タイトル:【NS】KV、GW主砲へ走れマスター:柏木雄馬

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/17 21:45

●オープニング本文


 オタワの東――人類とバグアの機動兵器が空と大地に入り乱れ、火砲の飛び交う戦場。
 システム・ペンタグラムの雷光が雲を照らし、敵陣深くまで入り込んだ爆撃機が我先にと、巨大艦の上面を炎と熱波で埋めて行く。
 形勢が逆転し、徐々に押し戻されて行くバグア軍の後方。異形のギガワームが身動ぎするかのように機体を傾けた、その時。
 上空から飛来した長大な金属杭が、その上面を貫いた。
「総員に告ぐ、本艦はギガワームに突撃を行う。繰り返す、本艦はギガワームに突撃を行う。衝撃に備えよ」
 ユニヴァースナイト弐番艦内に響き渡る、艦長・覇道平八郎の声。
 爆炎閃く空を駆け現れた銀白色の艦に、人々は思わず息を呑んだ。
 ギガワームに深々と食い込んだ螺旋形の杭は、その後部より伸びた鋼線で以て、バグアと人類、双方の決戦兵器を繋いでいた。
 鋼線を巻き取り、後退する巨大艦を逃がすこと無く突撃して行くUK弐番艦。
 生き残った対空砲と護衛機が応戦するも、被弾を恐れず突き進む。

 轟音が空を揺るがし、続く盛大な歓声が、戦場と、飛び交う通信を埋め尽くした。
 空に浮かぶギガワーム。その上側面を、UK弐番艦の艦首ドリルが大きく抉っている。
 ギガワーム内部に頭を潜り込ませたUK弐番艦が艦内の歩兵を吐き出し、周囲に生じた破孔からは、突撃成功の報を聞き集まってきたナイトフォーゲル群が、次々と突入を開始していた。
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●KV、GW主砲へ走れ

 ユニヴァースナイト弐番艦によるドリル突撃は、NGW──ニューヨークギガワームの外部装甲を喰い破り、幾重もの内部隔壁を突き破って停止した。
 弐番艦が到達したのは、なにかの緩衝帯だろうか、巨大な空っぽの空間だった。舞い落ちる瓦礫と破片、濛々と立ちこめる砂煙── 薄れた粉塵の向こうに姿を現した弐番艦の姿に、その場にいたバグア一般兵が言葉を失い立ち竦む。
 弐番艦のCDC。瞬時にセンサーが走査を始め──付近に脅威が無いことを確認したオペレーターが即座に艦長を振り返る。
 平八郎の腕が前へと振られた。命令は発せられた。
「全陸戦隊、突入せよ!」
 命令と同時に強襲用ハッチが開き、次々と突入していく兵と傭兵たち。その使命を果たすべく、続々とGW内部へ侵攻していく。
 KV用カタパルトハッチからは、暗色塗装のLM-04F『ファイティング・リッジウェイ』が先陣切って飛び出していた。
 その多脚で着地の衝撃を吸収。疾走しながら付近のバグア兵を20mm機関砲で撃ち払う。その後部座席から一人ずつ兵が飛び降り、そのまま横隊を形成。20mmが討ち漏らした敵を騎兵銃で掃討しながら前進し、そのエリアを完全に制圧する。
 一方、そのまま前進を続けていたLM-04Fは、前方の壁面を知覚兵装と大型ヘッジローで突き破った。
 出た先は、KVが優に4機は並んで走れるほどの大型通路だった。周囲に敵がいない事を確認して、隊長は上部ハッチから身を出し、周囲を見やる。通路の片一方の先、外壁側には破孔の一つが開いていた。
「すぐに穴を広げさせろ。外のKVたちを呼び寄せるんだ」
 爆薬を持った部下たちが手際よく作業に取り掛かる。数分もせぬうちに爆発が通路を吹き渡り── KVを迎え入れる巨大な穴がそこに形成されていた。

 カタパルトハッチより突入したのは、オタワ直属の特殊部隊だった。隊員の全てが能力者で編成された北中央軍の精鋭部隊で、その経験と戦闘能力は傭兵たちにも引けをとらない。
 彼らの役目は、弐番艦の離脱の際に脅威となるであろう、NGWの主砲と大型副砲を、味方が作戦を終える前に破壊しておく事だった。NGW上面の火砲は弐番艦突入支援のフレア弾による爆撃で多くを吹き飛ばしてはいたが、その下面の砲はほぼ手付かずに残っている。
 本来ならば、彼らにとってそれほど難しくない仕事である。だが、常に予定通りにはいかないのが戦場である事を、彼らは骨身に染みて知っていた。
「隊長。オタワが被弾した弐番艦に対し、直ちに撤収するよう、命令を発しました」
「畜生。損傷はそんなにひどかったのか? 中に突入した連中の帰りはどうなる? 迎えは? まさか『ウィドウメーカー(後家製造機)』じゃないだろうな?」
「いえ、クスノペを寄越すそうです」
「ほっ。これはまた大盤振る舞いだな。オタワも勝負どころが分かっていらっしゃる」
 とはいえ、予定が変わったのは事実だった。本来、もう少し時間の余裕を持って事にあたれるはずだったのだが、弐番艦がもう離れるとなるとぐずぐずしてはいられない。特に、敵艦中央下部に位置する主砲は距離も遠く、対応が急がれる。
「俺が行こう」
「そんな、隊長が自ら‥‥」
「他に人がいない」
 隊長は本隊から2個分隊を引き抜くと、大型副砲群への対応を部下に任せて、自ら爆破へ向かう事にした。実際的な隊長は、護衛のKVを軍に手配する無駄を犯さなかった。隊長は近場の傭兵機を呼び集めると、報酬は後々軍から貰うように言ってその戦力を『徴収』した。
「ここから主砲のあるNGW中央部まで、この大型通路が走っている。我々はこれよりこの道を吶喊し、敵主砲を沈黙させる」
 隊長は言葉を切って、傭兵たちの顔を見回した。それぞれの表情を浮かべる彼らに、隊長がニヤリと笑ってみせた。
「あれだけの威力を持つ主砲だ。おそらく専用のジェネレーターを抱えているだろう。それを破壊する。‥‥とはいえ、そんなジェネレーターを直接攻撃すれば何が起こるか分からない。炉は俺たちが爆薬を仕掛け、時限信管でもって爆破する。なに、フレア弾クラスがほんの3個だ。動力炉一つ破壊するには可愛いものだがね」
 任務達成の鍵はスピードだ、と隊長は言った。リミットは弐番艦の離脱時刻。だが、敵の注意が『主攻』──敵司令部攻撃に向いているとはいえ、こちらが主砲に向かっていると知れれば、敵もすぐに集まってくるだろう。
「我々の任務は、裏口から堂々と侵入し、庭先を疾風の如く駆け抜け、敵の寝室にこっそりとお土産を置いて帰ってくる、というわけだ。なに、主攻の連中に比べれば、随分と楽な仕事だろう?」

●参加者一覧

セラ・インフィールド(ga1889
23歳・♂・AA
綾嶺・桜(ga3143
11歳・♀・PN
響 愛華(ga4681
20歳・♀・JG
守原クリア(ga4864
20歳・♀・JG
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
小笠原 恋(gb4844
23歳・♀・EP
柳凪 蓮夢(gb8883
21歳・♂・EP

●リプレイ本文

 作戦開始時刻マイナス2minutes──
 NGW主砲破壊任務に参加する傭兵たちは、GW艦内を『縦』に走る大型通路の一つで班を二つに分け、突撃の準備を整えていた。
 1つは本隊たる『護衛班』。特殊部隊のLM−04F『リッジウェイ(F型)』を中心に、右前にはクリア・サーレク(ga4864)のスレイヤー、左前には小笠原 恋(gb4844)のワイズマンをつけ、隊列全体の『殿』として、左後方に柳凪 蓮夢(gb8883)のシラヌイS2型、右後方に阿野次 のもじ(ga5480)のシュテルン・Gを配置している。
 もう1つは『迎撃班』。『護衛班』の前方に展開し、進攻ルート上の脅威を排除するのが役割だ。隊列は菱形。突進力に優れるセラ・インフィールド(ga1889)のアッシェンプッツェルを先頭に、左に守原有希(ga8582)のシラヌイ改、右に綾嶺・桜(ga3143)のシコンを配し、後衛に響 愛華(ga4681)のパピルサグの巨体を据えた隊形を取っている。
「では、先任。大型副砲群の破壊は任せる。‥‥隊長より各員。祖国と人類の為に最善を尽くせ。カウント開始。作戦開始時刻まで‥‥3、2、1‥‥」
 瞬間、周囲の壁や通路が鳴動した。周囲に展開した特殊部隊が副砲内部へ続く扉を爆破し、突入を開始したのだ。
 だが、その振動はパイロットたちには伝わらなかった。時を同じくして、ブーストを焚いて中央部への突進を開始していたからだ。
「わぅん! 突撃〜〜〜っ!」
「さあ、ここからはノンストップ! みんな! 全員で帰ってくるまでが突入作戦だからねっ♪」
 雄叫ぶ愛華と叫ぶクリア。モニタ越しに通路の側壁が物凄い勢いで後方へとすっ飛び、前方、直線通路が流れるように迫り来る。
 その行く手、前方に『交差点』が迫り来るのを見て、有希はスロットルレバーを操作して再度ブーストで加速した。『迎撃班』から飛び出し、交差点の壁に張り付いて‥‥その陰から機の半身を覗かせ、レーザーガンの銃口を振って敵影がない事を確認する。
「ポイントA、左側通路、クリア(敵影なし)!」
 報告する有希機の背後を、高速でぶっ飛んでいく迎撃班のKVたち。有希は機を後ろに滑らせると、護衛班が来る前に再び加速。先行した迎撃班を追い抜いて再び別の交差点へと向かう。
 有希は第2の交差点へと辿り着くと先と同様に確認し‥‥直後、銃口を振って光線銃を撃ち放った。その照準の先には通路上に浮遊する2機の『目玉』──バグアの警戒・哨戒用小型ワーム『センチネル』の姿── 振り返ろうとしたそれらが立て続けに有希機のレーザーに撃ち貫かれて爆発する。
「ポイントB、左側通路、センチネル、ツー、ダウン!」
 だが、安心する間もなく、通路にけたたましい警報が鳴り響いた。反対側、右側の横軸通路にいた目玉が気づいて『警笛』を吹き鳴らしたのだ。
 即座に振り返った有希機がレーザーでそれを撃ち貫く。だが、爆散する直前、それは無数の『子目玉』──自律式の地雷・浮遊機雷──をばら撒いていた。
「自爆型か!」
 兵装をダブルリボルバーに切り替え、ふよふよと、或いはコロコロと迫る敵を立て続けに撃ち捲くる有希機。直後、ブーストで直進してきたクリア機が有希機の横へ滑り込み、手にしたプラズマライフルを速射した。
「ボクが通路右側を! 有希さんは左側の子目玉をお願い!」
「助かります!」
 並んで銃撃を続けるクリア機と有希機。その2機のKVの背後を、今度は護衛班の4機が高速で走り抜ける。
「っ! 前方、ポイントC! 左の横軸から目玉が出てきてるよ、桜さん!」
「右からもじゃ! 援護を呼ばれても爆発されても困る。さっさと倒してしまわねば!」
 一方、先行する迎撃班は、第3の交差点において横軸から出てきたセンチネルを確認していた。
 装輪で疾走しながら桜機が88を機の前方へと回し、射程の半分まで踏み込んでから撃ち放つ。光線が右側の目玉2機を立て続けに貫通し、敵は火を噴いて床へと落ちた。残る左側2機への対処はセラが行った。射程に入るや否や、最左翼の目玉を左腕に構えたプラズマライフルで撃ち落し‥‥そのまま突進して右腕部の機盾槍で残った目玉を粉々に打ち砕く。
 だが、敵は今回も、撃破される直前に多数の子目玉を放出していた。
「ヤバい!」
 後ろに逸らす訳にもいかず、両腕部で頭部を庇ってその只中へ突っ込むセラ機。炸裂と爆発、弾け跳ぶ機の反応装甲── 連鎖する爆発から煙を曳いて抜け出たセラ機の、その足元を自律式地雷がコロコロと転がり抜ける。
「愛華!」
「わぅ! ここは通さないんだよ〜!」
 右腕部に88を抱えたまま、左腕部の短銃を抜き放って子目玉地雷を狙い撃つ桜機。その横を通過する敵をファランクスとシザースで愛華が迎え撃つ。その弾幕を抜けてきた子目玉には、両腕部に装着した盾で以ってぶん殴った。爆発がその表面で弾け、その衝撃を受けた腕部が軋みを上げる‥‥
「ポイントD接近。絶対に足を止めちゃダメです!」
 4番目の交差点には、目玉の他に陸戦用HWが交じっていた。横軸通路の左右から撃ち放たれるフェザー砲。その光芒の中、KVたちが一気に駆け抜ける‥‥
「通路を抜けるぞ!」
 だが、その出口の外には、人型の機影が1機、床面にその長い影を落としていた。バグアの人型ワーム『タロス』── 主砲部への攻撃を察知して駆けつけた有人機がそこに立ち塞がっていた。
「ちっ、迎撃がしっかりおったか。じゃが、邪魔はさせぬ。道はわしらが作るのじゃ!」
 じゃらり、とハンマーボールを垂らしながら、桜機がタロス目掛けて機速を上げ、セラがエンジンのオーバーロード機能に手をかける。敵は突進して来る桜機とセラ機を見て後退し、主砲ユニットへ続く『橋』の上まで跳び退いた。構わずパンプチャリオッツを発動させるセラ。機が槍を構えて突撃態勢を取り、急加速にセラの身がシートに押し付けられる。
 瞬間、のもじは敵タロスの動きに違和感を感じた。
(いくらタロスとはいえ、たった1機で‥‥?)
「桜ちゃん、止まって!」
「むっ!?」
 のもじの制止に慌てて機を止める桜。その横を突撃態勢でぶっちぎるセラ機。
 その2機の間、停止した桜機の眼前を、左右から放たれた光条が交差して煌いた。敵は正面のタロスを囮として、出口の左右に伏兵を配置していたのだ。
「なにっ!?」
 驚愕する桜とセラ。直後、突進したセラ機がタロスと橋上で激突する。その盾を槍先に貫かれながら、セラ機の突進に押され滑るタロス。だが、タロスはセラ機の突撃を受けながら、その突進をその場で受け止めた。
「急に声をかけられて厄介な仕事を頼まれたと思ったら‥‥どうにも想像以上にヤバいじゃないですか」
 冷や汗混じりに呟くセラ。
 彼とタロスを乗せた橋が、時計回りに回転を始めていた。


 状況を整理する。
 主砲ユニット周囲の空間は直径600mの球形の空間で、その中央に位置する主砲ユニットは直径400m。吹き抜け構造で、外壁部にはグルリと通路がキャットウォークの様に張り出しており、主砲ユニットとの間には長さ200mの通路が『橋』として架けられている。
 8方向に縦軸通路の出入り口があり、能力者たちはその一つからやってきた。だが、その出口左右の外周通路上には敵の伏兵──レックスキャノンと陸戦用HWがそれぞれ1機ずつ。
 橋は最初正面に位置していたが、時計回りに回転を続け今では45度左へ達している。橋の上にはタロスと孤立したセラ機。辿り着くには左の伏兵を突破しなければならない──

「左側の敵を突破し、セラと合流。迎撃班がタロスを抑える間に護衛班とリッジが橋を突破、爆弾を設置する」
 桜とのもじが出した結論に、能力者たちは同意した。実際問題、それしか方法はなかった。
「橋の回転機構を破壊して、回転を止める事はできないでしょうか?」
「ギアらしきものは見つかりません。恐らくはバグアの重力制御系‥‥下手をすると橋自体を落としかねないかも」
 恋の問い有希が答える。その橋の上では、セラとタロスの一騎打ちが続けられていた。右腕に槍を、左腕に練剣を煌かせたセラ機と、レーザー剣と穴の開いた盾を手にしたタロスが激しく剣を打ち合わせる‥‥
「わしがここに残って退路を確保する。皆は主砲まで走るのじゃ」
 迷っている時間はなかった。「Go!」という桜の叫び。88を左腕に持ち替えた桜機が通路の陰から半身を出し、右側の敵へ向け牽制の光線砲を撃ち放つ。その隙に他の全機は一斉に左側へと飛び出した。砲をそちらへ向け直し、強力なプロトン砲で応射する左のレックスとHW。飛び出したのはのもじ機だった。PRMを全開にして抵抗を高め、両手両足を大きく広げてその身を味方の前へと投げ出したのもじ機を、拡散プロトン砲のシャワーが乱打する。
「日輪装甲は伊達じゃない!(←無茶)」
 そのまま4つのスラスターを噴かせるのもじ。レーザーガトリングを乱射しながらレックスへと突進し‥‥赤く皮膚を変色させたその身へ体当たり。そのまま馬乗りになって『金曜日の悪夢』──KV用チェーンソーを振り下ろす。
「ここと桜ちゃんは任された。後は任せた!」
 機械音と血飛沫と。直後、尻尾に跳ね飛ばされるのもじ機の横をリッジと能力者たちが駆け抜ける。それを追ってフェザー砲を撃ち放ったHWは、直後、後ろ向きに疾走する蓮夢機の放った弾着に、機体をミシンに縫われて爆発した。前へと向き直る蓮夢機。直後、目の前を通過する別の大型通路の奥から、陸戦用HWの新手がやって来るのが見える。キャットウォークを直進するKVたち。回転する橋にはまだ追いつけない‥‥
「このままじゃ時間が‥‥ 小笠原より全機! ドーピングいきます! この間に橋に乗っちゃって下さい!」
 ふしぎなくすりに(以下検閲)〜♪ 歌うようにそう言いながら、恋は機を徐行させるとタクティカル・プレディレクションAを発動させた。その支援を受け、急加速した愛華機とリッジが多脚装輪をフル稼働して橋中央部からそこに乗る。後に続く有希機とクリア機。加速するリッジの突破を阻もうとしたタロスへ向け、セラがスパークワイヤを無理やり絡ませる。
「行かせません!」
 セラの叫び。タロスがワイヤをレーザー剣で切断する間に、リッジと愛華機、クリア機が一気に橋を渡り切る。後を追おうとしたタロスは、しかし、有希機が慎重に構えた光線砲の狙撃に阻まれた。間髪入れず攻撃を仕掛けるセラ機。それを有希が8方からの増援に警戒の視線を振りながら支援する。
 主砲ユニットへと辿り着いたリッジウェイは、その兵員を下ろすと装備した爆薬庫を展開させた。フレア弾3発分の威力を持つ量の爆薬が現れ、それを担いだ兵たちが主砲ユニットへ取り付き始める。
 縦軸通路から中央部外周通路に現れ始めた敵援軍は、それを見て停車したリッジと2機の護衛に攻撃を集中した。
「ここは私たちが絶対に守るから! だから、作業に集中して!」
 両手の盾を構えて砲火の前に立ち塞がる愛華機。瞬く間にその表面が泡立ち、開いた穴から抜けた余波が装甲の表面を炙り焼く。愛華は盾と機の陰に榴弾砲を展開すると、砲弾を立て続けにそちらへと送り込んだ。ほぼ直接照準・平行射撃で撃ち放った砲弾が緩やかな弧を描いて側壁に当たり、一瞬の後に炸裂する。上から散弾を続け様に浴びせられ、3機のHWが爆発し‥‥その横で、亀が反撃のプロトン砲を撃ち放つ。
 それを見たタロスは自ら橋の端から飛び降りた。本来なら主力が渡っている最中に橋を破壊するつもりだったのだが、その暇もなく渡りきられてしまったのだ。仕方なく、橋の下を潜って上昇し、主砲に取り付いた兵たちに向かって、対人兵器の砲を向ける。
 だが、その攻撃は放たれることはなかった。人型で跳びあがったクリアのスレイヤーがその眼前に『立ち塞がった』からだ。対人兵器でKVに有効打は望めない。タロスが慌ててレーザー刀を抜き放つ。
 だが、それが振るわれる直前、クリアは背部と脚部のスラスターを噴かせて『宙を跳んだ』。天を振り仰ぐタロスより早く背後へと回るスレイヤー。その練剣が頭上からタロスへと振り下ろされる。
「この子はスレイヤー。バグアを討つ剣だよっ!!」
 その一閃でセラ機との戦いで傷ついていた右腕部を剣ごと切り落とされて、タロスは橋へと叩きつけられた。すかさず走り寄ったセラ機がその練剣を突き入れる。そこから火を噴いたタロスは自ら橋から転げ落ち‥‥そのまま吹き抜けを落ちていって味方の砲火に誤射され消えた。
「よし、さっさとずらかるぞ」
 そこへ爆弾の設置を終えたリッジが戻ってくる。橋は突入路の反対側の通路を通り過ぎた所だった。

 その少し前。
 味方に無事橋を渡らせた恋は、回転する橋に乗るべく追いかけ始め‥‥すぐ近くの縦軸通路から現れた敵増援に気づいて慌てて光線拳銃を抜き放った。
 『光の剣』を交差させつつそのHWを撃破する恋。だが、直後、背後に現れた新手の誘導弾が恋機の装甲を打ち据えた。射程外から次々とミサイルを放ってくるHW。恋は周囲に次々と着弾する爆風に煽られた。
「キャーっ! 兵隊さん、作業はまだですかー!」
 恋がそう叫んだ直後、後方から放たれた光線砲がそのHWを貫き、爆散させた。きょとんとして振り返る恋。そこへ、蓮夢の機体が装輪で滑り込み、恋機を庇う様に立ち塞がった。
「桜たちと合流しましょう。そちらの方が近い」
 蓮夢は機の背から巨大なKV用バスタードソードを取り出すと、それを盾にするように逆手に持ちつつ、『退路への前進』を開始した。立ち塞がるHWからの砲撃をその『盾』で避け凌ぎつつ‥‥反対側の手に抜き放った練機刀ですれ違い様に切り捨てる。
「『手強い相手だったぜ‥‥』」
 強敵レックスを『解体』し終えたのもじは、桜と合流してその背中を守っていた。外周通路右側の敵を片付けた桜は、縦軸通路奥から迫る敵からその出口を守っていた。そこへ恋たち3機と、やがて右側から敵中を突破してきたリッジたち5機が合流する。
「よし、後はとっとと逃げるだけじゃの。爆発に巻き込まれてもつまらぬし、一気にいくのじゃ!」
 行きと同じく先頭に立ったセラが、出口付近に煙幕を焚く。行きと同じ隊形で通路を突進する能力者たち。殿に立ったのもじと蓮夢が後ろより迫る敵を砲撃で追い散らし‥‥そのまま振り返って味方を追う。
「こんな危ないものはポイです!」
 恋が交差点の横から飛び出してきた目玉を籠手爪で摘み上げ、そのままブンともと来た通路へ投げ返す。
 「時間だ」と呟く隊長。KVに乗っていても分かる振動が、GWの船体を揺るがした。

 主砲ユニットの周りで連鎖した爆発は、ジェネレーターを巻き込んで誘爆した。
 吹き抜けから炎のカーテンの様に噴出する炎。周辺部で連鎖する小爆発──
 やがて一際大きな爆音と共に、『釜の底が抜け落ちるように』主砲が船体から脱落し‥‥
 大きな炎の塊となってゆっくりと地面へ落ちていった。