タイトル:追って追われて砂の中マスター:

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/23 03:38

●オープニング本文


「さすがに、砂漠は熱いな‥‥」
(暑いを通り過ぎて、熱いになっている)
「夜は割りと快適だけどな」
「星は綺麗だったな」
「ロマンチストだったのか、お前‥‥」

 砂漠の乾いた大地で、男達の乾いた会話は続く。

「そろそろ荷物降ろすか」
「だな、ここで野営の準備するか、夜になる前に」
「また、夜空の星を‥‥」
「はいはい、ロマン、ロマン」

 男達は、軍用ジープの後部から、荷物を降ろし始めると、1人がおかしな事に気が付いた。積み込んだ荷物の1つが空になっている。

「‥‥おい、空の荷なんて誰が?」
「オレじゃないぞ」
「知らないぞ?」
「おい! 待て!!」

 荷を確認していた3人が、驚いて声のした方を見ると、バックパックを担いだ女性が砂漠を駆けている。その女性の姿からして、計画的にこの砂漠に来たのだろう。だが、どうやって?

「あ! この荷は、あいつが!!」
「くそ、いつの間に」

 いくら知らなかったとはいえ、このまま見過ごすわけには行かない。女性が一人で砂漠に向かっているのだ、どんな理由かもわからないが尋常ではない。まして‥‥この辺りにはキメラの目撃情報が後を絶たない。

「本部に連絡だ! オレはあいつを追いかける!」
「わかった、頼むぞ、こっちはやることやったら追いかける!」
「それじゃ、オレも残るから、お前は一緒に追ってくれ!」
「OK」

 本来この4人は、作戦途中で故障した兵器の回収を目的としていた。それを放棄するわけにも行かず、2人だけが女性を追いかけることになった。

―――――――

「なんて、足の速い女だ‥‥」
「砂の上を‥‥こうも速く走るとはな」

 追跡を始めて30分‥‥完全に女性を見失っていた。追跡に向かった二人は、UPC兵であったのだが、その2人の追跡を振り切り、女性は砂漠のどこかに消えてしまった。このままでは、自分達も危ない。そう思っている矢先、

ボフゥゥ!

 砂煙が上がり、2人の前にキメラが現れた!

「キ、キメラだ!」
「サンドワームか‥‥!!」

――――――

「はぁ、はぁ‥‥」

 女性は独り砂漠をひたすらに進む。その足には砂漠の上を歩くための靴、顔には強い日差しを遮るためのサングラスとマスク、帽子、服など、装備は完璧であった。

「このまま‥‥」

 遠くを見つめる女性の視界には、ただ砂漠が広がっている。そして、それ以上に女性の心は乾いていた。求めても求めても‥‥それが叶うことがないと判っていても‥‥。

――混乱する報告――

「本部、本部〜」
『どうしました? 回収は終わりました?』
「いや、それが積荷に一般人らしき女性が紛れ込んでおり、捕まえようとしたんですが‥‥逃げられました。現在、2人が追跡中」
『その女性について他には?』
「手がかりはなし。ただ、砂漠中心へと向かった様です」

『こちらからも報告だ』

 通信中の会話を遮るように、追跡に向かった2人からの通信だ。

『現在、サンドワームキメラと交戦中。女は見失ったし、逃げるだけで精一杯だしと踏んだり蹴ったりで、任務続行不可能』
「大丈夫ですか? よく逃げられましたね」
「偶然、砂漠の中に岩石砂漠ような場所があり、そこに避難している。ヤツラは砂の中だけしか移動しないようだ。とはいっても、およそ半径10m程度の砂漠の海の岩礁と言った場所だ。完全に囲まれてる‥‥サンドワームは確認できただけで4匹。2m程度が2匹と、5m程度が2匹だ」
『確認した所、その近辺に依頼から帰還する傭兵のグループが居ることがわかったので、その方達に救援をお願いします』

●参加者一覧

終夜・無月(ga3084
20歳・♂・AA
ガーネット=クロウ(gb1717
19歳・♀・GP
鏡音・月海(gb3956
17歳・♀・ST
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
クラフト・J・アルビス(gc7360
19歳・♂・PN

●リプレイ本文

 ヘリの機内で、装備の整理と準備が始まる。広大な砂漠で迷えば命はない。準備が不十分なら移動すらままならない過酷な環境。その為の準備であり、この瞬間から命に左右すると言ってもいいだろう。

「長期滞在するわけでもないが、水・食料はもちろん、日除けになる物や、防塵装備も準備しておきなよ。」

 戦うオペレーターことフリーマン(gz0446)が傭兵達にアドバイスしている。そんな中で、女性と二人の兵士という二つの目標がある状況についての討論がなされている。

「選ぶ、というのは嫌な気分ですね」

 ガーネット=クロウ(gb1717)の声のトーンが低く気持ちが沈んでいるのが判る。彼女の言う選択というのは、兵士の救助に向かうか、女性の保護に向かうかの事だ。人数不足を理由に、二手に別れる事を悪手として考えたのだ。

「俺が女性追跡に行きましょうか?」

 終夜・無月(ga3084)からの申し出であったが

「手の届く範囲で出来る事を考えるべきと思います」

 ガーネットが制止する。いくらこの中で一番の実力者であっても、一人では危険過ぎるからだ。

「みかがみ君のフォローには、私が行くよ」

 夢守 ルキア(gb9436)によって、女性を追うメンバーが二人になったが、まだ手が足りない事には変わらないという状況であった。確認されたサンドワームは四匹、一人一匹を担当する計算であり、兵士の護衛など考えれば、これが限界という所だ。

――――――

 ヘリが、轟音を響かせて近くに着陸する。

「やっと、来たか」
「暑いよ‥‥」

 砂漠仕様の車両の中から、兵士がヘリを見詰めながらつぶやく。すでに砂漠の中に数時間滞在している為、かなり疲弊している様だ。
 ヘリから、終夜・夢守と降り、それに遅れてフリーマンも降りてくる。

『お二人の‥‥どちらかで良いので‥‥ヘリの操縦をお願いします!』

 ヘリのスピーカーから、轟音に負けない大音量でハミル・ジャウザール(gb4773)の声が車内の二人に届く。それを聞いた兵士二人が、無言で互いを見やり‥‥

「「せ〜の、せいっ!」」

 どちらが操縦役になるかのジャンケンを始める。そして、勝敗が着いた。兵士が一人車から降りて、ヘリへと駆け出す。さすがに、ジャンケンで負けたとはいえ、軍人らしい潔くきびきびした動作である。

「この車は俺達が使うがいいか?」
「はいはい、降りて降りて」

 終夜と夢守が車に辿り着くなり、有無を言わせぬ勢いで出発の準備を始め、フリーマンは運転席に乗り込むとエンジンを掛ける。女性追跡班の人数不足が目に見えて深刻であったため、フリーマン自らが運転手役に名乗り出たのだ。
 それを見届けると、ヘリの方も飛び立つ。

『くれぐれも無理しないで下さいね』

 ハミルが女性追跡班の三人に声をかける。姿は見えないが、車窓から三人の腕が伸び「任せろ!」という様に親指を立てて返事をする。

「アチラは御主人様達にお任せして‥‥」

 突如、ヘリ機内でメイド服を脱ぎ戦闘用のメイド服に着替え始めたのは鏡音・月海(gb3956)だ。鏡音の言うご主人様とは、終夜だ。その表情には、何の心配も感じていないという感情が見て取れる。終夜と夢守の二人を信じているからこその表情だろう。

 男が一人、佇んでいる‥‥

「あれ‥‥俺どうすんだ?」

 車もなければ、仲間も居なくなった兵士が一人。砂漠に取り残される。

「‥‥また、夜の星が見れるの‥‥かな」

 取り残されたロマンチストな兵士は、まだ来ぬ夜へと現実逃避を始めた。

●砂上の女性、その心のオアシス

 砂煙を巻き上げて失踪する車。「探査の眼」とゴーグルの望遠などを使い捜索する終夜、軍用双眼鏡で捜索する夢守が、必至に女性を探している。

「どこだ‥‥」
「キメラに襲われてないといいけどね〜」

 終夜と夢守の焦りが感じられたその時、正面の砂丘の谷間に人影が見える。車中の三人がほぼ同時に発見し、フリーマンは車を谷間へと向け、終夜と夢守は車から飛び降りると、それぞれ「瞬天速」と「迅雷」で女性へと駆け寄る。夢守は即座に足元の砂を女性へと投げつけ、FFがあるかどうかを確認する。

「ちょっと、アヤシイってね」

 女性はいきなりの砂の攻撃に驚き転倒する。どうやら、人間だったようだ。しかし、まだ安心は出来ない為、警戒しながら女性を挟みこむ様にして近づいていく。その頃になって、やっと車が到着する。

「大丈夫か?」

 終夜が女性を抱き起こし、そのまま車へと押し込んでしまう。女性はというと、いきなりの事で抵抗する間もなく車に入れられてしまった事で、完全に諦めたようで、大人しく後部座席に座っている。終夜と夢守で、女性を挟みこむように座る。

「ね、どうして砂漠に来たのか、聞いてもいーかなぁ?」

 夢守の問いかけにも、女性は素直に応じる。そして車が走り出す。

「夫に会う為です。私の夫は‥‥バグアと傭兵の戦闘に巻き込まれて亡くなった、はずでした」

 膝の上に置いた手を強く握り締める。

「死んだはずの男が、何故この砂漠に居ると?」

 視線は前を向いたまま、終夜は話を続けろと言う風である。

「以前、この辺りで大規模な戦闘が行なわれたと聞いています。その戦闘に参加していた知人が、一枚の写真を‥‥撮られた場所はこの砂漠の先、撮影時期は」

 女性が取り出した写真には、男性が一人写っていた。そして、日付は一ヶ月ほど前の物であった。

「夫が亡くなったという報せを受けたのは半年前。この写真が撮られたの一ヶ月くらい前。だから‥‥生きているって。けれど‥‥」

 写真の裏を夢守に見せる。

「これ、手配書の写真?」

 写真の裏には、『キャラバン隊大量虐殺犯』と書かれていた。

「それが、どんな経緯で撮影されたのか解りません。ですけど、それは夫です。似ているなんて物じゃなくて、ホクロの位置も一緒なんです。だけど、それは夫じゃない! 夫が人殺しなんて‥‥」
「話の途中で悪いけど、ちょ〜っと周り見てくれるか」
「そうだな。厄介な状況だ」

 運転席のフリーマンが後方を指差し、終夜がバックミラーを見ながら話を中断する。見ると、後方から砂嵐が迫っていた。空を覆いつくす様な砂の壁が、迫りくる。

「砂嵐の対策がされてる車だが、さすがに視界が悪い状態で走るのは危険だ」

 終夜の指示で、フリーマンが停車させる。その直後に車は砂の世界に包まれてしまった。

●サンドワームの恐怖

 兵士を救うため、四人の傭兵を乗せたヘリが到着する。しかし、その現場にヘリが下りることは叶わずホバリングを行い、次々とロープを使い降下していく。

「高いですね。でも体が動いてくれる気がします」

 不安を感じながらも、ガーネットが最後尾で降下する。

「波を読みます、指示しますが皆さん注意して下さい」

 鏡音がバイブレーションセンサーによって砂中の様子を探り、ハミルは、

「ここでじっとしていて下さい」

 兵士二人を岩場の中心辺りに隠れさせ、クロックギアソードを構え仲間の下へと戻っていく。クラフト・J・アルビス(gc7360)は兵士が安全な場所に隠れた事を確認すると、覚醒状態へ。

「隠れられないのに、覚醒って何かなぁ」

 本来、彼の覚醒はカモフラージュ効果を期待する物であるが、何もない砂漠で昼間ともなると、その効果はないに等しかった。

「敵の数は、四体。この岩場を囲むように移動しています。あと、岩場は見た目より広く、砂の中にも広がっていて、岩場周囲はかなり浅いです」

 鏡音からの情報で、ハミルとクラフトが動く。二人は砂の浅瀬へと踏み込み、サンドワームをそれぞれ誘き出そうと言うのだ。

「ハミル様、来ます!」

 鏡音の警告で、ハミルが瞬時に飛びのく。

ボッ!

 先ほどまでハミルが居た足元から、小さい方のサンドワームが飛び出す。それを狙って、ハミルが流し斬りを仕掛ける。

ギィィン!

 サンドワームの表皮は硬く、刃が通らない。しかし、ダメージはある。サンドワームの体が砂の中から完全に露出。

「ならば!」

 急所突きでサンドワームを突き刺す。

キィィィン!

 金属を突き破る様な音と共に、ハミルの剣がサンドワームを貫いた、が。

ドン!

 音速に近い速度で砂を吐き出すサンドワームの攻撃『サンドブラスト』だ。この攻撃の危険性を理解しているハミルは、剣を手放し全力で回避する。その隙に再び砂へと戻ろうとするサンドワームだったが、一瞬影が横切り、戻ることは出来ずに肉塊へと変わる。

「一匹ずつ、着実に倒しましょう」


 影はガーネットだった。全速・全力での一撃が見事に決まったのだ。それを見ていたクラフトの表情が暗くなる。

「小さいのでもあの硬さって。大きいのはどうなるんだ」
「クラフト様! 危ない!」

 鏡音が声を上げるのを聞いて、瞬天速でその場から離れるが、

「あ!」

 そもそも、そう広くない場所での戦闘であったため、回避した先が砂の上だったのだ。クラフトの立っていた場所からは小さいサンドワームが飛び出し、クラフトの着地した後ろには、巨大サンドワームが待ち構えていた。

「グっ‥‥」

 絡みつかれたクラフトは必死にもがき、攻撃を繰り返すが、彼が不安に思っていた通り、かすり傷を負わせるのがやっとだ。サンドワームはそのまま砂の中へ引きずり込もうと、無理やり潜り始める。

「させませんわ。さぁ、止りなさい」

 鏡音が呪歌によって、サンドワームに呪縛をかけ、その動きを鈍らせていき、それを見たハミルがエナジーガンで援護する。しかし、その硬い表皮がエナジーガンさえ弾く。高圧で噴射するサンドブラストは、その硬い表皮があって初めて可能になっているのだろう。

「だりゃぁ!」

 顔を紅潮させながら力を振り絞り、サンドワームの拘束から抜け出す事が出来た。この時、四人全員が同じ敵に集中していまい、死角が出来ていたことにまだ気がついていなかった。

「おい! 後ろだ!」

 岩場に隠れている様に言われていた兵士の一人が叫ぶ。兵士が見たのは、傭兵達の背後に現れた巨大サンドワームだった。

ドッ!

 破裂音をさせ、サンドブラストが周囲をえぐる。辛うじて全員が回避するものの、体勢を崩してしまう。これを待っていたのか、まだ一度も姿を見せていない最後の一体が現れる。

バサッ! ブォンッ

 砂から一気に跳ね上がり、小さめのサンドワームが体で横一文字に薙ぎ払う。

「きゃぁ!」

 鏡音が直撃をくらい、岩場に叩きつけられる。咄嗟に受身は取れたが、硬い岩場では気休め程度にしかならなかった。

「‥‥ん‥‥ぐぅ」

 軽い呼吸困難になり、完全な無防備だ。さらにサンドワームが追撃に入る。

「させない!」

 瞬天速で接近したガーネットのエーデルワイスがサンドワームの口を切り裂く。その瞬間、吐き出そうとしたサンドブラストがただの砂の雨となる。口腔内の圧力を極限まで高める事で、高速の砂礫を吐き出すのだから、口に傷を負う事はこれを不可能にさせた。しかし、止めには到底ならない。それを感じたガーネットがヘリに合図を送る。

バシュッ! ドゴーン!

 ヘリからミサイルが発射・命中。サンドワームの頭部は吹き飛び、その体は岩場へと横たわる。だが、この間に巨大サンドワームは二体とも砂に潜ってしまい。姿を見失う。

―――

 砂嵐に巻き込まれ、完全に足止めを食らっている四人は、車中での事情聴取状態であった。

「諦め切れないで居るなら、あなたがULTに依頼を出してみるといい」

 女性の言動から、その決意の強さが感じられ、それは逆に不安を与えていた。きっと、同じ事を繰り返すと確信させる程の決意に感じられたからだ。故に終夜は、繰り返すことを止められないならば、より安全な方法を提案したのだ。

「お、そろそろ砂嵐からは出られそうだ」

 フリーマンが周囲の砂が薄れて来たのを確認し、やっとかという表情で安堵していた。

「それじゃ、急いで戻ろ〜。他のみんなも心配だよ」

 夢守が身を乗り出すように、運転席のフリーマンを急かせる。

―――

 長期戦となる事を避けるため、撤退する事にした救出班。しかし、ヘリに全員乗ることは出来ても、その時間を稼ぐ必要があった。着陸も出来ない場所からヘリに乗るには、ロープをつかって登るしかない。その時間を稼ぐ方法‥‥

「私が時間を稼ぎますわ。先ほど、サンドワームにも効果があった『呪歌』を使いますわ」

 鏡音の呪歌では一体だけしか効果がなく、二体を相手にするのは無理である。そこで、一体だけは無力化しておく必要があった。

「俺が囮やるから、みんなで一体くらいは倒そうか」

 クラフトが囮を買って出ると、みなが頷き最後の作戦が開始された。

「ワームちゃん、こっちですよー」

 クラフトがあえて、ヘリの下付近でサンドワームを誘き出ため、砂漠の上を飛び跳ねてみせる。先ほどからの動きで、サンドワームが別々に行動しているとわかっていた。その読みは正しく、勢いよくサンドワームが飛び出してくる。

「あ! さっきのヤツ!」

 クラフトが紙一重で躱し、疾風脚を使いさらに回避する。その際に、サンドワームの体についた無数の傷が、自分を砂に引きずり込もうとした個体だと気付かせたのだ。逃げ際にクーシーで一撃を与える。先ほどとは違い、深くえぐる様な傷を与える。絡まれた時とは違い、全身の力を乗せた攻撃だったからだ。

「あとは任せろ!」

 ハミルのエナジーガンが、サンドワームの頭部を狙い撃つ。

シュウゥゥゥゥ!

 空気の漏れる様な音が響き、サンドワームの口から砂が吹き出る。

『私が動きを止めますので、その隙を狙って下さい』

 ガーネットが通信で、ヘリへのミサイルの発射タイミングを指示し、自身は二連撃・先手必勝・瞬天速と全スキルを乗せた攻撃を叩き込むべく走り出す。

ギィィン! ガシュゥ!

 連続でエーデルワイスの攻撃が決まる。あまりに同じ場所に連続で攻撃を食らったサンドワームが、地面の上をのたうち回る。

バシュ! ドドーン!

 ヘリからのミサイルが命中。今度はサンドワームの殻が半分消し飛んでいた。しかし、休む暇はない。最後の一体が姿を現す。

「人魚の歌声には力が在るものですよ」

 それを待っていたと言わんばかりに、鏡音が睨みつけるように呪歌を歌い始める。

ボフッ

 サンドワームの巨体が倒れこむ。しかし、歌は止まらない。その隙に、全員がロープを使いヘリへと登っていく。そして、最後に鏡音がそのロープに掴まり、ヘリは上昇を始め、戦場を離脱した。

 一人取り残された兵士の下に、車もヘリも仲間も戻ってきた。 

「皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。けれど‥‥もしかしたら、また違う形でご迷惑をおかけするかも知れませんが、その時はよろしくお願いしますね。死に急ぐ為じゃなく、強く生きる為にも夫には会いに行きます」

 一同のため息が重なり、一つになって聞こえた。けれど、きっと誰も止める事は出来ないだろう強い決意を見せ付けられ、その強さには尊敬すら覚える者もいた。