●オープニング本文
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頭痛が収まらない。
時折、断片的に浮かぶのは、色々な人の笑顔。
そして、やりきれない怒りに拳を握る自分の手。
炎。
凄絶な笑顔を浮かべ、「死んで」と笑う少女の姿。
髑髏のような。
それを忘れない為に選んだ上着。いつも着ていた。
いつも?
「‥‥あれは‥‥」
いつの間にか、転寝していた。椅子に寄り掛かるように寝ていた自分に苦笑する。
近くの村に、不審な商人の一団がやってきていたという報告を受けている。
嫌に物資が豊かであったと。
ジープで乗り付けているにも関わらず、そのジープは村から離れた場所にあったようだ。林に人が居るので近づいてみれば、ジープが隠されるように停められていたという。
身なりに怪しい所は無かったというのだが、村の様子を聞く商人も居り、このあたりに住んでいるのならば、働き場所などを知らない商人はまず居ないので、何処か遠くから来た商人では無いかと。
その商人達は、いつの間にか引き払ったというのだが。
UPCからだとペィギーは断定した。
最近、環状包囲網への攻撃が激しい。その矢先、使途不明の物資を奪われた。
続いて、怪しげな商人の一団。
こちらにも攻撃の手が伸びるだろうと踏み、ゴーレムの一団を、商人が来たという村とUPCが来るであろう場所へと配置した。 村へは、爆撃をし、UPC軍の攻撃として情報を流している。
生き延びた村人は別の村へと移動しているのを確認している。
後はUPC軍がどう出るか。
首を横に振り、再びコンピューターに向かい合ったペィギーは、不意に気配を感じて銃を構える。
すぐ後の椅子に腰かけて笑っている男性が目に飛び込んできた。
何時の間に。
自分が目を覚ましたと同時に、気配を発した。
それまでは、まったく気配など無かった。
「報告は読ませて貰いました」
口の端を上げて笑う男から、壮絶な力を読み取る。
自分に、誰だか暗に告げているのだろう。
こういう事をやりそうな、この地の上官といえば。ペィギーは、銃を下し、軽く敬礼する。
「‥‥ウォン司令‥‥」
「はい」
アジア司令官のウォンが笑みを浮かべていた。
ペイギーへと、再び座るようにと促す。
先日報告を上げた輸送と管理に関してのデータを見て、やって来たのだと言う。
「どうも、昨今は戦いに向かうタイプが多くて、色々つまらなかったのですが、貴方なら上手くやってくれそうだと思いましてね」
辞令を出せばいいだけなのだが、ついでに顔も見ておこうかと思ったのだと、ウォンは笑う。
「張家口市を任せたい。張家口市は北京への水門の一つ‥‥ダムがある。ここを抑えるのは北京の生命線を抑えるのと同じ。薄々は、UPC軍側にも漏れているだろうけれど、内密にね?」
同じバグアでも、話さないようにと念を押される。
すぐに発つようにと告げられ、張家口市の拠点などが入ったデータチップを手渡された。
綺麗な‥‥酷く、冷たい手だと、ペィギーは思った。
「さて‥‥どう転ぶかな」
ウォンは、居城へと戻ると、楽しそうに笑った。
●
「『祭門』からの連絡が入った。村にUPC軍の爆撃があり、警護する為に、ゴーレムが多数配備されたと」
あちらこちらから、小さく罵声が飛び交う。
「幸い、半数は『祭門』が纏めて、別の村へと移動中だという事だが、そのまま、別の村へと移動するふりをして、ゴーレムを避け、ウランバートル方面へと大きく迂回し、こちらへと避難する」
攻撃は激しさを増している。
先に手にした朝陽空港の情報から、朝陽空港へはUPC軍が向かっていた。
「避難民の護衛をお願いしますの」
AAidという、アジアの人道支援をも多く扱う総務課ティム・キャレイ(gz0068)が顔を出した。
場所柄、あまり多くのトラックは出せないがと、頭を下げた。
●
「‥‥やっぱり」
ペィギーは、張家口市・傷門への移動準備をはじめていたが、気になって、移動しているという民間人のルートを確認させていた。赤峰空港のより近くへと来るはずの民間人は、あまり知る人の居ない道を通り、人類側へと向かっている。
「‥‥ったく、コロコロと変わる‥‥だから信用なんてしな‥‥」
激しい頭痛がペイギーを襲った。
──ペッパー。
呼ぶ声は、確かに自分を呼ぶ声であり。
ロウが手を差し伸べる。ジープがゴーレムに破壊される。
ペィギーは浮かんでくる記憶に、首を横に振る。
自分の名は、ペィギーだ。
だが。
ペィギーは軽く舌打ちすると、ジープへ向かった。
この苛立ちの正体を探らなければならないと思ったからだ。
破壊されたジープの場所。
あれは、爆撃をした村の近く。
今、民間人が歩いているその道の途中のはずだった。
林の中のその道。
破壊された、ジープは、残骸となったまま、風雨にさらされ、今もその場で骸を晒していた。
●リプレイ本文
●
空模様が怪しかった。
曇った空の下、傭兵達はトラックと共に避難民を救助へと向かっていた。
場所は中国大陸。赤峰空港から瀋陽へと向かう、林道の中だ。
「今度はUPC軍が爆撃‥‥? う〜ん‥‥」
DN−01リンドヴルムを走らせながら、シエル・ヴィッテ(
gb2160)は依頼に書かれたその誤報を思い出す。
村を爆撃したのは、UPCでは無い。
だが、昨今あった爆撃を思い出し、重ねる者は多いだろう。
事実を微妙に重ねる事で、その誤報は民間人の中で真実味を帯びる。
民間人の事を思うと、シエルは心が痛んだ。せめて、生き延びた人々は必ず守り切ろうと固く心に誓う。
「‥‥今は、残されたものを守らないと」
シエルのAU−KVの後部座席に座るラウラ・ブレイク(
gb1395)は、シエルの呟きに頷く。
(「このタイミング‥‥引き金は私達だわ。兆しに浮かれていた、じゃ済まないわね。命が懸かっていたのに杜撰だった」)
爆撃された村は、つい先日潜入した村だ。
その潜入方法を思い返し、ラウラは軽く唇を引き結ぶ。
何名かはこの林道を抜けて来た避難民を、一度救出した事があり、心に引っ掛かる出来事のあった場所でもあった。
列をなし、向かってくる避難民達を見て、トラックは止まった。
トラックの助手席で、夢姫(
gb5094)は双眼鏡を使い四方を確認していた。
歩いてくる人々を見て、軽く眉根を寄せる。
荷台からUNKNOWN(
ga4276)、エシック・ランカスター(
gc4778)、杉崎 恭文(
gc0403)が降りる。
(「もっとうまくやれていれば‥‥!」)
恭文は拳を握る。
怒り。
そんなものが人々の合間から傭兵達へと一斉に向けられたかのようだ。
軽い舌打ちや、口の中で呟く罵声が嫌でも聞こえてくる。
夢姫は、胸の近くで手を握り込む。
(「謝っても、死んだ人は帰って来ない。私達に出来るのは、これ以上の犠牲が出ないように、無事に送り届けることだけ」)
この怒りは当然の事だろうと、夢姫は辛さを押し隠して人々へと向かう。狐老から誘導してもらうのが良いだろうかと、探すが、その合間にも人々はトラックへと向かうので、良いだろうかと頷く。
軽くボルサリーノを被り直すと、UNKNOWNは緩やかに人の列へと向かう。
(「ま、人は生き延びる事が一番、だ。死ねばそこで終わりだからね。生きる者のみ、未来がある」)
人々の雰囲気に惑わされずに、歩け無さそうな者や、体力の無さそうな者、怪我人などを前にと誘導を始める。
(「とにかく、護衛対象に指一本触れさせないつもりです」)
淡々と誘導を開始するのはエシック。これは保護の依頼である。どのような事情が裏にあろうとも、人々を守り抜く事を己に課している。
二人の穏やかだが、確たる姿に人々は口を閉じると誘導されるままに移動を始める。
(「少しでも、一息ついてもらえれば、な」)
ビニールパックの簡単なカッパを恭文が手渡して回る。
「カイロとレーションもありますから」
僅かでも移動が楽になるようにと、夢姫が、事前に申請した物資を配る。こんな時のAAid(アジア人道支援)だとばかりに、簡易雨具、毛布、レーション、カイロ、水。必要最低限の物資はトラックに積まれていた。
「怪我は自分で治せ」
歩ける者へと、月城 紗夜(
gb6417)はAL−011ミカエルから降りると、救急セットを押し付けるように手渡すと、踵を返し、止血と消毒の手伝いへと回る。紗夜の後ろへと同乗していた不知火真琴(
ga7201)は、四方を見渡しつつ、紗夜を待つ。そのまま、周囲の警戒に当たるのだ。
(「‥‥手の届くものだけは、せめて」)
無くしたものは取り返せないけれど。真琴の表情は、幾分緊張で引き締まっていた。
「牽制の為の物だ。劣勢になったらピンを抜き投げろ、閃光を撒き散らす」
「遠慮無く貰っておく」
狐老を見つけた紗夜は、閃光手榴弾を手渡した。謝意を示す狐老へと、紗夜は如何という事は無いとばかりに踵を返した。言い訳は必要無いと思っている。言い訳は、自分自身に、自分がするものであると。他者へとどう口にしようと、それで自分が変わる訳ではない。だから。飲み込んでいる紗夜の言葉を狐老は理解しているようだった。
ラウラが、狐老に無線機を手渡し、警戒に回る自分達とすぐに連絡が取れるようにと手配する。
笑みを浮かべ、エシックは、黙々と誘導にあたっていた。
その、油断無く、迷いの無い姿に、人々は文句を納めていた。大柄な姿と内に秘める信念が安心感を醸し出していたのかもしれない。
何時でもこの人達を害するモノの前に立ち塞がる為の準備があった。
それが、何者でも容赦をするつもりは無い。
エシックの横を通り抜ける子供が、恐る恐る顔を上げていたので、笑みを深くする。目線が合ったその子は、ぱっと前にと走り出し、エシックを何度も振り返って見るので、ひとつ頷けば、くしゃりと笑い、安心したのか誘導されるまま、トラックへと向かう。
小さく息を吐く。子供は何よりも守らなくてはならないと、エシックは思っていた。
(「‥‥戦う事を、俺が躊躇すれば、誰かが同じ辛い思いをするだけですから」)
大人ぶる訳では無いが、子供と言っていい年齢が戦いに向かうのは好ましい事では無いと思っている。
それは、現状仕方のない事だとは理解しているのだが。出来るのならばと。
エネルギーキャノンを無造作に手にするUNKNOWNは、咥え煙草のまま、軽度の治療の必要な者にはテーピングなどを施し、怪我の重い者には随時錬成治療をかけていた。
「ん? 煙草かね?」
じっと見る者が多かった。嗜好品であるそれは中々手に入らないのだろう。
持参したものを何気なく手渡す。
それは、傭兵として依頼をこなして買ったものだ。
命を取ったこともある。
くすりと笑みを深くすると、帽子を僅かに目深に被る。
(「今を生きている事と、名もなき彼らに」)
東洋的思想だがと、UNKNOWNは心中で僅かに祈る。これまで屠った数知れない様々な敵へと。
「大丈夫かね?」
よろめく女性に手を貸すと、転んでしまった彼女の連れていた子供を抱き上げた。
「何、じき安全地域に入る」
謝意を告げる女性へと、子供を返す。
飄々としたその黒尽くめの姿は、エシックとはまた別の意味で、歩く人々の口を黙らせていた。
その巨大な武器と共に、UNKNOWNは敵襲来があるのならば、やはり飄々と前に立つのだろうという事が、避難する人々に、漠然と理解されていたから。彼等は『祭門』と同じく、自分達を守る者なのだろうと。
「えっと‥‥これで全部??」
シエルは怪我人を先にトラックで安全地域へと向かってもらおうと、確認をしていたが、UNKNOWNにより、重傷者は全て怪我の度合いを軽くしている。急ぐ必要は無さそうだった。
医療に携わる人が居ればと声をかければ、数人が名乗り出てくれたので、共にと言えば、狐老がトラック組と徒歩組へと半々に分けさせて乗せさせる。
避難民の中には、前回村に来た傭兵を覚えている者も居り、新たに加わった傭兵には特に何も言う者は居なかったが、どうしても雰囲気が硬化していた。
「あんた達のせいで、斑猫や、仲間が死んだ。とんだ疫病神だ」
その言葉をシエルはぐっと堪えて頭を下げると、どうぞと、トラックへと向かわせる。
どんな言葉も全て受け止める。
(「この人達だけは守りきる。誰も死なせはしない!」)
そう、覚悟を決めていたから。
「すまねぇ。これしか、俺には言えねぇ。けど、ここは俺たちに守らせてくれねーかな」
幾らでも頭は下げる。恭文は、ある意味、彼らがこの場にいるのは自分達が元凶だと思っていた。
「ごめんなさい‥‥言葉より、犠牲が無駄にならないよう努めるわ」
ラウラは、斑猫死亡の声を耳にし、狐老へとそっと謝罪と決意を込めた言葉を告げる。
一人の言葉にざわめき、怒りが増幅しそうな人々を、あちこちで宥めるのは『祭門』のメンバーだろう。
「村を出る前にも言ったが、あの爆撃はバグアだ。もうバグアは信じられない。わかるな?」
ラウラに、わかっていると言うように頷いた狐老が、びっくりするぐらい大きな声を上げると、トラック周りで膨れ上がった怒りが、収まって行く。
「ありがとう」
「こちらこそ、すまない。よろしく頼む」
ラウラは狐老へと謝意を告げれば、首を横に振られ、赤峰付近から、まだ人々がこちらへと向うからと、ここで別れを告げられる。来てくれて感謝すると告げられ、道なき林へと、狐老と数人が分け入るのを見送った。
●
「壊れたジープ‥‥この先にあったよね」
真琴が呟く。
無線を取って、エシックは、AU−KVに乗った仲間達が数名、後方へと向かう事を確認し、軽く首を横に振った。
(「ペッパーさん、でしたっけ‥‥」)
仲間達の会話の中に頻繁に出てきたその名前。
経緯はよく分からなかったが、仲間達のやりようを一先ずは見ていようと。
(「強化人間ですよね」)
シエルが、もし出会っても、向こうから手出しをしなければ、先に攻撃はしないと言っていた事を思い出す。
危険な存在である事は間違いがないはずなのに。
(「まあ、他と同様に、作戦上邪魔ならば排除するまでです」)
不要ならば、それはそれで構わないとエシックは仲間達を振り返り、列の先頭をしっかりと守りつつ歩く。
恭文は、後方へと向おうと思ったのだが、覚えているジープの場所へと向かう足が無く、首を横に振る。
避難民が遠ざかったとみるや、丘の上の人影は、ジープに乗り、道を下ってきていた。
その場所は、ペッパーのジープが無残な姿を晒していた。
ペィギーはジープから降りる。遠くから、バイク音がするが、構わない。
「ペッパーさん!」
真琴の声が飛ぶ。
ペィギーは振り返った。二台のAU−KVが止まり、四人の姿がそこにあった。
「殺しそびれた人間に、興味を持ったか?」
紗夜が言い放つ。逃亡する民間人を止める事無く、UPCが保護するのをただ見送った。その真意はと。
真琴が、攻撃をするそぶりが無さそうなペィギーへと、距離を測りつつ近寄る。
「貴方に聞きたい事があるんです。話したい事も沢山。確かにペッパーさんなのに、ペィギーだと名乗る訳は、記憶が無いからではないのですか?」
「違和感に気付いたから、ここへ来たんじゃない?」
ラウラが声をかけながら、ペィギーの反応を慎重に見ていた。
もしも、記憶の矛盾を探る為にここに来たのだとしたら。フラッシュバックもありうる。
その反動で攻撃を仕掛けて来ないとも限らないと。
「この車はあなたにとって何? いつ強化人間になったのか‥‥それに、強化人間になった動機は覚えてる? 親しい人達は今どうしてる?」
ペィギーが辛そうに眉を顰める。
強化人間。その行く末を、痛いくらいラウラは知っているから、問わずにはいられない。
「これは貴方の物です。見覚えは本当に無いですか?」
真琴は、トウシューズとサバイバルナイフを取り出した。
それを見たペィギーは、目を見開き、片手で額を抑える。
ラウラが続ける。
「否定してもペッパーさんが存在した事実は消えない‥‥記憶を疑いながらバグアとして生きるつもり?」
「貴方が自身の意思でバグアに行くならそれは良いんです。けれど、記憶の無い曖昧なままではダメだと思う。だから記憶は取り戻して欲しいと、うちは思います」
彼女の苦悩を見ていたから。真琴が静かに語りかける。
「力を求めていたんですよね? だからあんなに憎んでいた彼の手も取った」
これは、自分のエゴだと、ペィギーへと告げながら真琴は思う。
けれども、どうしても彼女を手助けしたいと、自分の心の奥が告げるから。
紗夜は軽く首を横に振る。
「ロウとは仲良くしているか?」
紗夜の言葉に、ペィギーはキツイ目で紗夜を睨む。怒りがふわりとペィギーを包んだかのようだ。
シエルは、攻撃が来るのならばと、油断無く構える。
転倒していたジープをペィギーが蹴り上げると、まるでサッカーボールのように吹き飛んだ。
「折角出会えたのだから。頼っては、くれませんか?」
真琴が粘り強く声をかける。
くるりとこちらへと向き直り、歩いてくる。
戦闘が始まるのだろうかと、傭兵達に緊張が走る。
「戦う気は無い」
緊張を高めるシエルへと、ペイギーが淡々と告げ、真琴に手を差し出した。
「ナイフを‥‥シューズはあんたが持っていてくれ。出来れば、壱岐の三山さんに渡して欲しい」
「ペッパーさんっ! うちは‥‥!」
「ありがとう。あたしは、あたしの目的の為に、戻る。‥‥また、会えたらいいな」
真琴は寄ろうとして、ペッパーに手で制止される。
「ペッパーさん?」
ラウラへとペッパーは向き直る。
「過去は捨てたはずだが、過去が無ければ今のあたしは無い。この結末も全て、抱えて行く」
そして、紗夜へと顔を向けて、苦笑する。
「あんたも、随分と不器用だな」
「放っておけ」
紗夜は渋面を作る。
帰ろう、と、告げる者は居なかった。
ナイフを手にジープへと戻ったペッパーは、来た道を引き返していった。
降り出した雨が。
仲間達を濡らし、ジープの轍を消していった。
トラックに同乗していた、夢姫は、仲間達の一報を聞いて、小さく息を吐いた。
「ペッパーさん、死ぬのは簡単なことですけど、死んだ人は戻ってきません。辛くても、生きて‥‥下さい」
「あいつ、『力』を得て何したかったんだ?」
やはり一報を無線で聞き取った、恭文は首を横に振った。
しとしとと降り出した雨に、人々は受け取った携帯カッパを広げて、安堵の息を吐く。
疲れた体に、雨は辛いものだから。
「休憩も、必要、だよ」
林の中、軽い雨宿りも兼ねて、UNKNOWNが人々を纏め。
無理の無い歩みで進む人々の合間へと、AU−KVに乗った四名が戻った。
程無く『祭門』の狐老から『傷門』張家口市でひと揉めあったという連絡が入った。
それは。