タイトル:【DoL】駆け抜けろマスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 15 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/26 11:30

●オープニング本文


「一緒に飛ぶ奴この指止まれ」
「軍曹っ!」
 事務官が、へらりと笑ったデラードを睨む。悪い悪いと、悪びれず、ズウィーク・デラード軍曹が能力者達に声を掛けた。
 シカゴのを落とせたのは、幸いだった。しかし、拠点はすぐにバグアの攻撃目標となるだろう。ワシントンから増強されたヘルメットワームが波状攻撃をしかけてくる。その一波を防ぐ一角となって欲しい。
「簡単だ。だーっと飛んで、だーっと打ち落としてくるぞ」
 UPC軍も被害は少なくない。
 勢いをつけるために、先陣の一角を能力者に任せたいと言う事らしい。
「そうだな、5機も落とせば良いだろ。頭の固いおじさん達にもう一泡もふた泡も吹かせに行こうじゃないの」
 能力者達の戦功は大きい。
 それは、前回の名古屋防衛戦で、共に前線に出ているUPC軍関係者には十分知れていた。しかし、能力者達と戦った事の無い軍属は、どうしても良いイメージを持たないでいた。
「誰も落ちるなよ?」
 にやりと、デラードは笑った。

 交戦時刻は、湖の上になりそうだった。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
伊佐美 希明(ga0214
21歳・♀・JG
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
水理 和奏(ga1500
13歳・♀・AA
如月・由梨(ga1805
21歳・♀・AA
ブレイズ・カーディナル(ga1851
21歳・♂・AA
崎森 玲於奈(ga2010
20歳・♀・FT
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
伊河 凛(ga3175
24歳・♂・FT
ノビル・ラグ(ga3704
18歳・♂・JG
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER
ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
空閑 ハバキ(ga5172
25歳・♂・HA
大上誠次(ga5181
24歳・♂・BM

●リプレイ本文

 15機のヘルメットワームが、縦横に散会し、空の壁のように迫って来る。
 それに対するのは、能力者達の中央編隊ナイトフォーゲル──KV15機と、左15機、右15機で散開したデラード・ズヴィークが率いる精鋭部隊だ。様々な新型が投入されている。
 空で邂逅すれば、火蓋は切って落とされたも同様である。
 レーダーで索敵する時間すら、ほんの一瞬の事。
『らいおんさん、はりけぇぇぇええん!!』
 クラシカルな旋律を口ずさみつつ、敵影確認、邂逅時刻のカウントダウンを行っていたUNKNOWN(ga4276)の愛機岩龍『ブラックウィドウ』から、K−01小型ホーミングミサイルが、掛け声と共に発射される。全周波数に響き渡るその声を聞き、笑い出す者‥主にデラード。あきれ返る者、様々だったが、戦いの火蓋は容赦無く切って落とされる。
 やはり、同じ言葉を叫びつつ、UNKNOWNの岩龍を守るように、飛んでいる空閑 ハバキ(ga5172)のK−111からも攻撃の弾丸が飛んで行く。操縦能力はどうしたって、落ちるけど。そう、飲み込んで。ハバキにも思う事は沢山ある。でも、表には出さないで。屈託の無い明るい笑顔が仲間達の心を支える。
(「全周波数は、ちょっとと、思ったんだよっ!」)
 F−104のコクピットで軽く笑いつつ、呻くのは水理 和奏(ga1500)。別依頼でのチーム名が『らいおんさん』だった縁は今回の作戦にも深い絆となり続いている。UNKNOWNからは、ハバキと和奏へ、小さならいおんお面が手渡されている。
 こちらの攻撃が届くという事は、当然、ヘルメットワームの攻撃も届くという事だ。15機のヘルメットワームから、一斉に空を裂く、赤い光りが発射される。まずは、お互い弾幕という事か。初撃で被弾するような腕の者は、幸いにも居ない。ヘルメットワームにも、クリティカルな被弾は無いようだが、その弾幕の幾つかはヒットしている。わらわらと散開するヘルメットワーム。
 そうして、ヘルメットワームの攻撃により、陣形を崩されるが、能力者達は細かく編隊を組み込んであった。翼を捻り、攻撃を回避する彼等は、まずは4機事に別れる。そして、さらに、その4機は、2機1組として飛行するようにと、組みあがっていた。
 2機編隊をロッテという。ロッテとは隊長機が敵機に攻撃をしかけている間は僚機が警戒に当たり、隊長機が攻撃し終わると同時に、波状攻撃を敵機にしかけ、その間は、隊長機が警戒に回るという、広く知られる基本戦術である。そのロッテを2組にし、4機で組み、リーダー機の背後にロッテの片割れと、もう1組のロッテの指揮機、第2隊長で三角点を作り、第2隊長の後ろ斜め外に第2ロッテの片割れがつく。その編隊をシュヴァルムと言う。
 そう呼ぶのが楽ならばそれで構わないが、傭兵であり、能力者である彼等が組分けをどう呼ぶのも自由である。
 どう。
 振動音が、空に響く。
『藤田、ブレイズ、編成を立て直そう』
 初弾をヘルメットワームに叩き込み、伊佐美 希明(ga0214)は後方の異変に気がついた。紫色した光線が行き交う中、自身のシュヴァルムの後方ロッテの連携が乱れている。被弾したのだ。
『だいじょぶ、だいじょぶ! 目標を捕捉! ‥俺のロックオンから逃げられると思うなよっ!!』
 ノビル・ラグ(ga3704)のS−01から、スナイパーライフルD−02の弾が、接近するヘルメットワームを牽制する。
『あやこっ!』
『うっそーっ!』
 藤田あやこ(ga0204)のF−104と、ブレイズ・カーディナル(ga1851)のR−01が仲間達の連携からずれた。ブレイズは、その役割を理解していた。4機編隊で、後方からの援護、攻撃、離脱。伊佐美とノビルの組と、自分達の組。自分達の組では、藤田が、リーダーで、自分は後方だと。しかし、藤田は、藤田自身も自分達の組の後方だと思っていたのだ。どちらが、隊長機で、どちらが周囲を警戒する後方の僚機なのか。空中で軌跡を描いて位置を取り合う二人は、連携のとれた仲間達の中で、浮いてしまう。そこを狙われた。ぐっと、迫るヘルメットワーム。被弾した振動が、藤田とブレイズを揺るがす。だが、幸い、二人の機体は深い傷には至らなかった。
 ヘルメットワームのように、空中を自在に動く事は出来ない。一撃離脱して、体勢を整え、また突っ込まなくてはならないのが、不幸中の幸いだった。一端、仲間達と共に離脱すれば、後方から支援する遊撃のらいおんさんチームが居る。
「踊るよ、耶昊♪」
 その速度に物を言わせたヘルメットワームの追撃は、ハバキと和奏に妨げられる。被弾機を認め、追撃するヘルメットワームをさらに追撃するのはK−111。ぐっと加速し、注意を引けば、和奏が、火力に物を言わせて弾幕を張る。全てが当たりはしないが、動きを止め、行動を阻害するには十分過ぎる。
「8連装×3わかなロケット! プラスD2ショット!」
 藤田機、ブレイズ機被弾。その情報を確認しつつ、再び突入する如月・由梨(ga1805)のR−01。真っ赤な双眸がヘルメットワームを捉える。この戦闘が、次の戦いへと繋がるのだ。油断など、無い。軽い笑みが浮かぶ。
「このR−01、破壊力にはそれなりの自信がありますのよ?」
 易々と反転し、追いすがるヘルメットワームと擦れ違い様に20mmバルカンを打ち込んだ。バルカンといえども、由梨の機体の攻撃力は初期の能力値を大きく上回る。それは、ほぼ全ての能力者の機体も同様であった。バルカンに穴を穿たれたヘルメットワームが揺らぐ。
「あら‥?」
 かつての強敵も、攻撃が当たれば? という、感覚を由良は持った。
「フェンリル‥エンゲージ‥!」
 無傷のヘルメットワームからの紫色した光線は如月の部隊に襲いかかったが、そうそう当たるものでは無い。続け様にミオ・リトマイネン(ga4310)のS−013.2cm高分子レーザー砲がヒットすれば、もう、ヘルメットワームに移動能力は無い。錐揉みしながら、湖面へとその円盤が落ちて行く。額の中央に瞳状の紋様を浮かび上がらせているミオは、ふっと息を吐き出す。連戦。敵も必死なのだろうと、上下左右に動く次のヘルメットワームを視界に入れる。
「次行くぜ! いつまでも優位に立てると思うな、ワーム共!」
 由梨とミオの後を追い、R−01が、空を裂く音を立てて落ちて行くヘルメットワームの上空を飛ぶ。須佐 武流(ga1461)は、まだ、落としきってはいないヘルメットワームを素早く確認する。UK−10AAMが離れたヘルメットワームへと飛んで行く。全ての弾薬を撃ち尽くし、完膚なきまでに叩き落せば良い。武流は遠慮無く、レーザーも弾も放出する。
「釣りはいらねぇ! 弾は全部くれてやらぁ!!」
 単純な空戦。
 しかし、それ故に、機体の固体差が明確に浮き彫りになる。そうして、ヘルメットワームとの能力の差も。
 小型とはいえ、強化されつつあるヘルメットワームと、歴戦のKV‥この作戦に参加した能力者達の機体はほぼ互角だった。機動力はどうしてもヘルメットワームの方が高い。すぐに後ろをとられたり、接近を許すのは仕方ない。
 けれども。
 XN−01から、H12ミサイルポッドが発射される。追撃を回避し攻撃を集中させない。崎森 玲於奈(ga2010)が武流の動きにあわせるように機体を飛ばす。
「―――新たなる翼、新たなる剣を得て、渇望の王は飛び立つのだからな‥‥!!」
 その攻撃力は、ヘルメットワームを翻弄する。
 今の自分とならば、相手にとって不足無し。そう、玲於奈は思った。
 空を駆けて行くホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)のR−01は、混戦空域から、ヘルメットワームを引きずり出す。追いかける紫の光線を、機体を捻って、かわせば、気持ちが湧き立つ。一瞬の邂逅から、彼等の機体は鋼の軌跡を描いて乱れぬ布陣のまま、ヘルメットワームの間をかいくぐり、抜けて行く。
『スリップばかり!! トレオを踊っている気分だ!! 伊河、左へブレイク!!』
 踊る心と、その反面、ホアキンは仲間達の機体と、ヘルメットワームとの戦力差を測る。問題は、移動力だけかと、頷くと、機体を急旋回させる。あと僅かに迫ったヘルメットワームは、一瞬目標を失った。ホアキンに迫るヘルメットワーム上空には、伊河 凛(ga3175)がつく。
『来たぞ。後ろは任せろ』
 わざわざ出向いて来た第一波、必ず討ち取り、この先の勢いに繋げたい。快調なR−01の機器が、凛に大丈夫だと告げているかのようだ。
 戦火にさらされている湖に、これ以上何も落としたくは無いが、そうも言っていられない。ホーミングミサイルが、ヘルメットワームを襲う。誘導した背後をさらに、追うのは大上誠次(ga5181)のR−01と、時任 絃也(ga0983)のR−01。同じ機体で固まったせいだけでは無い。各々の役割をきっちりとこなしているからこその、有利な戦闘となっている。
「常に冷静であれ、一瞬のミスが自分の仲間の生死を分ける、思考は冷たく心は熱く‥」
 岩龍の支援範囲を気にしつつ飛ぶ時任が、釣り出されたヘルメットワームに照準を合わせる。慣性を無視し、好き勝手に空で方向を転換するヘルメットワームだが、好き勝手に飛ぶからこそ、生まれる隙もある。武器へのエネルギー付与を一時的に高め、3.2cm高分子レーザー砲を寸前に打ち込めば、すぐ後を大上の短距離高速型AAMが狙う。
 空を何時までも占拠させるつもりなど無い。大上は、漆黒の毛並みを震わせて薄く笑う。数は多いが、どうやら勝敗は見えてきた。
「ようし、いい子だ。避けるなよ‥?」
 常に周囲に気を配り、背後から迫るヘルメットワームが居ないかどうかまで、攻撃時点で読み取り、波状攻撃をしかけた大上と時任のR−01が攻撃をしかけたヘルメットワームから離脱する頃には、機首を返した凛とホアキンが戻ってくる。


 体感時間は、非常に長く感じた。

 けれども、空を飛び、戦っている時間としてみれば、そう長い時間では無かったろう。

 帰還する。おつかれさん。という、ズィークの声が各機に届けられた。

 帰還する編隊は、ほぼ無傷。

 15機編隊が3部隊、湖の上空を旋回して帰還する。


「よう、相棒。まだ生きてるか?」
 誰に言うとも無く、大上が呟く。コクピットから見る空は、戦闘前も後も、何も変わらず、笑みがこぼれ。守れた空を、目を細めて凛が眺め、終わったかと玲於奈が息を吐く。
「‥ふぅ‥シャワー‥浴びたい‥」
 短時間の戦いだったが、緊張はほぐれない。とりあえずはと、ミオは思う。まだ、戦いは終わらないけれど。
 機動の限界を超えれたろうか、そう考えつつ、武流が笑う。
「さっさと行って、パッパッと片付けれたか?」
「疾風怒濤の時間だったな」
 強化はしてあったろうが、小型ヘルメットワームは、移動速度と攻撃に気をつければ‥。ホアキンは、戦果を検証して、くすりと笑う。機体に乗っていては、風は感じられないが‥。
『‥ライオンさん夫婦の愛は今回も強かった、な』
『アフロ無しでは語れない訓練をこなした仲だもんな☆』
 UNKNOWNが、含み笑いをしつつ、気の置けない仲間に声をかけつつ、UPC軍の回線に、困った時にはらいおんさんを呼べと、何故らいおんさんと首を捻る者の多い謎の言葉を残せば、ハバキが感慨深げに、でも、楽しげに、うんうんと頷く。
『軍曹さんたちも無事でよかった! これからも、一緒に戦っていこうね‥!』
『お〜う。頼りにしてる』
 和奏の呼びかけに、デラードの、のんびりした声が返る。後でビールなどどうかと聞くUNKNOWNにも、もちろんだと声を返していた。深読みは、まるでし無さそうなのにと、和奏はデラードの真意を考える。能力者の傭兵が軍属と歩み寄れるようにと、誘ってくれたのかもしれないと。それこそ、聞いても答えは返らないだろうけれど。
 新型機も多く、軍属のデラード達KV部隊は、そつの無い攻撃だった。
 ノビルは、垣間見たデラード達の戦いに、軽く口笛を吹いたほど。久し振りっ! と声をかければ、ちったあやるようになったと返事が返る。デラードは、とらえどころが無い。
 けれども、いつかは、そんな漢なってみたいと、にっと笑った。
『‥貧乏性だから、無駄弾撃つのが苦手でね』
 希明の言葉に、良い腕だったと、デラードからの返信が。自身の腕を見て貰えたのかと、口元に笑みを浮かべ。
「‥ビフォア・アフターにならなかったかしら‥」
 あやこが呟く。空戦は苦手だった。今回こそ、綺麗に決めてみせたかったのに。反芻する攻撃の方法は、有効なものが多い。しかし、最初の位置取りが、尾を引いた。
「戦いはここだけじゃないさ」
 次こそは、機体の性能を全て出し切る。ブレイズのR−01は、飛び抜けている。その性能全て良い目が出れば。
「まだ、終わりませんけれど」
 戦いは、まだ収束する様を見せない。由梨は、ほうと溜息を吐く。
『酒盃と洒落込みたいが』
 やれやれと、軽く首を捻った、時任の言葉に、デラードはじめ、飲める者は賛成の声を上げた。

 空を駆け抜けて──能力者達は戦果と共に帰還する。