タイトル:【AA】蹴散らせ!!マスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/09 19:09

●オープニング本文


「ちょっとなー。実戦、出るぞ」
 大規模な戦いが迫ってきている。ズウィーク・デラード軍曹(gz0011)は、新たな傭兵達を眺めて、ニヤリと笑う。
 HW(ヘルメットワーム)とCW(キューブワーム)が海上を移動している。それを叩きに出るのだと言う。
 銀色に鈍く光る、円盤。
 キラキラと光を反射する、キュービック状の物体が、CW。
 混戦となっている時には、このCWが厄介な相手だ。装甲は薄い。しかし、謎の電磁波を放ち、地球側のレーダーなどを効き難くするのだ。そのせいで、戦いは戦場でこそ、互いのKV(ナイトフォーゲル)間や、空母などと連絡は取れるが、遠距離の確認は難しい。

「一人でも多く、生き延びる確立を高めろ。良いか? 戦場で独断専行は危険だ。共に戦う仲間と飛べ。もっとも、俺ぐらいになると何とか行けたりするんだが‥‥っと、それでも、仲間のKVが電磁波をゆるめてくれているからだし、他の部隊が多くの敵を引きつけてくれているからだ」
 ひとりで戦うのもいいだろう。その場合は、慎重にと何処か遠くを見て、首を横に振る。
「ま、戦場ではひとりで戦ってても、ひとりじゃないからな。俺としちゃ、仲間と共に飛んでくれるのが生存率を上げる為にやって欲しい事なんだが、LH(ラストホープ)に来てすぐじゃ、勝手も分からないだろ?」
 いずれ俺を追い抜くエースになってくれ。簡単には負けんがなと、デラードは笑う。
「ま、今回は、俺のチーム、スカイフォックスのメンバーがフォローにあたる。戦い方のイロハのイってヤツを味わってくれたらそれで、これからの戦いはぐんと楽になる。慣れ‥‥ってヤツだな」
 軽く肩を竦めると、デラードは、欧州とアフリカ大陸の中間にある、とある海上を指差した。

 飛んでいるのはHWとCW。その数は不明。
 慣性移動するバグア機は、上下左右、好き勝手に移動する。かたや、こちらのKVはそうはいかない。いきなり目の前から上空へと逃れたり、海面すれすれに落ちるように降下されれば、目標を失う。こちらは移動や反転をする為の時間よりもバグア機は早く、回転し、後ろを取られたりする。
 通常は、HWは空中に分散して飛んでいる。その合間を埋めるかのように、CWが散らばる。
 CWのジャミングにより攻撃が効き難い。だから、先に倒すのはCW。よほどの事が無ければ、敵ジャミングを発する機体を叩く。もちろん、CWを叩いている間にも、HWからの攻撃が飛ぶ。その攻撃をかわす為に、CWを優先的に叩く機体と、HWを牽制する機体があると戦いはこちらの有利に進むだろう。
「って、わけでだな、CWとHWの戦い方は、これまでの戦いの中で、おおよそのパターンが出来ているわけだ」
 膨大な戦いの記録。それは、本部で何時でも読む事が出来る。
 数々の戦いの中で、組み上げられた戦術が見られるだろう。
「だからって、油断するなよ?」
 こちらが、思った通りに相手は動かない。
 かならずこう落ちるはずだと思って動けば、もし落ちなかった場合、酷い被害を受ける事となるだろう。
「よおっし。んじゃま、行こうか」
 デラード軍曹が軽い笑みを浮かべた。

●参加者一覧

不破 梓(ga3236
28歳・♀・PN
シーヴ・王(ga5638
19歳・♀・AA
來島・榊(gb0098
22歳・♀・DF
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
御崎 綾斗(gb5424
22歳・♂・SN
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
樹・籐子(gc0214
29歳・♀・GD
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
姫川桜乃(gc1374
14歳・♀・DG
ロシャーデ・ルーク(gc1391
22歳・♀・GP
カーディナル(gc1569
28歳・♂・EL
桂木 一馬(gc1844
22歳・♂・SN
リリナ(gc2236
15歳・♀・HA
エクリプス・アルフ(gc2636
22歳・♂・GD
ユウナ・F・シンクレア(gc3168
27歳・♀・SF

●リプレイ本文


 鮮やかな海の色。何処までも青い空。
 きらきらと銀色に光を反射するCW。その合間から、鮮やかな淡い紅色の光線が、幾筋も飛んでくる。HWのプロトン胞だ。当たればそれなりに衝撃を受けるが、まだ間合いが遠い。
 骸龍・未来勇者号(烈!)を操りながら、ジリオン・L・C(gc1321)は、目の前に広がる敵機の群れを見て、ぐっと拳を握る。
「空! 裂! 改! とーぅ! 俺様参上! ‥‥ついに俺様も空に上がる時が来たか! 大規模ではじょーほーかんせーをやるからな! その予行となればいいな! まあ、なんだ、秘密の特訓で身につけた神秘の情報管制をみせつけてやる!」
 ふっふっふ。そんな感じに笑う。
 鮮やかな光線を視線の端に入れて、少し慌てたその手が押したのは、押したばかりのスイッチ。慌てて、咳払いをすると、もう一度気を取り直す。
 何しろ、骸龍。
 電子機と呼ばれるKVの種類が、CWの電磁波をやわらげる事によって、KVの攻撃力の真価が現れるのだから。
 ジリオン機を中心に、扇形に仲間のKVが広がって行く。戦いの初手を形作るのは大切だ。
 頭痛が、全ての傭兵達を襲う。
 間断無く続くそのいやな感じは、CWを減らさなければ、消える事は無い。
「さて。隼風の空戦性能のテストと時間稼ぎに付き合ってもらうぞ」
「緊張するな、というのは無理だろうが‥‥一人で戦っているのではなく、仲間がいる。この事だけは、絶対に忘れるな」
 ジリオンの骸龍を気にしつつ、2機が最前線を飛ぶ。シラヌイS型・隼風、不破 梓(ga3236)と、シラヌイS型・昇陽、神撫(gb0167)だ。
「俺が人に教える立場に立つとはな‥‥時が経つのは早いものだ」
 初めてKVに乗って出た時をふと思う。神撫は、くすりと笑みを浮かべた。
 あの時の緊張と不安を今でもまだ覚えている。
「準備は良いでありやがるですか? 大丈夫。同空域にゃスカイフォックスも居やがるですから、アテにして思いっきり暴れやがれですよ」
 真っ先に狙い撃ちされるのは、電子KV。敵ジャミングを緩和させる機体は、余程装甲に自信があっても、単体で飛ぶ事は良しとされない。しかし、口の端に笑みを浮かべるシーヴ・フェルセン(ga5638)岩龍・鋼龍は、その範疇からは逸脱している。仲間達の前に岩龍を無造作に進ませる。
「初陣で心配だけど、大丈夫‥‥直感には自信がある‥‥落ち着いていくにゃ」
 シーヴの隣を飛ぶのは、ヘルヘブン250、姫川桜乃(gc1374)。
「シーヴさん、ペアよろしくにゃ〜」
「援護は任せておきやがれ、です」
 仲間達がCWの数を減らす間に攻撃を放つであろう、HWへの牽制として、3組のロッテが組まれている。2機ペアとなって飛ぶその戦法は、傭兵達の間でもなじみのある戦い方のひとつとなっている。
「さて、初陣と行こうか邑雲?」
 ディアブロ・邑雲を操る來島・榊(gb0098)は、迫る敵機を見て、軽く笑みを浮かべる。
「‥‥というかサボリ過ぎで私が放電してなけりゃ良いんだが」
 傭兵としては古いほうだという自覚はあるが、このところ戦いから離れていた。
 やれやれとばかりに、戦いのカンともいうべきものを呼び起こしにかかった。
「頼もしいメンバーが集まったね。色々と学ばせてもらおうっと」
 隻眼だったユウナ・F・シンクレア(gc3168)は、今は空のような、水色を湛えた双眸で、にこりと笑う。
(「初めての実戦なわけだし、動き方とか連携とか、KVの心得なんかも覚えて行きたいな」)
 ヘルヘブン250が、ユウナの心持ちのように、軽快な動きで飛んで行く。
「手を抜いて選り好みの、芸能活動だけしてる場合じゃあなかったわね」
 ヘルヘブン250を駆る樹・籐子(gc0214)は、軽く肩を竦める。前回の大規模作戦は寒い場所での生身依頼をこなした。しかし、今回の大規模は、どうやら機体で仲間達は動きそうだ。ならば、少しでも実戦を体験した方が、役には立つだろうと思ったのだ。
 にこやかな笑顔は消滅し、冷たい視線が、視認出来るほど迫ってきた敵機体の群れを捉える。
「慣性制御や強力ジャミング装置といった物が、間近で見れる‥‥」
 気持ち、緊張しつつも、リリナ(gc2236)は、ディスタン・クロを操りながら、何処か楽しそうに、笑みを浮かべた。敵戦力の資料は確認してある。けれども、それと実際に戦ってみる事とは、また別のものなのだろうとも思う。
(「本来なら、新人を導く依頼というのは立場上、妹の仕事だと思うのだがな。今回は俺に任せてもらおうか」)
 ウーフー・アンガンチュールを飛ばしながら、御崎 綾斗(gb5424)は、新たなる力の助力となるべく奮闘している妹の事を思う。今は、大規模作戦の真っ只中。猫の手も借りたいくらい忙しいはずだと思う。戦いの一矢となるべく、綾斗は目の前の敵を静かに見る。
「これは‥‥いや、凄いですね‥‥」
 こちらも、それなりの数はあるが、敵機の数も半端無い。バイパー・Eclipse001を操るエクリプス・アルフ(gc2636)は、鋼の翼の近くを過ぎった淡紅色の光線を見て僅かに目を見開く。
 初めての空。手に力が入っていたのに気が付いて、くすりと笑む。
「俺が援護する。お前は安心して戦えばいい」
 綾斗の声に、エクリプスが頷き、空の戦場へと飛び込んで行く。
「慎重に事を運ばなければね」
 押し寄せる無数の敵機を見て、サイファーを操りながら、ロシャーデ・ルーク(gc1391)は、表情を引き締める。自分も含め、傭兵として空を飛ぶのが初めてだという者、これじたいが初依頼だという者も少なくない。ジャミングが強い。思った通り、目視が有効だ。
「一般的な戦力、とはいえ、気は抜けないな」
 シラヌイ・第六天。愛機の装備を確認してきた月城 紗夜(gb6417)は、小さく呟くと、何時も身につけている麗鞘・金に納められた華刀・蘭に触れる。
「お前がいる。私はそれを知っているから、何処ででも戦える」
 薄く笑みを刷くと、紗夜は戦いに入って行く自分を感じた。
「何が起きても俺達がフォローする。思いっきりやってみるといい」
 共に飛ぶ新たな力達が、これから共に戦う力として一緒に飛べるようになれば良い。今まで培った力が、少しでも彼等の糧になれば良いと神撫は、はっきりとした声で仲間達へと声をかける。
「‥‥油断だけはしねぇようにな」
 バイパー、バレル・バレッタのコクピットで、カーディナル(gc1569)は、目を僅かに細める。HWとやりあうのも悪くは無い。しかし、まずはCWを少しでも多く落とさなくては、こちらの攻撃も鈍るというものだ。さて、行こうかと、口の端を上げると、ブーストをかけて、その速度を増す。一番近くのCWに狙いを絞る。
「‥‥まずは速攻で一機、落とさせてもらおうか」
「各計器、異常無し」
 目の端にバイパー・春燕の計器の異常が無い事を入れると、桂木 一馬(gc1844)は、淡々とした、まるで事務作業をこなしているかのような口調で交戦を告げる。
「こちら春燕。これよりCWの掃討にかかる」
 飛んで来るプロトン胞を、鋼の翼をよじり、回避するとそのままCWへと向かい飛んで行く。
 きらりと光るその敵機へと、バルカン、ロケット弾が飛んで行き。
 戦いは始まった。


 HWとCWの群れの中に突っ込むKV部隊。多くの鋼の翼が陽光を受けて鈍く光る。その合間へとバルカンやミサイルの攻撃。させじとばかりに、HWからは、紫の収束フェザー砲が飛ぶ。
「空戦は高度が高いほうが有利だ。高度には注意して、常に上を取っていこう。梓さん、S型の力、見せましょう!」
 KA−01のエネルギー胞が、鈍く空気を震わせて敵機を狙う。
「一人で深追いはするんじゃないぞ。任せられるものは、任せてしまうことも必要だぞ」
 梓はバルカンでひとしきり牽制すると、ミサイルをHWがこちらへと向かうのならばと考えられる空間へと打ち出す。それは、その場に、間を作り上げる。

「テメェに居られると迷惑なんでな‥‥さっさと失せろっ!」
 バルカンで動きを牽制、その行動を鈍らせた後、カーディナルは輪胴式火砲を叩き込む。思いっきり接近した後だ。CWに弾痕が穿たれ、その光が消える。
「‥‥あそこか」
 窮地に陥るような仲間は居ない。ならば、次もCWを落とさせてもらおうかと、カーディナルは機首を返す。
「‥‥次」
 バルカン、ロケットランチャーで牽制しつつ、一馬機は、的確にCWをスナイパーライフルで傷つける。浮遊するCWの光が、僅かに止まり、その制御を失い失速する。
「さて、早々に消えてもらわなくては‥‥」
 ライフルRで榊機がCWを狙い撃つ。見れば、それなりの動きしかしていない。パイロットが搭乗するHWなどは、特別早かったり、その行動が読み辛いものだが、大量に現れた敵機の動きは以前から知るものと変わらない。迫れば、バルカンをと構えつつ、榊は間合いを取るためのブースト仕様も視野に居れ、冷静な攻撃を続ける。
 海上へ落ちて行き、爆発の水柱を上げるCW。
「どんどんいっちゃおうか」
 突出するのを避けるように、籐子機からは、ロケット弾が飛ぶ。命中率を補うように、次々と撃ち放つ。まずは、CW。その後は、同じくCWを相手にしている仲間と組んでHWへと当たろうかと、薄く笑う。
「えと‥‥機体スキル、アクセル・コーティング‥‥起動しますっ」
 空域では、間合いを取り続けるのが難しい。知らぬ間に接近する事もままある。ミサイル、バルカンで牽制しつつ、CWを狙っていたリリナは、あっという間に目の前に迫る敵機に目を見張り、機体スキルを発動させる。
 その合間に、仲間の機体が滑り込む。
 ピアッシングキャノンでの牽制。CWへとぐっと迫れば、ガトリングを、これでもかと撃ち込む。
 空を裂く弾丸の音と鋼の翼。
「そろそろ‥‥攻撃も効き始めたかしら?」
 ロシャーデは、頭痛に軽く首を振ると、味方の電子KVの中和範囲に居る事を確認、積極攻勢へと転じる。

 CWを狙う仲間達を、狙うHWを、さらに狙ったロッテが3組、鮮やかに割って入っていた。
「これがHWかー。無茶な機動だね、本当に」
 不意に上昇するかのような動きを見せた敵機に、ユウナはマシンガンを撃ち込む。
「逃しはしない」
 すぐ上空には紗夜がアクチュエータを発動し、リボルバーで牽制攻撃をしかけ、上空へ向かうのを抑えている。
「いけっ!」
 ユウナがすれ違い様に、再びマシンガンを叩き込めば、HWが海面へと落ちて行く。
 CWによる頭痛を堪えていたシーヴは、僅かに軽くなった事で、首をぶるっと横に振ると、笑みを浮かべた。
「urの本領発揮。そろそろ堕ちやがれ、です」
「今にゃ! そっちには行かせにゃっ!!」
 マシンガンで牽制を主に攻撃をしかけていたのだが、直感を信じ、桜乃もミサイル攻撃を惜しげなく撃ち続ける。
「残り残数は‥‥まだ大丈夫にゃね‥‥当たれにゃ!」
 2機から、ミサイルが滑空し、HWは爆煙を上げた。
「やったです」
 激しい爆発がおこり、木っ端微塵になったHWの欠片が四方八方へと飛んで行く。
 軽く息を吐き出すと、綾斗は、締め付けるような嫌な頭痛を振り払う。
「‥‥っ! よし‥‥そろそろミサイルパーティーのお時間だな、お前の手で決めてみろ」
 エクリプスと間合いを合わせて、綾斗はミサイルを撃ち放つ。バルカン、ロケットランチャーで迫るHWを牽制攻撃していたエクリプスは息を整えて、ぐらついたHWへと照準を合わせる。
「堕ちて、もらいますよ‥‥」
 レーザーでHWの機動を殺していた綾斗の前飛んでいたエクリプスのガトリングが無数の穴を穿つ。
「‥‥ふうははぁっ! 勇者の必殺、超レンジ射撃! 未だ! さまよえる魂達よ!」
 混戦になれば、電子KVの周囲にも敵機はやってくる。後方に位置していたジリオンだったが、戦線が目の前に迫ってくる。ロングレンジライフルで、牽制すれば、数機がジリオン機に向かってやって来る。
「ぬ、ぬおぉぉおっ!? こ、この厚き魂の持ち主に挑みかかるとは良い度胸だ!」
 その合間に、はいはいとばかりに入るのは梓と神撫のシラヌイ2機。
「HWは私に任せて、今のうちに退がれ!」
 梓の声に反応する、実に勇ましいジリオンの声なのだが、すかさずブーストをかけると後退を開始したりする。
「了解だ! まだ俺様の番は来ていないというわけだっ!」
 徐々に楽になる頭痛。梓は、小さく頷いた。
「頃合か」
「よしっ」
 ならばと、神撫のK−02ミサイルが雨霰とばかりに飛んで行く。

「‥‥ま、こんなもんか」
 畳み込むように終わった空戦だった。カーディナルは、やれやれと軽く伸びをする。
 勝利を得る時は、意外とそういうものなのだろう。
「おつかれさま、クロ‥‥」
 戦いの時間は、何時果てるかと思うような間延びした時間である。よく見れば、たいして時間は経っていない。けれども、短い時間に屠った無数の敵機。軽い疲労を感じて、リリナは目を擦る。
「空戦‥‥奥が深い、ですね‥‥」
「戻るまで、周囲の警戒も怠り無く、だな」
 単純な空戦ではあったが、考える事はそれこそ山のようにあった。エクリプスは、興奮冷めやらぬ手をじっと見た。まだ、帰るまでは気を抜かないほうが良いだろうと、綾斗が軽く笑えば、紗夜も頷く。
「今の所、新手は居ないようね」
 叩き落した敵機の残骸が浮く海。波間を見ていた籐子が、かくりと小首を傾げた。
「んーと、お姉ちゃんは蹴散らせたかな?」
「皆無事ね?」
 梓は、新たな仲間達の安全を第一に戦っていた。誰も酷い怪我をした者は居ない。
 完全勝利と言って良さそうで、にこりと頷く。
「終わったんだね」
 撤退とかもあるのだろうかと考えていたユウナは、安堵の溜息を吐く。
「‥‥ふははは! 俺様達の勝利だな!」
 ジリオンが、ちょーっと尊大に頷く。
「‥‥オールグリーン」
 機器の確認をしていた一馬が小さく呟き、無駄の無い動きで春燕の機首を返す。
「誰も傷つかずに、良かった‥‥わ」
 万が一の場合は殿を務めようかと考えていたロシャーデが、何処か遠くを見るように呟いた。
 すっかり、シーヴに懐いた桜乃がにこりと笑う
「シーヴさん、ありがとうにゃ〜。よかったらお友達になって下さいにゃ〜」
「もちろんでありやがるです」
 しっかりと援護が出来、無事に任務達成が出来て良かったと、シーヴは思う。
 これから先、様々な敵と遭遇するが、基本はHWとCWとの戦いにある。
 これを踏まえれば、きっとどんな戦いも乗り越えて行けると思うから。
 お疲れさんだと、デラードから通信が入る。
「全機撤収?」
 くすりと榊が笑めば、全機撤収と、軽い声が返った。
「帰ったら反省会でもするか? まぁ‥‥今はお疲れ様かな、これからもよろしくな」
 ──戦友たち。
 神撫の言葉が響いて行く。

 そう、これからバグアを倒す為、全ての傭兵は戦友なのだ。
 歴戦のツワモノを交えた、新たなる力の初陣は、完勝として刻まれる事となる。