タイトル:嵐の後にマスター:

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/28 22:53

●オープニング本文


 強大な嵐は、人類にとってはまだまだ抗うことの出来ない存在。それはバグアにとっても同じだったのだろうか。自然から産まれた存在ゆえなのか

●海からの漂着物
「おいおい、なんだよこれ・・・・」
 海岸を臨む防風提から一人の男が愕然と海岸を見下ろしていた。その海岸には、嵐の爪あとの膨大な漂着物が山のように流れ着いていた。しかし、男が驚いたのは、そんな光景に対してではない。嵐のあとの海岸とは、こういった物だからだ。では、何が男を驚かせたのか?

「それでは、依頼の説明をしますね〜」
少々間延びした口調のオペレーターが、傭兵達に依頼の説明を開始する。しかし、その内容は、オペレーター以上に一風変わった物であった。
「普段は、海岸清掃くらいなら、一般の方でしちゃうんですけど、今回の嵐で被害を受けたどこかに、バグアの施設でもあったようで、海岸の漂着物の中に、瀕死のキメラや、失敗作のキメラなどが混ざっているようです」
 海岸を埋め尽くすゴミの中に、キメラらしき物体がいくつか見えていた。しかし、ほとんどが死んでおり、生きていても、虫の息であった。
「もし、この中のキメラが回復するようなことがあれば、大きな被害に繋がると予想され、早急にすべてのキメラにトドメを刺してくださいね」
 明るくあっけらかんと、少々怖いことを言い放ち、場の雰囲気は一変する。
「傭兵の皆様には、生存しているキメラの掃討をしながら、海岸清掃もお願いします。それでは、頑張ってくださいね〜」

●参加者一覧

秘色(ga8202
28歳・♀・AA
沖田 護(gc0208
18歳・♂・HD
秋月 愁矢(gc1971
20歳・♂・GD
キャメロ(gc3337
18歳・♀・ST
クリスティン・ノール(gc6632
10歳・♀・DF
フール・エイプリル(gc6965
27歳・♀・EL
エヴァ・アグレル(gc7155
11歳・♀・FC
クラフト・J・アルビス(gc7360
19歳・♂・PN

●リプレイ本文

●海岸清掃 1日目 天候 快晴 ときおり浜風
 好きな人はとっても好きなボンネットバスに揺られ、問題の海岸に到着。案内役の青年に連れられ砂浜に降り、初めて目の当たりにしたゴミの山に、秋月 愁矢(gc1971)は圧倒されながらつぶやく

「すごい‥‥ゴミの山だ」

 そんなゴミ山を見つめる一同の視線を遮り、ささっと少女が挨拶をする。

「皆さん。今日は宜しくお願いしますね!」

 キャメロ(gc3337)が自己紹介をすませると、それに続いて、フール・エイプリル(gc6965)もまた挨拶する。

「フール・エイプリルと言います、今日は宜しくお願いします」

 この二人の礼儀の良さに、他のメンバーもつられて、自己紹介をしていった。それをニコニコと見つめていた青年は、どこかへ連絡を入れると、自分もと皆の前に出る。
「ボクは、みんなの清掃のお手伝いをさせてもらう、ニックといいます。今はまだ来てないですけど、必要な道具や、ゴミ袋、軍手などを積んだダンプが2台後から来ますので、道具の心配はありませんよ。あと、ショベルカーも明日来ますから」
 先程の連絡は、ダンプとショベルカーの確認だったようで、ニックの説明の後に、クラフト・J・アルビス(gc7360)が手で何かを挟むような仕草をしながら尋ねる。

「ほら、危険物用に挟むやつ、アレある?」

 ニックは一瞬考えると、すぐに「コレ?」といった感じで、トングを差し出すと、クラフト・J・アルビスは、それそれ! と頷いて見せた。しかし、ニックはどにこ隠し持っていたのか‥‥
「それでは、まず何から?」
 ニックがそう聞くものの、すでにその点は全員が同じ考えであったらしく、武器を取り出し始める。

「先ずはキメラを優先的に片付けようかのう」

 秘色(ga8202)は、バトルデッキブラシを片手に、着物の袖は襷掛け、頭にタオル巻くという出で立ちで、そのやる気が見て取れる。エヴァ・アグレル(gc7155)とクリスティン・ノール(gc6632)の最年少コンビは、すでに覚醒まで済ませており、キメラの処理に向かっていた。AU−KVのリンドヴルムを着込むため沖田 護(gc0208)は、一旦道路の方へと戻っていく。さすがに砂浜にバイクのまま来るのも大変だったようだ。

 一番のやる気を見せた秘色は、キメラを見つけてはバトルデッキブラシで止めを刺し、ゴミ山から掃きだす様に叩き出していた。しかも、ちゃんとキメラの死体置き場と決めた場所に積み重なっていく。超機械『指差し君2号』を使って、小型のキメラの討伐を優先的に行っているキャメロ。その姿も可愛らしいが、可愛い歌まで歌っている。

「掴んで〜♪ ビリビリ♪」

 小型のキメラのFFを破り、電磁波で止めを刺す。

「ぽいっ♪ 掴んで〜♪ ビリビリ♪ ぽ〜いっ♪」

 絶命したキメラを、分別したゴミの山の、生ゴミの方へと放り投げ、また別のキメラへと矛先を向ける。いや、指先?

 ボスンっ! ドスン! ガッシャ〜ン!

 少し離れた場所で、沖田 護は粗大ゴミをどかしては、その下や中などを調べている。たまに、見つからないように瀕死のキメラが隠れていたりしていた為、彼はそれを集中的に討伐していたのだ。そして、安全の確認された粗大ゴミは、AU―KVを使って分別された置き場へと運んでいた。それと同じ様に、クラフト・J・アルビスもまた、粗大ゴミに隠れたキメラには用心しながら、キメラの生き残りを探している。

「死にかけの相手に止めさすのも少々気がひけるがな」

 そうはいいながら、仕事は仕事としてしっかりこなしていく。
 一方、フール・エイプリルは、キメラ討伐を優先させていたものの、スキルの多用で疲れてしまったようで、ペースダウンしていた。そんな中、一匹のキメラが目に留まる。彼女の前には、直径1mを超えるウニ型キメラが居た。外見からは、生きているのか死んでいるかわからない。

(食べられるかしら)

 そう考える彼女の横に、いつのまにかキャメロが立っている。

「普通に生食用かしら?」

 悩んでいる様子の二人だが、他の者は見てみない振りをしながら遠ざかっていった。

●昼食タイム
 太陽もしっかり高くなりお腹も減り始めた頃、秘色の提案と手作り重箱弁当によって、昼食休憩となった。しかし、ニックが
「ゴミのある海岸より、いい場所にお連れしますよ」
 と、ニコニコしながら全員を海岸の上にある、崖ぷちの展望台へと案内した。そこにはベンチとテーブル、なにより水平線が見渡せる光景があった。心も体も癒される昼食となり、午前中の疲れもふっとぶ休憩タイムが満喫できたようである。秘色の弁当も美味しかったようで、すぐになくなってしまった。足りない分は、キャメロとフール・エイプリルが用意してくれた。焼きウニや、ウニの軍艦巻きなどのウニ尽くし‥。それをニックが美味しそうに食べたのを見て、全員おそるおそる食べてみる。完食までそう時間はかからなかった。

●午後の部 開始
 午前中に要領をしっかり把握した面々は、さらにペースをあげていた。この分なら、今日中にキメラは片付くのはもちろん、分別収集の方もかなり進んでいるから大したものである。二人で行動しているクリスティン・ノールとエヴァ・アグレルは、クリスティンが大きすぎる流木などは細かくし、エヴァは遠くに見えたキメラには超機械を使ってまで処理していったため、二人の通ったあとは、とても清掃のしやすい状態であった。
「エヴァねーさま、そちらにキメラ、居ますですの!」
 突然の出来事であった。エヴァの背後から、瀕死状態から回復したヘビのキメラが襲いかかった。運悪く、超機械から大鎌に持ち替えようとした瞬間であったため、反応が遅れる。
「させるか!」
 秋月 愁矢がシールドでヘビキメラを叩き落とす!危険を察知した、秋月は迅雷で駆けつけたのだ。瀕死からやっと回復したばかりのキメラ、そこにカウンター気味の攻撃が直撃、回復直後にまたもや瀕死となったわけだが、今回はしっかり止めがまっていた。

ドカッ!

 クラフト・J・アルビスが地面でピクピク痙攣してるキメラを殴りつけ、止めを刺したのだ。こんな事件はあったものの、あとは、順調に進んだ午後であった。その甲斐あって、キメラ討伐と粗大ゴミの除去と収集は終了した。こうして、1日目の清掃作業は終了した。

 この後、本来なら一旦帰る予定でもあったのだが、近くの温泉旅館が宿と料理を用意してくれ、その善意に甘える形で全員で旅館に泊まることになった。クリスティンとエヴァは、二人で温泉で癒され、秘色と秋月 愁矢とフール・エイプリル大人達で軽く一杯楽しみ、沖田 護とキャメロは未成年でもあることから、暇を持て余していた。クラフト・J・アルビスは、旅館につくなり温泉に入り、食べて、就寝。その後、朝までぐっすりでった。

●海岸清掃 2日目 天候 快晴 そよ風
 前日の疲れもしっかりとれ、絶好調のメンバーは、キメラの居なくなった海岸の清掃を始めた。沖田 護はAU−KVで、次々に大きなゴミをダンプへと積み込んでいく。そこへ、前日ニックの言っていた、ショベルカーと一台のバスが到着した。ニックによると、キメラの討伐を終わらせてくれたので、ボランティアの人たちが清掃を手伝ってくれるそうだ。ニック自身も積極的に清掃に参加しているようだ。
「紙類は、汚れの酷い物はリサイクルできないので、燃えるゴミです。他にも、汚れのひどいプラなんかも燃えるゴミになるようですね。そうそう! 金属類もリサイクルは難しいみたいですね〜。腐食ひどいですし。メトロニウムは知らないですね」
 分別の知識を既に知っている傭兵は互いに教えあったり、ニックから教わりながら、ボランティアの人たちと分別と収集をしていたが、キャメロはゴミの中からプレートを見つけ出した。そのプレートには

『廃棄キメラ集積場』

 と書かれており、流れ着いたキメラもまたゴミとして捨てられたのかも知れないという複雑な想いが湧き上がる。犬や猫を捨てる人間が、キメラを捨てる行為を非難する資格があるのかはわからない。だが、それを処分しなければいけない役目があること、それが辛い気持ちになるのは、今なら少しわかるのかも知れない。

 ゴミの収集が終わり、一旦集めたゴミの再分別を始めた。
「ペットボトルはラベルを剥し蓋も取る。資源ゴミじゃな」
 秘色がペットボトルとキャプを別々に回収し、それを見習いボランティアの人たちも手伝う。
「綺麗に洗う?」
 エヴァ・アグレルが汚れたビンやペットボトルを指差している。
「洗うのは良いことですが、そのために水道水などを使うことになると、それはエコではないんですよ」
 ニックがそう促すと、海で洗おうとする人も出てきたが、そもそも海を汚すくらいなら不燃物なり可燃物に回したほうが良いとの事で、そのまま回収することになった。
「粗大ゴミの運搬が終わりましたので、袋にまとめたゴミの運搬お手伝いしますよ」
 沖田 護が、ひょいひょいと大きく重くなった袋を担いでダンプへと積み込んでいく。次々とゴミの山は小さくなっていき、昼ちょっと過ぎには、清掃のほうもすっかり終わらせることが出来た。ここまで早く終わったのは、能力者としての力というより、清掃への尽力のたまものといった所だろう。余った時間が出来た事で、秋月 愁矢は持参した釣り道具を持って、海釣りに出かけた。その釣果はなかなかの物で、それを一日目にお世話になった旅館で調理してもらい、2日目の夜は打ち上げ宴会が盛大に行われた。前日と違ったのは、クラフト・J・アルビスも一緒に宴会に参加したことだった。とはいえ、未成年者参加のために、アルコールはなく、代わりにカラオケが投入された。宴会は酒がなくとも盛り上がり、夜遅くまで続けられた。料理などについては、キャメロとフール・エイプリルも食材を持ってきてくれたらしいが、いったいどこで何を調達したかは謎である。

 そして、翌朝LHに帰る準備を済ませた一行を、ボンネットバスが迎えに来た。そのバスにはニックも乗っており、皆にお礼を告げた。
「海岸清掃のお手伝い、本当にありがとうございました。みなさんのゴミの分別の方法なども素晴らしかったです! 海水浴シーズンには、きっと綺麗になった海を喜んでくれる人々が集まってくれるでしょう。その時は是非、皆さんをお招きしたいと思います。本当にありがとうございました」