タイトル:【Woi】砂礫の楼閣マスター:川澄秀郷

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/09/03 08:15

●オープニング本文


 北米中央部の砂漠地帯。砂礫の地平線から砂塵を朦々と上げて、機甲軍団がやってくる。今では二線級の兵器に成り下がった、UPCのM‐1戦車。その進行方向にいるのは、六機のヘルメットワーム。砂漠の太陽に白銀の昆虫的なフォームが輝く。本来であれば圧倒的な力を誇るヘルメットワームだが、索敵を逃れるために低空飛行で行軍中を、戦車とKVの混成軍に捉えられた。
 上空の制高を高火力武装のF‐16改とS‐01に抑えられ、高度を上げられないヘルメットワームは数で圧倒的に勝る戦車の火力に、劣勢を強いられているように見える。
 M‐1戦車のライフル砲が轟音を上げる。遮蔽物のない平らな砂漠では、旧来型の兵器でもある程度は物量にものを言わせることが出来る。戦車を中心とする地上軍は両翼を広げて半包囲しつつ射撃を繰り返す。
「ふふふ、機械化波状攻撃の威力を見たか。まだまだ戦車だってやれるんだ、能力者に負けてたまるか!」
 指揮車輌の中で大隊長が叫ぶ。
「グデーリアン将軍も照覧あれ。濃密な火力のカーテンでやつらを包み込め!」
「中佐殿、機械化波状攻撃はロシアのドクトリンですよ。それに、ステイツ軍人としては責めてパットン将軍を挙げてくださいよ」
 通信員がそう口をはさむ。
「ははっ、俺はドイツ系なんだ。細かいことは気にするな。少尉、やつらは撤退を続けているのか?」
「ええ、直掩のKVがしっかり頭を抑えています。しかし、このままいくとフォックスバレーの渓谷地帯に突入します」
「フォックスバレー?」
「ええ、砂岩が風で侵蝕されてできた渓谷地帯です。岩山が壁のようにそそり立つ、厄介な地形です」
「ええい、大隊に通達! 到達する前にやつらを落とせ!」

 数十分後。ヘルメットワームの一隊は既にフォックスバレーへと到達していた。そこは、そこかしこに岩塊が壁のようにそそり立ち、まるで高層ビルのビル群に紛れ込んだかのようであった。
「岩塊が邪魔をして射線を確保できません! 敵HWロスト!」
 戦車の中で砲撃手が叫びをあげる。
「直掩の空軍は?!」
「低高度ではF‐16改は対応不可能だ! S‐01は数が足りん」
 車長は歯噛みして命令を下す。
「くそ! 退却だ!」
「七時の方向、敵HW! 岩塊に隠れていました!」
「ええい、厄介な岩山め!」
 戦車が全速で後退をかける。だが、複雑な地形の上狭いところに複数の戦車が展開しており、迅速な後退が出来ない。次の瞬間、ヘルメットワームの収束フェザー砲が戦車を消しとばしていた。

「第三中隊、損害率六割以上。第四中隊‥‥戦闘能力を喪失。撤退は完了」
「くそ、この地形では手出しできないか‥‥敵に動きは?」
 大隊長が苦虫を噛み潰した表情で確認する。
「フォックスバレーに篭ったままです」
「援軍は?」
「近在のKVは別任務で張り付けられています。予備兵力は不足」
「むむ‥‥傭兵にでも頼むしかないか‥‥HQに連絡。それまで‥‥やつらをフォックスバレーに張り付ける」
 若干憔悴した表情で、大隊長は命じた。

●参加者一覧

里見・さやか(ga0153
19歳・♀・ST
月影・透夜(ga1806
22歳・♂・AA
雪村・さつき(ga5400
16歳・♀・GP
ブレイズ・S・イーグル(ga7498
27歳・♂・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
ティリア=シルフィード(gb4903
17歳・♀・PN
望月 美汐(gb6693
23歳・♀・HD

●リプレイ本文

 どこまでも砂礫の大地が続く。水平線の向こうに至るまで、目に入るのは乾いた大地。その水平線を、八機のKVが切り裂いていく。
「大規模作戦はひとまず終わりましたけど‥‥北米での戦闘はまだまだ続きます。むしろ、大切なのはこれから、だと思います」
 バイパーの操縦桿を握りながらティリア=シルフィード(gb4903)がつぶやく。
「潜り込んだ鼠を燻り出すのが今回の任務か。まあ、鼠というには手強くて大きいがな。ともかく期待には応えないとな」
 Anbar(ga9009)が前方を見据える。景色は先ほどから変わりない。やがて、彼らの行く手に装甲車輌の展開しているのが見える。ここまで追い詰めてきたUPC地上軍だろう。
「やれやれ、軍も頑張るわねぇ‥‥ま、勝ってるところで退くのは難しいでしょうけど」
 雪村・さつき(ga5400)が彼らを眼下にそうつぶやく。
「軽口を叩くじゃないか、雪村。また、一緒に戦えるとは」
 無線の向こうでそう応えるのは、部隊仲間であるブレイズ・S・イーグル(ga7498)だった。
「ブレイズ。戦争ってのはお偉いさんが机の上でやるものよ。最後に勝っていればそれでいい。だけどあたし達の命は一つしかないからね。生き残らなくちゃ意味がない。そうでしょ?」
「たしかに。だが、そのお偉いさんは今回の大規模作戦で降格だ」
「軍としては今回のことも苦々しいことだろう。肝心なところで傭兵に華を持っていかれるとな」
 ブレイズの後に続けるのはリヴァル・クロウ(gb2337)であった。
「こういう場合追い詰められたのはどちらか‥‥ってのがお約束だが」
 月影・透夜(ga1806)が冷静な口調でつぶやく。
「追い詰められているのは軍の上層部、って悪い冗談ね」
 さつきが溜息を交えてそう続ける。
「まったく、悪い冗談だ」
「私たちは、これ以上損害を出さずに敵を叩けるよう、頑張るだけです!」
 ブレイズの言葉にかぶせるように、里見・さやか(ga0153)が意気込んだ。そこに、UPCの軍用チャンネルで通信が届く。
「こちら直掩のS‐01。ULT派遣の貴機らを確認した。応答せよ」
「こちらULTよりの派遣の傭兵団です。大雑把でも構いません、少しでも情報があればお願いします」
 望月 美汐(gb6693)が無線に応じる。
「了解した。地形データは既に更新されていると思う。我々が確認したのは六機のHWだ。渓谷の奥深くに立て篭もっている」
「わかった。我々は着陸して変形の後地上からの掃討に移る。UPCにあっては渓谷上空を抑え、HWの急上昇に備えてもらいたい」
「了解した」
 Anbarの言葉にUPCのパイロットが応える。
「では各機打ち合わせどおりに。渓谷の底で落ち合いましょう」
 さやかの言葉に各員応じて、やがて二機一組となり渓谷の四方へと別れていった。

 岩と砂で覆われた大地に、二体のKVが機影を落とす。繊細な姿を描くウーフー、優美な前進翼のディアブロ。二機の機影は次第に大きくなり、やがて砂礫の大地に着輪する。
「こちら望月、着陸完了。敵影は見えず」
 着陸したウーフーが機動音を立てて僅かな間に歩行体型に変形する。
「雪村さつき、F‐108ディアブロ。Get Ready Go!」
 やがてディアブロも歩行体型に変形した。辺りは静かというのか、二体のKVの駆動音以外音がしない。
「こちらAnbar。A班も着陸した。辺りは静かだ。今のところ通信もクリアだな」
 通信機の向こうは、ほとんど雑音もない。
「息を潜めて待ち構えるつもりね。行きましょう」
 さつきが操縦桿を倒すとディアブロは一歩ずつ大地を踏みしめ始めた。
「了解です。アンチジャミング起動開始、準備完了です」
 美汐のウーフーもまた駆動音を上げて前進する。
「行きましょう、隠れた鼠を燻りだしに」
 さつきがつぶやく。二体のKVは林立する岩の塔の中へと分け入っていった。

 巨大な砂岩の塊、その渓谷の底を二体のKVが進んでいく。ウーフーとバイパー改。さやかとティリアの搭乗機である。
「先ほどからレーダーに影が出ています。0時の方向」
「近いのかしら。通信も、さっきまで通じていたのに」
 ウーフーの強力なレーダーもジャミングされていた。他のエレメントとの通信は、先ほどから絶たれている。ティリア機がライフルを構えなおす。その時、ウーフーのコックピット内にアラートが鳴り響いた。
「目標真っ直ぐ近く! 警戒を!」
 さやかの声を受け、ティリア機がさやか機を掩護する位置に出た。目の前には岩の塔が聳えている。しばし、沈黙が流れる。やがて、岩の陰に煌く姿が見えたかと思うと、収束フェザー砲の紫色の光線がほとばしった。
「きたわねっ!」
 さやか機がバルカン砲を放ち、ヘルメットワームを牽制する。その隙を突いて、ティリア機が白双羽を抜きつつ接近を試みる。ワームは岩陰より砲撃するが、ティリア機は白双羽でそれを受け流す。
「この仕事が終わったら、オーバーホールに出してあげるから‥‥『Sylph』、もう少し頑張ってもらうね?」
 そういいつつ、ティリアは愛機をステップさせる。ワームまで遮るものは何もない。ティリア機はガトリング砲を撃ち放ち、ワームを牽制する。さやか機も射線の開けたところへと出て、バルカン砲を叩き込む。
「これで‥‥どうかしらっ!」
 ティリア機は玄双羽を抜き放ち、一気にワームの懐に入り込む。一瞬、ワームは動きを止める。そこをティリアが玄双羽で切りつける。金属音が鳴り響き、ワームの装甲が弾ける。
「やったわ!」
 ティリアがコックピットで拳を握る。ワームは切られた勢いで後退する。次の瞬間、ワームの周囲に砂塵が舞い上がる。
「くっ!」
 ティリアが思わず後退する。砂塵といってもそれほど濃密ではなく、すぐにワームの輪郭が見て取れた。
「行かせは!」
「駄目です、あの砂塵ではKVの機動部にダメージが!」
 ティリアの言葉にさやかが叫ぶ。万一、あの砂塵がKVの関節部などに付いたら、運動性能にダメージを受ける可能性がある。
「くっ‥‥!」
 ティリアは砂塵の向こうに見えるワームの輪郭にライフルを撃ち込む。手ごたえはあったが、ワームは渓谷の奥へと後退してしまった。
「迂回していけるかしら?」
 ティリアはさやかに訊ねた。
「ええ、地形データによれば、こちらの方から迂回できるようです」
「では、いきましょう」
 その時、渓谷の彼方から砲音が聞こえてきた。
「他の班も接敵したようね。急ぎましょう」
「ええ」
 ティリアの声に、さやかが答える。二機のKVは砂塵の上がった谷を迂回して先へと急いだ。

 渓谷の向こうで砲音が聞こえる。一箇所ではない、複数箇所だ。
「はじまったな‥‥Anbar、敵は近いか?」
 ブレイズが操縦桿を握りながら訊ねる。
「電子波長装置の様子からしてもう近い‥‥おそらく、その岩陰だ」
 ブレイズの、深紅のフェニックスより一歩遅れて、Anbarの骸龍が追随する。
「なるほど。迎撃にはうってつけか」
 ブレイズ機がガトリング砲を構える。骸龍もその後ろでショルダーキャノンを準備する。
「仕事だ‥‥行くぞ、フェニックス」
 ブレイズ機は勢いよく岩陰から飛び出た。待ち構えていたかのように、収束フェザー砲が乱舞する。ブレイズ機はシールドで攻撃を受け流しつつ、ガトリング砲を放つ。岩影からは、Anbar機がショルダーキャノンで砲撃を開始した。
「悪いが‥‥そっちの思惑通りにはいかないぜ」
 途中の小さな岩塊を盾にしつつ、フェニックスはワームとの距離を詰めていく。ワームの方は岩陰から露出して猛烈に砲撃を行う。Anbar機はなおも岩陰から砲撃する。しかし敵の濃密な砲撃の前に前進できない。
「多少の損害はやむをえないか」
 ブレイズは意を決して岩塊から飛び出す。ワームの砲撃がシールドの装甲を溶かす。肉薄したブレイズ機が、ワームにソードウィングの一撃を叩き込む。金属のぶつかる高い音がする。ワームの装甲が弾ける。斬った勢いで、ワームは後方へと飛ばされる。
「やったか?」
 骸龍が砲撃を一時中断する。ワームが、後方の岩塊にぶつかる。辺りに砂塵が舞い上がる。砂塵をよけて、ブレイズ機は少し後退する。しばしの沈黙の後、ワームが駆動音を上げる。再び更に砂塵が舞い上がる。
「くっ、砂塵に紛れて退く気か?」
 ブレイズ機は後退する。視界は利かなかったが、ガトリング砲を放つ。骸龍も砲撃を再開した。砂塵の向こうにワームの輪郭が見える。ワームは、砂塵の中から砲撃しつつ、渓谷の奥へと退却し始めた。
「この砂塵では追えないか」
「そうだな、ブレイズ。通信も阻害されている。深追いは止めよう」
 二機のKVは体勢を立て直すと、砂塵を迂回して渓谷の奥へと進んだ。

 その頃、渓谷の中央部では、透夜とリヴァルの機体が敵ワームの迎撃を受けていた。
「くっ、先制をとられることは想定済だ。だがそれで落ちるほど柔な機体じゃない」
 透夜のディアブロが岩塊の影からライフルで狙撃する。
「援護する。タイミングに任せるぞ」
 リヴァルのシュテルンもライフルを放つ。二機の砲撃を受けて、敵ワームが、一段と濃密な砲撃を浴びせる。二機は、岩陰に隠れた。ワームの砲撃はすぐに止んだ。岩陰から様子をうかがうと、ワームは渓谷の奥へと退却してゆく。
「逃げる? ‥‥一定の距離を保って追うぞ。誘い込まれて全方向射撃は勘弁願いたいからな」
 二機は岩を盾にしつつライフルを放ち、ワームを追ってゆく。
「四時方向、もう一機いるな」
 リヴァルはコックピットのパネルを確認する。
「リヴァル、後ろの警戒は任せた」
 透夜は目の前の敵に専念する。リヴァル機は、レーダーに反応のあったほうを確認する。
「きたな」
 もう一機のワームは岩陰から姿を現すや、猛烈な砲撃を浴びせ掛ける。
「はさまれるとは面倒な」
 リヴァル機は岩塊を盾にしつつ、ライフルを放つ。そこへ、横薙ぎにレーザーバルカンの閃光がワームに叩き込まれる。
「大丈夫?!」
 通信に入ってきたのはさつきの声だ。見ると、ワームの横腹をつくように、さつき機と美汐機が姿を現す。さつきが盾を手にバルカン砲を撃ちこむ。
「援護射撃はお任せあれです♪」
 美汐が高分子レーザーを放つ。光線はワームを貫通した。ワームがバランスを崩す。そこへさつきが突撃し、ソードウィングで一撃を食らわせた。その一撃で、ワームは沈黙した。
「ああ、俺は平気だ。あと一機、ワームを透夜が相手をしている」
「では援護します」
 美汐機がレーザーバルカンを構える。
「こっちだ、急ごう」
 リヴァル機が駆け出す。残る二機も透夜機のいるほうへと駆け出した。三機はすぐに透夜機に合流する。
「無事だったか」
 透夜の通信が入る。透夜機と敵ワームの間は膠着状態にあった。
「援護するわ」
盾を手にさつき機がライフルを放ち、漸進する。
「はい、そこから左に行ってくださいね〜」
 美汐機がレーザーバルカンで弾幕を張る。
「渓谷から出すつもりはない。ここで果てろ」
 ワームの動きが止まったのを見て、透夜機が一気にワームの懐に飛び込む。透夜機はワームに肉薄すると、そのままハイディフェンダーを一気呵成に振り上げた。金属のぶつかる鈍い音がする。ワームはそのままはじかれるように落下すると、完全に沈黙した。
「これで二機か‥‥あと何機だ?」
 リヴァルが確認する。
「ここに来るまでに一機落としたわ」
 さつきが答える。
「ということはあと三機か‥‥」
「レーダーに感! 来るわ、南北から!」
 リヴァルの声にかぶって、美汐が声をあげる。遠くから、砲撃音が鳴り響く。
「迎撃するぞ」
 透夜がライフルを構える。四機は、それぞれ背中を合わせる。やがて、南の方、岩の塔の影からワームが姿を現す。
「ここで堕ちるなんて冗談は無しよ」
 さつきが軽口を叩く。KVの姿をみとめるや、ワームは砲撃を開始した。それに応じて砲撃するKV。
「こっちもか!」
 リヴァルは叫ぶと、PRMを作動させる。北の岩陰からもワームが姿を現したのだ。それも二機。
「D班で北のを迎撃する。それまで耐えてくれ!」
 透夜が叫ぶ。全力を出したリヴァル機と透夜機が一気にワームの方へと肉薄する。そこへ、リヴァル達の向こう、ワームのやってきたほうからワームに射撃が加えられる。
「大丈夫か?!」
 Anbarからの通信が入る。
「Anbarとブレイズか!」
 リヴァルが応えた。ワームは、後背からの射撃を受けて、動きが取れない。その隙を突いて、リヴァル機と透夜機のハイディフェンダーがワームの胴体を貫いた。
「間に合ったかしら?!」
 続いて、ティリアからも通信が入る。
「ごめんなさい、一機追い込んだのだけれど、逃がしてしまって」
 さやかからも通信。南からの班も合流したのだ。
「OK、大丈夫よ! これで形勢逆転ね」
 さつき機は岩陰から姿を出してワームに更に砲撃を加える。ワームはそれを避けようと、旋回もせずに横方向へと機動する。
「もう、相変わらず滅茶苦茶な機動ですね」
 美汐機がレーザーバルカンでワームの動きを阻止しようとする。渓谷の向こうからさやか機とティリア機が姿を現す。
「かくれんぼと鬼ごっこは、これで終わり‥‥落ちろっ!」
 ワームが動きを止めたところにティリア機が黒双羽を振りかざして突撃する。黒双羽にワームは貫かれ、墜落した。残る一機は、もはや形成不利と見たか、急上昇をして空へ逃げようとする。
「飛ぶ気か!」
 透夜は咄嗟にワームの頭上の岩塊を狙撃した。岩が崩れ、ワームにぶつかり、細かい砂礫となって辺りに四散する。バランスを大きく崩す。
「落ちろ、その身体に風穴開けてな!」
 透夜はそのままハイディフェンダーをワームに突き立てる。ワームは、完全にその活動を停止して、落下した。続いて、透夜の狙撃した岩の塊が、崩れ落ちて透夜機に降りかかった。

 辺りにワームの残骸が転がる。リヴァルは、コックピットのキャノピーを開けると、大きく息をついた。
「任務終了、帰還しよう。‥‥といいたいところだがな」
 彼の目の前には、砂にまみれた僚機の姿があった。
「あの砂塵では変形もできないか」
 透夜のディアブロである。
「はわー‥‥終わったぁ〜‥‥。お疲れ様でした皆さん」
 さやかが、コックピットから降りてきて、ヘルメットをはずしつつ息をついた。
「よう、まだ生きているか? 相棒」
 一足先に下りていたブレイズが、さつきのキャノピーが開くのを眺めつついった。
「まったく、砂まみれよ。帰ったらホットドッグとジンジャーエールよろしく」
 そういってウィンクするさつき。
「HQと通信とれました。回収車をまわしてくれるそうです。我々の分も」
 Anbarの声がする。透夜のディアブロは砂塵が駆動部につまり、変形もできない状態だった。ほかのKVも、砂塵のせいでどこかしら駆動がおかしかった。コックピットから出てきた透夜は、自機を見上げてつぶやいた。
「砂だらけだな。洗浄は手伝うか」