タイトル:【OD】増援阻止指令マスター:いずみ風花

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/07/09 09:43

●オープニング本文


 ――熱砂戦線。
 そのように表現しても差し支えない程、アラビア半島戦いは熱く、そして広がりを見せつつあった。
 バーレーンより上陸を果たしたUPC軍は、強行偵察時に入手した敵前線基地『アルカルジ』を目指して進軍。電撃作戦を掲げたかのような移動スピードを見せるUPC軍に対し、バグア側も徹底抗戦を決意。バグア軍はアルカルジに向けて主力部隊の移動を開始する。

 砂にまみれた地に相対する両軍。
 アラビア半島の趨勢を決する戦いの幕は、今まさに上がろうとしていた。


 UK3。三番艦轟竜號には、次々と部隊が飛来していた。
 整備班もひっきりなしにKVの周囲、甲板と格納庫を行き来している。
「来たぞ」
 誰かが呟いた。
 綺麗なアプローチ。六機のKVが滑り込んできていた。 ズウィーク・デラード(gz0011)軍曹のスカイフォックス隊だ。
「よ、今回はよろしく頼む」
「整備中の場所は各子機へと転送してあります。そこは立ち入り禁止ですから、よろしくお願いします」
 常に整備中のUK3には多くの立ち入り禁止区画がある。鳴島成一と名乗る整備員へと、デラードは何時もの様に軽く手を振る。
「了解、了解〜」
「‥‥」
 と、表情が引き締まるのを見て、デラードは軽く肩を竦めて笑って見せた。
「だーい丈夫だって、行きゃしないからさ」
「そう願います」
 声が固い。
 挑むような、ぶっきらぼうな低い声。
 困ったねと心中で笑いながら、デラードは頭をかけば、後方から声がかかる。
「お疲れ様ですデラード軍曹、あちらの区画にて、ミーティングが始まるそうです」
「お、サンキュ」
 広瀬健太郎と名乗る整備員の穏やかな物言いに、デラードはふっと息を吐くと、再び軽く手を振った。班長なのだろう、不機嫌そうな鳴島が、一言二言広瀬にかけられ、硬質な雰囲気が緩むのを横目で見て、デラードはくすりと笑った。
 KVの合間を抜けて広い甲板を歩いて行くと、今まさに出撃準備の整った軍人が、デラードを見て立ち止まった。
「砂漠に来たらデザート軍曹‥‥」
「上手いねぇ」
 挨拶よりも先に、ぽろっと口を滑らせたのは御武内 優人(gz0429)。UPC東アジア軍配属のパイロットだ。慌てて挨拶をする優人へと、挨拶を返し、笑いながら近寄ったデラードは、優人を軽くどついた。
「苛め反対ーっ」
 悪びれない優人へと、デラードはぐりぐりとこめかみに拳を押し当てて、さらに笑う。
「馬鹿野郎。これは、愛情だ。愛情」
「痛い愛情いらないですーっ!!」
「今日はこのくらいにしてやる。急げよ? 仲間が待ってるぞ」
「軍曹が止めたんじゃないです‥‥か‥‥いや、もう何もいりませんからっ!」
 拳を鳴らしたデラードのイイ笑顔に、優人はじりじりと後退する。
「遠慮するな。戻ったらたっぷりご馳走してやる」
「あー、じゃあ俺らが上手くやれたらアイス奢って下さい、デザート先輩」
「‥‥おう! 死 ぬ ほ ど 食わせてやる」
 行ってきますーと、優人が、デラードに負けず劣らずケロリと笑いながら出撃するのを見送り、デラードはミーティングルームへと顔を出した。

「ま、俺達の任務は簡単だ。二手に分かれる。一方はここ」
 モニターに映るのは、バーレーンから南西に当たる『アルカルジ』。
「ここから出てくる砂漠の盗賊の皆さんをだな、お出迎えだ」
 地上部隊が、対空砲を破壊する手はずになっている。
「で、ここから、盗賊の皆さんの増援が来る訳でだな、これをお出迎え」
 再び指したのは、『アルカルジ』から見て、北東にある『クウト』。
「砂漠のお姫様、探しに行こうじゃないの」
 デラードはいつものように、簡単だと言わんばかりに笑った。

●参加者一覧

白鐘剣一郎(ga0184
24歳・♂・AA
アルヴァイム(ga5051
28歳・♂・ER
シリウス・ガーランド(ga5113
24歳・♂・HD
ロジャー・藤原(ga8212
26歳・♂・AA
ラウラ・ブレイク(gb1395
20歳・♀・DF
キリル・シューキン(gb2765
20歳・♂・JG
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
ウェイケル・クスペリア(gb9006
12歳・♀・FT
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG

●リプレイ本文


 アルカルジ上空での戦いを横目に、クウトからの増援を危惧した配置につく傭兵達も居た。
 砂漠の単調な色合いが眼下に広がる。空は何処までも青い。

 クウト方面からの増援は、すぐに目視が効く距離にまで接近していた。
「偵察するまでもないっぽい? 見えてるし。HW。地上からはRCとゴーレムかな? 空戦が終わる頃には地上部隊と会適。ゴーレムはけっこう散会してるっぽい」
「そのようだな」
 夢守 ルキア(gb9436)は、骸龍、イクシオンで先行偵察にと思った。ルキアが偵察に向かうのならばと、アルヴァイム(ga5051)は骸龍の護衛を買って出ていたが、交戦は目の前だ。ならばと、ノーヴィ・ロジーナbis【字】をルキア機の前に出るように飛ばす。
「そうそう当たる距離じゃないけど、回避を忘れずに」
 プロトン砲の射程は長い。回避を心がけるだけでも、かなり違う。ラウラ・ブレイク(gb1395)は、仲間達に声をかけつつ、フェニックス(A3型)Merizimを降下体制に持ち込んだ。
「全機タイミング合わせて。カウントよろしく」
「了解だよーっ。空戦から降下の人はも少し待って」
 ルキアが、ゴーサインを出す。
 地上からの敵も確認した。クウトは砂嵐で守られている。陸戦部隊が多い事は知れていた。なれば、降下は必須。だが、砂嵐の届かない、アルカルジ近辺では、高空に上がるHWも少なくない。
 ラウラ機が減速。
「んじゃ、後よろしく」
「‥‥降下開始する」
 アンジェリカ、Murmurも降下して行く。ウェイケル・クスペリア(gb9006)。キリル・シューキン(gb2765)グローム、Гром。
(この地を蹂躙したその対価、その手首を置いて払ってもらおう、盗賊め!)
 何処か無表情に機体を操りながら、キリルは目の前の敵を睨み据える。

「敵のアルカイジ到達を阻止か。レックスキャノンとゴーレムは確実に叩いておきたいな」
 シュテルン・G、流星皇をぐっと前面に押し出したのは白鐘剣一郎(ga0184)。 
「さて、あちらの味方に迷惑かけないようにしましょうか〜」
 御守 剣清(gb6210)が、オウガ、鬼吼刃牙を剣一郎の後方へと位置して飛ぶ。
「一戦交えてからか」
 剣一郎の後方、剣清と対になるように、ロジャー・藤原(ga8212)がシラヌイ・S型、虎徹を飛ばす。
 所属小隊【装甲騎兵隊【迅雷】】は、空挺部隊だ。降下のタイミングを見極めようとHWの出方を伺う。

「じゃあ、行きマス。ルキア殿、吾輩は手薄な方へと回りマスネ」
「了解〜。んじゃ、シリウス君も同じ方向へ行ってねっ!」
 降下する仲間達を見て、ラサ・ジェネシス(gc2273)フェイルノートII、Queen of Nightが、やって来るHWの数の少ない方角へと、機首を向ける。
「了解した」
 敵の広がりと仲間の位置をルキアは各機へと送り続ける。シリウス・ガーランド(ga5113)は、ラサ機と並ぶように、スピリットゴースト、フレスベルグの機体を傾がせる。

 三機が流れるように降下。それに合わせ、HWが高度を下げる。
 だが、空に残っている七機がそれをさせない。
 プロトン砲が七機を襲う。
 だが、プロトン砲に注目する仲間も居り、ラウラが声をかけていたこともあり、受けようと前に出る剣一郎機やアルヴァイム機も居り、酷い被弾を受けたものは無い。
 淡紅色の光線をかいくぐり、七機はHWへと迫る。
「援護しマス」
 K−02が雨の如く降り注ぐ。ラサ機だ。続け様に、スキルの乗ったK−02が、飛ぶ。初撃は降下するHWの足を止めるに留まったが、ぐっと機首を返したラサ機からの攻撃は、留まっていたHWへも降り注ぐ。
 細かな爆発が幾つも上がり、HW三体が、制御を失い、爆炎を上げて落下して行く。
 プロトン砲が左翼に直撃する。シリウスは目を細める。
 衝撃が伝わる。だが、未だ飛行は可能だ。
「我が翼が運び行く風、思い知るがいい」
 AAMが飛ぶ。
「さあ、喰らうがいい」
 ラサ機からの攻撃がシリウスへと迫るHWへも向かっている。ほぼ同時に着弾し、爆炎を上げる。
「ペガサス、エンゲージオフェンシブ!」
 プロトン砲を軽く避け、もしくは受け流した剣一郎機は、スキルを乗せた機体を駆けさせ、ライフル、レーザー、続け様に五体のHWが爆炎を上げる。
「プロトン砲は全部のHWから発射済‥‥えっとねえ、残るHWは‥‥無いよっ!」
 ルキアが、笑い出しながら言う。
「二次降下、行けそうですね」
 アルヴァイムがが、周囲の状況を確認しつつ、仲間達に声をかける。
「思った以上に早くケリが着いたな。後は任せる」
 剣一郎も笑み含みで空に残る仲間に声をかけて、降下を開始する。
 剣清、ロジャーが剣一郎機の後に続いて、降下を開始する。
 
 降下する三機を見送りながら、アルヴァイムが顔を上げた。
「招かれざる客か」
「だねーっ。アルカルジ方面から、敵接近だよーっ」
 ルキアが仲間達に配信したのは、アルカルジ方面より抜けて来た空戦型HW五機。
 そして、無数のキメラがやってきていた。


 地響きを上げて迫ってくるRCは五体。
 先に降下した三機のKVが、降下してくる三機を援護すべく、前に出ていた。
「さて、十分な歓迎をしないとね」 
 ラウラが機体スキルを発動させた。
 RCから、プロトン砲が飛んでくる。長い射程だ。

「シリウス君は、アルヴァイム君と、アルカルジ方面からのHWに回ってねっ」
 ルキアが敵と味方の配分を見て声を上げる。
「生き残りのHWが居れば無視は出来ぬか」
「爆撃開始しマス。気を付けてくだサイ」
 ラサ機がぐっと高度を下げていた。急降下だ。
 二体のRCが、ラサ機を狙い、三体が、先に降下した三機へと砲台を向けている。
 緑と赤の二体がプロトン砲を打ち上げた。
 同時に、ラサ機からはフレア弾が投下される。
 灼熱の爆炎。
「一撃離脱デス」
 KVの腹にプロトン砲を受けてはいたが、未だ飛べる。ラサ機は機首を返して上昇を開始する。
 二体のRCは深いダメージを受けている。三体のRCが手傷を負っていた。

「一匹も通さないつもりで!」
「当然だな。一匹も残さぬつもりで狩るぞ! ダバイ!」
 キリル機が盾を構えながら、ブーストをかける。
 KV周囲の砂が巻き上がり、砂塵が舞う。
 ブーストで接近したラウラ機から、多連装機関砲が撃ち出される。その攻撃だけで、RCは砂漠へと沈む。
 抜き放った機剣と練剣。縦横に切り伏せる。咆哮を上げたRCが前脚でラウラの機体を捕まえようともがくが、なすすべもなく機動を停止する。
 振り払うラウラ機。
 よたよたと走り込んできた、RCを見て、後方から、援護射撃をしていたウェイケルがぐっと前に出る。
「赤となれば、行かせてもらおうかな」
 オメガレイを撃ち放つ。凄まじい力の乗ったその光線は、RCを貫く。咆哮を上げたRCは、そのまま、砂漠に倒れ、半ば埋まる。
 先に、プロトン砲を盾に受けたキリル機は、ぐっと押し戻されていた。
 砂に愛機の足が僅かに埋まる。大きなダメージではあるが、動けない程では無い。
「やっかいだが‥‥」
 軽く頭を振ると、キリルは、再びブーストをかけて、砂から脱出する。激しく砂が舞い上がった。
 迫るRCへと、至近距離から、重機関砲を撃ち込むと、機剣に機体ごとのしかかるかのように切り込む。
 RCの前脚がキリル機を吹き飛ばすが、RCもかなりなダメージを受けているようで、足元がおぼつかない。ぐらりと、傾ぐと、砂を蹴散らしながらゆっくりと起動を停止した。

 抜けてきていたHWは、フェザー砲でのみ攻撃してきていた。
「そう易々とここは通さぬ」
 アルヴァイムは、ルキア機を庇うような射線で、ブーストをかけて迫ると、フェザー砲は難なく受け流し、ブリューナクを撃ち込み、さらに機首を返してチェーンガンを撃ち込む。HWに穴が穿たれ、二機が機動を停止すると、爆炎を上げて落下して行く。
「キメラが邪魔か」
 ロケット弾を撃ち込むのは、シリウス機。傷だらけのHWに着弾すると、爆炎を上げて落ちて行く。
 シリウスは、キメラへとガトリングとキャノンを撃ち込む。
「後一機! の所で、クウトからのキメラとそろそろ到着だよっ」
 ルキア機は、ロングレンジライフルでHWを狙い撃つ。穴が穿たれたHWは、ぐらりと傾いだフェザー砲を発射しながら、くるくると落下して行き、地上付近で爆発を起こす。
 ラサ機が戻る。


 キメラが騒がしい。
 その合間に、シリウスが最後のHWを落としていた。
「下の仲間達が気にかかる」
 地上に降下した仲間達は、点在するゴーレムを相手取る事となっていた。
 反転したアルヴァイムが、キメラを屠って行く。
「ばらけてるよーっ。端っこの奴が抜けて行くよ」
 キメラを撃ちながら、ルキアが地上の仲間達へと、ゴーレムの位置情報を送り続ける。
「中々、多いデスネ!」
 ラサは、ルキアにキメラの群れの密集地を聞くと、その方向へとK−02を撃ち込む。
「これ以上の増援は、無さそうか」
 アルヴァイムが着実に、キメラを減らして行きながら、周囲へと気を配る。

「一応本職としちゃあカッコ悪い姿は晒せねぇよな」
 僅かに金属音が響く。滑らかな駆動。機体が人型に変形する。
 砂漠へと僅かに足が埋まる。吹き上がる排気。ロジャーはかるく口元に笑みを浮かべる。
 先に降りた仲間達のおかげで、難なく降下が完了する。
 と、同時に、ゴーレムが目前に迫っている。RCを屠った三機は、さらに前にと出ている。
 ゴーレムは横に広く、アルカルジへ向かい、展開をしていた。
 固まっていないという事は、抜けられやすい。しかし、逆に言えば個別撃破の格好の相手であった。
 二体のゴーレムから、淡紅色の光線が伸びる。
 かわすとラウラ機がブーストをかけて突進する。
「一匹に惑わされず、全体の動きを見て!」
「残りはゴーレムかッ! その名の通り土くれに還れッ!」
 キリル機が、ブーストをかけ、盾を構えながら、近いゴーレム目がけて突撃する。
 プロトン砲が叩き込まれるが、かわせた。
 そのまま接近すれば、フェザー砲が襲う。キリルも重機関砲を叩き込む。ゴーレムがサーベルを構える。そのゴーレムへと、機剣を構え、近接でレネードランチャーを叩き込んだ。派手な爆発が上がり、キリルも後方へ吹き飛んだ。砂がぱらぱらと振ってくる。襲いかかってくるキメラを機剣で薙ぎ払う。起き上がれば、ゴーレムもその体を起こそうとしている最中にに見え、構えるが、ゴーレムは手を突き出したまま、動きを停止していた。
 ブーストで、抜けようとするゴーレムをめがけて、追い縋るのは剣一郎機。
「行くぞ、流星皇!」
 砂塵が舞い上がる。
 プロトン砲をかわし、剣一郎機は、機槍を叩き込む。受けようとしたゴーレムはそれに間に合わず。引き抜き様、剣一郎は再びブーストをかけて、もう一体のゴーレムへと向かう。途中、襲いかかるキメラをなで斬りにしつつ、横合いから来るプロトン砲を受け長し、再び、相対するゴーレムへと機槍を叩き込めば、一撃でゴーレムは砂へと埋まる。
「‥‥残りは何機だ?」
 剣一郎が呟いた。
 プロトン砲をかわしながら、ロジャーは迫るキメラへとバルカンで蹴散らしながら、ブーストをかけ、ゴーレムへと接近する。砂塵を巻き上げたロジャー機が、僅かに光り、光輪を纏う。 
 紫色のフェザー砲が、ロジャー機にダメージを与える。ロジャー機も、バルカンで応戦。ゴーレムがサーベルを構える。金曜日の悪夢を振り上げるロジャー機。
「させねえよっ!!」
 金属のぶつかり合う音が響く。
 キメラがロジャー機へと、何体も攻撃をしかける。酷いダメージにはならないが、気が削がれがちになる。
 小さく舌打ちすると、ロジャーは、目の前のゴーレムに集中する。
 踏みしめた足元が砂に埋まる。
 機盾でサーベルを受け止め、辛くも力押しで勝ち抜いたロジャー機が、そのまま金曜日の悪夢をゴーレムへと叩き込む。ゴーレムが砂漠へと破壊音を響かせて叩き落ち。
 取りすがるキメラを唸りを上げたチェーンソーが吹き飛ばした。
「無人機か‥‥なら、遠慮はいらねぇな!」
 スキルを乗せた動き。
 剣清機は、プロトン砲をかわして、ゴーレムに迫る。フェザー砲が襲いかかるが、これもかわす。手にするのは機刀・新月。抜き放たれた、黒く光るその刀身を、サーベルをふりかざすゴーレムの腹へと振り抜いた。重い手応え。機械のはじける音がする。金属がめきめきと切り裂かれる。
 爆風。
 僅かに、機体が傾ぐが、堪える。砂塵が舞う。
「邪魔だ」
 剣清は、襲いかかってくるキメラを横薙ぎ切り裂き、吹き飛ばした。砂漠に点々と屍が積み上がる。
「多けりゃいいってもんじゃないでしょ」
 ウェイケルは、ゴーレムとキメラへ向かい、ライフルを撃つ。
 プロトン砲をかわし。フェザー砲は多少受けたが、ダメージは軽い。
 光線は、キメラを一瞬にしてただの物体と変える。
 ゴーレムは砂塵を巻き上げ、動線を塞ぐウィルケルへと向かっていた。
「あんたも抜けて行かれると困るのよね」
 ゴーレムへと、三発の光が飛ぶ。凄まじい威力を誇るその攻撃。
 かくりとゴーレムが操り人形の様な動きで、膝を突き、砂漠へと前のめりに倒れ込んだ。
 バチバチと機械の壊れる音の後、ぴくりとも動かなくなる。
「さて、未だ居るわよね」
 ウィルケルは、周囲を見渡した。
 砂塵がもうもうと立ち上がていたが、徐々に収まってきていた。
 その砂漠に立つのは。

 お疲れさんと、デラードからの通信が入った。
 傭兵達は、ほぼ全ての敵を食い止めていた。
 僅かに逃げたキメラは、すぐにUPC軍が退治するだろう。
「皆、大丈夫そうだな?」
 剣一郎が、仲間を気遣い、声をかける。
「お疲れサマデス」
 ラサが笑顔で答える。
「‥‥帰還か」
 アルヴァイムが目を細める。
「何とか、ケリつきましたか」
 剣清が、静かな笑みを浮かべた。
「持ちこたえられたという事だな」
 シリウスが静かに呟く。
「随分と‥‥長い間戦った気がするな」
 砂塵が倒れた敵を大地に呑みこむかのように動く様を見て、キリルが息を吐いた。
「報酬分は十分に働いたという事だね」
 軽く肩を竦めるのは、ウェイケル。
「アイス食べてーな。アイス。ソーダかコーラ。こう、がりがりっと」
 ロジャーの声に、デラードが反応した。
「嫌って程差し入れてやるから待ってろ」
「あ、私大食いだから大丈夫ー。チョコミントで!」
 任しておけと、ルキアへデラードの笑い声が届いた。
 戦いの風向きは、久し振りに良い風向きとなっていると、ラウラは笑みを浮かべた。
「他の戦線にも追い風を届けましょう! 敵には大嵐を、ね」


 砂漠のバグア拠点アルカルジは、UPC軍が徐々に制圧。
 様々な戦いの決着が砂漠の果てにつこうとしていた。
 敵本拠地はクウト。
 UPC軍は、時をおかずに攻撃を開始する事となる。