タイトル:【Woi】塊の‥‥マスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/08/16 00:06

●オープニング本文


「ジャミングでレーダーが役立たずってのは、何時もの事だろ?」
 前線の基地内で、ズウィーク・デラード(gz0011)が、差し出された空図に目を通し、軽く肩を竦める。
「まったくの空白というか、ジャミングの塊が出来ている場所があるんです。ただのフェイクにしても、放っとく訳にもいきません。偵察に向かわせた機体からの報告では、巨大になったMR(メイズリフレクター)とCW(キューブワーム)が混ざったような塊だとか」
「何だそりゃ」
「どうやら多数のMRとCWで、巨大立方を形成しているようなんです」
「ふーん‥‥地道に削れってか」
「簡単に言いますけど、それだけのMRとCWが固まれば、機体に対する影響は馬鹿になりません」
 MSとCW。見た目はほとんど変わらない。それが、寄り集まって巨大立方になっているのだという。
「トリッキーな戦隊だねぇ‥‥」
「ただ的になってはくれませんよ」
「そりゃそうだ」
 二つの塊は、ほぼ5Kmの距離を取っている。片方は、スカイフォックスが受け持つが、もう片方は、傭兵に頼めないかと、デラードが笑った。
 戦場は海上。
 海面すれすれを飛行する立方体を攻撃するには、そこまで機体を降下させる必要があるだろう。
 北米の戦線に合流する前に、それらを全て撃墜して欲しい。

●参加者一覧

花=シルエイト(ga0053
17歳・♀・PN
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
リン=アスターナ(ga4615
24歳・♀・PN
ミンティア・タブレット(ga6672
18歳・♀・ER
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
サンディ(gb4343
18歳・♀・AA
望月 美汐(gb6693
23歳・♀・HD
オルカ・クロウ(gb7184
18歳・♀・HD

●リプレイ本文


 青い海と空の狭間。
 だが、その狭間には、目に見えない攻撃が広がっていた。
 酷いジャミングが、10機のKV(ナイトフォーゲル)を襲っていた。単体では、さしたる敵では無い。広範囲に広がる戦場で、ばらばらに散っているのならば、人類側とて、物量と連携により、真っ先に落とす敵でもある。
 CWとMR。
 ジャミングを強化し、能力者に頭痛を与え、KVの攻撃を弱体化させるそのワームは、手を変え品を変え、幾多の戦場に散っていた。そして、今回は、あろうことか、大量の塊となって姿を見せたのだ。
 頭痛に首を振りつつ、月森 花(ga0053)はES−008ウーフーの操縦桿を握り締める。
「軍曹さんの手を煩わせるわけにはいかない‥‥」
 望月 美汐(gb6693)も、ES−008ウーフーのコクピットで首を軽く振る。
「なんて酷いジャミング‥‥何の為にこんなにも?」
「あらら‥‥酷い雑音ですね。これは頑張らないと」
「‥‥つっ‥‥これはもう頭痛ってレベルを越えてるわね‥‥鬱陶しい‥‥!」
 H−223B骸龍。口調はおっとりしているが、酷く痛いはずだ。そんなそぶりも見せず、皇 織歌(gb7184)が、遠くに見えるまだ小さな四角立方体を眺めれば、眉を顰め、R−01Eイビルアイズのコクピットではリン=アスターナ(ga4615)が唸るように呟く。どちらか単体の集合体でも、厄介な相手だ。それが複合されては。
「北米に辿り着くまでに、海の藻屑にしてやらないと、ね‥‥」
「バグアの誇る二大ジャマーの集合体ね」
 F−201Aフェニックスを駆るサンディ(gb4343)は苦笑する。一体は弱くても、集まれば、無視出来ないほどの力を発揮する。こんな形でバグアに結束の力を教えられ、見せつけられるとは思わなかった。
「まあ、それならこっちだって臨むところ。私達の結束とあなた達の結束、どちらが強いか勝負だよ」
「こんなものが有っちゃ、迷惑この上ないからな。主戦場に移動してくる前にとっとと潰すに限るな」
 Anbar(ga9009)も、空を駆るのはH−223B骸龍だ。バグア側主戦力に加わり、他の攻撃型ワームと組み合わされば、酷く落とし難い敵となる。
 確かに、あれだけの塊は脅威だ。
 久し振りに戦場に出てみれば、見たことの無いワームが飛ぶ。盛大に溜息を吐きつつ、ミンティア・タブレット(ga6672)はH−114改岩龍を飛ばす。
「知覚攻撃なら反射しないというけど、されるとウチの岩龍は抵抗弱いから不味いなぁ‥‥」
 情報は何時も変化している。どうだろうかと、ミンティアは操縦桿を握り締めた。
「しかし、これだけ電子戦機が揃うというのも、なかなか珍しいですね‥‥相手が相手だから、だと思いますが」
 流 星之丞(ga1928)が駆るのも、H−223B骸龍。積極的な攻撃の来ない、ジャミングワームの相手だからこそ集まった機体が多い。
「ジャミング中和開始‥‥それにしても、酷いノイズと頭痛だ」
 星之丞はやれやれと言った風に、首を横に振る。
 攻撃は仕掛けてこないが、迷惑極まりない。R−01Eイビルアイズを駆るアンジェラ・ディック(gb3967)は、ジャミングゾーンを確認し、軽く溜息を吐く。海面すれすれを飛ぶ塊相手には、機体操作も、ただ飛ぶわけにはいかない。これも任務。やらなければならないだろうと、塊を見据える。
「コールサイン『Dame Angel』、ジャミング群体の一方を殲滅開始ね」
「いきましょーっ!」
 CD−016シュテルンのコクピットで、ヨグ=ニグラス(gb1949)も塊から攻撃距離をとりつつ叫ぶ。
 そろそろ、仲間達の攻撃範囲に入る。


 10機のKVは、2班に分かれる。
 花、アンジェラ、サンディ、星之丞、織歌が塊に攻撃をしかけ、中心となるWRの核を炙り出し、リン、美汐、ヨグ、Anbar、ミンティアが炙り出された核を探すという布陣だ。
「ホントに通じないわね」
 アンジェラは、通信機を使おうとすると漏れる雑音に眉を顰める。花機から、大きな音が流れた。ソニックフォン・ブラスターを積んでいるのだ。コクピット内では聞き辛いが、まったく聞こえないという事も無い。
「K−02行きます!」
 ぐっと機首を下げると、海面が近付く。
 K−02小型ホーミングミサイルが、花機とアンジェラ機から、250発づつ、雨のように降り注ぐ。
 一面の外周は、ほとんどCWのようだ。幾つか被弾し、煙を上げる。
 しかし、一面の中心近くには、MRが居るようだ。
「避けれるかっ!」
「っ! 当たるわけっ?!」
 ミサイルの幾つかが、一瞬のうちに花機とアンジェラ機を襲う。射線からずれる行動の前に、反射はやってくる。次の手を打つ事も不可能だ。ファランクス・テーバイは、MRの反射という行動には作動しない。自身のミサイルをまともに受ける。だが、酷い被弾にまでは至らない。花機に至っては、かすり傷程度にもなっていないようだ。
「自分の攻撃に追われるなんて‥‥」
 花は、頭痛と戦いつつ、操縦桿を再び握り締める。
「出来るだけ、‥‥狙いを付けて、と」
 花の声が聞こえる位置で、出来るだけ射線が重ならないよう、被らないようにと、機体を制御しつつ、織歌は小型ミサイル身外身を撃つ。サルの絵を乗せて飛ぶ、100発の弾が、再びの雨となって、塊を襲う。
「予測済みの方角からの攻撃ですのに避けられないなど‥‥」
 避けられない。
 MRの反射は、機体の性能がものを言うようだ。織歌の骸龍は、まだ持つ。しかし、あまり多く被弾すれば、何処まで行けるか。
 この塊を形成しているCWとMRは、どちら共に似せてある。だが、接近し注意深く見れば、判別が可能だ。
 よく確認し、星之丞はスナイパーライフル稲妻で、CWへと銃弾を打ち込む。狙い違わず破壊されたCWは、爆炎を上げる。
「通信が回復する前に、反射で落とされてはたまりませんから‥‥」
 星之丞の骸龍は、絞りに絞った装甲である。通常の回避では間に合わない反射が、一発でも来れば、ただでは済まない。機体の癖を良く知り尽くした星之丞は、穏やかな笑みを浮かべつつ、次のCWへと狙いを定める。
「射撃は苦手だけど‥‥逃がさない!」
 同じく、CWに狙いを定めているサンディのスナイパーライフルRが、狙い違わず、CWへと。
 まだ、硬い。
 流石に、これだけの塊となると、攻撃は容易には通らないが、確実にダメージは蓄積されているようだ。

 一方、ほぼ同時に、挟撃を仕掛ける為に前に出たのはヨグ機。
「むぅ。無線使えないです」
 目視が出来る範囲に入れば、ジャミングが強く働いているようだ。どうしようかと少し考え、ヨグ機はそのまま前にと出る。
 一面の平行になるようにと気をつけて降下。射程内に入れば、放電ミサイルグランツを撃つ。撃ってから、急旋回と考えていたが、反射は次の行動に移る前にヨグへと戻る。
「うっそーっ!! ちょっかいかけられたですーっ!!」
 放電に晒されたヨグ機は、しばし操縦が滞る。落下寸前で、危うく機体を立て直した。
 海面が鋼の翼を打って波立つ。
「反射が本当に厄介ですね」
 美汐は、次行動に移るまもなく反射するMRを見て、小さく溜息を吐く。
「頭痛でコントロールしくじりたくは無いわね」
 別班の攻撃が終わってから、こちらの班の攻撃のはずだったがと、リン機が別班の攻撃が収まった所で、前に出る。酷い頭痛は、満遍なく能力者達を苛んでいる。機体コントロールに気をつけ、海面との距離を測りつつ、リン機が攻撃を仕掛ける。KA−01試作型エネルギー集積砲が、唸りを上げて塊の中、CWめがけて伸びて行く。まともに受けたCWが、一瞬たわめば、破壊音が響く。
「自分の撃った弾で落とされるなんて、そんな間抜けな真似は御免だわよ‥‥!」
 ブーストを時折入れながら、美汐は、同班の目となる事に気を配る。
「昔の戦闘機乗りは目視だけで戦ってたんです、私たちだってこれくらい!」
 ちかちかと動く、無数の六面体へと、ホーミングミサイルを発射すれば、CWへとぶち当たる。CWの数が、非常に多そうだ。
 別班の攻撃で、数が減ったせいか、一斉に位置を入れ替えている。CWがMRが居た位置に。その逆に。あるいは奥から、外側へと向かい、欠けた一面をまたすべらかに戻そうかというように。
「身軽なこいつでも、自分で自分の攻撃を受けてしまうって事か」
 CWを狙い、Anbar機はスナイパーライフルRを打ち込む。MRの反射は、回避は出来無さそうだという、ソニックフォン・ブラスターでの声を拾う。ナンバリングも試してみたが、表面だけ移動するのでは無く、みっちりと中まで詰まった六面体。仲間達の攻撃で、始終入れ替わるそれを数える事は至難の業のようだ。
「敵は増えるし、数は多いし、さっさと親MWを探さないと殲滅しきれないかも」
 塊に接近する、ミンティア機がスナイパーライフルRで、CWを狙い撃つ。


 2度、3度と、繰り返し攻撃をしかければ、CWが、海へと飛沫を上げて沈んで行く。塊の外見も、かなり歪み、四角立方の外側を構築するのも難しくなってきていた。どうやら、MRの数は、CWに比べて、かなり少ない割合のようだ。
 二段噴射式ミサイルストレイ・キャッツを放つ。K−02
「二段噴射式にゃんこミサイル発射! いけっ、にゃんこたち!」
 4つの軌跡が黒猫のマークを乗せてCWへと延びる。接近したかと思えば、ぐっと加速するサンディのミサイルがCWを襲う。
「少し痛いですよ? ‥‥避けられますか?」
 織歌機から、何度目かの身外身が、降り注ぐ。うち、僅かは織歌機を掠めるが、大事には至らない。
「中々見つからないものだね」
 星之丞は、よく観察していたが、塊の中の一個一個の六面体は、始終入れ替わる。どれがどれやら。まだ見つけることは出来ない。確実にひとつづつ。稲妻で狙撃して行く。

「こんな手段を次も使われないようにする為にも早い所潰して、バグアに有効性が低いと思わせないといけないよな、やっぱり」
 強化型ショルダーキャノンの轟音が響く。Anbar機だ。しっかりとCWを狙う。
「密集してるCWみっけましたっ! K−02行きますよーっ!」
 ヨグからの無線が、ノイズはまだかなり多いが、通った。どうやら、CWの激減でジャミングが弱くなってきているようだ。ミサイルの雨が、塊の中の、さらにCWの塊へと。
 陽光を反射して光るCWとMRのジャミングの波長の違いで判別する試みれば、CWとMRの変化が、数が少なくなると、見やすくなる。ちらちらとCWの光りで見辛かったMRの六面体の中にある、さらに小さな六面体が良く見えるようになる。
 別班の攻撃が終わり、自分達の攻撃が始まる直前、美汐は塊の中で、今までとは異なる動きのMRを発見した。
「居ました! 親ワーム。底の方へと移動しています」
 崩れた姿の塊の中、大きくなったかのように見える一体。それは、増殖をしていたMRの核に違いなかった。膨れ上がった小さな四角立方は、みるみるうちに、分離し、ふたつのMRへと変わると、核とみられるMRは、塊の底。海面すれすれの場所へと移動して行く。

「ボス発見‥‥集中砲火を‥‥」
 花機から無線でノイズ交じりの声が届く。
 目標は、塊の最下部。仲間達に伝えると同時に、花は、KA−01試作型エネルギー集積砲を撃ち込んだ。その威力高い攻撃の一部は反射し、花機をも襲うが、大丈夫。動ける。
「パズルごっこはもうお終いよ。核を撃ち抜いて‥‥黙らせるっ!」
 ブーストで加速したリンが塊の最下部へと急ぎ接近すると、命中率の上がっているUK−10AAMを叩き込む。固まったMRからの反射がリンへと戻り、被弾するが、かすり傷だ。
「多少は‥‥」
 ミンティアも接近して、MRへとライフルを向ける。その衝撃は、ミンティア機に振動を与える。
 機体が落ちるほどの威力は無いが、僅かにダメージを受ける。
 ミサイルが尽きたアンジェラは、ぐっと接近すると、R−P1マシンガンを打ち込む。
 叩きつけるような音が響き渡り、同じようにアンジェラ機もダメージを受ける。しかし、軽い。
「行くですーっ!」
 ヨグが文字通り突進する。ソードウィングをぶち当てるつもりだ。機体に負荷がかかる。その圧力を撥ね退けるかのように、鋼の翼が飛びぬけて行けば、ばらばらっと、塊が崩れた。
「一匹たりとも逃がさない‥‥」
 花機が、ぐっと機首を返し、海上を旋回する。少なくなったCWと、増殖の止まったMR。
 弱まっていたジャミングが、再び、強くなる。増殖が止まったMRが、その性質を変えたのだ。
「殲滅するまで!」
 マシンガンを打ち込み続けるアンジェラ。少しづつ、機体に反射の傷が増えて行く。
 全ての攻撃を反射する変化だったが、相当数減らされていたCWとMRは、全て海の藻屑と化したのだった。


 お疲れさんと、デラードから声が入る。見渡せば、各機、それ相応にぼろぼろだ。
「結局なんだったんでしょうね、この集団は‥」
 美汐が首を傾げれば、ミンティアが首を横に振る。
「勝てたからよかったですが不思議な戦いでした。迷路を解くというか、キューブパズルを解くというか」
「CWとMWのジャミングの波長の違いで判別する試みを‥‥試してみたかったかもしれません」
 弱さと強さぐらいしか分かっていないそれは、解析するにはまだULTもUPCも時間がかかるのかもしれない。織歌が名残惜しそうに、ワームの沈む海を見る。

 北米へと向かう、ジャミングの塊を殲滅する事に成功した。