タイトル:【Woi】不機嫌な石油王マスター:川澄秀郷

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/23 23:38

●オープニング本文


 薄暗い会議室。諜報部にふさわしいその部屋で、数名の士官が写真を取り囲み角突き合わせて協議をしていた。
「では説明させていただこう」
 一人の士官が立ち上がる。白いスクリーンに、一人の男の写真が映し出される。
「ドン・パティーニョ‥‥」
「皆さんご存知でしょう。ラテンアメリカの、石油王と呼ばれた人物です」
 士官達の間で軽くざわめきが起きる。
「生きていたのか」
「ええ、バグア占領地域と競合地域の境、まったく微妙なところでね。バグアにのっとられた、あるいは強化人間にされて石油プラントを運営しているといわれていましたが。生きていましたよ、生身でね」
 得意げな顔で、立ち上がった士官が語る。
「その彼が、どうしたというのだね? 確かに生きていたのは驚きだが」
「私の機関に接触してきたのです」
 ほう、と溜息が聞かれる。
「しかし、彼はバグアに協力しているんじゃないのかね?」
「さて。そこなのですよ。彼は、自身の安全を条件に、我々に協力してもいいといっている。彼は、現在自身の邸宅に、ほぼ軟禁されているという」
 立っている士官が、今度は地図を投影する。
「場所はこの通り、占領地域に程近い。やや高度はあるが、密林地帯。情報によれば、彼の館には番犬よろしく一頭のキメラが張り付いているとのこと。番犬にふさわしい、ケルベロスのようなキメラが」
「頭が三つあるとでも?」
 ケルベロスといえば、ギリシア神話に登場する、三つの首がある冥府の番犬だ。
「そのとおり。まさか、妙なる音楽で眠ったりはしないでしょうがね」
 それなら楽だ、と笑いがこぼれる。
「しかし、一民間人のために軍を動かすわけにもいくまい」
「とすれば、ULTですかな」
 彼らはドン・パティーニョの保護を傭兵達にゆだねることで意見の一致を見た。


 南米、バグアの占領地帯。憂鬱な顔で彼は外を見つめている。
「いい加減、ここにいるのも飽きたわい」
 眼光鋭い老人。かつて、南米の石油を支配するとまで言われた男。ワイングラスを片手に思案にふけっている。
「旦那様。やはり、亡命、なさるので?」
 後ろに控えている大男。ダークスーツに身を包んでいる。
「いや、どうかな。南米が『解放』された時、あの油田がわしのものでありつづけるか‥‥不安でならぬ」
「ここに‥‥留まりたいと」
 老人はワイングラスに口をつけた。
「もうワインのストックも切れる頃じゃ。それに、バグアが原油の代金を払うわけでもなし」
 館の外で、獣の遠吠えのような声が響く。件のキメラであろう。
「やれやれ、今日も元気じゃな。まったく。人間相手に戦争している間は、儲かったものだがのう。いつまでも続いて欲しくないものだ、こんな戦争は」
 老人はグラスのワインを見つめながらごちた。
「戦争は、人間相手が一番じゃ」

●参加者一覧

辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
キャル・キャニオン(ga4952
23歳・♀・BM
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
皓祇(gb4143
24歳・♂・DG
トクム・カーン(gb4270
18歳・♂・FC
メシア・ローザリア(gb6467
20歳・♀・GD
九浪 吉影(gb6516
20歳・♂・DG

●リプレイ本文

 鬱蒼とした森に囲まれて、その邸宅は鎮座していた。豪邸というには少々控えめだが、敷地はかなり広大である。その周辺の森も開けていて、そこには番犬にしては巨大な、一頭のキメラが控えていた。三つの頭を持っており、そのうち一つが辺りを警戒。少し離れた森の木陰から、傭兵たちがその様子をうかがう。
「化け物に守られるのは見目麗しきお姫様や財宝ではなく、しおしおの老人。げんなりだけど、石油王の情報が価値あるものと期待しときますか」
 細剣を手にした赤崎羽矢子(gb2140)がキメラを睨みつつ口にする。
「重要人物のエスコート。こりゃ、責任重大っすね」
「正直、軟禁で済んでいるということはバグアにとってあまり有効な駒ではありませんのね。本当に重要なら乗っ取っているでしょう」
 九浪 吉影(gb6516)のつぶやきにメシア・ローザリア(gb6467)が冷静な分析で答えてみせる。
「それにしても。ケルベロスが石油王の屋敷の、目の前に座り込んでいる、ある意味シュールな光景にバグアの意図を疑いますね‥‥」
 迷彩服に身を包んだ辰巳 空(ga4698)が口にした。
「辺りに他のキメラはいないようだわ」
「屋敷から森まで、遮蔽物はなし。事前の打ち合わせどおりに」
 哨戒に当たっていたアンジェラ・ディック(gb3967)と皓祇(gb4143)が戻ってくる。
「それにしても、余程向こうの支払いが悪いみたいね。もしくは用無しなのかしら」
「まあ、気前よく支払ってくれるバグアというのもあまり想像できませんね」
 アンジェラの言葉に皓祇が苦笑いを浮かべる。
「それでは、いきましょうか。待っていても、動いてくれそうにありませんからね」
 トクム・カーン(gb4270)が小銃を構える。それに呼応して囮役の空と皓祇が所定の位置へと周った。

 ケルベロス型のキメラが、敵を確認して遠吠えをあげる。それにあわせて覚醒した空が真音獣斬を放つ。衝撃波を受けたキメラは、だが中央の頭が仰け反っただけで、左右の頭は意気盛んに吠え立てる。トクムがそこに断続的に射撃を浴びせる。
「あなたの相手はこちらです!」
 空が瞬速縮地で一気にキメラの懐に飛び込む。そのまま朱鳳で左側の頭の喉笛を切りつけた。キメラが咆哮を上げ、空のほうへと向かってくる。空は、キメラとの距離を保ちつつキメラを屋敷から引き剥がしにかかる。キメラが空を襲おうとすれば、後方から羽矢子がエナジーガンを浴びせ掛ける。
「こちらからも行きますよ、そら!」
 金色の軌跡を描いて皓祇のAU‐KVがキメラの右側の頭へと吶喊する。手にした雲隠の刃が煌く。それを受けてキメラは皓祇の方へと襲い掛かる。皓祇も撤退しつつ野伏せ班の方へとキメラを導く。
「近づいてきたわね。コールサイン『Dame Angel』、さっと番犬紛いのキメラを倒してMVP奪還よ」
 射程距離に入ったと見るやアンジェラが突撃銃で援護射撃を開始する。キメラは空と皓祇を追ってジグザグに進んでくる。
「なんだか、間抜けですわね。頭が三つもあって、混乱しているのかしら」
 キャル・キャニオン(ga4952)が射程圏内に入ったキメラに小銃で射撃を浴びせつつつぶやいた。確かにキメラは空と皓祇の間をよろめいているようにも見える。
 ジグザグに走りつつキメラと傭兵達との距離がつまる。待ち伏せていた吉影がAU‐KVを展開させる。インサージェントを振りかざし、前へと出る。
「装着したら、何よりまず前に出る。これっすね」
 続いて、牽制射撃を続けていたトクムも武器をイアリスに切り替える。
「装備力があればもっと高火力な武器持てるんだけどな‥‥目指すはゴーレム斬りなんだがな。やはり両手持ちの武器がベストか」
「いきますわよ。所定の位置にきたざます!」
 キャルが声をあげて、先手必勝をかける。空と皓祇の間を縫いつつ小銃弾を叩き込む。
「おとなしく三途の川へお帰り!」
 弾丸を放ちつつ瞬速縮地で駆け抜ける。
「錬力がたっぷりあれば新必殺技の連続しようができるんだがな」
 そう口にしつつトクムが閃光手榴弾を投げつける。光輝が閃いてキメラの視覚にダメージを与える。苦悶の叫びをキメラがあげた。だが、ダメージの少なかった左首が、相対していた空に噛み付きかかった。
「辰巳さん!」
 羽矢子がハミングバードで左首を切りつける。キメラは噛み付いた空を、すぐに放り投げる。獣人化した空の体が地面に叩きつけられる。
「くそっ」
 武道の心得のある空は、受身を綺麗に決めるが、しかし牙のダメージだけでもかなりのものだ。続いてキメラの右首が皓祇を襲う。牙こそ逃れたものの、猛烈な体当たりをくらい、AU‐KVが跳ね飛ばされる。
「眼を潰してあげますわ!」
 アンジェラが鋭覚狙撃で真中の首の目を射抜く。完全に眼を潰された真中の首は、闇雲に焔のブレスを吐き出した。
「地獄の犬の名前は伊達ではありませんわね!」
 射線上にいたメシアが自身障壁を展開、これを防御した。同じくブレスを浴びた吉影も、竜の血で回復を図る。
「そら地獄の番犬! 地獄の壁の厚さ思い知れ!」
 そう叫ぶと、吉影は竜の爪を使い得物で斬りかかる。中央の頭部にかなりの傷を負わせるが、なおもキメラは咆哮を上げる。
「この攻撃が地獄の切符ざます」
 叫びをあげたところを好機と見て、キャルが急所突きでキメラの顎に銃弾を打ち込んだ。キメラがひるんだ懐に、トクムが迅雷で突撃をかける。
「新必殺技! 二連剣舞・弐式飛燕!!」
 叫ぶや迅雷の勢いそのままに円閃と二連撃を叩き込む。キメラが苦悶の声をあげる。だがまだ首は生きていた。トクムの一撃を危険と見たのか、三つの首がトクムの方を向く。ブレスを吐こうと、口元に焔が瞬く。
「錬力大量消費のこの大技。少しは効くだろう」
 そうほくそ笑みつつ、退避行動に移る。だが、キメラは三つの首をトクムに対してもたげる。焔のブレスを吐き出した、その瞬間、横手からの竜の咆哮がキメラを襲う。
「余所見よくない! 折角首三つあるんだろ! 三箇所に分けてナンボだろ!」
 咆哮を放ったのは吉影だった。
「すまない、九浪さん!」
 ブレスをくらいダメージを受けつつも、トクムが感謝する。
「いえいえ! しかし豪気!」
 吉影はそう応えつつ、武器を振りかざして攻撃する。更に皓祇の超機械が発動する。キメラが苦しむところへ、キャルが瞬速縮地で急接近。先手必勝をかけてスパークマシンαで電撃をくらわせる。だが、のたうちながらもいまだキメラは暴れていた。
「往生際が悪いわね」
 アンジェラが強弾撃に影撃ちを重ねつつ正確な狙撃を行う。
「やはり支給品の数撃ちの太刀では威力が小さいか。とはいえ名刀はKV搭乗権なみの価値あるし。痛し痒しとはまさにこのこと」
 そういいつつトクムがイアリスを振りかざす。円閃に二連撃を重ね、一撃を加える。
「みよ! これが二連剣舞・壱式だ!」
 強烈な一撃に、ついに真中の首が沈黙する。さすがのキメラも、腰が砕けてそろそろと後退し始める。
「のがしませんよ!」
 皓祇が竜の翼でキメラの後方へと周る。雲隠を振りかざし、敵の退路を断つ。キメラは尾を鞭のようにしならせて、それに対抗する。闇雲に尾が振りかざされる。
「しつこいワンちゃんだね‥‥これで‥‥オーラスッ!」
 羽矢子がハミングバードで急所突き、更に紅蓮衝撃を乗せて繰り出す。キメラが断末魔の叫びをあげる。そのまま力を失っていき、やがてただの肉塊と化した。

 館で待っていたのは、車椅子に座った老人と背後に控える大男であった。老人は、傭兵達を迎えると、ぱちぱちと拍手をした。
「いや、素晴らしい戦い振りだった。しかも、君達のような若者が来るとは思わなんだ。傭兵といえばフランス外人部隊のようなむさい連中が来るとばかり思っていたわい」
 愉快そうに笑う老人を前に、傭兵達は静々と挨拶をする。
「お初にお目にかかります、ドン・パティーニョ。お迎えに上がりました。私、此度の道中の安全にと遣わされた九浪吉影と申します」
 そういって吉影が恭しく一礼した。
「ドン・パティーニョ、諜報部の代理で来たことをお許し下さい。ですが番犬を排除して見せた通り、手練の能力者を寄越した事で情報部が貴方を重要視している事をご理解戴ければ幸いです。勿論、安全も保証します」
 更に羽矢子が礼節を見せる。
「はっはっは、時代は変わったものよ。シュミット、彼らは今ではお前より腕の立つ傭兵なのだぞ。わしも生の能力者の戦いははじめてみたがな」
 パティーニョは喜色をあらわにしつつ、後ろの大男に話し掛ける。愉快そうな石油王に、トクムがおずおずとワインを差し出す。
「安売りですが、どうですか? 私はまだ未成年ですが」
「ほう、これはありがたい。わしもワインのストックがつきかけた故、UPCの保護を求めたようなものじゃからな。シュミット」
 パティーニョはワインを受け取ると、そのまま後ろに控える大男に渡す。彼は栓を抜くと、グラスに少し注ぎ、味を見る。
「それほどのものではありませんが。たまには民衆の口にするワインもよろしいものですわよ。上質なものばかりですと、つまらなくなりませんこと? 卿は戯れの楽しみを理解していらっしゃると思いますわ」
 メシアが微笑みながら口にする。シュミットはグラスにワインを注ぐと、パティーニョに差し出した。
「ふふ、わしも軟禁されている間、何とか手に入ったワインはそのようなものだったよ。ストックが多かったから助かったがね。ええと‥‥」
「ローザリア侯爵家のメシアと申しますわ」
「うむ、ローザリア卿。それに、わしも石油王などといわれる前は、一介の山師にすぎなんだ。本物の爵位のある卿とは違う。ただ、周りの人間がもてはやして『ドン』などと呼んだまで」
 そういってグラスのワインをくゆらせる。
「いい香りだ。チリかな」
「左様でございます、旦那様」
「折角だ、急いで出発せねばならないわけでもない。そなたらも飲むとよい」
 パティーニョがワインを勧める。シュミットが、人数分のグラスを並べ始める。
「私は未成年です故、申し訳ありません」
 トクムは丁重に断る。
「では、ご相伴に預かりますわ、卿」
 キャルが一歩前に出て、シュミットからグラスを受け取る。シュミットがワインを注ぐ。順順に、トクム以外の傭兵達にグラスが行き渡った。

 その頃、館の外では、アンジェラと空、皓祇が歩哨・警戒に当たっていた。
「中の様子はどうなっているんでしょうね」
 空が館を見ながらつぶやく。
「気になるのなら行けばよろしかったのに」
「いえ‥‥いいのですよ」
 空の中ではビーストマンへの評価について複雑なものがあった。
「残敵は、もうないのでしょうか。静かなものです。バグアも‥‥あのキメラを置いただけだったのですね」
 皓祇が、敷地の潅木なども一通りチェックしつつ、つぶやく。
「なんにせよ、石油王と接触して、これで何かしら得られると良いわね」
「しかし、今ごろ中ではトクムの持ってきたワインを開けているのでしょうか」
「そうかしらね‥‥」
 空の言葉に、アンジェラが曖昧に肯く。
「まあ、こうして外で警戒していれば、噂の新型機も、見ることができるかもしれません」
 皓祇が、空を見つめる。そこには、南米の青空が広がっていた。

「さてと。わざわざ諸君にご足労いただいたのも、わしの情報を伝えるためであったな。どれほど、役に立つのかはわからんが」
 そういってパティーニョはワイングラスをサイドテーブルに置く。
 吉影が軽く頭を下げていう。
「いえ、一介の従者には重いモノであります。その件は、是非UPCにお話して頂きたく」
「ははは、東洋人というのは謙虚なものだな。だが、情報も財産、得られるときに得るべきものじゃ。ベネズエラの原油採掘状況などは君達が聞いても役に立たないだろうが、役に立つかもしれん情報もある」
 キャルが一歩前に出て口をはさむ。
「ええ、私は聞きたいですわね。私の方でも一寸気になる情報がありましてよ。何でも南米で紫色の新型ワームが暗躍しているとか。石油精製所の一つがバグア勢に乗っ取られてるそうですわ。何といいましたっけ、そうそうアスレードとか‥‥図々しいったらありゃしませんわね」
 パティーニョは少し目を見開いてため息する。
「ほう。もうそこまで知れ渡っているのかね。わしの情報も安くなってしまったのう。困ったものだ。まあそれはさておき。わしの情報というのも石油精製所に関することじゃ」
「ご傘下の石油精製所ですか?」
 羽矢子がそう口にする。
「傘下。まあ、傘下というか、傘下だったというか」
 パティーニョは少々複雑な表情で顎をしゃくる。
「とにかく稼動していてな。当然ながらバグアが民生用の燃料を精製したりするわけではない。やつらはケロシンをメインに、オクタン価の高い航空機用燃料を精製している。まあ、その際産出される連産物、軽油やら重油は横流しして少々稼がせてもらったわけだが」
「航空機用燃料ですか。ワームのためというわけでもないでしょうが」
 トクムが首をひねる。
「それとは別の情報もあってな。いくらか前のことだが、バグアが航空機用エンジンを調達したという」
「聞いたことがありますわ。他の傭兵が、輸送に関わったゲリラからその情報を得たと」
「ほう」
 メシアの言葉に、パティーニョは軽く感嘆した。
「なかなか、UPCの情報網はしっかりしているようだな。もう知っておったか」
「ええ。しかし、エンジンに燃料、それに新型機の目撃情報。これは、繋がりますわね。このまま放置すると大変なことになりますわね」
 キャルが顎に手を当てて思案する。
「新型のワームということですけれど、件の紫の機体は、地球製エンジンを搭載しているということでしょうか。だとすれば、その補給のために燃料を生産したということでしょうか」
 羽矢子の推測に、他のメンバーも首肯する。
「そう、卿に伺いたいのですが」
 メシアが訊ねる。
「このことに関して、バグア側との接触はもたれたのでしょうか?」
「うむ。バグア『本人』とは直接接触したことはないがな。やつらが何かと徴発する際には強化人間とか洗脳者というのかの。そういった者が指示をしてきたわい」
 そういってパティーニョはワイングラスをくゆらせる。
「では、新型機‥‥あるいは、喫緊の大きな作戦‥‥動きについての接触も?」
「ふふ、そうですな。だが、そこは先ほどの九浪君に倣った方がいい。今は一介の傭兵であるローザリア卿が聞くには面倒な話だ。直接UPCに話すことにさせていただくよ」
 パティーニョはワインを飲み干す。
「この戦いが終わるまで私の健康が持つかはわからないが。早く、終わって欲しいものだな」
「ええ。私ども傭兵は地球から侵略者を駆除するために懸命ですの。ええ、地球は地球人の物ですわ」
 キャルが、決意のまなざしで宣言する。パティーニョは静かに肯いた。その表情に、晦渋を乗せて。