タイトル:2室新型機広告制作マスター:柏木雄馬

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/09/16 23:48

●オープニング本文


 ドローム社第2KV開発室長エルブン・ギュンターには自負があった。ミユ・ベルナール社長直属の1研と共に、KV創世記の昔から今日に至るまで、ドロームのKV開発の屋台骨を支えてきたという自負である。
 彼のその自己評価は決して誇大なものではなかった。数々の実績はそれを証明して余りある。数多の開発室が『軒を連ねる』ドロームにおいてその『ナンバリング』の意味は薄いが‥‥それでも、最初に『独立したKV開発室』の室長を任された事実は伊達ではない。3室長のヘンリー・キンベルは確かに優秀な技術者ではあるが‥‥エルブン・ギュンターとは積み上げてきたものが違う。
 社内における2室と3室──エルブンとヘンリーの評価が逆転したのは、ドローム社の次期フラグシップKVを決定する社内コンペにおいてだった。2室が開発したYF−194『スカイタイガー』が、3室のYF−201に敗北したのだ。さらに、ULT主催のNMV計画において、YF−194Bが銀河重工のシラヌイに敗れるに至って、社内における2室の権威は失墜した。以降、2室はKV開発の主流から外されるようになり、それまで3室が担当していた『場末の仕事』──他開発室が設計した機体の検証・改良や実験機の設計等、『地味』で報われぬ仕事ばかりを任される羽目になった。COPKV計画という一大プロジェクトにも2室が関わる事はなかった。
「俺たちの設計が、他社や他開発室の機体と比べて劣っていたわけではない」
 臥薪嘗胆の年を抱き続けた2室の技術者たちに新たな転機が訪れたのは今年。研究部から空中変形格闘能力の向上の為の実験機製作を命じられ、逆にYF−194を基にした空中変形機──実用機としての設計を逆提案した。企画部はあくまで実験機としてその提案を了承したが、エルブンが僅か2週間という短期間で描き上げた設計案は、シミュレーション上、新型機と比較しても全く遜色ない数値を叩き出した。
 名目上は、YF−194の改良型の一つとして。だが、実質的には殆ど新規設計の機体と呼べる程の技術と労力がそこに注ぎ込まれていた。

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●YF−196『スカイセイバー』
 ドローム社第2KV開発室が開発した双発の中型汎用機。搭載した機材から強襲機に分類される。
 同社の『フェニックス(A3型)』とはまた異なる方向性で空中格闘能力の向上を目指した空中変形機の一つで、攻撃能力に秀でたYF−194をベースに装甲や構造材に新素材を採用するなど徹底した軽量化が図られている。その為、『SES−200』エンジンに比べて出力の劣る『SES−190改』エンジンを搭載しているにも関わらず、F−201Aと同等の空中変形能力を実現している。
 さらに、莫大な練力と引き替えに近接格闘攻撃回数を増加させる試験装備を採用しており、『副兵装のみ』という制限はあるものの、空中変形時に最大4回(地上使用時には最大5回)攻撃が可能になるという破格の瞬間格闘戦能力を誇る。
 これらの特徴から『空中変形機』、『近接格闘戦機』の面が強く押し出された形の本機であるが、低燃費型の攻撃性能向上能力により、本来の『高い攻撃性能を活かした汎用強襲機』としての運用も勿論可能である。
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 第2KV開発室の技術と実績は、失われてなどいなかった。
 この設計案は上層部の目に留まり、その後、試作機製作、社内コンペ突破、正式採用、量産化の決定、と話がトントン拍子に進み、その完成度の高さから傭兵向け機体としての販売も決定した。
 3室がフェニックスの主機たる『SES−200』エンジンの改良に手間取る中、先に2機種目の『空中変形機』を完成させたのだ。
 まさに2室の技術力の面目躍如、といった所であろう。

 ‥‥とはいえ、実際には、エルブンが2週間という短期間で『新型機』を設計して見せたのには、裏にちょっとしたカラクリがあった。
 2室は元々、KV開発の主流から外れた状況を打破する為に、YF−194をベースに軽量化した強襲機YF−195を以前から内々に設計していたのだ。研究部から実験機製作の話があった際、195に空中変形能力を付与したものを新規設計の196として提案したのだ。
 こういったやり方は、本来、ハードウェア同士の競合や相性問題を生じかねない危険な方法であったのだが‥‥最近になって2室に異動していた技術者がこれを解決した。彼はこうした相性問題に精通した技術者だった。

「2室への異動は、君自身が人事部に働きかけて実現したものだと聞いている。今回の一件を見ても、君が大変優秀な若手技師であるという事は疑うべくも無い」
 ドローム本社、第2KV開発室。その奥まった一角に設けられたエルブン・ギュンターの私設オフィス。ブラインド越しに差し込む夕陽が光と影のコントラストを生み出す室内で、マホガニー製のソファに座った壮年の男が、デスク越しに立つ一人の若者に頭を向けていた。
「‥‥その将来を嘱望された君が、なぜわざわざ望んで異動してきたのか‥‥部下たちの中にも興味を持つ者は多い」
 君が他の開発室のスパイではないか、という者までいる。過激な台詞を淡々と投げ掛けながら、男は若者の表情を伺った。目線は影に重なり見えない。その口元が苦笑に歪み‥‥自分は仲間や友人を求めてここに来たわけではありません、と自嘲する様に呟いた。
「理由は単純です。自分は3室でA−1やS−01Hの改良に携わりましたが‥‥結局、あそこが『場末の部署』である事を再認識させられただけでした。あそこにいたら何も出来ない。出世の見込みも無い。‥‥私は一介の技術者で終わるつもりはないのです。エルブン・ギュンター2室長」
 3室長のヘンリーは政治力がない。というより、社内政治に興味がない。それは彼の美点ではあるが‥‥若者のような上昇志向の強い人間にはいささか不甲斐ない。
「上層部に直接掛け合い、196の生産を認めさせた貴方の政治力。それが私の欲しいものです」
 はっきりとそう言い切る若者に、壮年の男、エルブンは好感を抱いた。有能であろう事はここまでの経緯からはっきりしているし、最初から旗色を鮮明にするその態度はむしろ分かり易い。勿論、過剰な機体も油断も禁物だが、互いに存在価値を認めている間は良好な関係が築けるだろう。
「よかろう。ハインリヒ・ベルナー。君を2室に歓迎しよう。奮闘したまえ。君が望むものを得る為に」
 新しい室長に向かって礼を言い、退室する元3室新人、ハインリヒ・ベルナー。新たな同僚たちのねめつける様な視線を受けるその表情に、後悔に類するものはなかった。

●参加者一覧

セラ・インフィールド(ga1889
23歳・♂・AA
伊藤 毅(ga2610
33歳・♂・JG
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
ルナフィリア・天剣(ga8313
14歳・♀・HD
ヴェロニク・ヴァルタン(gb2488
18歳・♀・HD
ランディ・ランドルフ(gb2675
10歳・♂・HD
賢木 幸介(gb5011
12歳・♂・EL
Nike(gb9556
10歳・♀・SF

●リプレイ本文

 ネバダ州、ドローム社KV実験場──
 赤茶けた荒野の只中にあるこの飛行場の駐機場に、見慣れぬ3機のKVがその翼を並べていた。
 F−196『スカイセイバー』。ドローム社、第2KV開発室が開発した強襲型の空中変形機、その試作機である。この日、この新鋭機の傭兵向けPV(プロモーションビデオ)撮影が行われる事になっていた。
「まさかスカイタイガーの血をひく機体が発売される日が来ようとは‥‥」
 駐機場脇の芝生の上から遠目に機体を見遣りながら、セラ・インフィールド(ga1889)は感慨深く呟いた。194系の機体が出る事は正直、完全に諦めていたので、今回の話は素直に嬉しい。
「スカイタイガーか‥‥フェニックスの競合機だったらしいが‥‥」
「虎には割りと期待していたからな。こんな形での復活ってのも悪くねぇ。ここでタイプの違う空中変形を持ってくるのも、良いサプライズなんじゃね?」
 伊藤 毅(ga2610)と賢木 幸介(gb5011)が話に乗る。セラは(いつもそう見えるのだが)にこやかに頷いた。フェニックスに敗れた機体が幾度の挫折を乗り越えて不死鳥の如く復活する‥‥何とも運命の皮肉を感じる話ではないか‥‥
「だ〜か〜ら〜、なんでKVマントをつけちゃダメなのよっ?!」
 と、待機所の方で良く通る若い女の声が響き、3人はそちらを振り返った。見れば、阿野次 のもじ(ga5480)が広報部の人間と何やらもめていた。
「だから、KVマントはカプロイア製じゃないですか。プロモに他社製品が映るのは困るんですって!」
「提携先でしょ?! 『セイバー』なのにマントが駄目とか、そんな社会正義が通らない事‥‥」
 世の理不尽を(不条理に)呟きながら、携帯電話をプッシュ(死語)するのもじ。連絡先に気付いた広報部の人間がその顔を蒼くする‥‥
「マントの収納技術を見れば一目で分かりますからね。分からない様にすれば‥‥」
 のもじは「そうか!」と手を叩き‥‥声をかけてきた人物を振り返った。ハインリヒ・ベルナーが苦笑しつつ立っていた。
「おや。3室の三羽烏のベルっちじゃん。‥‥なに? 異動したの? ま、気持ちは分かるわ〜。あそこだと天然室長筆頭にキャラ立て大変だものね」
「地味っていうならリリーの方が‥‥って、違う! 俺は自分から2室に異動したんだっ‥‥すから」
 ハインリヒのその言葉に、ソファの陰で小さくなっていたヴェロニク・ヴァルタン(gb2488)──彼女は幾つかの事情から、ここにいる事が色々と気まずいのだ──が、がばっと身を起こし、背もたれ越しに振り返った。自分から異動した、という事は、彼女が敬愛する3室長ヘンリーに対して何か含む所でもあるのだろうか‥‥? どんよりと見据えるヴェロニクの視線に、ハインリヒが笑みを引きつらせて後ずさる‥‥
「おい、若いの。このセイバーというのは、基本的に虎の性能向上型なのか?」
 そんな場の様子に頓着した様子もなく、ルナフィリア・天剣(ga8313)がハインリヒに問いかける。自分よりも若い、というか幼い相手に若いの呼ばわりされてハインリヒは苦笑しつつ、ホッとした様にルナフィリアに向き直った。
「いえ、194の設計を基にしてはいますが、外観も設計思想も、もう別の機体と言って良いでしょう。攻撃性能の強化という方向性は継承しつつ、軽量化を追求した代償に低下した防御性能、その対価として獲得した機動性── 『コンセプトを明確にした中堅汎用機』といった所でしょうか」
 おまけに空中格闘戦能力と近接連続攻撃能力までついて来る。‥‥まぁ、こちらは当初の想定以上に練力をバカ喰いする機材になってしまったが。
「非物理攻撃能力はどうなっていますか?」
 ランディ・ランドルフ(gb2675)が尋ねる。もし、知覚が高ければ、BCアックス乱れ斬りとか、とっても素敵な事が出来るのだが。
「特化機には及びませんが‥‥『大台には乗っている』? ‥‥だそうですよ」
「へぇ‥‥セイバーの連続攻撃と、リンクスの狙撃能力‥‥組み合わせたら、怖い部隊が出来そうですね」
 と、その時、開け放しになっていた待機所のドアがノックされ、間もなく発進準備が完了する事が告げられた。
「さぁ、スカイセイバーが売れるよう、カッコイイ映像を撮るのですよ〜」
 ほんわかと笑ったNike(gb9556)が、自ら「お〜!」と、拳をふにゃりと突き上げた。


●F−196『スカイセイバー』 傭兵向けPV、完成版

 遠景──赤茶けた大地が左から右へと流れていく。浮かび上がるドローム社のロゴ。そして、その横に、ちいさく、目立たず、「未来へ、共に戦う者たちへ」──の文字が浮かび上がり、消えていく。
 静かに遠く、微かに聞こえるKVのエンジン音。エアマスク越しの落ち着いた呼吸音。カメラが徐々にアップになってゆき、やがて、低空を飛ぶA−1DロングボウIIの姿が見えてくる(※注釈1)──

 そのA−1Dのコクピット。エンジンと呼吸の音量が一段上がる。AU−KVを着込んだパイロット(※2)が、周囲を警戒するように視線を飛ばし──
 と、唐突に鳴り響く電子音。慌てた様に揺れ動くカメラワークが、センサーに映る複数の光点を捉える。慌しくコンソールを操作するパイロット。高性能カメラが焦点を合わせ‥‥陽炎の向こうに4機のHWの姿が映る(※3)

 突き出されるスロットル、引き倒される操縦桿。大きく旋回して逃走にかかるA−1を追って4機のHWが加速する。甲高く悲鳴を上げるエンジン音‥‥旋回中に止まっていた呼吸は荒く、早くなっていく──
「メーデー、メーデー! こちら第72航空偵察隊! 小型HW1個小隊と遭遇、追跡を受けている! 付近の友軍機に至急、救援を求める!」
 直後、風防の外を飛び過ぎてゆくフェザー砲の光芒(※4)。「畜生!」と漏れる悪態の声(※5)。

 と、前方の空がキラリと光り‥‥
「あれは‥‥」
 見る間に大きくなった機影──F−196『スカイセイバー』の姿が画面に大写しになる。
「F−196『スカイセイバー』!」
 A−1の前方より飛来する196が、迫り、すれ違い、後ろへとすっ飛んでいく映像がストップモーションで映し出される。歓声を上げるA−1パイロット。3機編隊で飛ぶ196、そして、F−201『フェニックス』が敵を捉える(※6)。
「HQ、前方に小型HWが4を確認。‥‥攻撃を開始する」
 蒼空にシュプールを描きつつ散開を始める彼我の編隊。同時に軽快な、格好良い音楽がBGMが流れ始める(※7)。
 宙を跳ねる様に移動するHWの上を取り、翼を翻して逆落としに降下する196。その映像に重ねて、機体の特徴を知らせる解説のナレーションが入る(※8)。
「F−196『スカイセイバー』‥‥ドローム社の開発した新鋭機である」
 敵の反撃をさらりとかわし、196が頭上からライフルを撃ち下ろす。瞬く間に1機を撃墜し、さらに隣りの敵機へ牽制射。敵の機動を制限しつつ翼を翻し肉薄する(※9)。
「特徴的な高い攻撃能力、軽快な運動性。そして‥‥」
 空中変形能力。そのナレーションに合わせ、薄い赤光と蒸気の雲を纏い、196が空中で人型へと変形する。機剣を抜き放った196は、信じられないスピードでそれを『三閃』させると、HWの装甲を切り裂き、穿ち、貫き通して‥‥ライフルの零距離射撃を受けて爆散するHWを背に戦闘機形態へと戻り、飛翔する(※10)。
「弊社のF−201『フェニックス』が誇る空中変形能力──」
 画面が切り替わり、赤い気流制御補助力場を纏って変形した201が、手にした大型格闘主兵装をHWに叩き付ける。ひしゃげ、砕け、叩き潰された敵が爆発して果てる(※11)。
 続けてもう1機の201が、ラスターマシンガンで敵を牽制しながら人型へと変形。力場を反射し赤く輝く大剣を振り下ろす。叩き切られて破片を飛ばすHW。返す刀で斬り上げる201の姿がスローモーションになり‥‥クローズアップされたその刃先が、後ろへ『跳び避ける』HWの鼻先を掠め過ぎていく‥‥(※12)
 スローが終了し、跳び避け、退がるHWを追撃しようとした201は、しかし、力場が薄れ始めており、舌打つように戦闘機形態へと戻る(※13)。
「──その最大の相違点は‥‥瞬間最大攻撃回数」
 201から逃れたHWに向け、突進する新たな196。人型へと変形しながら手にした機鎌を背に回し、爪盾を掲げつつブーストに火を入れる(※14)。
「ええ、凄かったですよ〜。『戦いは手数だよあにき』という古の名言がありますが〜、この子はそれを体現したような子なのですよ〜」
 HWの怪光線を至近に前進する映像が流れる中、パイロットの※※※※さん(モザイク)の感想が、インタビューに答える形で流れ出す(※15)
 合わせる様に格闘動作に入る196。爪盾でHWの砲を払い除けた196は機鎌をクルリと回転させ‥‥重い、だが、それを感じさせない三連撃でもってHWをズタズタに切り裂いた。

 火を噴き、地面へと落ちていく敵HW。倒すべき敵の存在しなくなった蒼空に、KVたちが勝利の凱歌を歌う──
 と、突然、BGMが急速にフェードアウトしてゆき、空を暗雲が覆い始める(※16)。
 その雲海を割って現れる悪魔の如き敵ボスワーム(※17)。と、途端に、201たちがガクリと揺れる。
「くっ、何だ!? 機体のコントロールが!? 駄目だ、操作が効かない‥‥!」
 201のコクピット。操縦系を乗っ取られた機体が、パイロットを勝手に射出座席ごと放り出す。何となく悪魔っぽい影を纏った201がボスワームを守る様に位置を取り‥‥
 ドラムビートから始まった新しい決戦の楽曲と共に、睨み合った196と201が飛び出して行く。
 翼端から水蒸気の雲を引いて空を疾走する196と201。互いに複雑な機動を描いた高機動戦が繰り返され──やがて、1機の196が201の背後を取り、機銃の乱打で撃ち落とす。映し出される別の戦場。大剣と機槍を持った201と、機鎌と機爪を握った196が正面から人型同士でぶつかり合い‥‥手数の多さで196が201を切り刻む(※18)(※19)。
 苦渋の末に『同胞』を打ち払った196が、3方からボスワームに襲い掛かる。腕部から反撃のレーザーを、そして、偽装巨大レーザーを撃ち放つボス。それをかわして直上へと上昇した196がカッ、と太陽を背に人型へと変形。水鳥的なポーズで華麗に回転しつつ、空中で目にも留まらぬ機爪の三連撃。その反動を利用して反転しつつ脚部を主兵装のレッグドリルへ変形したそれは、伸びのある美しいポーズでボスを蹴り貫き(※20)──ワームは大爆発を起こして砕け散った──(※21)


「あなたが、どこの誰のどんな思惑の末に生まれたのか‥‥そんな事はNikeは気にしないのです。ただそれでも、夢を持たずに創られた機体は‥‥寂しいのです」
 整備を始める為に降りた196を振り返り、Nikeは今日一日命を共にした乗機に呟いた。
 ハインリヒは肩を竦めた。確かに、フェニに比べれば浪漫はないかも知れないけど‥‥2室の技術者たちの意地は詰まっているんだけどな。
 ふと視線を感じて、ハインリヒは背後を振り返った。真剣な顔でこちらを見つめるヴェロニクに、彼も真摯に視線を返す‥‥
 と、ぺろぺろキャンディを手にしたのもじがその間をテコテコと通過する。
「せっかく異動したんだし。2室の先輩たちに頭を垂れて教えを請うといいよ。ライバル『達』と切磋琢磨して頑張ってね」
 その言葉に表情を堅くするハインリヒ。
 勝ちたい相手がいるのはいい事だ。のもじはそんな事を考えた。


●注釈
1:撮影はロングボウのカメラを用いて行われたが、この映像はルナフィリア機のカメラが撮影した。
 カメラは広報部の機材で、かなりの高価という事もあって、搭載は実戦不参加が条件とされた。

2:操縦者はランディ。年齢や立場を隠す為、パイロットスーツでなくAU−KVを着用している。

3:HWは実際の映像。以後のHW戦は全て実戦で撮影が行われた。
 軍に同行しての撮影は許可されなかった為、実験場の東へ『必要以上に』進出しての撮影で、広報部曰く。
 「PVの撮影中にHWと遭遇しちゃったら‥‥応戦しちゃっても仕方ないよね?」

4:これも本物。この時の撮監曰く、「A−1なら2、3発は大丈夫だ。至近弾くらい喰らっとけ!」

5:この時の悪態は撮監(↑)に対するものである。

6:『逃走』を続けていたランディ機は、味方が到着するや一転、機を反転させて肉薄し、撮影を継続している。

7:LHの各所で流す映像という事で、余り重くない軽快なストーリー仕立ての映像となっている。全体の構成はヴェロニク。

8:声はルナフィリア。本来は196の詳細なスペックがテロップで表示されるが、発売前のバージョンではカットされている。

9:セラ機。メトロニウムフレームは未搭載。
 ここに映った1ターンキルは搭乗者と兵装の力による所が大きいが、196の攻撃力を強調する映像になった。

10:パピルサグに精通するルナフィリアは、196の搭載機材がアサルト・フォーミュラである事に気がついた。
 バランスのとれた性能と良好な運用実験結果、かつ、生産性の観点から社内の競合を勝ち上がり、本機へも採用が決定したもの。

11:毅機。A3型の空中変形の利点は、兵装を選ばぬ自由度と汎用性。196との差異を強調した兵装選択がなされている。

12:流石にこの辺りのスローやクローズアップの演出は、後で撮影した映像を編集している。

13:幸介の201Aの空中変形時の攻撃回数は、196と同じ2回。
 これを利用し、幸介は「手数が足りずに止めを刺せなかった」、「セイバーにはその先がある」という演出に用いている。

14:Nike機。実は、このシーンは後で取り直したもの。練力が切れる為、ブーストは使用しなかった。

15:前述の通り、パイロットはNike。「プライバシー保護の為、音声は変えてあります〜」(何故に)

16:ここから先は実戦ではなく、KV同士の模擬戦。何気にCG製作と各種制作費で予算オーバーした広報部泣かせの力作。

17:ルナフィリアのパピルサグ『フィンスタニス』にボスっぽい塗装とハリボテを被せてCG処理したボスワーム。
 ルナフィリアが本気で相手をした為、まさにボスの如き奮戦を見せたが、PVなのでばっさりカット(涙)

18:単騎同士の巴戦では攻撃性能と機動性に優れる196が優位。ただし、乱戦時の生残性は総合性能に勝る201に分があるか。

19:201の開発に深く関わったヴェロニクは、芝居と分かっていても201が墜とされるシーンに顔を背けた。
 背けた視線の先。彼女と同じ様に眉をひそめるハインリヒの姿に、ヴェロニクは意外そうに目を瞬かせた。

20:この部分、なぜか劇画。
 しかも、カットイン。

21:のもじ機。カットされた台詞は「GOD聖拳奥義『天翔XノZI斬』!!! お前はもう、沈(てぃ)んでいる」
 ‥‥映像的にも(色んな意味で)カットが掛かった部分だったのだが、特殊能力の特性を最も良く伝えるシーンだったので採用された。
 ちなみに、マントは頚部前で風呂敷結び。