 公園の柵で待機していたリゼットが合図をして、手にしていた細目のワイヤーの輪を放り投げ。
 同時にロジーもまた、投げ輪の容量でワイヤーを投じる。
 二本のワイヤーの輪は、辛うじて突起に引っかかった。
 が、最初のワイヤーに引きずられたキメラがもがくと、細いワイヤーの先に括りつけた樹木は大きく傾ぐ。
「断真さん、あれ」
 弓に矢を番え、様子を見ていたナオがその揺れ方に気がついた。
「先に、木が倒れそうですよ!」
 スコーピオンを構えたまま、断真が警告の声を上げる。
「キメラが地中を掘り回っていたせいで、根の張りが緩くなってるんだね〜。地上まで引きずり出さず、地中にいるのを叩いてはどうかね?」
 顎に手をやって呻くウェストに、じっとキメラを注視したままの審が首を横に振った。
「逃がす訳には、いきません。地中に戻れない道路か石畳の上に引きずり出すまで、ワイヤーさえもてば‥‥」
「こっちも、できるだけ押さえてみるわ」
「はい!」
 柵の上からロジーが公園内へ飛び降り、リゼットが後に続く。
 二人は厚手の手袋をはめた手で、木を揺らすワイヤーを掴み、引いた。
「あと、少しなんだ。頑張って!」
「判ってる」
 声をかける克に答えたレーヴェは、ギアを下げてアクセルを踏み込む。
 エンジンが唸りを上げ、重い車体はじわじわと前に進んだ。それに従い、キメラも徐々に公園の地中から道路へ引きずり出され、茶色い楕円のような寸胴の胴体が、顕わになる。
 おおよそ2mほどの大きさのキメラは、モグラに似ていた。
 体の下側にある、鋭い爪のついた腕を振り回して、キメラはワイヤーを引っかき。
 そのたびに、ワイヤーが鈍い音を立てる。
 それを見て、審は超機械γを手にした。左の手首に、蒼白い光の腕輪が浮き上がる。
「『練成弱体』をかける。ワイヤーが切れる前に、攻撃を!」
「それじゃあこっちは、『練成強化』を担当するかね〜。もちろん、幾人分かは分担してもらわないとだが」
 エネルギーガンを手にしたウェストに審は頷き、再びキメラを見据えた。

 能力者達の武器が、順番に淡い光に包まれる。
 自分の武器が強化された事を確認すると、五人は攻撃を仕掛けた。
 建物の窓のスナイプポイントに陣取ったナオは長弓を、引き絞り。
 断真が、銃の引き金を引く。
 フォースフィールドを貫く攻撃に、キメラはずんぐりとした胴体を捩じらせた。
 両手両足の鋭い爪が石畳を引っかき、逃げ場を探す。
「何か、不意打ち的な攻撃手段があるかも」
 両手でバスタードソードの柄を握るリゼットが注意を促せば、克とロジーが頷く。
「気を付けますわ」
「その前に、潰すけどね」
 そして断罪するかの如く、掲げた刃を振り下ろした。

 子供達の声が、緑の中に戻ってくる。
 小さな両手で掴んだ柵の間から覗き、あるいは柵の上へよじ登り、荒れ果てた公園にわいわいと騒いでいた。公園の中では、役場の職員達が長い棒で地面を突付き、あるいは遊具を揺すったりして、安全の確認作業をしている。
「地面が掘り返されて、危ない場所もあるかもしれないけど‥‥すぐ、元通りになりますよ」
 後ろからリゼットが声をかければ、振り向いた子供達は明るい笑顔で「うん!」と力いっぱい首を縦に振った。
 いつの間にか太陽は西へ傾き、心配そうに見守っていた親達が家路を急かす。
「じゃあね、ありがとう!」
「お兄ちゃんとお姉ちゃん、またね!」
 無邪気に手を振る子供達へ、八人は笑顔で手を振り返した。