タイトル:Eine blaue Serenadeマスター:いずみ風花

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 26 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/05 16:05

●オープニング本文


 白いお屋敷。
 その屋敷に辿り着くまで、門から軽く1Kmはあった。
 アーチを描くような模様の石畳が、林の間を通り、少し行くと洋風の庭園が左右対称に広がる。
 その庭園は、様々な花や樹で高低をつけてあり、天使や女神の大理石の像が、所々に顔を出す。
 中央にしつらえてある、円形の噴水を半周すれば、ようやく屋敷の入り口に到着する。
 乳白色の大理石の階段を数段上がると、瀟洒な円柱に支えられた、張り出した空間が3mほど続く。その先に、ようやく屋敷の門がある。古い木の門には幾何学模様のステンドグラスの丸窓が左右にはめ込まれ、観音開きで内側へと来客を誘う。
 大きな門が開くのは、限られた時しかないが、今は開放されている。左右に立ち並び、メイド達が、来客を迎える。
 おかかえシェフの作る料理は立食形式でダイニングに盛られている。お勧めはローストビーフに、自家製のソーセージ。ほんの僅か、山葵を利かせた醤油ベースのソースと、ハーブをふんだんに使ったトマト風味の酸味のあるソース、シンプルな粒マスタードだけのソースもある。
 鱸が大胆にもマリネになって乗る銀盆もあった。
 デザートは、ジュレを使用したものが多い。小さな硝子の器の底には、葡萄や桃、ルビーフルーツやグレープフルーツ。キゥイなどが煌く。キルシュトルテは四角く切り分けられ、さくらんぼのほのかな酸味とキルシュワッサーの甘い香りが、チョコレートの重厚な風味と良く合う。ブルーベリーがたっぷりとクリームと飾られたクリームチーズケーキ。ミルクの香り高いプリンに、洋酒の香り高いサバランなど、可愛らしいデザートの数々は水面に浮かぶ宝石のよう。

 その隣の部屋が開放されている。ほんの一時間ほどの開放なのだが、その部屋は、ダンスホールだった。
 高い天井に、入り組んだ組み木模様の床。どれほどの時間、ステップを聞いていたのか、その床は僅かに窪みもある。シャンデリアの降るような光りが、磨かれた床に反射していた。
 楽師達が奏でるのはワルツだという。

 十分に満足されたなら、プールサイドで涼をとるのも良い。泡立つ飲み物が水の中をさらに強調するだろう。
 中庭には、大きなプールが、冷たい水をたたえ。それを囲むように白い円柱が立ち並ぶ。2階は無く、高い空間は開放感を感じる。その、高い白い屋根からは幾つものライトがその場所を照らす。
 青い色だ。
 水に、白い柱に反射して、まるで中庭全体が水の底に沈んでいるかのようで。水面に反射する蒼い光りは揺れて、ざわめき、蒼の陰影をあちこちに作り出す。
 プールの中には、花が浮かべられている。
 そして、プールの底には。半透明の石が数個沈められていた。
 蒼い照明と、色鮮やかな花、揺れる水によって、酷く見つけ難い。何の為に石を沈めてあるのか。
 白い長椅子に座り、蒼の空間に気持ちを漂わせるも良い。
 弦楽器の奏者達がカルテットを作り、宴の始まりと終わりの時間、小夜曲を披露する。

 ティム・キャレイは、小首を傾げた。
「おまじないというか‥‥」
「ステキ」
「当たりの石を見つけられたら、願い事が叶うと言う、ちょっとしたゲームのようなものですわ」
「願い事なんざ、自分で叶えたら良いだけだろが」
 オペレータの女性達と、きゃらきゃらと笑い合っていたティムは、後ろからかけられた声に、僅かに眉間に皺を寄せる。何所からとも現れるのはデラード・ズウィーク軍曹である。
「嫌ですわ。ロマンを解さないお方は、これですもの‥‥」
「浪漫はあるぜ?」
「綺麗なお姉さんに声をかけると言う?」
「おお、浪漫だろが? 今日お茶しない?」
 きゃあと、オペレータの女性達から声が上がるが、誰も本気にしていなさそうなのは、すでに挨拶の一環だからだろうか。そんな姿を見て、ティムは溜息を吐く。
「‥‥静かな時間とは縁遠そうですわね‥‥」
「俺はダンス上手いぜ? 踊るか?」
「懇切丁寧にお断り致します」

 そして、穏やかな時間を過ごすのならば、客間で一日過ごすのも良い。
 コの字型にガラス張りになっている客室とダイニング。外から、テラスは丸見えであるが、その奥はきちんとプライベートスペースがしつらえてある。廊下から、入ってすぐに小さなリビングがあり、隣には寝室とジャグジー付きのシャワールームがある。リビングから、プールサイドへ繋がる強化ガラス張りの個別のテラスがある。アコーディオンになっているその硝子戸を開けるには、各部屋かからのロックを解除しなければ、開く事は無い。

 そして、朝の庭園は、花の香りも落ち着いて、爽やかな空気に満ちている。

 ──静かな休息を。

●参加者一覧

/ 大泰司 慈海(ga0173) / 柚井 ソラ(ga0187) / 藤田あやこ(ga0204) / 五十嵐 薙(ga0322) / 国谷 真彼(ga2331) / 叢雲(ga2494) / エマ・フリーデン(ga3078) / 曽谷 弓束(ga3390) / 霧島 亜夜(ga3511) / 蓮沼千影(ga4090) / UNKNOWN(ga4276) / レーゲン・シュナイダー(ga4458) / オリガ(ga4562) / リン=アスターナ(ga4615) / キョーコ・クルック(ga4770) / 空閑 ハバキ(ga5172) / レールズ(ga5293) / アンドレアス・ラーセン(ga6523) / クラウディア・マリウス(ga6559) / 暁・N・リトヴァク(ga6931) / 不知火真琴(ga7201) / 榊 紫苑(ga8258) / 蓮沼朱莉(ga8328) / 斑鳩・八雲(ga8672) / 鬼非鬼 つー(gb0847) / ジングルス・メル(gb1062

●リプレイ本文

 朝顔の浴衣を着て、その広い玄関ホールに足を踏み入れたキョーコ・クルックは、そこに待つ霧島亜夜に、目を丸くした。確かに、一緒に遊びに行こうと約束したが。白い手袋、ぱりっとした白いシャツに蝶ネクタイ。綺麗なタックの効いた黒のスラックス。深過ぎず浅過ぎない、丁寧なお辞儀。
「お帰りなさいませ、お嬢さま」
「‥‥亜夜? その格好はいったい‥‥?」
 恭しく、頭を垂れてキョーコの荷物を持ち、どうぞこちらへと、数歩前を歩く、新婚の夫の姿に、何がなんだかわからなかったキョーコだが、さあどうぞと、部屋の戸を開けられると、何となく亜夜の意図が読めてくる。くすりと笑うと、鷹揚に頷く。彼は執事で、自分はお嬢さまなのだ。
 キョーコが納得したように笑うのを見て、亜夜は心内が笑顔になるのを、僅かに堪え、執事役になりきった。磨かれた飴色の床を、キョーコの前を歩く。色鮮やかなドレスが花束のように広げられる。選ぶという、嬉しくも苦しい贅沢にしばし首を傾げるが、キョーコはちらりと亜夜を見て1枚の花弁を選んだ。
 
 青に染まる白い長椅子に身体を預け、榊紫苑は、パッションフルーツのロンググラスに差してある白い花をくるりと回す。氷が耳に心地良い音を立てて崩れる。甘い口当たりは、疲れた身体に染み渡るようだ。歓声や、仲間達の話し声、水の音。見知った顔は何所だろうかと、身体を起こす。

 最初の一音が聞こえてくる。
 明る過ぎない宵闇を切り取ったかのような蒼い照明の向こうには星空が瞬く。
 弦楽器の音が、回廊と水面を渡り、響いて行く。
 蒼い時間の始まりだった。
 仲間達が揺らす波が、複雑な陰影をつける。浮かぶ薔薇の花弁が、造花のような幻想的な色合いで波に翻弄されて行く。暁・N・リトヴァクは白いパーカーを着込んだ五十嵐薙と連れ立ってやって来る。室内は空調が聞いている。その涼しげな空気がプールサイドにも僅かに忍び寄り、蒸し暑いという事は無い。プールの水は、思ったよりも冷たい。泳げない薙を気遣うように、先に花弁の青い水に入り、手を伸ばす。パーカーを脱ぐと、水色のワンピース姿。薙は、伸ばされた手の先にいるリトヴァクに笑いかけると、まずはプールサイドに腰掛けて、ゆっくりと水に入る。たぷんという音と共に、水に吸込まれていく感じは、慣れない。思わずリトヴァクへと身を寄せる。慣れない水中は、たとえ足がついても怖いものだ。抱えられるように寄って居るのを薙は思う暇も無い。
「抱しめてもいいですか?」
「絶対‥‥手を離さないで‥‥下さいね」
 顔の火照りは照明が隠してくれないだろうか。リトヴァクは、とても良く似合う淡い水の色の水着を褒めて、さらに頬へと色を乗せて。水は怖かったが、久遠に家族と目の前の銀の瞳の人と共に在る様にと祈りを乗せて石を拾い。どの石か決めかねて何も手に出来ず。

 知り合いに挨拶を済ますと、純白のローライズビキニで、流れるように、水をかくのは藤田あやこだ。色とりどりの薔薇の花弁が、蒼い照明に揺れて流れ、花弁を纏わせプールから上がると、紺のワンピースを羽織る。誕生日おめでとうございますと、屋敷の執事が軽く頭を下げる。可愛らしいお菓子やケーキに、幾本ものキャンドルが灯された。四捨五入すると三十路かと、あやこはひとり笑う。辛い過去を振り返り、この、人のざわめきの中に共に時間を過ごせる事に感謝をと。
 華やかでいて暖かい空間に朧幸乃は嬉しげに目を細めた。親しい間柄の仲間達が、楽しげにしているのを見るのは、自分自身の心の内までも穏やかになる。すらりとした肢体は一見少年のようにも見える。短い黒髪が余計にそう見せるのかもしれない。小柄な彼女は髪と同系色の水着だ。タンクトップとボーイレッグのタンキニ姿で、冷たいプールへと身を浸す。花弁や揺れる水面の影が落ち、小さな石は見つけ難い。手に取ったその石に自分の願いは託さない。可愛らしい仲間に手渡そうか、それとも共に何かを願おうか。

 海の男を自任する大泰司慈海は、水を見ると嬉しくなる。何よりも、目の保養がいっぱいだ。緑かかった青系の生地を埋めるような鮮やかな色をした花模様のサーフパンツを穿き、回廊に入った空閑ハバキは感嘆の声を上げる。高い天井。白い柱は蒼に染まり。広い空間に甘い花の香りと水の香り。そして、身体に心地良い弦楽器の音色。
「慈海くん!」
「ハバッキー!」
 飛沫が上がり、笑い声が響く。どちらが沈められたのかは、互いに結果を譲り合うのか合わないのか。挨拶は済んだとばかりに、仲良く女の子達を眺めに入る。若干1名、水中に沈みつつ、プールサイドの人影を見て、楽しくも恐ろしい記憶を思い出したのは内緒である。
 白と緑のボーダー柄のバッククロスのビキニを着込んだレーゲン・シュナイダーは、たゆんとした水中からぷかりと顔を出し、蒼い光り越しに回廊を眺めて、微笑む。大きな被害が無くて良かったと。幸福な家庭を築けますようにとの願いは、共に居る大事な人と共に願う事なのだけれど、たゆたう水辺にはその人は見当たらなくて、しょうがありませんねと小さく溜息を吐く。
 蓮沼朱莉は、ピンク地に黒のゼブラ柄のお気に入りの水着で、大勢の仲間の中で挨拶をしつつ、その喧騒の中でさえ内へと向かう穏やかな心地に安堵の笑みを浮かべる。水に身体を馴染ませて泳いで行けば、可愛らしい友と目が合った。
「クラウディアさんも、おまじない参加してみませんか?」
 あちらにも、こちらにも。クラウディア・マリウスは楽しげに挨拶を交わしていたクラウディアは、もちろんですと笑い、水の中へと入っていく。顔を出せば、クラウディアの青い瞳に、別の青い瞳が飛び込んでくる。
「ねね、何をお願いしたんですか?」
「クラウは?」
 ハバキが拾った石に可愛らしくも、沢山の繋ぐ言葉を残した言葉の願いを乗せる。また皆でと。そんなハバキに、えへへと笑うクラウディアは、平和への祈りを込めて。自身の石をプールに返し、朱莉はクラウディアの願いを聞いて、こくりと頷き微笑んだ。願いは重なる。今日の日のような平穏が、早く訪れますようにと。

 この機会を逃すのはなんだか勿体無いような気がしていた。曽谷弓束は、ローストビーフやベビーリーフとチーズのサラダを取り分けながら、集まってくる仲間達の艶やかな姿に、嬉しげに目を細め、このお屋敷を守れて良かったと思う。
「美味しそう、そして豪華です‥‥!」
 朱莉も、同じように思い、目の前のデザートに溺れる。ゼリーの中で光るフルーツ達、酸味と甘みのバランスの取れたチーズケーキ。女の子のケーキは別腹である。口の中に広がる、甘い幸せに、何度もスプーンが運ばれて。
 身長の2倍以上はゆうにある天井を見上げた後、リン=アスターナは、軽く首を横に降る。奪還組みに感謝をしつつ、流れる曲に誘われるように足を運ぶ。しゃらりと衣擦れの音がする。隣を歩く、レールズを見て少し微笑んだ。ゆっくりと流れる時間を感じられれば良いと。普段はスーツに身を固めるリンは、ドレスの無防備さに戸惑いつつ、からりと揚がった鱸にかかるマリネの味を確かめる。本職の作るものは味がひとつ立っており、その中に複雑な味わいが幾つも詰まっていてブレが無いと、料理にも興味は尽きない。
「瀟洒な夜になりそうですね」
 きっちりと燕尾服を着こなした斑鳩・八雲が、ふらりと入ってくる。見知った仲間達に、挨拶をすると、どうぞとサーヴされたのは、フルートグラスに細かな泡の立ち上るシャンパン。甘いトマトとボイルした海老のサラダは、冷たい半熟卵がとろりとかかり、キャビアが散らされ。
「おお、男前がひとりか?」
「十分に楽しんでいますよ」
 同じようなタキシードを着込んだデラード・ズウィークが入り口近くに居た八雲に軽く手を上げる。
「‥‥わあ。軍曹さんが格好良いのです!」
 でも、カーゴパンツにタオル鉢巻姿の方が好きかもと、両手を口の前に持ってきてえへへと笑うレーゲンに、そういうレーゲンもツナギが好みだなと、返される。中に入ろうとするのを、何故か身体をずらして止めに入ろうとするレーゲンに、デラードは軽く眉を上げて、ふうんと笑った。
「遅れてすまねぇ、俺のお姫様。踊っていただけますか?」
 タキシード姿の蓮沼千影が、レーゲンの前にすっと膝をついて、手を出した。今日は来れない。そのはずだった。
「‥‥喜んで」
 レーゲンは盛り上がった涙を堪えようと、笑い、その手をとった。デラードは、何があったか知らないが、かわいい娘を泣かせるのは感心しないなと、軽く千影を蹴って行く。

 オリガは、男装というほどでも無いが、びしっとしたタキシード風のスーツを着ていた。そんなものまで何故あるのか。結構、男装用の衣装も選べましたと思い出し笑いする。
 どうぞ、姐さん。
 今回はホストの定め。ずっと側に居たいよオーラを残しつつ、入れ替わり立ち代り、ボーイ姿の総務課職員’Sがオリガに酒を注ぎに来る。しっかりと洋酒の染みたサバランを、幾つ口にしただろう。2回繰り返して呟いてしまうほどサバランを食べたかった。だが、他のケーキも捨てがたい。
「全てを手に入れれば良いのです」
 シャンパンを、水のように消費しつつ、キルシュトルテが、プリンが、オリガの前から消えて行く。
「よぅ、酒の女神」
 オリガに声をかけて、ダンスホールへと歩いていくのはアンドレアス・ラーセンだ。明るいブルーのタキシード。紺のアスコットタイ。いつも背に流している金の髪は襟足でひとつに括られている。妙に場慣れしているのは、育ちのせいか。その横を、オリガさ〜ん♪ と、満面の笑みで、飛びつかんばかりにやってくるのは不知火真琴。エスコートしてきた叢雲が、にこやかに仲間達に挨拶する。真琴のドレスは、薔薇のコサージュ目のついた、覚めるような白。繊細な黒のショールを羽織っている。白銀の髪は、ゆるく結い上げられ。仲良くふたりで居るレーゲンと千影に、明るく手を振った。叢雲はジュレのソースがかかった鳥を食べてみる。ほんのりと鼻に抜けるハーブの香りはレモングラス。ジュレはコンソメがベース。
 音を合わせる楽器達の声が、ダンスホールから聞こえる。じき、始まるのだろう。
 人の流れが、ダイニングから向かい始める。

 居る仲間と居ない仲間。心中で苦笑しつつ、叢雲は一部男性陣の無謀ともいえる企てを思い、傍観者を決め込む。最初の一曲が終われば、アンドレアスがやって来た。大仰にお辞儀をすると、真琴へと手を差し出した。
「一曲、お相手願えますか?」
 複雑な笑みを浮かべるアンドレアスは、真琴を抱えて滑るように踊る。小さな頃叩き込まれたマナーは、意外と身体の芯を作るものだ。
「このまま、何処かへ連れて行っちまいたいな」
「‥‥」
 自分を見上げる青い目が揺れる。託した気持ちの答えは未だ無い。それがどんな答えでも、自分の気持ちが負担にならなければ良いとアンドレアスは思う。大丈夫と言う意味を込めて笑うと、曲の変わり目に、叢雲の近くまで踊って戻る。
「ほら、保護者がお待ちだ。ちゃんと返すぜ‥‥今はな」
 白いドレスがくるりと回り、叢雲の前に真琴は戻されて。
 その後姿が僅かに下を向いているようなのは気のせいだろうか。

 弓束は、ピンクのマシュマロのように可愛らしい少女を見て、つい、まじまじと見入ってしまう。少女は、弓束と視線が合うと、えへと笑った。
「おやおや、誰かと思った」
 曲の始まる前の事。
 国谷真彼は、ふんわりと広がったピンクのドレスを着た少女に目を細めた。金色の髪には大きな花の髪飾り。何所からどうみても少女にしか見えないのは、柚井ソラだ。誰が可愛らしく着替えさせてくれたのだろうかと思いつつも、相好を崩せば、ソラも、国谷を見て、嬉しそうに笑う。
「国谷さんと御一緒できて幸せです」
 れっきとした男性であり、以前は国谷に男性パートを習った事もある。しかし、今回は女性パートをがんばって覚えた。国谷は、ソラに誰か踊ってくれる女性は居ない者かと考えていたのだが、ドレス姿ではと考えて、白羽の矢をデラードに立てる。というか、ソラは最初からそのつもりのようだ。デラードを見つけると、迷い無く前に出る。
「一緒に、踊っていただけませんか?」
「おや‥‥ん、お手をどうぞ、お姫様」
「ありがとうございます」
 ひょいと抱えられて、くるりとフロアに躍り出る。来年は無いものと思ってなと、笑われて、ソラはほんわりと笑って頷いて、覚え間違いの無いよう、ステップを踏めば、最後はくるくると回されて、さて、僕のお姫様を返してもらいましょうかと笑う国谷の前に降ろされる。
「復習だよ。ついて来れるかな?」
 にこりと笑う国谷に、こんな幸せな時間がずっと続けば良いと、暖かい気持ちを抱しめるようにソラは手を伸ばす。
「楽しい時間をありがとう。『かわいい』お姫様」
 楽しそうに笑い、尽きぬ感謝を込めて国谷が囁きを落とす。辛い記憶が苛む心にいつも穏やかな陽だまりを作ってくれる、大切な存在を腕の中に抱き込んで踊れば、またひとつ氷の欠片が溶けて行く音が聞こえた。

「はじめまして、つーです。よろしければ一曲いかが?デラードさん」
 ワインレッドのドレスを着た人物がデラードに微笑めば、即答で拒否られる。尚も寄られれば、デラードの足が出る。それは交わして手を出せば、当然がっちりと掴まれて、はい、お終いと壁際の椅子にと放り投げられる。拳法でデラードを倒そうと試みたのは鬼非鬼つー。デラードの蹴りは本気では無い。かわそうとすれば、かわせるのだ。だが、それに本気で反撃すれば、当然本気で対処されてしまう。まあまあと、つーに職員’Sが飲み物を差し出していた。
 そして、もうひとり。艶然と笑い、手を差し伸べる人が居た。
 同じようなワインレッドのチューブ型ドレスに、ゆったりとストールを纏う。柔らかな色合いの金髪が緩やかに波打ち肩にかかる。
「軍には意外と多いんだぜ? 美人の野郎がな」
 女好き舐めんなと、にやりと笑うデラードに一発看破されたのはジングルス・メル。残念そうに腕を組むと、放り投げられたつーを見て、にやりと笑い返す。仲間内の気の置けないレクリエーションだとはジングルスも十分承知。
「‥‥だけど周りにゃ、お前が女を蹴ってる様にしか見えんだろうなー?」
「外では、蹴った後、剥くから大丈夫」
 ‥‥酷え。
 そんな呟きがあちこちから聞こえるが、野郎に情けは無用と胸を張るデラードは筋金入りだった。巷で噂される騒ぎの一端はそのあたりもありそうかもと、思われる。そんな流れをものともせずに、ワルツを奏で続ける奏者の皆様はプロだった。
「うちと一曲お相手してもらえます?」
 真琴が爆笑を抑えつつ、デラードに問えば、満面の笑みが帰り、手をとられる。大規模作戦での修道院依頼を労い、その後の長崎での飲み比べの決着をいつかつけたいと真琴が言えば、また世話になると微笑まれ、飲み比べ好きだなあ皆とにやりと笑われる。

 慈海は、満足そうにティムをくるくると回していた。赤のイブニングは慈海の見立てだ。どんなに懇願されてもお仕事ですからとにこやかにボーイ姿を崩す事無く断り続けていたティムに、慈海は、傭兵さんの要望に応えるのも、立派な職員としてのシゴトだよー。と、笑って見せた。うっ。と、言葉に詰まったティムは、後はもうその他の皆さんの手回しで、さっさと着替えさせられていたのだ。
 静かにグラスに口をつけていたUNKNOWNは、ダンスが終盤に差し掛かったと見ると、軽く方目を瞑り、笑みを浮かべてShall we dance? と、ティムに手を伸ばす。
「力を抜いて、身を任せればいい――気持ちよく踊れば、ダンスもまた快感となる」
 囁くような呟きを向ければ、意外とにこりと笑顔が帰る。それなりに叩き込まれているステップにリードは意外と楽だとUNKNOWNは思い、笑みを深くする。曲の終りには、感謝を込めて、頬に軽くキスを落とせば、危険物に昇格ですわねと真っ赤な顔が帰ってくるのを楽しげに笑って手を離し。誰か踊りたい方は居ないかねと艶然と笑い仲間の輪に入って行けば、では、私がとオリガが歩み寄る。スレンダーな男装のオリガとUNKNOWNのダンスは一際人目を引いていた。
 慌しさを押さえて、タキシードに着替え、フロアに再びやって来たジングルスはティムを見つけた。軽く咳払いをすれば、振り向かれ。
「‥‥Shall we dance?」
 差し出す手に、笑顔と手が重なった。そろそろ時間が迫ってくる。ラストダンス。
 シャンデリアの光りが僅かに瞬いたかのように思える。
 ティムを抱えてフロアへと滑り出す。その時々に、僅かに香る、甘い‥‥花の香りと零れる光り。デラードに構っているのとは打って変わった真面目なダンスだった。くるりと回れば、もう終りの一音が聞こえてくる。あっという間の時間だったけれど。
「スッゲ楽しかった。‥‥ありがとう、な?」
 楽しんでもらえれば幸いですわと、ティムが笑い返して。

 ラストダンスは、華やかにドレスが舞っていた。
 背中の大きく開いた、真紅のイブニングドレスをキョーコは選んでいた。何より、亜夜が好きな色だから。華やかな彼女が、僅かに恥ずかしそうに微笑む。差し出した手をとれば、腰に回された手が背中の開いた肌へと当たる。しゃらりと衣擦れの音と、互いの心音しか聞こえなかった。
 肩を竦めて壁に寄りかかる紫苑は、黒のタキシードに真っ白な手袋。いつもひとつに結んでいる栗色の髪は背に流れ。さて、と、踊る仲間達を見ていると、弓束が、にこりと笑いかけた。
「うちで良ければ」
「こちらこそ」
 このまま、楽しそうな仲間達を見ているだけでも、幸せなのだが、一夜限りのパートナーでも、居ないよりは良いかと、弓束は思ったのだ。誰かの代わりはごめんだが、そうでないのならと。KV磨きのあの日、見かけた軍曹は、変わらないもてっぷりのようだなあと眺めれば、目が合って、あの日と同じ様に笑われる。行動を起こさなければ、その声も手も届く事は無いのは弓束も知っていたが、覚えていてくれたのかなと、僅かに笑みを浮かべた。
 前日の講習会でひととおり踊れるようになったとはいえ、レーゲンは馴染まないステップに四苦八苦する。千影の足を踏まないようにと下を向きがちなレーゲンに、千影はくすりと笑う。
「好きなだけ踏んでくれ、な」
 まだ大事な人になる前のダンスパーティ。レーゲンは、おぼつかない足取りでパートナーの足を縫い止めていた、そんな懐かしい記憶に笑みが深くなる。
 薙のオレンジ色したシンプルなドレスは、リトヴァクの手の当たる腰の辺りに、蝶のようなリボンが結ばれていた。床を蹴るダンスシューズの音。曲に合わせて、くるりと回る。抱えられる身体にそっと、とられる手。
「俺がリードしますから。その後を辿って‥‥そう、上手いですよ」
「一緒に‥‥踊れて‥‥楽しい‥‥です」
 着ているドレスよりもさらに幸せに紅い色をつけた顔の薙。良かった。そう、リトヴァクは笑う。そんなリトヴァクの顔も、何所と無くまだ落ち着かない。ワルツの調べにフロアを移動しつつ、薙へと囁けば、恥ずかしそうにこくりと頷かれる。
 レールズは、五大湖解放戦線前のダンスを思い出していた。その時同じように踊った相手は目の前のリン。同じように踊るのだが、同じでは無い。その気持ちはリンにも届いていた。僅かに苦笑するリンは、髪と同じ色した白銀のイブニングドレスだ。身体の線が綺麗に出て、裾が僅かに広がる、そのドレスはリンに良く似合っていた。
「以前も思ったのですが、やはりリンさんは上手いですよ」
「‥‥貴方と親しくするようになった時も、告白された時も、そして今日も。何だか私たち、節目節目にはいつもダンスをしているような気がするわね」
 くすりと笑うリンに、実は‥‥と切り出すレールズ。何の事だろうかと、視線を合わせれば。
「俺がリンさんのこと気になりだしたのは、あのパーティーで一緒に踊ってから‥‥なんです」
 ワルツの曲調が変わったかのように思えた。
 ダンスホールの壁の花になっていたクラウディアは、行き交う仲間達を見て、ほわ。と、溜息を吐く。誰も彼も、とても素敵だったから。

 華やかな気配がダイニングとその向こうのダンスホールから聞こえてくる。ちらりと顔を向けるが、まあいかと、幸乃は白い長椅子に横になる。蒼い光りの向こうには、降るような星が瞬いて。人の居なくなった静かなプールとと思いきや、同じ事を考えている者も居た。
「贅沢な時間だね〜」
 やはり、長椅子でころりと横になっているのはハバキだ。仲間達の動向は気にはなる。けれども、この何も無い時間も大切だと思うのだ。話してあげたい人はひとり。うとうととまどろめば、夢に見るだろうか。
「くがさん、差し入れです」
「ぴゃっ!」
 何時の間にか、ワルツは終わっていたようだ。クラウディアは、姿を見ないハバキを見つけて、冷たいジュースを差し入れる。パインとピーチ。ちょっぴり炭酸の入った甘くて冷たいグラスをおでこにくっつけられて、ハバキはがばりと起き上がり、礼を言う。

 競技用の短パン姿の八雲が、ゆるりとプールを泳ぎきる。仰向けになれば、夜空がとても近い。それは、蒼い照明のせいかもしれない。贅沢な時間だとは思う。けれども、それと同時に、ふと過ぎる気持ちもまた真実で。
「独り身はやはり辛いものがありますねぇ。このような場では特に‥‥」
 偶然手にした石はおまじないだと後から聞く事になる。そういえばと、回廊を見渡すと、プールサイドに見知った顔を見つける。
「ご一緒しても?」
「‥‥喜んで‥‥」
 同部隊の幸乃と話すのは、やはり大規模作戦の話になるのだろうか。和やかな会話がぽつり、ぽつりと零れて落ちた。
 拾ったおまじないにアンドレアスが願うのは。
「戦争の終結と好きな子の幸せ。つまりラヴ&ピースだ。ロックだろ?」
 それが真実で無いのは、仲間達は多分気がついている。返事の変わりに、ハバキの水掛け攻撃がアンドレアスの顔面を襲った。
 リンは、ひと汗流そうかとプールへと飛び込む。綺麗な流線を描いて泳ぎ、掴んだおまじないは。
 ダンスを堪能したらしいデラードは、何所からか現れた野郎共にタキシードのままプールへと沈められた。盛大な水飛沫が上がる。
「さて、水も滴っているが。約束どおり飲む、か」
「あ! 俺もまざるよー。男とサシ飲み、イヤとか言わせないよー」
 俺以外の平均年齢高いぞと、デラードがにやりと笑うと、救助者のその手をとって‥‥当然のようにプールに引き沈めた。水も滴る何だかわからない組み合わせは、笑い声を上げながら、河岸を変えて飲みなおす模様だ。
 ダイブは続く。
「今日のために引っ込めた腹だ、今出さずしていつ出そうか」
 虎柄のサーフパンツは鬼のパンツは良いパンツ。のよう。くるくると腕を回し、仲間達を眺めて、目的のひとりにターゲットロックオン。
「ソラくーん! 一緒にダイブだー!」
「わぁ!? 鬼非鬼さん、何するんですか!?」
 たたたたっと走り込んだ先に居る、小柄なソラにタックルをかまして、救い上げ抱き抱えると、そのままプールの中へと。
 勢いつけて飛び込んだおかげで、プールの底の方まで落ちていった。蒼い水の底は、光りを幾重にも反射して、とても綺麗。ついでに拾ったその石に、ソラが願うのは、大切な人達と永久に共にと。おまじないには興味があったが、1桁の石はたくさんある。つーはどれにしようか決めかねて。
 真琴は拾った石に、何を願うのか。ぎゅっと握り締め。叢雲の手が心配要らないとばかりに、真琴の頭を撫ぜた。
 弓束は、楽しくも美しいホールのざわめきと酒で回った、酔いを醒ましに長椅子に横になる。すっと頬を撫ぜる夜風に、嬉しげに目を細め。蒼に溶け込んだプールサイドに降りてきそうな星空を眺めながら、優しいまどろみへと落ちて行く。


「全ての農家、醸造家、料理人、そして今日ここで皆と共にささやかな一時を過ごせることに感謝を込めて、乾杯!」
「「「「乾杯〜♪」」」」
 つーの音頭で、テラスを陣取って宴会が始まる。
「一人で手酌酒もいいが、こーやって人と飲む酒の方が数段美味い」
 そうだそうだと、合の手が上がる。
「このカクテル‥‥おいしい‥‥」
 オレンジ色したカクテルを一口飲むと、薙は、リトヴァクに笑いかける。
「来てよかったですね」
 そっと握られた手を握り返して、楽しい時間の続きを紡ぐ。
 アンドレアスが、グラスを夜空に掲げてまた空にする。
「ま、デラードには敵わないケドな」
「とことん付き合ってもらいますよ? 朝まで‥‥」
 紫苑も、自他共に認めるザルである。にやりと飲兵衛達は笑いあい、また杯を重ねる。
「おつまみ無いよー」
 真琴が、ビールを掲げて見せると、叢雲がはいはいと動く。特に宣言もしていないのだが、叢雲はうわばみである。同じように飲みながら、厨房とテラスを行き来する。
「さっきのあれ、ビネガーはビネガーですが」
「んー。年の若い方じゃないですかね」
 つーと、出されたソースの検討をしつつ、ほぼ正解を導き出して、ほんの少しアレンジを加え、立食の食べ物から、飲兵衛のおつまみへと変身させる。
「何かちょーだいな〜」
 ビール缶を抱えて、幸せそうな千鳥足のハバキに、叢雲はどうぞと、揚がったばかりの鶏肉の南蛮漬けを手渡す。南蛮漬けだが、その酸味はビネガーだ。んまーと、とろけるような顔をして、皿を運ぶハバキは、今度は落ちないようにと、足だけプールに浸し、ビールをあおり。飲兵衛至福の時間を満喫する。
「飲んでるハバッキー」
「あれ、慈海くん〜」
 消えたはずだよとけたけたと笑えば、しばし歓談するとまた消えて行く。何所へかは謎だったが、飲兵衛は細かい事は気にしない。

 宴会もお開きになった後の、明け方近い深夜のプール。
 ざぱんと、小さな水飛沫が上がる。オリガだ。
 誰も居ない場所というのが良い。
 水面に映るのは、花弁の波紋か、夜空の星か、それとも、蒼い光りの中にある──何かか。

 部屋でゆっくりする者も居る。
 亜夜は、ダンス以外は彼女だけの執事役を楽しんでいた。ハンバーグにかけるソースはビーフシチュー。合格、合格と、キョーコの笑みがこぼれれば、ふたり仲良く食事を済ませ。
 薙は、ねこの抱き枕に顔を埋める。ぎゅっと握り締めたねこの抱き枕が、僅かにふたりを隔てる。薙の心臓は早鐘を打ち、収まらない。そんな姿も愛しい。リトヴァクは、優しく薙の頬に触れ。
「あなたに会えて良かった。ありがとう‥‥」
 こくりと頷く薙とずっと一緒に。水の音が僅かにふたりに届いた。
 恋人達は寄り添って互いの声を曲のように互いに響かせる。
「待たせて‥‥不安にさせて、ごめんな」
 これは嫉妬だ。千影は、訳もわからず駆られた気持ちを暴いて溜息を吐く。自尊心が揺らいだ。たまには居なくても平気だと自分の心に嘘をついた。その結果は、さらに痛んだ自分の心と、同じだけ傷つけた大事な人の心が残り。
「もっともっといい男になってみせる。レグの目に、他の男が入らないぐらいに、よ」
 だからこれからも側に居て。そんな消え入るような言葉に、レーゲンはくすりと笑う。より深く寄り添えば、込み上がるのは愛しさだけだから。
「他の男って‥‥軍曹さん、とか? 好きの種類が全然違いますのに」
 静かな蒼い照明が零れて落ちる。夜半、側に居る幸福を噛締め、何があっても傍にと願い愛しい少女の頬に口付けを落とした。

 何もかも一夜の夢。
 艶やかなドレスも、蒼い照明も、朝日に照らされれば、その幻想のヴェールを脱ぐ。何時片付けたのか、綺麗なダイニングに朝食のバイキングが出来上がっている。紫苑は、花開く庭を散策し、静かなダイニングで、適当に取り分けた朝食を食べながら、仲間達の休暇は良いものであったのだろうなと考える。
 朝靄の中、浮かび上がる庭園は美しかった。起きるのが早かったかと、亜夜は、申し訳ありませんお嬢さまと丁寧に挨拶をすれば、キョーコは首を横に振り、庭園の散歩へと亜夜を誘う。
「いまはあたしだけの執事だから何でも言うこと聞いてくれるよね?」
 首を傾げつつも頷く亜夜に、目を閉じさせると、沢山の感謝を載せて、キョーコは薔薇の木陰でその首を引き寄せた。

 夢と現の空気を楽しんでいたハバキは、寝ない所か、ずっと動いていた。蒼の照明が朝日と混ざり、プールに浮かんだ蒼い陰影をつけた色とりどりの花弁に、本来の色が戻るのを見て、夢の名残りを楽しんだ。
 長い金髪をかき上げて、アンドレアスは早朝の庭を散策する。横になったは良いが、寝付けなかった。様々な花の香りが、ひとつに纏まって香る。耳に残る昨夜のセレナーデ。
「‥‥音楽的な朝だ」
 すがすがしい空気と共に吸込めば、何もかもが新しく変わるかのようで。

 昨夜の喧騒の中、クラウディアは健やかに睡眠をとっていた。
 何時の間にか隣で寝ていた真琴の寝顔は可愛いなと思いつつ、そっと起こさないようにと庭に出ていた。
 まだ明けきらぬ庭は、僅かに靄がかかっている。
 薄紫に染まった空から、金色の奔流が溢れ出す。
 ひとつ伸びをすると、静かに深呼吸をする。
 朝靄と、花の香りが体中に満ちてくるかのようだ。
 それは、元気を与えてくれて。
 訳も無く幸せな気持ちを抱えて踵を返す。

 また、明日からがんばろうと。



 願った石に、誰も星は見つけられなかったが、強い願いは、形を変えても叶うはずだ。
 きっと。