タイトル:【SL】甘い休日マスター:いずみ風花

シナリオ形態: イベント
難易度: 易しい
参加人数: 21 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/02/26 01:59

●オープニング本文



「よう」
「どうも」
 ズウィーク・デラード(gz0011)とアジド・アヌバ(gz0030)は、UPC本部内に沢山ある、休息室のひとつで顔を会わせた。手にそれぞれ飲み物を持つと、何となく向かい合わせに同じテーブルにつく。
 紙コップをテーブルに置いたデラードが、背もたれに背と両手を左右に伸ばし、思い切り幅を取ったかんじで、あーとか、うーとか言う感じで天井を見上げ。アジドは、いつも通り変わらぬようでありながら、何となく落ち着かなさそうに紙コップのコーヒーを口にする。
 すこーし前までは、お互い誘い合ってナンパに繰り出す仲間であった。
 が。
 ほんのすこーし前に、お互いに、彼女が出来たりしたのである。
「なあ」
「はい」
 軽ーい沈黙。
「そういえば、おめでとうございます」
「そーいうお前さんも?」
「ええ。まあ」
 そして、また、軽ーい沈黙。
「マジな話、まじめに付き合うって、初とかな訳だ」
「奇遇ですね」
 何か、二人の間に飛んだ。真っ白なカラスだったかもしれない。
「やっぱりあれかね、初デートは、公園とかが妥当か」
「‥‥良いですね公園」
 何となく、言葉の裏で、一緒にデートに誘おうかという流れが出来上がったりしたのだった。
 んが。何と言っても、彼女達は傭兵である。
 時間の都合がつくかどうかは、限りなく不明だったりもした。
 とりあえず、LHの図書館脇の小道を通り、広場に出ている屋台を冷やかすのが定番かと。


「ちょっとした、慰労会を致しますの」
 UPC軍総務課ティム・キャレイ(gz0068)が、本部でにこにこと手を振っている。
 時期が多少外れてしまったが、外れてしまったなりに、楽しい事がある。
 そう、バレンタインデーだ。
「私としましては、カップルなんて海の藻屑になってしまえとか思いますの。でも、この時期になると、様々なチョコが出回り、食べる側の楽しみが増えますの」
 そこで、ケーキバイキングならぬ、LH(ラストホープ)内のお菓子屋さん、チョコレート試食の旅が計画された。
 ばばんと、ドピンクのハートの中に、UPC軍のマーク。子供の顔ほどもあるステッカーが貼られたお店ならば、何処でも一品が無料で食べられるのだ。
「『しろうさぎ』さんも、協賛いただきましたの。そこでは、お好みにチョコケーキをアレンジして頂けるそうですの。オレンジピールに似た、柚子ピール付きだという事ですの」
 カップルさんでも、お一人様でも、グループでも。
 チョコ嫌いでなければ、美味しいチョコを食べると幸せになるものだ。
「こぞってご参加くださいませ」
 ティムが、ちらりと目の端に入った友人二人を見て笑ったのに、彼等は気が付いただろうか。

●参加者一覧

/ 里見・さやか(ga0153) / 煉条トヲイ(ga0236) / ノエル・アレノア(ga0237) / 鯨井昼寝(ga0488) / ケイ・リヒャルト(ga0598) / 叢雲(ga2494) / レーゲン・シュナイダー(ga4458) / ミハイル・チーグルスキ(ga4629) / 守原クリア(ga4864) / 鐘依 透(ga6282) / 九条院つばめ(ga6530) / 不知火真琴(ga7201) / 守原有希(ga8582) / ティリア=シルフィード(gb4903) / テト・シュタイナー(gb5138) / 龍鱗(gb5585) / エイミー・H・メイヤー(gb5994) / ファリス・フレイシア(gc0517) / エスター・ウルフスタン(gc3050) / 那月 ケイ(gc4469) / 秋姫・フローズン(gc5849

●リプレイ本文


「LH内の菓子家で、チョコレートの無料試食‥‥だと!? これは、何が何でも参加しない訳には行かないな」
 思わず気合が入ったのは煉条トヲイ(ga0236)。
 食べ放題ではないのが非常に残念ではあるが、参加せずにはいられない。すかさず、登録。
「慰労会と銘打ってはありますが、実際はチョコ食べ歩き会‥‥?」
 くすりと、九条院つばめ(ga6530)はモニターを見て笑う。
「チョコの試食、ねぇ」
 叢雲(ga2494)は、本部モニターを見て手を顎に当てる。
(こういうの好きそうだし折角だから誘ってみますかね?)
 個人的にも、色々なチョコを食べてみたい。よしそうしよう。
 かる〜い気持ちで、叢雲は、長馴染みへと連絡を取れば、二つ返事でOKが取れる。
 まあ当然でしょうと言わんばかりに頷いた。

 前日の夜。不知火真琴(ga7201)は、自室で明日の準備をしていた。
 だが、何だか落ち着かない。
 こういうイベント事は、いつも自分が率先して幼馴染を連れて行くのに、今回は向こうからのお誘いだ。
 これはちょっとばかり覚えがある。何時かあったあれは。
「あれ?」
 ざーっと、血の気が引き、口を手で抑える。ぶわっと全身から嫌な汗。
(もしかして、これって所謂デート? ってヤツなの?)
 首を横にぷるぷると振る。
 いやいや。でもでも。だって。
(絶対無いよ!)
 わたわたと真琴はクローゼットを開き、何枚か服を握り込むと、鏡の前で固まった。
(‥‥ありなの? それって、ありなのーっ?)
 頑張れ乙女。
 いやその。
 当日はからりと晴れた良い日和。
 黒い物体。
 いや、叢雲がぼんやりと待ち合わせ場所で真琴を待っていた。
 ジャケットにジーンズ。全て黒。
 脳内では細かく気になる店をピックアップ中。煙草に火をつけると、軽くふかし。
 ゆるりと紫煙が穏やかな空気に溶ける。
 見間違えなどしない叢雲の何時もの姿を見て、真琴は心中で、う”−とか、あ”−とか唸っていた。
 昨日からさんざっぱら悩んで結局いつもの様な服装になったはいいが、ほんの少し、香水をつけた。
 ほんの、すこおおおおおおぉし。
 だから気が付かないはずなのだ。気が付かなくていいし。
 真琴の気配に顔を上げた叢雲は、さてとばかりに移動しようとして、軽く首を傾げた。
 何時もと変わらぬ真琴に感じた違和感は香り。
「真琴さん、今日は香水つけてるんですね。よくお似合いですよ」
「!!」
 条件反射というか、はずみというか真琴はつい叢雲を連打する。
 こう、ぽかすか、べしべしと。
(‥‥何故、殴打されるのでしょうか‥‥)
 叢雲は真琴の連打に苦笑するが、まあ、照れ隠しなんだろうと、あっさり許容。
 気が付かなければ、このいたたまれない感じなんて消えたのにと、真琴はそんな可愛らしくも理不尽な事を思う。
「行きますよ」
「‥‥」
「行 き ま す よ」
「‥‥はい」
 全く変わりのない叢雲に真琴は、何時もの様に完敗して、叢雲チェックの最初のお店へと向かうのだった。

 エイミー・H・メイヤー(gb5994)は、レーゲン・シュナイダー(ga4458)へと、四色トリュフチョコレートを手渡す。気合いっぱい入れた本命チョコレートだ。それが本命チョコレートだとはきっとレーゲンは気が付かないけれども、それで構わない。これ以上無いくらい、優しい笑みを浮かべると、エイミーはじゃあなと手を振る。
 幸せそうに笑うレーゲンが眩しくて、少し目を眇めて、踵を返す。
 デラードに言いたい事が沢山あった。
 大好きな幼馴染がどれほどクリスマスに辛かったかを言いたかった。
 レーゲンへと、向かうデラードの姿は見つけた。
 けれども、デートの邪魔をする気はなかったから。ぐっと拳を握る。
(なんだか悔しくて泣けてきそうなのはなんでだろう?)
 レーゲンが今幸せな顔をしていればそれで良いのに。
 握り込んだ拳は、デラードに向けたかったのか、自分へと向けたかったのか。
 協賛店を渡り歩いていると、ティムに遭遇した。
「ちょっと傷心なんだ‥‥いまだけハグさせてくれ」
「それは構いませんの」
 いきなりのハグにも、ティムはぱむぱむとハグ返してくれて、エイミーは長く深い息を吐き出す。
「いけませんの。美女は何時も笑顔で無ければ?」
「ティム嬢‥‥」
 くるりと頭に巻かれたのはウサギリボン。クリスマスとかのお礼ですのと、ティムがころころと笑うのを見て、エイミーはごそごそとトリュフチョコを取り出す。
「友チョコだ」
「はうっ」
 猫型BOXに心を射抜かれたティムを見て、笑みを浮かべた。
 まだ少し寂しいけれど。
 それは時が癒してくれるだろうか。

 エイミーはいつも優しいと、チョコを手に、レーゲンは穏やかに笑う。
 顔を上げると、手を振るデラードを見つけて、レーゲンは小走りで駆け寄った。
「手、つないでもいいですか?」
「嫌」
「えっ?!」
「うそーん」
「!」
 くるくる変わるレーゲンの表情。
 ぎゅっと握られた手に、レーゲンが温かいと笑えば、デラードの深い笑みが返る。
 連れ立って歩く公園。風が心地よい穏やかさ。
 先ほど言葉を交わしたアジド達を思い出し、レーゲンは穏やかな時間に幸せな溜息を吐く。

 ケイ・リヒャルト(ga0598)とミハイル・チーグルスキ(ga4629)は、腕を組み、ゆったりと公園を歩いていた。
「‥‥」
 腰を抱き寄せられて、ケイはミハイルを見上げると、柔らかく息を吐き出す。
「二人きりというのも久しぶりだね?」
 子猫の様に身を寄せるケイをミハイルは優しく見下ろす。
「こうしているだけで幸せ‥‥」
 長身のミハイルの胸に丁度額が当たる。こつんともたれると、ケイがくすくすと笑う

 里見・さやか(ga0153)は、緊張していた。
(で、デート‥‥なんですよね、これ‥‥緊張します‥‥)
 そして、龍鱗(gb5585)も緊張していた。
(さて‥‥相変わらずデートとかに慣れないけど、どうしよう)
 顔を見合わせた二人は、とりあえず途方に暮れた。
 柔らかな風が、背中を押すように吹き抜ける。
「そういえばステッカー貼ってあるところは一品無料‥‥だっけ? 食べ歩きもいいかもしれんな」
「チョコレートの美味しいお店とか、私知らないですよ」
 龍鱗が、首を傾げると、さやかがぽつりと呟く。
 僅かな沈黙。
「とりあえず、歩こうか」
「はい。あ! あの‥‥」
 さやかが、道行く人へと、美味しいお店を聞き込めば、何店か、必ず上がる名前があった。その様を、龍鱗は、深い笑みを浮かべて見守り、ふたり、ゆっくりと歩く。
 こじんまりとした喫茶店が見えてくる。
「あ‥‥鱗さん、あの喫茶店じゃありませんか?」
「だな。看板にカウベル」
 カランカラン。懐かしいような音を響かせて、木のドアを開けると、欧州の古い民家のような店内が二人を迎える。
 さやかが頼んだのは、絶品と言われるチョコレートケーキセット。とろりとしたチョコでコーティングされたケーキ。スポンジはしっとりと、ほろほろと口の中でほどけるように無くなり。
「‥‥はわぁ‥‥濃厚‥‥蕩けちゃうみたいです‥‥」
「こんな場所にあるなんて知らなかったな」
 口元を抑えるさやかに、龍鱗が頷く。
「あのですね、公園でボート漕ぎたいです」
「ん? そっか。行こうか」
 美味しいケーキと、紅茶を堪能した二人は、花の香りがふうわりとし始めた公園へと向かう。

 待ち合わせの、ずーいぶんと前から、トヲイはそこに立っていた。
 着流し、角袖コートに、【OR】ロングマフラー。
 思いっきりそわそわとした雰囲気満載。
「やっほ〜っ」
「おう」
 待った? とかは無かった。
 それとか、これとか、いろいろ返事を想定していたトヲイは撃沈。
 だが負けない。
「‥‥よし。初手はあの店から攻略するぞ」
 きらりんと眼光鋭く。まるで大規模作戦もかくやというトヲイ。
「よし。行こう〜っ」
 昼寝はくすりと笑うと、トヲイの腕を引っ張っる。チョコレートは大好きだから楽しみにしていたのだ。
「む」
 トヲイは軽く目を見開くと、昼寝に引かれつつ、つい、負けじとばかりに小走りに。
 フットワークの良い二人は次から次に店舗を攻略して行く。
「あっ、コレも可愛くない? ピンクと白のハートが並んでいるの」
「そういうのが好きなのか」
「うん、そうだねー。シックなものよりも、可愛い系のもの」
 ぱくりと口にする昼寝。味わいつ、MAPに入った店チェックをするトヲイ。
 チョコ好きだとはトヲイの予想の範囲外で、二人で楽しくLH中を歩き倒す。

 髪を下し、サングラスをかけたテト・シュタイナー(gb5138)が、待っていたファリス・フレイシア(gc0517)へと、軽く手を上げる。
(テトさんはやはり、アイドルですから、変装してくるとは思いました)
 ずばり、想像通りの変装に、何だか和んだファリスが微笑む。
 その微笑みに、何だと問えば、いいえとくるりと笑われ。まあいいかと、二人連れだってショッピング街へ。
 何時もの様なズボンとシャツ姿のファリスへと向き直ると、テトは、じーっと見ると気に入った店へとずんずん入って行き、何枚かスカートやブラウスなどをちゃちゃっと選び出すと、ファリスにあてて見る。
「え? 私ですか?」
「俺様はこっちだ」
 ばばんと派手なチャイナドレスをすちゃっと突き出す。スカートを手にして首を傾げるファリスへとテトが頷く。
「だーいじょうぶだって。絶対似合う。俺様が保証するって!」
 言われるがままに、ファリスはフィッティングルームへ。
「どうでしょうか‥‥?」 
「おう、やっぱり似合ってるじゃねーか。可愛いぜ?」
 現れたファリスへと、ぐっとサムズアップのテト。
 スカートの裾を僅かにひっぱり、ファリスは首を傾げる。
 似合うと言ってもらうのは嬉しいが、寒い。そして、ヒラヒラが動きにくい。
 チャイナを着回し、フィッティングルームから首だけ出したテトが、黒地でスリットが深いタイプと、赤地でミニスカタイプの二つを出した。
「なー。どっちの方がいいと思う?」
 現役アイドルは伊達では無い。どちらもとても似合うと、ファリスは、こくりと頷く。
「そうですね‥‥私は赤い方がいいと思います。似合っていますよ?」
「赤い方か。ん、ファリスが選んでくれたもんだからな、こっちにすっか」
 色とりどりの服の中ああでもないこうでもないと見るのがまた、楽しい時間。

「今日は、お洒落したし、髪型も変えたしっ! さすがにあのバカも気付くはずだわ‥‥」
 あちこち、普段と違うので気になってさわりながら、エスター・ウルフスタン(gc3050)は待ち合わせに向かう。
(‥‥気付くわよ、ね?)
 ほどいた髪が春の気配を連れた風にふわりとさらわれる。結んだリボンが何時にない優しい音を立てる。
 遠目から見れば、清楚なお嬢様の様な姿。那月 ケイ(gc4469)は、エスターへと軽く手を上げる。
(ん? なんか普段と雰囲気違うような‥‥)
 エスターはエスターとして認識はしているが、髪型やら服装やらは男性の常として、さほど気にならない。
 何か違うかなあとか漠然思うだけで。
「行こうかー」
「‥‥」
 ちょっと見通しが甘かった。
 んが、自分からどう? なんて可愛く言えるエスターでは無い。
 軽くため息を吐きながら、まあいいかと、ショッピングへと。
 最初はただのムカツク奴だった。
 人の名前で遊ぶし、からかうし。
 でも、彼は自分と同じように、誰かを護れる様になりたいと思っている人だった。
(意外と優しいし‥‥)
 一つ息を吸い込んだ。顔を会わせると、エスターは何時も憎まれ口を叩いてばかりだった。
(だから、き、今日こそは!)
 ちょっとばかり決戦の日であったりした。
 何を買うとも決めていなかったが、何とはなしにかわいい小物を見つけて、ケイはエスターを振り返る。
「ん? どしたー?」
「な、何でもないっ!」
 固まってる? みたいに一瞬見えたが、気のせいかと、可愛い猫のマスコットを吊るしてみる。
「これ良いんじゃねー?」
「そうか?」
「おお」
 頬を僅かに染めてエスターはケイを見上げて笑った。
 ここにはケイしか居ないから。何時もと違う自分でもきっと大丈夫。
 素直なエスターに、首を傾げつつ、ケイも楽し気に笑い。

「ハッピーバレンタインなんだよー、有希さん」
 何時もよりも、少しおしゃれをしたクリア・サーレク(ga4864)が、にこりと笑う。
 ふわりと、ワンピースの裾が揺れる。
 守原有希(ga8582)は、眩しそうにクリアを見ると、にこりと笑い返す。しっかりと、【OR】毛糸のてぶくろを装着。それを見て、クリアの笑みが深くなる。思いの欠片を有希が全部身に着けてくれているのが、嬉しい。
「さ、何処に行きましょうか」
「うーん。どうしよう」
「行きたいところがあれば、何処にでも?」
 実はクリアはノープラン。一緒に居るだけで嬉しいのだから、何処へ行くのも構わない。
 こほんと、有希が楽しげに咳払いをする。
「したら、ウィンドウショッピングをして、チョコの試食と行きますか」
「うん」
 クリアが、有希の腕にきゅっと飛びついた。
「今日は、ボクの全てを有希さんに預けちゃうんだよ♪」
「はい、どーんと任せてやって下さい」
「あ! でも、まずはあれ!」
 クリアが目指すのは、広場を行く、ジェラード屋『ソルジャー・オブ・フォーチュン』。
 退役した元UPC軍人店主の移動ジェラート屋台である。ピンクのUPCハートマーク。協賛店だ。
 がっつりと厳つい男達がいらっしゃいと出迎えてくれる。見た目はアレでソレだが、味は絶品。甘過ぎず、繊細な味わいのジェラードである。何時も売り切れなのだというカフェラテのジェラードを、恋人同士で頼む事が出来れば、幸せになると言う、知る人ぞ知るジンクスがあったりする。
「ええと、カフェラテ」
「ございません」
「そうですか、残念」
「‥‥こちら様にコーヒー。こちら様にミルクがお勧めです」
「あ! それ下さい」
「どげんしたとですか?」
 クリアは、早速カフェラテを頼むが、やはり無い。が、勧められたジェラードを買い込み、協賛のチョコクッキー入りチョコジェラードを手にしたクリアは、公園のベンチに腰かけると、自分のミルクを食べると、有希のコーヒーを一口ぱくり。
「なるほど」
 いつも売り切れのカフェラテは、最初からメニューに無いのだ。
 甘い味わいが口の中に広がった。
 にこりと笑い合うと、二人は連れ立って、ショッピング街を歩く。
 しっかりとリサーチ済みの有希は、クリアの温かさと重さを腕に感じながらまずは目当ての靴店へ。
「こっち、靴が安いですよー」
「可愛いーっ」
 クリア好みのショップや雑貨店を巡り、合間にちゃんと呉服屋も覗く。
「‥‥っ!」
「有希さん?」
「な、なんでもなかとです」
 歩いている最中、突然挙動不審になった有希をクリアが覗き込む。
 息を吐き出した有希が、クリアへと笑いかける。
 その背後に、同人ショップの看板がちらりと見えたりしたのは、絶賛秘密中である。

「まだ冷える‥‥手を繋いで、行きましょう」
 僅かに頬を赤らめて手を差し出すのはノエル・アレノア(ga0237)。
 その言葉に一瞬間を置いて、ティリア=シルフィード(gb4903)は、おずおずと片手を差し出した。
 繋がれた手がほんのりと温かい。
 顔を見合わせて、二人、共に頬が染まる。
 穏やかな風の吹く公園を歩居て行く。
(恋人同士に見えるかな‥‥?)
 ティリアは、空いた手で僅かに胸元を抑える。
(恥ずかしいけど、そう見られているのなら‥‥ちょっと、嬉しいかも‥‥)
(初デート‥‥になりますね)
 ノエルがちらりとティリアを見れば、ティリアもノエルを見ていて。
 思えば、昨年の秋、互いに告白をして以来になる。
 何処か初々しい恋人達は、チョコフェアのケーキ店へと。
 提供されたのはハートチョコ。ぱきんと半分に割ると、ノエルはティリアに差し出した。
「はい、ティリアさん。口を開けてください♪」
 ティリアは一瞬固まり、真っ赤になるが、差し出したノエルもかなり顔が赤い。
 くすりと笑うと、ティリアはぱくりと食べて。
「今度はボクの番ですからね? はい、口を開けて下さいね‥‥」
「えっ?! ‥‥その‥‥」
 逆襲に会ったノエルは、照れながらも口をあけた。


「初め‥‥まして‥‥」
「はいですの。初めましてですの」
 黒のロングスカートとブラウスに黒のストールを羽織った秋姫・フローズン(gc5849)。全体的に上品な服装だ。
 スリットが足を見せるが、黒のタイツが同色の陰影を見せる。
 ティムがぺこりとお辞儀返し。
「よろしかったら‥‥一緒に‥‥行きませんか‥‥?」
「お勧めですね、ご一緒しますのv」
 秋姫が向かうのは紅茶の専門店。しっかりとピンクUPCマーク。
「この茶葉‥‥良い香り‥‥です‥‥」
 沢山の茶葉の香りを確かめると、喫茶ゾーンへと。
「私は‥‥季節のタルト‥‥と‥‥アールグレイを‥‥何に‥‥なさいますか‥‥?」
「あ、私も同じものをお願いいたしますの」
 林檎のタルトが甘い香りを漂わせて現れる。
 綺麗に盛り付けられたのは、生クリームとチョコレートムース。ムースが提供の一品のようだ。
「美味しい‥‥です‥‥」 
「ですのv」
 ずっしりと詰まった林檎は僅かな酸味と、甘味が心地良く。紅茶が甘味を複雑な味わいへと変えて。
「幸せ‥‥です‥‥」
 ほぅ。と、秋姫は美味しい溜息を吐いた。

 可愛い店や甘い香り。UPCハートマーク店を梯子する。『しろうさぎ』では、チョコ入り善哉を堪能し。
「あのケーキ店、大理石の作業台かぁ‥‥」
 ちょっとばかり思いっきりかぶりよりでオープンキッチンを覗き込む有希。
「美味し‥‥」
 ザッハトルテ、オペラ。艶やかなチョコレートに、しっかりとしたスポンジなど。様々な種類のお菓子に、有希は職人技を見て、嬉しそうに口にする。チョコムースをひとすくい。クリアが有希へと差し出した。
「有希さん、はい、あーん」
 今日は特別な日だから。クリアは笑う。
 何時もならとても出来ない事も、出来てしまう。
「‥‥あーん」
 何でもない当たり前の幸せ。
 こうして、クリアと共に居る事が、とても大切で。
 悠季の目が優しく眇められる。
 大規模で彼女が言ったという言葉を人づてに聞いた。だからこそ。
(此の島が最後じゃなく最新の希望や続く希望と呼ばれるくらい、見つけて作って続かせましょう)
「大好きですよ!」
「! ボクだって」

「ここの店では、和洋折衷の菓子が楽しめる。そして、味も絶品だ。‥‥うん、日本茶にも良く合うな」
 抹茶チョコケーキを頼んだトヲイは、上品な抹茶と共に味わい至福のひと時。
「おいしいねえ」
 にこにこと昼寝もチョコケーキをつつき。

 チョコケーキを口にして、エスターは幸せな顔になる。
「んんー、おいひぃー♪」
 少し緊張していた気持ちが甘くほどけて溶ける。
 エスターは、少し考えると、自分のケーキをすくって、ケイの前に差し出した。
「あ、あーん」
 顔は真っ赤であり、差し出す手は微妙に震えている。
 ケイは目の前のケーキに、一瞬目を見開くが、ぱくりと。あっさりと。口にした。
 ぴ。
 そんな感じでエスターは固まる。
 ケイはふふんと笑い。
「エスター、顔まっか」
「!」
「ちょっ!」
 ぱーん。良い感じに、照れまくったエスターの一撃がケイに決まった。

 何時ものように仲よく座ると、チョコケーキが運ばれる。鐘依 透(ga6282)は、つばめの前に置かれたチョコケーキの上に、そっとウェハースを乗せた。薄いチョコウェハースが花形に抜かれてあり、そのウェハースに苺チョコで『受験勉強追い込みガンバ!』と書かれていた。
「わ、ありがとうございますっ!」
「がんばってね。あと少し」
 美味しくケーキを頂いて紅茶を口にする頃、透は、あのねと、つばめに向き直る。
「急に小隊を離れてごめん。新しい小隊を立ち上げた人の力になりたくて‥‥不慣れだけれど別の小隊で空を飛んで来ようと思う」
「そうですか‥‥きっと、透さんは大丈夫です」
 その人の力になれますと、つばめが頷く。
 安心した風の透を見て、つばめは自らの不安が伝わらなくて良かったと心中で安堵する。
 本当は少し不安だ。一年半近くも肩を並べて共に戦ってきた大切な人。
 けれども、それを透が決めたのならば、自分は活躍を祈るだけだからと。
 ことりと小皿が置かれた。老婦人がつばめに微笑んだ。
 柚子ピールの横にサクランボのシロップ漬けが仲よく二つ繋がって光っていた。

 ケイはランチとケーキを注文する。ミハイルは飲み物だけ。
 赤い塗りの盆に菜の花のパスタ。黒胡椒が効いたバターの香りがふんわりと香る。
「なあに?」
「いや」
 美味しそうに食べるケイをミハイルは目を細めて眺める。
 シンプルなチョコケーキに、オレンジピール。香りが合い混じり、紅茶の香りでケイは一息つく。
「本当にミハイルは食べなくて良かったの?」
「おいしそうに食べるケイの姿をみているだけでお腹一杯になるからね?」
「あら。あげないわよ?」
 ミハイルが楽しげに微笑む。
 ケイは、恋人のその微笑みに少しだけ頬を染め。笑み返しつつ、ケーキを口に。

 チョコケーキに刻んだ柚子の入った生クリームが乗ったケーキが出てきた。一番人気のトッピングだ。柚子ピールが爽やかに甘くて、レーゲンは美味しさに目を細める。
「あ。軍曹さんのも美味しそうです。一口交換しませんかっ」
「あーん」
「はっ?!」
 どうやら、前回の事が尾を引いているようだ。以外な顔にレーゲンは噴き出すと、スプーンを差し出した。お返しとばかりに、苺クリームの乗ったチョコケーキが口へと運ばれる。
 一番好きなお菓子は何かと聞けば、ドーナッツと答えられる。納豆やねばねば系は天敵で、ステーキとトウモロコシがあれば幸せだと。好きな香りは柑橘系。レーゲンはデラードが話すまま、笑みを浮かべて聞く。

 おや。とばかりに、叢雲はデラードとレーゲンを見て目を細め、微笑ましく見ながら、席を立つ。
 真琴は、初っ端以外はいつも通りだったので、普通においしくチョコを堪能したのだが、いつもより消耗している自分に溜息を吐く。んが、ティムを見つけると、何だか本当の日常に戻ったかのようでほっとし、きゃっきゃとハグり合う。
「あ、そうだ。毎年の事だったんでつい作っちゃったのでこれどうぞ」
 帰り際に、叢雲が思い出したように真琴へと袋を渡す。
 叢雲手作り、毎年恒例チョコクッキーとチーズタルト。
 美味しい物を食べて忘れるところでしたと、何時もとまったく同じ笑みを浮かべる叢雲に‥‥。
 

「いい買い物をしたな‥‥。今度は、今日買った服を着てデートでもしてみるか?」
 満足そうに、テトは頷き、チョコクッキーをつまむ。
「あの服を着て、ですか‥‥? デートは喜んでですが‥‥テトさん寒くないですか?」
「はっはっは。心配すんな? ファリスのスカート姿を見れば、寒さも吹き飛ぶってもんだぜ」
 悪くは無いと思いますと呟くファリスに、僅かに身を乗り出して、からかうように笑うテト。
「では」
「お! 何時にするっ?」
 ファリスの気の変わらないうちにとテトはスケジュール帳をすちゃっと取り出した。
 アイドル業の合間をぬった、次のデートのご予定は‥‥。

 公園に静かな風が吹く。
 櫂を漕ぐのは、さやかだ。
「俺が漕がなくてもいいの?」
「任せて下さい」
 培った短艇の技術がきらりと光る。思いっきりスムーズにボートは池を進む。
「流石‥‥」
「まだ腕は落ちていませんね」
 きらきらと、陽光を反射して湖面が揺れる。
 ほどなく、池の真ん中ぐらいという所で、さやかは漕ぐのを止めると、きちんと座り込んだ。
「今日はバレンタインですね。あなたと良い関係になって、初めて迎える日‥‥すごい緊張してます。でも、鱗さん‥‥私、すごい幸せです。鱗さんは如何ですか?」
 水面がきらりと光る。
「戦争はまだ続きます。これから何があっても、私のこと見捨てないで下さい‥‥」
 何を言い出すのかと思えばと、龍鱗は笑みを受かべた。
 手渡されたのは、【ZOO】わんこくっしょん。龍鱗は、ありがとうと笑った。

 秋姫はベンチに座り、日差しの温かさを楽しんでいた。ゆるやかに流れる時間に穏やかな笑みを浮かべる。
 ふと、顔を上げたのは、クラッシックギターをつま弾いている音。
 つい近寄ると、バラードの様な子守歌の様なそんな優しげな歌を音へと合わせる。
 ギターの音が終わると、秋姫は我に返った。
「‥‥はっ! ‥‥私‥‥何を‥‥す‥‥すみません! ‥‥すみません!」 
 真っ赤になって奏者へと謝れば、綺麗な声だねと褒められ、謝意を告げる。
 何かやっているのかと問われ、アイドルの候補生なのだと言えば、がんばってねと微笑まれ。

 公園の水飛沫がキラキラと光を反射する。
「今日は一日、引き摺り回す事になってしまって‥‥すまない」
 飲み物を昼寝へと手渡しつつ、トヲイは何となく本日を振り返って、首を横に振る。
「食欲が絡むと、どうにも自制が利かなくなるらしい‥‥」
「別にー? 楽しかったし!」
 からりと昼寝が笑う。
「あ、そうだ煉条、はい」
 カバンの中から、昼寝はラッピングの包みをトヲイへと飲み物と交換するかのように手渡した。
「あ‥‥ありがとう」
「どーいたしまして。美味しいの食べた後でアレなんだけど、結構上手く作れたから食べてみて」
「‥‥手作り!」
「うん」
 ラッピングを開けると、くじらの形をしたストロベリーチョコが沢山顔を出す。
 何だかじーんとしたトヲイがしみじみとチョコを食べて、感慨にふけっている横合いから、昼寝もひょいとばかりに手を出してぱくり。水の音、風の音、何処からか聞こえる路上奏者の音。
 もぐもぐと昼寝のチョコを食べて、ベンチでのんびりとした時間が流れる。
 昼寝は、トヲイを見て、くすりと笑う。
「ついてるわよ、チョコ」
「え?」
 トヲイが振り返るよりも早く、昼寝はトヲイの口元についたチョコレートを取るようにキスをした。
「!!!」
 固まりまくったトヲイ。
「――――ん、それじゃ行きましょうか。トヲイ」
 さっさとベンチを立ち上がると、くるりと振り返り、満面の笑みで昼寝は手を差し出した。
 
 今日は一日、楽しい時間だった。
 ケイは、ベンチでエスターと話している最中に、ようやく、普段と髪型が違う事に気が付いた。
 何気なしに手を伸ばし、エスターの頭を撫ぜる。
「そういうのも似合うじゃん?」
「き、気付くの遅いのよ。ばか‥‥」
 エスターは手を膝の上で握り込むと、顔を赤くして俯く。
 何時もならば、撫ぜるなとばかりに怒声が飛ぶ。喫茶店での様に一撃が飛んでくる事が多いのに。
 ケイは首を傾げる。
「‥‥元気ないな、少し疲れた? 寒くなってきたしそろそろ帰ろうか」
「やだ、まだ帰りたくない。だ、だって、折角2人きりなのよ。いつも、いつも素直になれなくて、でも‥‥」
「エスター?」
「‥‥このあいだあげたバレンタインのチョコ、あるでしょ?」
「ああ、ありがとな」
「あれ、義理じゃないから」
 すたんと立ち上がると、エスターはさらに顔を真っ赤にして踵を返すと、猛ダッシュ。
 異性として意識されていないのは、なんとなく理解している。
 けれども。
(好きな人いないらしいから! なら、これから頑張ればいいんだ!)
 でも、今は。
 とりあえず恥ずかしさが先に立って。
「えーと‥‥これって、つまり‥‥」
 駆け去った残像を見送り、ケイはベンチにもたれる。
 ここまでくれば、エスターの気持ちはわかる。
 だが、彼女に対しては妹のような気持ちしかない。戸惑う気持ちを落ち着けようと、空を仰いだ。
 春風が、ケイの髪を撫ぜて行った。
 

 静かな夜だ。
 さやかは、自兵舎へと龍鱗を招くと、夕食を作り始める。
「良いの? 何だったら外で何か奢るよ?」
「ご馳走したかったのです。お嫌いじゃなければ良いのですが」
 カレーの良い香りがふうわりと。おかわりも沢山ありますのでご遠慮なくとさやかが笑った。

 暖かい飲み物を手に、買ってきたチョコなどを摘み、今日一日を振り返って、くすくすと笑い合う。
「今日は誘ってくれて本当にありがとう‥‥ティリアさん。好きなだけ居てくれたって、良いんですからね‥‥?」
 ノエルは、【OR】マーブルチョコパウンドケーキに嬉しそうに笑い、そっとティリアを抱きしめた。
 温もりが伝わる。
 ティリアは、僅かに視線を落とす。柔らかな笑みが浮かんだ。
「‥‥ありがとう。大好きです、ノエルさん‥‥」
 そっとノエルを抱きしめ返した。
(これからも‥‥こんな風な時間を、少しでも多く刻んでいくためにも‥‥頑張らなきゃ)
 自分を受け入れてくれて、一番好きだと言ってくれる、大切な人。
 だから。
 この時間を大切にしようと。

 デラードの殺風景な部屋でお茶をして、帰ろうとすれば、送ると言われ。自兵舎への道を手を繋いで帰る。
 くすりと笑みがこぼれるのは、皆でデラードをこっそり尾行した時間を思い出したから。
 フリーになったら何時でもおいで。そう、あの時デラードは言った。その時は夢にも思わなかった。
「何? 思い出し笑いっ」
「いえ。あの時の言葉は、冗談では無かったのかなあと」
「たーくさん下心を詰めましたとも。けど、あいつは良い奴だったから」
 こんな日は来ないものだと思っていたとデラードが夜空を仰ぐのをレーゲンは見た。
「今日はたくさん一緒に居られて、嬉しかったです。またデートしてくださ‥‥」
 兵舎の入り口で、レーゲンは口を塞がれた。少し、長く。
 今度はそっちの部屋に呼んでと囁かれ。またデートしてねと、名残惜しそうに額にキスされ。
 自兵舎のドアを閉めるまで手を振られた。

 ビターチョコレートを摘みに、ワインをゆっくりと傾ける。
 ケイとミハイルは視線が合うと、穏やかに微笑み合う。
 ひとつ摘まむと、ケイはミハイルの口へと運ぶ。
「チョコはビターでもこのひと時は甘くすごしたいね。こういう甘さであるなら私は歓迎だよ」
「ん。二人だけの‥‥秘密の甘い時間‥‥一刻だけって言うと、まるでシンデレラみたいね」
 ミハイルは仕事で忙しく、思うように会えない人だ。
 けれども、今日だけは思い切り甘えても良いだろうかと、ケイはミハイルへともたれかかる。
 朝までは未だたっぷりと時間があるのだから。

 透は急に不安になり、つばめを抱きしめた。
「‥‥ごめん。小隊は離れてしまう‥‥けど」
 今日はとても楽しかった。
 そんな、他愛のない話は、何時しか大規模作戦の話へと変わり。
 互いに傭兵である。
 戦いを責務だという事を十分知っているから。
(‥‥守られていたのは僕の報なのかもしれない)
「――大丈夫。例え別々の場所で戦っていても‥‥互いを思い合う気持ちがあれば、私たちは繋がっていられる。それが絆の力‥‥『ガーデン』のお家芸、ですよ」
 透は、腕の中に納まるつばめの温もりに吐息を吐く。彼女は自分よりもずっと強い。
 顔を見合わせると、どちらからとも無く、唇が重なった。
 ひとつのシルエットがふたつに分れたると、透は染まった頬のまま、僅かに下を向いた。
「‥‥うん、お互い、ちゃんと無事に帰って来よう」
「はい」
(――以前、支えられるだけでなく、彼のことを支えれるようになろうと誓ったから)
 正直、つばめとて不安で寂しい。けれども、透が決めた事の意思は尊重したい。
 せめぎ合う気持ちを押し隠し、満面の笑顔を向けた。





 甘い休日はあっと言う間に過ぎ去って行く。

 そして。

 次に向かうのは極北の戦いだった。