タイトル:【AAid】VSパンダマスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/22 22:05

●オープニング本文


「何方か、ご一緒にパンダ狩りに出向きませんか?」
 ひょこりと本部に顔を出したのは、UPC軍総務課・外勤ありのティム・キャレイ(gz0068)。
 本日は何時もの電卓を抱えていない。何処となく視線も泳いでいる。
 昨今人手不足につき、ティムは、能力者としての外勤も追加されている。
 なんでもありの総務課らしいっちゃー、らしい。
 その線だという事が、はっきりくっきり見て取れた。
「パンダ狩りって?」
 見ていた傭兵から声が飛ぶ。
「こちらですの」
 モニターの一つに、四川省北部の地図が映し出された。
 そこに現れたのは二足歩行のパンダ。
 ただのパンダでは無い。
 通常、パンダは白黒だと配色は決まっている。
 んが。
 周辺の集落を襲っているのは、黒い部分がカラフルな色に変化しているパンダだ。
 赤(フラミンゴ)パンダ。黄(ライムライト)パンダ。青(ミルキーブルー)パンダ。
 どの色も、パステル系の可愛らしい風合いである。
 赤パンダは、首に大きな金色の鈴を下げており、近付くのはすぐに知れるが、足が速い。
 黄パンダは、どのパンダより大きく、体躯が二倍ほどもあるが、足が短く、速度が遅い。
 青パンダは、右目に縦一筋の傷跡がざっくりと入っており、速度は普通だが、凶暴性が高い。
 小高い丘の上に位置する、円を描くように家が建てられている村落が、次のターゲットのようだ。
「手当たり次第に、その鋭い爪で叩き壊し、食料を食べ尽すと、次の村へと向かいますの」
 人はあまり眼中に入らないようなのが救いではある。
 だが、バグアが去った大陸では、日常的に物資不足である。
 家屋を破壊され、食べ物が無くなると言う事は、重大事。
 人心の荒廃に繋がっている、このパンダキメラ10体を退治して欲しいとの事だった。
「私たちが退治した後は、軍トラックで物資が到着しますの」
「いわゆるひとつのAAid?」
「はいですの」
 こくこくと、ティムが頷く。

●参加者一覧

ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
エイミー・H・メイヤー(gb5994
18歳・♀・AA
イスネグ・サエレ(gc4810
20歳・♂・ER
トゥリム(gc6022
13歳・♀・JG
明神坂 アリス(gc6119
15歳・♀・ST
ジグ・ゼリア(gc6512
17歳・♂・SF
ジェーン・ジェリア(gc6575
14歳・♀・AA

●リプレイ本文


 ずらりと並ぶ高性能の本部モニター。ひとつぐらい余ってたら。とか思いつつ、ヨグ=ニグラス(gb1949)は、妙な画像に立ち止まる。
「な、なんですかこのパンダはっ」
 赤と青はまだ許容範囲だ。しかし、柔らかな黄色に、すっと目が眇められる。
(僕の持ってるプリンと同じ色のくせに‥‥破壊の権化ですって!?)
「‥‥ゆるすまじ。ライムライトパンダ」
 ティムを見つけてぶんぶんと手を振る。良い気分だったのに、黄パンダのおかげで台無しである。
 ふっふっふという含み笑いが背後に怪しいバックを背負ったヨグから零れていたりしたかもしれない。
「ティム嬢〜、可愛いは正義☆」
「ですのーっ」
 ハイタッチ。エイミー・H・メイヤー(gb5994)は、ティムとハグると、びしっと指をモニターへと向ける。
「パンダの可愛さはモノクロにあるんだ。パステルカラーの媚びたカラーリングで人気アップを図るなど邪道!」
 何かメラメラと燃えている。
 可愛いとは思いますのとかこそっと呟くティムの言葉に、何っ? とばかりに振り向いた。
「カラーヒヨコを思い出すなぁ‥‥あのヒヨコって殆ど大人になれないんだよな」
 やれやれといった風に、イスネグ・サエレ(gc4810)が呟く。ちょっとだけ遠い目。
 きらりと光ったのは涙ぐんでいた水滴だったり。
「大人になりましたら、超凶暴なオスばかりだったりしますの」
「初めまして、よろしくお願いします」
 妙に共感して頷くティムへと、少々照れながら、イスネグが挨拶をすれば、こちらこそですのと、イスネグの反応が珍しいらしいティムが何か拳を握りしめている様に、大人の女性? とか、イスネグはこそっと首を傾げる。
「なんともーファンシーな、パンダですがー、その被害はー見過ごせませんね〜」
 うん、うん。間延びしたのほほん感満載のラルス・フェルセン(ga5133)が軽くメガネをなおす。
「これ以上のー、被害を増やさない、為にもー、さくっと殲滅とー、行きたいところです〜」
 漢字に直すと、大熊猫。
 猫は猫であるが、猫では無い。猫ならば非常に重大事ではあるのだけれども。
 大熊猫ならば問題は無い。ラルスはふっと、軽く笑った。
「中国にパンダ‥‥なるほど雰囲気はピッタリだ」
 おまけに、襲われる村の周囲は竹林ときている。ジグ・ゼリア(gc6512)は、とても納得した風に頷く。
 んが、何しろ色がアレであり、人に害成すキメラパンダである。
 さくさくと手続きを済ます仲間達を見て、ジグは自分もそれに倣う。
 僅かに緊張していたようで、苦笑する。
(そういや初めての依頼なんだが‥‥まあ慣れてる人もいるみてーだし大丈夫だろ)
 うん。そう、ひとつ頷いた。
「僕の記念すべき初任務の相手は‥‥パンダ?」
 本部に並ぶ依頼の中から、これかな? と選んでみたものの。
 明神坂 アリス(gc6119)は早まったかと画面を見上げる。
「てゆーか、やけにカラフルだし笹じゃなくて人間様の食べ物を食い散らかすだなんて、パンダの風上(?)にも置けない奴らだね。まとめて刀の錆にしてくれる! なーんてね」
 まあいいか。がんばろー。そんな感じで、アリスは現地へと向かう高速艇へと歩を進める。
 その後ろから、ジェーン・ジェリア(gc6575)が鼻歌を歌いながら、向かう。
「ぱーんだ♪ ぱんだ♪ ‥‥色が変。可愛いけど色がへーんー」
 トゥリム(gc6022)は腰まで伸びた白銀の髪を束ね、ポニーテールに括った。
 どれほど可愛くても、キメラに違いは無い。
「どんなに可愛らしくてもキメラはキメラ‥‥油断はしないように、慎重に正確に‥‥」
 手懐けようとしたり、捕獲は論外だ。きっちりと撃ち漏らしの無いようにと戦いの手順をトゥリムは反芻する。
 小さな身体と同じ程の武器アサルトライフルを抱え。
 大陸へと高速艇が傭兵達を下すと、目的の村までジープに揺られて行く。
 さわさわと、風が竹林の擦れる音を耳に届け、傭兵達は竹林に囲まれた村へと降り立った。
 

 かすかに、風に乗って竹林の乾いた音に混じり、鈴の音が聞こえてくる。
 それは、どうやら西の方角から。
 ラルスは、よいせとばかりに、甘い香りのものを取り出した。
「チョコレートケーキでも釣れますかね?」
 パンダ。
 食べ物へと向かってくるとの情報がある。何となく竹林が揺らいだような気がした。
 中華鍋を出したイスネグは、その中にレーションのレッドカレーを入れて、温め始める。
 SESを応用しての発熱が可能な中華鍋は、いろんな場所で便利である。
 その香りに最初に釣られていたのはジェーン。イスネグは、どうぞと少しすくって差し出す。
「味見お願いしても良いですか?」
「わーいっ♪ 美味しいーっ! ‥‥後で食べても良い?」
「はい、パンダ退治が終わりましたら」
「やったーっ! がんばるぞーっ」
「赤パンダが来ちゃった。うまくいくといいです」
 鈴の音と共に、西の道の向こうから、赤パンダが、だっ。だっ。だっ。だっ。と言う感じで走ってきていた。
 しっかりと腕を振り、二足歩行で。
 ヨグが、ふんむとばかりに気合を入れる。しっかりとAU−KVは装着済みである。
「えと、囮の方とか鍋班の皆様ファイトです。ティムさんは鍋を死守してくれると信じてますっ!」
 ぐっ。
 なんだかそんな感じ。
「終わったら僕達が食べれるんだからっ」
 食べ物はあくまで囮。後で、皆で美味しくいただかなくては。
 イスネグが、笑う。
「あ、じゃあ、ティムさん錬成強化手伝ってもらおうかな」
「はいですの」
 さくさくっと強化付与。
「怪我してもばっちり治すからね、ドーンといってみようか」
 これでよしとばかりに、イスネグが片手を腰に、ティムと鍋の前に立つ。

 ラルスの額中央に青白く光る、エイワズのルーンが現れる。その瞳はダークブルーへと変わり。
 手にするのは魔創の弓。突起物の多い黒魔術的なデザインのそれは、長い射程を誇る。
 びぃん。と、音が鳴る。
 びょう。
 空を裂いて一の矢が飛び、赤パンダへと突き刺さる。
 その重い攻撃に、赤パンダは咆哮を上げる間も無く、軽く吹っ飛ぶ。
 次の矢がすぐに次の赤パンダを狙う。空を裂いた矢は、再び赤パンダを吹っ飛ばす。
 アラスカ454を構えて、赤パンダをジェーンが攻撃を開始する。
 牽制の銃弾の音が笹林を揺るがす。
 そのちょっとの間に、だっ。だっ。だっ。だっ。と、幾分か目つきが吊り上った赤パンダが接近していた。
 三の矢がラルスの手から、びょう。と、飛んだ。魔創の弓が震えるかのようにかすかに揺れた。
 地響きを立てて、赤パンダが倒れる。
 黄パンダが、一体、竹藪をかき分けて、こちらへと向かっている。
「はいはい、食料は此方ですよ」
 ケーキの香りに釣られたようで、ラルスはケーキを手にすると、家屋から離れるようにと位置を取る。
 ジェーンの銃弾が、赤パンダの肩口にヒット。
 じろりと赤パンダがジェーンを見る。
「ふふっ。 だよねえっ!」
 飛び道具は飽きた。
 抜き放つのは、炎剣ゼフォン。赤い刀身に浮かぶのは、炎を纏っているかのような複雑な模様。
「行っきま〜っす!! パンダは白と黒じゃなきゃ、やーだー! 可愛くじゃれてくれなきゃ、やーだー!」
 ぶぉん。空を切る炎剣が、熱を纏ったかのような軌跡が残る。
 赤パンダの上手からの攻撃。
 掻い潜り、ジェーンの一撃。
 再び、もう片手からの赤パンダの攻撃。
 ジェーンは剣を返そうと体を捻るが、赤パンダの掌がまともに入る。
 後方から、イスネグの錬成治療が飛ぶ。
 その背後から、青パンダの姿が見えた。
 青パンダは一体。
「パンダちゃん‥‥悪く思わないでね‥‥」 
 ジェーンへと援護射撃を放っていた、トゥリムが躍り出る。
 目にもとまらぬ早業で、青パンダへと向かい銃弾を撃ち込む。貫通弾だ。
 着弾と同時に激しいインパクトが青パンダを襲う。
 赤パンダを地に倒したジェーンが走り込めば、一筋傷のある青パンダの目がきらりと光る。
 目線が合ったジェーンも笑みを浮かべ、よっしゃこーい。そんな青パンダの懐へと飛び込んだ。
「うちとったりー」
 高らかな勝ち名乗りが響くのに時間はかからなかった。 


 道での戦いが佳境を迎えている頃、南北の竹林と、民家の合間でも、戦いが始まっていた。
 がさがさと竹林がなぎ倒される。
 その合間に見える黄色。
「‥‥何やら竹藪が騒がしくなってき‥‥お前達はっ〜!!」
 天敵か? そんな感じで、ヨグが二体の黄パンダを指さす。がんがんとスキルを乗せる。
「やいこらそこの不届きイエローパンダ! いざ尋常に勝負勝負っ!」
 アリスの背には、妖精のような四枚の光の羽がふわりと揺れた。
 タイマン上等。
 どーん。
 そんな効果音が聞こえたかもしれない。
 ぐっと片側の肩を下げて突進の構えの黄パンダ。
 もう一体の黄パンダには、ヨグからロケットパンチβの攻撃が。
 ぐらりとよろける黄パンダだが、踏みとどまり、にやりと笑う。その姿にヨグが前に出る。
「‥‥ふんむー!」
 手にするのは、黄金のフライパン。
 アルティメットフライパンでの打撃を与える為に、渾身の力を込めて、ヨグがあっという間に黄パンダに迫り。
 ぎょっとする黄パンダに、ヨグはにやりと笑う。
「よいさー!!」
 かーん。
 良い音が響いた。
 最初のロケットパンチが効いている。
 黄パンダが地響きを立てて竹林に倒れた。手がヨグの居る方へ向かい、グッジョブポーズをとっていた。
「ふむうっ!」
 ウィナー。ヨグ。
 マーシナリーソードが、ざくりと入る。
 その合間に、黄パンダの張り手がアリスを吹き飛ばすが、スキルを乗せたアリスはダメージを軽減。
「こんのーっ!」
 素早くとって返し、アリスが力を乗せた攻撃を黄パンダへと向かい叩き込む。
 黄パンダがよろける。
 そのよろけた巨体へと、アリスが追い打ちをかける。
 があっと振り払うように黄パンダが動くが、アリスの方が僅かに早かった。
 肩から、黄パンダが地へと沈んだ。
 アリスは、大きく息を吐き出すと、頷き、片手を空へと突き上げた。
「イエローパンダ、討ち取ったりぃぃぃぃ!」

 右頬へと剣の形の黒い模様が浮かぶ。胸にも同様の紋様が浮かぶが、服に隠れて見えない。
 スキルを乗せたジグは、より早く黄パンダの索敵をと耳を澄ます。
 竹林をなぎ倒す音が、思いっきりしっかりと聞こえてきて、苦笑する。回り込む時間は無さそうだ。
 ちらちらと見えるのは黄パンダ。
 レーションの封を切って、待ち受けるエイミーの瞳が怜悧な金色へと変わる。
 赤、青パンダはしっかりと道で迎撃を受けているのをジグは確認する。
 エイミーへと錬成強化をかけると、黄パンダへと練成弱体をかける。
「おいたはさせませんよ、黄色いパンダさん」
 エイミーが日本刀蛍火を構えれば、黄パンダがニヤリと笑ったかのような気がした。
 力を乗せて、走り込んだエイミーへと、黄パンダの一撃が振り下ろされる。
 だが、その前に、エイミーの刀が黄パンダの胴を薙いだ。
 エイミーと黄パンダの戦いを邪魔しないようにか、もう一体の黄パンダが、ジグへと向かう。
 タイマン上等。
 そんな感じ。
「へぇ‥‥そういうとこは気持ちがいいじゃねーの、こいつら」
 ジグはくすりと笑うと、機械剣ライトピラーを握り直す。
 黄パンダが、逃げるジグを追う。足が遅い。ジグは黄パンダの攻撃範囲から逃れる。
 沈んだ黄パンダから、踵を返し、エイミーがジグへと向かう黄パンダへと走り込む。
「騎士たる者、仲間を守れないでどうします」
 瞬く間に黄パンダに迫ったエイミー。
 黄パンダが、エイミーに気が付き、体をかわすが、間に合わない。
 エイミーのもつ刀が淡く光り、弧を描いて黄パンダへと吸い込まれるようにざっくりと入った。
「大丈夫か?」
「割合平気」
 黄パンダ二体の退治が完了した。

 うっかりケーキに釣られた黄パンダ。
 涼やかな笑みを浮かべたまま、ラルスはケーキ片手に、釘バットを片手に。
「まあ、あれです。存分に‥‥殺りあいましょうか」
 きらーん。
 黄パンダの目が光る。
 巨体からの突進。だが、相手が悪かった。軽くかわしたラルスの釘バット殴打。
 どしゃあ。とか。そんな感じで、黄パンダが沈んだ。
「‥‥皆さんは大丈夫でしょうか」
 爽やかな風が吹いたりなんかした。
 青赤黄パンダは、能力者によってさっくりと退治されたのだった。
 

「‥‥数は合っている‥‥」
 静かになった竹林の合間を、トゥリムがパンダの数を数えて回っていた。
 依頼通りの数と色が確認されて、ひとつ頷く。
 終わったのならば、早く帰りたい。
 迎えの車にいち早く乗り込んで、仲間達を待つ。
「かれぇ♪ かれぇ♪ 大盛りでー!」
「いえーい♪」
 ジェーンとヨグが楽しそうに、イスネグの温めたカレーを綺麗に食べ尽くす。

「市販のもので申し訳ないが‥‥受け取ってくださいレディ」 
 中世の騎士よろしく、恭しくひざまずいたエイミーが、今回の同行者(女性限定)にハートチョコを差し出す。
 そして、義理を強調(男性限定)して投げるように配ったりも。
 退治が終了したとなれば、村人達が戻って来る。
 子供達を見て、イスネグが笑みを浮かべると、お菓子を配って回る。
「もうすぐもっといいものが届くからね〜」
 美味しくいただかれたようである。空の中華鍋を回収し、イスネグはくすりと笑い。
 四川省北部とある村。
 傭兵達のおかげで、ひとまずの脅威は去り、楽しげな気持ちが運ばれたのだった。