●リプレイ本文
●第一競技 ビーチフラッグの死闘
UPC総務課から出される体力強化のお知らせ。この依頼に慣れているものも、そうでないものも、すでに戦闘準備は万端だった。
白いスパッツタイプの水着を着用する空閑 ハバキ(
ga5172)は、体力強化は続ける事が大事と、笑顔で頷く。ハバキのその笑顔に、刺客の視線が幾つも寄せられている。それは承知のうらぎりん。
ままと呼ぶUNKNOWN(
ga4276)のシャツを失敬しようと思っていた葵 宙華(
ga4067)だったが、男子更衣室に侵入は出来なかった。打ち合わせていれば手に入ったはずである。しょうがないので、手近な上着を羽織る。長い髪をふんわりと三つ編みにしている。一番近い旗の相手はハバキのようで、見ちゃ嫌攻撃は効いたのか効かなかったのか。
一足早い、海を満喫! ヤヨイ・T・カーディル(
ga8532)は真っ赤なビキニ。お手入れを考えて日焼け止めはバッチリだ。何はともあれ、正攻法で行こうと、小さな旗を視界に捕らえる。
やはり、正々堂々を掲げるレーゲン・シュナイダー(
ga4458)は、紺のスクール水着『1−C れぐ』の白ゼッケンが眩しい。また何処かから声が。コンタクトを保護する為にゴーグルをかけ。タイヤダッシュの面々にも負けまいと頷いた。
ずらりと並ぶ浜辺の旗鳥。尚 覇志(
ga9547)は、慎重に勝つ算段を巡らせ左右を伺う。仲間ならば勝ちを譲ろうと思うのだ。
挨拶を済ますと、その熱気に、僅かに汗を拭う。ハードな体力強化と聞いていた通りだと、ピンクに黒のゼブラ柄のビキニを着てきた蓮沼朱莉(
ga8328)は、熱い砂に横たわる。じき、開始の音が鳴るだろう。
一度やってみたかったビーチフラッグ。
静かに息を整える。脇目も振らずあの小さな旗に向かえばきっと。僅かに笑みがこぼれ。
威嚇をするかのような、しかし楽しげな派手な笑い声を上げ、NAMELESS(
ga3204)はぴったりとした競泳用水着を選んでいた。鮫肌を模したという、以前主流だった特殊素材のもののはずであるが、定かではない。
相手が誰であろうと全力勝負。
腰につけたお面が僅かに揺れる。じっと目を閉じ、ただ合図に全神経を集中させる。
知ってか知らずか、正しく、体力強化の真髄である。
足を動かし、合図が鳴るまで、スタートダッシュの足場を僅かに作る辻村 仁(
ga9676)は、仲間達の位置を確認する。反芻するのは、ビーチフラッグの基本動作。きりんさんは徹底してこれを行っている。チームの絆は強い。
ニヒルな笑みを浮かべているのはUNKNOWNだ。この依頼にはかける思いが違う。再び、らいおんさん夫婦として戦う気で居たのだが、それは直前の裏切りに合い。だが、それもまた良しと含み笑う。
腰の褌を確認する。それは二重に装着した禁じ手。
真っ白なビキニから伸びる手入れされた手足。自慢の肢体をひととおり胸張ってみてから、藤田あやこ(
ga0204)も砂に横たわる。きりんさんはビーチフラッグ対策を綿密に打ち合わせている。
常夏の島のきらきらとした陽射しは、あまり外に出ない自分には少々辛い。目を細めつつ叢雲(
ga2494)は薄い生地のヨットパーカーを羽織り、やはり黒のトランクスタイプの水着を着込む。ひとつに縛ったポニーテールのような漆黒の髪が揺れる。
静かに準備をするが、その心内は真っ向真剣勝負と決めている。小さな旗に飛び込むと。
原色の色鮮やかな景色にアンドレアス・ラーセン(
ga6523)のテンションは上がりっぱなしだった。知る海は暗く灰色の紗がかかったかのような色合いだからだ。
しかし、きりん。この名前はなんともならないようである。きりんさんチームとは取る旗が重ならないようにとは思うが、そこはくじ引きの妙。願いは叶ったようである。アイコンタクトを忘れない。
そして、謀ったかのようにくじ引きは強敵と書いて友と呼ぶ男の隣へと導いた。赤と黒のツートンカラーのトランクス水着も被っているかのようでなんだか無闇に燃え上がる。
可愛らしいタンキニに、大き目のパーカーを羽織った、なつき(
ga5710)は、ぺこりと仲間達にお辞儀をする。かなづちでごめんなさいと。無問題。腰に古タイヤの縄をつけた総務課職員’Sは口をそろえる。ペーペーのティムが、思い切り頷いているのはやはりかなづちだからのようだ。
体力は温存。僅かに目を細めて、くすり笑う彼女は、なかなか侮れない。
黒と青の綺麗な切り替えの競技用水着は、カットの多い色っぽい系。けれどもそれを着るオリガ(
ga4562)の行動は何所か可愛らしい。可愛らしいけれど、彼女のチームはらいおんさんである。事前練習は抜かりなく、全力勝負。
それだけでは無く、勝敗を決める僅かな手段は迷うことなく使うだろう。ビーチフラッグにはつき物。そう、鮮やかな笑みが零れる。
赤いかぼちゃぱんつ。海に入れば、そのふくらみは消えるが、ビーチフラッグではまだふんわりと膨らんでいる。プルナ(
ga8961)は手元の番号を見て、位置についた。きりんさんチームはくじ引きの運が良かった。
そうして轟く開始の合図。
褌で妨害は明らかに反則である。砂を蹴立てて、飛び込んだり、押しつぶしたり、そ知らぬ振りして蹴倒したりは、普通に通る。基本作戦の元、添うような妨害工作は作戦と呼ばれるが、物を使ってはまずい。よって、残念ながら失格となる。
最後に勝利の女神が微笑んだのは。
<ビーチフラッグ結果>
優勝 レーゲン・シュナイダー
準優勝 プルナ
準決勝進出 辻村 仁・藤田あやこ
獲得点数
うさぎさん 10点
きりんさん 11点
らいおんさん 0点
●第二競技 意識遠のく仮装遠泳
うさぎさんチームの衣装は統一されていた。
パーティグッズで事足りる、その可愛らしい姿は、バニーちゃん。まさしく、うさぎさんである。
黒バニーのレーゲン、赤バニーの朱莉、白バニーのヤヨイ。皆、浮き輪をしっかり手にしている。透明で、飾りロープの付いた大きな浮き輪には、うさぎさんがちゃんとペイントされていたりする。
「さすがに、熱い」
燕尾服に黒ウサミミ。兎執事、叢雲は、勝負を挑まれているアンドレアスをちらりと見るが、どうやらまずは勝ち抜く事に重点をおいているようだ。ならば、遠慮は要らない。遠泳5Km泳ぎきって見せようと、くすりと笑う。
燕尾服の上着だけを着込んでいる覇志は、兎執事に一歩及ばず。どうせならば、執事さんにも尻尾も欲しかったとか、ティムが握りこぶしをしているのが聞こえたかどうか。
きりんさんチームは手作り感満載の上、とても揃っていた。
「これアンジェリカですから。後は愛・ひたすら愛で脳内補完」
『受』じゃありませんからと、力説するあやこ。きりんさんは浮き輪が無い。何故ならば、浮き輪代わりのビート板を削りまくり、肩当て、胸当て、腰にデフォルメした翼に腕や足にもナイトフォーゲル──KVのパーツを模ったコスプレをしている。
K−111の愛らしいまるごっついパーツをつけているハバキは、そわそわとらいおんさんチームを伺う。そこには、大事な人が居るからだ。泳げないなつきが心配なのだが、うらぎりんの名を貰いつつも、かつてのらいおんさん仲間には信頼を置いている。きっと大丈夫。そう思う。
「1位狙うぞ」
アンドレアスがきらきらと長い髪を陽に輝かせて笑う。ディアブロの赤い装甲をイメージして括り付けられたビート板が鎧のようだ。プルナも、がしがしと作るのを手伝う。どのKVにするか決めていなかったが、仲間と被らないほうが良いだろうと考える。仁が作るのはR−01。なるべくKVっぽい翼になるように気をつけて、仲間のコスプレとかけ離れないようにと気を配り。
らいおんさんチームは、物語に終始する。発泡スチロールの箱を連ねて船にして、真ん中に乗るのはなつきだ。透明の大きな浮き輪にはらいおんさんのペイントが。頭にはパーティ用グッズの海賊船長帽。手作りのらいおん尻尾をくっつけて。
背中にサメヒレのようなものをくっつけたUNKNOWNは、アイパッチと海賊帽を装備している。髑髏マークならぬらいおんマークがきらりと光ったような気がする。NAMELESSはいかにも作りましたのシャチの被り物をしている。
「よーほーよーほー」
海賊プレイは楽しそうだと、オリガは漕ぎ手をがんばる。同じく、漕ぎ手とした宙華は、何故か体操服である。ブルマを指でくいっとなおす。『あ お い』と書かれたゼッケン付きだ。長い髪は、今度はきっちり編み込んである。らいおんさんチームは長い鉢巻をつけていた。その鉢巻は、今は発泡スチロールの補強になっている。
ぷかぷかと、碧のラグーンに浮くゴザ。
駆け抜けるという事にうさぎさんもきりんさんも気を配っていた。真ん中を走り抜けると。身軽な仮装も効果抜群だ。飛沫を蹴立てて、抜けるような空、碧の海へと、駆け込んで行く。
出遅れたのはらいおんさんチーム。発泡スチロールの船もどきが仇になる。スタート地点でずぶずぶと水没する。
早めに浮かんでしまえば、あとは浮力がものを言うとはいえ、駆け抜けた2チームからは遥かに遅れる。
陣形も決めていた、きりんさんチームは、コスプレの浮力を生かして、ドルフィンキックで大きく引き離す。あまり乱れの無い泳ぎのきりんさんは、一丸となって泳いで行く。
フラダンスの格好をしたぞうさんちーむは最初っから浮き輪使用。必死のようだが、そのスピードは亀である。
かなづちのなつきとティムが危険ならば、浮き輪を放ろうかと様子を見ながら、黒バニーレーゲンは泳ぐが、とりあえず、大丈夫そうである。うさぎさんチームはぐいぐいとその差を縮めて行く。最初のうちは調子の良かったきりんさんチームだが、中盤で僅かにその足が鈍る。背後からはらいおんさんチームが、きりんさんを‥‥うらぎりんさんを狙う。
「‥‥きりんさん。発見、です」
くすりと笑うのは、ハバキが心配をしていた彼女である。
「よし、うらぎりん‥‥狩るぞ」
「けけけ‥‥けけけけけー!」
とても激しく怖いのだが、きりんさんとてむざむざ捕まるつもりは無い。というより、各人の泳ぎの自由度はきりんさんの方がある。が。うらぎりんさんは捕まってとりあえず一端沈められていたりもした。
その戦いを尻目に、うさぎさんはがんばった。
美術点。らいおんさんんは主旨が徹底されていれば、良かったのだが。
上回る揃いの楽しさがモノを言う。うさぎさんときりんさんは接戦だった。うさぎさんとバニーのかけかたも良かったのだが、作り上げた姿勢が美しいという事で。
1位*アンドレアス・ラーセン
2位*叢雲
3位*UNKNOWN
<仮装遠泳結果>
きりんさん◇◇10点
うさぎさん◇◇5点
らいおんさん◇3点
美術点*きりんさん◇3点
●第三競技 乳酸蓄積しつつ潜る果ての楽園
船着場浅瀬で魚で霍乱を狙うなつきだったが、特に第三競技は必要無い。競争では無いからだ。砂地の見えるその浅瀬に潜るのは、もうひとり、朱莉。運を信じて潜る。彼女達は、鮮やかにパールに輝く点を取る。
何かありそで、何もなさそな、ラグーンの外れに泳いでいったUNKNOWNは、柔らかい光りを見つける。パールの点を手に入れて、ついでとばかりに獲物を探す。
島と外界の中心南側へと泳ぐのはプルナと仁。ラグーンは珊瑚礁だ。美しい連なりの間に光る箱の中に銀色の点数を見つける事が出来た。
NAMELESSと覇志は、島と外界中心西側へと泳ぐ。ポーチに入れた小エビを巻けば、寄ってきた魚が銀色の光りを海中にきらめかせる。ほんの少しの光りの霍乱に覇志は目を細め、気にせず潜る。光りの中、見つけた箱の中には、残念ながら点数は入っていなかった。
少し歩いた岩場を探索するのはあやことレーゲンだ。何所に嵌っているのやら。打ち寄せる海水のきらめきを足に受けて見つけた箱には、残念だったが点数は無かった。
鮮やかなオレンジ、赤、黄、白。花が枝垂れて海へと向かう。そんな崖の上には宙華が、真っ白なスクール水着で立っている。『らいおんさんちーむ あ お い』と、2段に分かれて刺繍が入っている。
「あたしはライオンっ望んで崖から飛び出してみせるっ!」
後を追うように飛び込むのはヤヨイだ。なんとか行けるかと、花を散らして碧の海へと。花散る崖の下には、黄金の点数が眠っていた。
「I can fly!」
木々が覆う崖下へと、勢い良く飛び込んだのはオリガとハバキ。競うようにその後を、叢雲とアンドレアスが飛び込んだ。僅かに色の濃いその深みには、静かに眠るようにパールの点が勇敢な能力者達を迎えてくれた。
<ラグーン宝探し結果>
らいおんさん◇11点
うさぎさん◇◇10点
きりんさん◇◇8点
戦い済めば、そこは南の島。
からりと暑い陽射しも、徐々に弱まるそんな時刻。
「誰も怪我無くて良かった」
色々、心配しすぎだったかなと、仁は伸びをする。
「疲れましたね」
ヤヨイは持参の本を片手に木陰へと向かう。心地良い疲労が身体に纏わり付いている。体力には自信があったが、流石に疲れた。
「参加する事に意義があるのではなく、全力で行う事に意義があると思います」
結果を出す事が前提だけれどと、覇志は思う。
疲れなど何所にあるのかと思うぐらい元気な者も居る。
UNKNOWNは自慢の料理の腕を振るう。宙華が浴衣を着てそれを見ていた。
あやこは、スイカ割りにチャレンジ中だ。
「ティム・キャレイ。次も期待しているぜー?」
「はいですわ」
爆睡寸前のNAMELESSの声に、ティムが大きく頷けばレーゲンが笑う。
「疲れたけど楽しかったです。参加して良かったです♪」
海で取れたばかりの魚介類。食材や花火の類は総務課が用意してきていた。ジェラードを指定したのは叢雲。味を確かめると、仲間達に声をかける。
総務課職員’Sとティムと輪になって飲み続けているオリガは、何度目かのクールダウンに海へと飛び込み。やんやの喝采を浴びている。次は葡萄の新酒の頃ですかねと、へろへろの職員が笑い合い、お面つけて無い人が多過ぎましたとこぼした。前回、前々回を確認してきた者はすぐにわかったはずだ。そう、それは暗黙の了解で必須項目だったのだが‥‥。
「みんなで仲良く花火〜〜♪」
プルナが嬉しそうに声を上げる。
食事と花火が終わる頃。
朱莉はラムレーズンを食べながらシャッターを切りつつ首を傾げる、ふたり足らない。なつきとハバキはいつの間にか浜辺の向うへと。
「うー‥‥負けねぇ‥‥から‥‥な‥‥」
アンドレアスは、夢の中でも叢雲と戦っているかのようで。
南の島の夜は更けて行き。
総合得点
優勝**きりんさん◇32点
準優勝*うさぎさん◇25点
3位*らいおんさん◇14点
MVP*無し