タイトル:劇場型戦場マスター:川澄秀郷

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 7 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/17 10:57

●オープニング本文


 近代的なオフィスビル。だがそのフロアのデスクには書類の山、所狭しと並ぶファイル。数多くのモニターが、天井から吊り下げられていたり、デスクに据え置かれていたりしている。半分はパソコンのそれで、残りはテレヴィジョン。モニターのフレーム上にはべたべたと何かをメモした付箋が張られている。
 とにもかくにもフロアは生活感と熱気に満ちていた。ここはサンフランシスコのテレビ局の報道フロア。今でこそ通信衛星はつかえなくなってしまったが、かつては世界中に番組を配信し、今でもアメリカ全土にネットワークを持っている。
 そのフロアで若い男性が上司と思われる女性に熱弁を振るっていた。
「ですから、前線の生の声を伝えたいんですよ」
「生の声ねえ」
「それも、正規軍の兵じゃない。傭兵となってこの正義の戦いに身を投じる、名もない戦士たち。彼らが、世界を守りたい、正義を守りたい、そういう使命感に駆られて地道に活動していく。そういうですね、こう華々しい前線ではないけれども、彼らの英雄的努力によって自由が守られているというですね」
 熱弁を振るう男性に、上司の女性も、興味を覚えたのか、身を乗り出してくる。
「傭兵の地道な日々の戦い、救われる人々、そういったところに肉薄してですね、彼ら自由の戦士たちの、生の姿を伝えたいのですよ。彼らへのインタヴューを通じて、何故この道を選んだのか、正義の戦いにかける熱い思いはなんなのか、と」
 熱弁は一通り終わったようで、男は熱がこもって握った拳をゆっくりと下ろす。上司の女性は彼の持ってきたファイルをぱらぱらとめくり、納得したようにうなずいた。
「わかったわ」
 男はおお、と息を漏らした。
「UPCならびにULTに取材を申し込んでみるわ。取材対象は、よくある傭兵任務、といったところでいいのかしら?」
「はい、ありがとうございます、よろしくお願いします、ボス」
 上司の女性は電話機に手を伸ばした。一応局内部署に話を通して、あとはUPC・ULT本体に申し込みだ‥‥

 同じく近代的なオフィスルーム。こちらは整理も行き届き清潔感に満ちている。働いているのは、制服をつけた、ULTのオペレーターだ。
「はい、わかりました。その取材クルーを同行させればよろしいんですね。ABS。依頼は‥‥ああ、エリーフォードを占拠するキメラの駆逐。また地味ですね。ああ、いえ。すみません。では、そのように。はい、了解です」
 通話を終えて、彼女はヘッドセットを頭からはずし、一息つく。
「何々? 傭兵にマスコミが同行取材?」
 彼女の仕事仲間が何とはなしに聞く。別段秘匿度の高いの話でもないらしい。
「そうそう。エリーフォードって、よくあるアメリカの片田舎じゃない? もう、獣形キメラ数体しか残っていないらしいけど。なんでも、傭兵のよくある依頼がいいんだって。まあ、廃村の残敵掃討程度ならあまり危険もないでしょ、って」
「ふーん。しかし、そんなもの取材して楽しいのかしら」
「さあ。まあ、マスコミのことだから、適当に脚色して報道するんでしょ。さてと、依頼依頼〜」
 そういって彼女は鼻歌交じりにキーボードを叩き始めた。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
伊達正和(ga5204
25歳・♂・PN
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
日野 竜彦(gb6596
18歳・♂・HD
相賀翡翠(gb6789
21歳・♂・JG
犬神 狛(gb6790
24歳・♂・FT

●リプレイ本文

 エリーフォードを見渡せる小高い丘で、村の地図を広げつつ、最後の打ち合わせをする。双眼鏡をのぞいていた日野 竜彦(gb6596)が面をあげて報告する。
「ここから見た限りではキメラは確認できませんね」
 UNKNOWN(ga4276)が煙草をくゆらしそれに応える。
「屋内にいる可能性が高い、か。厄介ではあるな」
「構わん。いずれにせよ屋内も探索し、敵を掃討する予定だからな」
 月城 紗夜(gb6417)が手入れしていた自らの刀の刃紋を見つめながら言い放つ。
「それよりも厄介なのは‥‥」
 彼女が鋭い瞳でちらと見たのは、同行してきた取材班だ。彼らは彼らで、打ち合わせをしている。
「大丈夫です、今回はそういった応対の得意そうな面々もいますし。彼らに任せておきましょう」
 藤田あやこ(ga0204)が柔和な笑みを浮かべる。取材班の隣では、その得意そうな筆頭であろう伊達正和(ga5204)が、武器のチェックもさることながらメイクのほうも手を入れていた。
「なに、マスコミなんて関係ねぇ。これが初陣だし、傭兵としての経験ができりゃいい。な」
 得物をもてあそびつつ、相賀翡翠(gb6789)は同期の犬神 狛(gb6790)に話し掛けた。
「ああ、わしらはこれが初陣だからな。先輩方にはよろしく願いたい」
 犬神は軽く頭を下げる。UNKNOWNが口元に優しい微笑を浮かべて応える。
「ブリーフィングの通りいけばいい。自信を持つといい」
 相賀と犬神、それとやはり同期の日野が顔を見合わせてうなずいた。
「あちらも始まったようね」
 藤田が見たのは取材班のほうだ。村を背景に、インタビュアーがマイクを手にしてカメラの前に立つ。
「我々がいるのはエリーフォード、かつてステイツの古きよき村落であった場所です。しかし、いまや、キメラの闊歩する廃村となってしまいました。しかし、今自由の戦士たるULTの傭兵達がこの村を開放するためにやってきたのです」
 滔々としゃべるインタビュアーを、月城が睨めつける。
「月城さん。刀を抜いたら駄目ですよ」
 藤田がにこやかにいう。
「わかっているが、な。我が自由の戦士とは、まったく」
 月城は柄にかけた手を戻す。
「ではさっそく、傭兵達を紹介しましょう。まず、Mr伊達。遠くジャパンからきてくれました。Mr伊達、早速ですがこの戦いに身を投じることになった動機は?」
 メイクも整え準備万端の伊達は、待ってましたとばかり答える。
「ジャパニメーションのボイスアクターでもある、俺達の生活を侵略したバグアから地球の平和を取り戻したいと思った」
「オー、アニメーション。ジャパンのロボットアニメは私も大ファンです」
「ファンなんですか! 俺もですよ、ははは」
 具体的なジャンル名に伊達も思わず嬉しくなる。
「えー、今回我々が同行した傭兵団はご覧の通りジャパンからの兵士が主体となっております。中でもこちらのMr相賀とMr犬神は今回が初陣ということですが」
 といって取材班は地図を広げていた方へとくる。UNKNOWNは自然に身を翻して被写体になるのを避ける。
「Mr相賀。能力者として認められて、その後どのように傭兵に?」
「おふくろが『力があるならやったれ!』って燃えちまって、放り込まれたんだ」
「どの国でも母は強し、ですね。やはり、おふくろさんを守りたいという意気込みが?」
 インタビュアーは身を乗り出すが、相賀はあくまでマイペースであった。
「そりゃ、もちろんだよ。だけどよ、俺自身は、傭兵って自覚はあんまりねぇな」
 のんびりした答えにも、インタビュアーは大きくうなずく。そしてマイクを今度は犬神に向ける。
「さて、同じく初陣のMr犬神。傭兵になった理由をお聞かせください」
「ふむ? わしが傭兵になった理由? ふむ、理由は‥‥何かができるようになりたかったからかの?」
「何か?」
 インタビュアーが期待のまなざしをもって犬神を見る。
「何かとは? わしにもまだ分からんだが、傭兵を続けていけば、その答えもわかる気がするのだ、だから、わしはここにいる」
 うなずきながら聞くインタビュアー。そして、カメラは犬神から離れると再びインタビュアーをメインに映す。
「彼らのような新兵も、実践を経て歴戦の傭兵となり、正義の戦いに身を投じて、ステイツの、人類の自由を守っていくのです。ここがその初陣となるのです」
 大仰なインタビュアーの台詞に、相賀は肩をすくめる。さすがに苛立ったか、月城が取材班のほうへと進み寄る。それより前にいた日野が、先に口を開こうとする。
「さっきから‥‥」
「おおっと、作戦開始時刻だ」
 いつのまにか、彼らの間にUNKNOWNが割って入る。
「マスコミ諸君、時間なのでいかせてもらうよ」
 そういって颯爽とコートの裾を翻す。慌てた様子で、インタビュアーがカメラに指示を出す。
「い、今戦士達がまさに出発しようと‥‥」
 レンズがUNKNOWNを捉える。UNKNOWNは、さっと中折れ帽を投げつけてレンズをふさぐ。
「私は、秘密、だ」
 そういって軽く片目を瞑って見せた。他の面々もそれぞれ出発する。取材の二人は、しばし、呆然としていたが、やがて慌てて傭兵達の後を追った。


 見通しのよい、村の入り口。取材班の二人が、護衛役の三人に囲まれるようにして、カメラを村へと向けていた。
「ここはエリーフォードの入り口です。今傭兵達が内部を探索しています。我々はこの村を見渡せる通りの入り口でキメラの現れるのを待っています」
 緊張した空気を感じながらも、インタビュアーは冷静に伝えている。
「ご覧ください。傭兵のMs藤田です。この細身で、ガトリング砲を操ります。これが『能力者』なのです。その勇姿をいずれお伝えできるでしょう。さて、Ms藤田」
 カメラマンはガトリング砲を構えた藤田にカメラを向ける。インタビュアーも、彼女にマイクを向ける。
「傭兵になられたときのことをお伺いしたいのですが」
 藤田は落ち着き払った様子で語り始めた。
「私は望んで能力者になったわけではありません。当時私は黒いスラックスが似合う女子大生でした。ある日、学校付近にヘルメットワームが何かを投下しました」
「ふむ?」
 藤田は、たっぷり一息、間をとった。
「そいつはキメラだったのです。運送業者の荷物に紛れ込んでまんまと私達の研究室に配達されました。そいつは無数の子キメラを放出し次々とゼミの仲間を襲撃しました」
 藤田が少し伏目がちになる。
「犠牲者の中には私の彼もいました。私達は命からがら避難しました」
 藤田は滔々と続けた。
「隣に未来科学研究所があり、能力者に助けを求めるつもりでした。しかし能力者はおらず私達はキメラに包囲されました」
 ふむふむ、とインタビュアーがうなずく。
「私は『この中にエミタ適性者がいれば助かるかしら』といいました。他力本願だったんですね。検査の結果、私のみが適正者でした。正直嫌でしたよ。でも今お前が覚醒しなければここで皆死ぬと諭され緊急手術を受けました。そうしたら‥‥」
 彼女は、少し恥らうように脚を動かす。
「覚醒で変化した個所は、脚だったんです。ビンテージもののジーンズとか履けなくなったわ。適合者は周囲の目もあり結局傭兵を選びます。戦争が終われば、人生を棒に振る人もなくなる。私はそのために戦っている。では覚醒します」
 淡々とそれだけ告げて、彼女は覚醒する。ようやく出番、と伊達と犬神も前に出てくる。
「よおし、俺達も出番だ! いくぞ、犬神!」
「すっかりいいところをとられてしまったが」
 犬神はそういって呵々と笑い、能力を覚醒する。左眼が蒼くなり、全身が淡く輝く。続いて伊達が拳法の構えのようなポーズをとって、覚醒する。
「轟け竜の雄叫びっ、ドラゴン・オン!」
 見る見る間に伊達の身体が、紫の竜人へと変身する。カメラマンが興奮してカメラを回す。
「これが、『能力者』の覚醒です。皆様、ご覧いただけましたでしょうか。この力で、傭兵達はバグア達に立ち向かっていくのです」
 インタビュアーも興奮気味に伝えた。


 UNKNOWNと日野は、一つの廃屋を前にしていた。地図によれば、村落で一番大きい。
「UNKNOWN、ここが最後なんだな?」
 拳銃の銃把を握りしめ、日野が扉を睨みつける。
「ああ、俺達の班はこれで終わりだ」
「ここまではずれか‥‥」
 そういって日野は拳銃を構えた。UNKNOWNは屋内からの射線を避けてサプレッサー付拳銃を構える。日野はつばを飲んだ。
「3、2、1‥‥GO!」
 日野が勢いよくドアを開ける。
 何の獣とも知れない咆哮が上がる。中から大型犬くらいの影が飛び出す。UNKNOWNが足元を掃射する。現れたのは、凶暴そうな犬の姿。キメラだ。
「コヨーテ、ネイティヴアメリカンの畏怖せる獣か」
 UNKNOWNがつぶやく。
「俺が相手だ!」
 日野が正面から銃弾を叩きこんだ。フォースフィールドの光が瞬き、銃弾はキメラを直撃する。一瞬ひるんだキメラだったが、日野の姿を認めると体当たりを食らわせる。
「くっ」
 AU−KVの巨体が反動で飛ばされて土煙を上げる。なおも追撃しようとするキメラの足元を、UNKNOWNが精密な射撃で足止めする。
「いかせはせん」
 間合いを取りつつ、銃弾を打ち込む。キメラの足元を、UNKNOWNが掃射する。更なる体当たりを許したものの、日野の銃弾がキメラの頭部を破壊した。
「こちら日野。キメラ一体を発見、これを撃破。特に問題なし。オーバー」
 日野がトランシーバーで報告する。
『こちら護衛班、了解。こちらは静か‥‥』
 藤田の声をさえぎって、切り裂くような呼笛の音がした。
「月城の笛か!」
「行こう、広場のほうだ」
 二人は駆け出した。

 その頃、村の教会のある広場。相賀の自動小銃が火を噴く。オートで掃射してキメラの足を止める。
「ちっ、数が多いな」
 相賀が吐き捨てた。その前線では月城が蛍火を振り下ろす。フォースフィールドが煌いて、キメラが斬撃される。だが、相手が多い。刀を振り下ろした脇を別のキメラに襲われる。AU−KVの装甲にキメラが牙を立てる。
「いったん引くべきだな。他の班と合流しよう」
 月城は蛍火を振りかざしつつ冷静につぶやく。噛み付いたキメラを叩き落す。立ちはだかるキメラは、三体。
「ああ、開けた方に誘導しよう」
「この数ではそのほうがいいな。護衛班とぶつかるが。何、マスコミは喜ぶだろう」
 AU−KV越しに月城は笑って見せた。
「あんたにゃ不本意なんじゃないかい? 大分苛立っていたようだが」
「確かに、我の本意ではないがな。まあ仕方ない」

 再び村の入り口。乾いた銃声が鳴り響く。キメラのものであろう、獣のような咆哮が聞こえる。
『こちら相賀。キメラ三体を確認。合流して殲滅したい。サポートを頼む。オーバー』
「藤田、了解したわ。オーバー」
 やがて、通りの向こうから、銃声が近づいてくる。そして、黒い影が三体。
「キメラです! キメラが、今我々の前に姿を現しました」
 インタビュアーが興奮した様子で告げる。その間に割って入るように、傭兵達が立ちはだかる。
 やがて、もう一つの路地から日野とUNKNOWNが姿を現す。
 三体のキメラが追い立てられるように護衛班のほうへと向かってくる。藤田のガトリング砲が火を噴いた。痛烈な機銃掃射を受けてキメラはひるんで立ちすくむ。そこへ月城と相賀もやってきた。キメラたちは三方から囲まれる。
「くらいな! 『布斬逆刃』!」
 相賀が銃を撃つ。紅く強い光輝がキメラのほうへと吸い込まれる。硬い音を立ててキメラのフォースフィールドが瞬く。ひるんだところに、月城がすかさず切り込む。一頭を切り伏せる。更に襲おうとするキメラを、日野とUNKNOWNが掃射する。ひるんだ残りのキメラは、護衛班のほうへと駆け出した。
「来たな! 竜閃削っ!!」
 伊達が突出する。円閃と急所突きを繰り出してキメラを屠った。
「残りはわしが引き受けよう!」
 犬神が残った一体へと突き進む。震える歯を噛締めて、歯の根鳴るな! と自分に言い聞かせる。
「初の依頼で初実戦とはな‥‥」
 身体の震えに自ら苦笑いする。
「とうっ!」
 犬神が切り伏せる。キメラの血潮が飛ぶ。ひるんだキメラを、相賀と日野の援護射撃が襲う。動きを封じられたキメラに、犬神が刀を振り上げた。
「許しは請わん‥‥」
 こうして作戦は終わった。

 キメラを倒し、傭兵達はそれを確認する。取材班は、興奮した様子でそれをリポートし始めた。
「見ていただけましたでしょうか、これが『能力者』の戦闘なのです。さっそく、話を伺いたいと思います。Mr日野、こうして戦場に立っているわけですが」
 マイクを向けられた日野は、だが若干顔をしかめていた。
「俺は、訳が分からないまま半ば強引に能力者になった。怖い時もあるし、今も納得いかない部分は沢山ある。だけど、できることをやらないで誰かを見殺しにするのは自分が許せない。だから、こうして戦場にいる。正義とか、関係ない」
「しかし、こうした戦場一つ一つが、人類の解放へと邁進する正義の‥‥」
 思わず月城が吐き捨てるように言う。
「下らん正義など不要」
 そういってAU−KVを解いた月城がインタビュアーへと迫った。
「傭兵になったのは生きる為。必要なら腐った神すら切り捨てよう」
「逆に聞きますけど」
 日野はインタビュアーを見据えた。
「アナタ達なら死んでこい、とかいわれたらどうします?」
 月城も剣幕でインタビュアーを睨む。
「我は正義の味方でなければ、ましてや英雄でもない。戦うのは其処に敵がいるからだ。任務完遂の為にはどんな汚い手段も厭わない。此れは戦争で我は金を貰って戦う傭兵だ」
 彼らの言葉に、インタビュアーはマイクをおろし、カメラを下がらせ、まじめな面持ちで語り始めた。
「たしかに、あなた方の仰ることは分かる。誰もが、好きで戦いに赴いているわけでも、能力者になっているわけでもない。だが、戦場に立つことなく、だがバグアの脅威に怯えている民衆。彼らは、日々バグアの脅威に晒されていて、それでもなお希望をもてるのは、あなた方が正義の戦いの英雄として、活躍していると信じているからなんだ」
「そうね」
 藤田が口をはさむ。
「この戦争は私達のものだけじゃないわ。確かに、人類全体のものなのよ」
「ああ、そして時として、我々が彼らの希望を演じなければならない。それもまた、戦争さ」
 UNKNOWNが静かにつぶやく。
「まあいいじゃないか、こうして無事終わったんだし、さ」
 相賀が明るい声を出す。
「お疲れさん、みんな」
 そういわれて、日野と月城も、矛を収める。もはやこの戦争は、人類全体を巻き込んでいる。戦場だけが、戦いの場ではなかった。