タイトル:渚の白い悪魔マスター:岩魚彦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/09 09:37

●オープニング本文


 青い空に、眩く太陽。
 白い砂浜に透明感溢れる海。
 砂浜では健康的な小麦色の肌をした大勢の男女が、生地が極端に少ない色鮮やかな水着を纏ってはしゃいでいる。
 ここはバグア競合地域から遠く離れた海水浴場。世界的な戦争状態にあるにも関わらず、砂浜は利用客で埋め尽くされていた。
 いくら戦争状態であるとはいえ、バグア支配地域から離れた都市では通常の生活が送られている。夏になれば海水浴場が賑わうのも、当然の摂理であった。
 そんな平和な光景から一転して、地獄に包まれるとは誰も想像すらしていなかった。

 波打ち際から遥か離れた、海の家の隣に設置された監視台の上では、従業員が溺れた利用客がいないか双眼鏡を覗きながら監視していた。その、双眼鏡から覗いた海には、大きな影がはっきりと見える。だが、従業員はその影の意味が分からず、報告を怠ってしまった。
「キャーーーーーー!」
 浅瀬から利用客の悲鳴が上がる。
 悲鳴の聞こえてきた辺りでは、白く長い吸盤の付いた触手のような物が、ヌメヌメとうねっている。イカのような触手は普通のサイズではない。人間の胴回り程の太さをした、あまりにも極太な触手だった。
 極太触手はパニックに陥る女性利用客を次々と捕獲していく。利用客はその触手から逃れる為、必死に海岸を目指した。
「いけない! お客さんに何かあったら、給料が!」
 偶然、海水浴場でライフセイバーのバイトをしていた女性能力者は、傍らに置いてあった両手剣を手に取ると、触手に向けて駆け出した。
 バイトが現場に到着する頃には、複数の女性が触手の餌食になっていた。小麦色の肌に纏わり付く触手に、皆一様にして嫌悪感を露にして悲鳴を上げている。
「お客さんに手を出すな!」
 バイトは両手剣で触手を切り落とす。すると、触手は拘束する力を失い、利用客は何とか逃げ出す事が出来た。
 バイトが次の触手に移ろうとした瞬間、斬られたはずの触手が物凄い勢いで再生していく。そして、触手の持ち主が姿を現す。
 5mを超す超大型の軟体キメラ。姿はイカにそっくりで、十本の触手を備えている。その触手には既に三人の利用客が捕らえられている。
「あんっ!」
 巨大な触手に小麦色の肌を締め付けられた女性利用客は、苦しそうな声を上げる。胸を強く締め付けられて、胸に実る豊満な果実がさらに強調され、今にも水着から零れ落ちそうだった。ただでさえ、生地が少ない水着にこれ以上の保持力は期待できない。
「これ以上はいけない! さっさと倒さないと!」
 バイトを捕獲しようと迫り来る触手を避けながら、キメラの胴体を目指す。だが、口から何かが吐き出される。
「キャッ! な、何これ、嫌だ‥‥、ベタベタじゃない‥‥」
 本来なら墨を吐くところだが、どういう意図か体液を吐き出してきた。黒いボディースーツを着たバイトの体には、木工用ボンドのような白濁した体液が纏わり付いていた。
「う、動けない? この体液‥‥、何で? 纏わり付いて‥‥」
 動きを封じられたバイトは、あっけなく触手の餌食となってしまう。触手の先端は人の腕程度の太さで、ボディースーツの内側に潜り込もうと狙っていた。
「嘘っ! ちょっと! 一体、何なのよっ!」
 このままバイトと女性利用客は、キメラの餌食になってしまうのか‥‥。

●参加者一覧

ペルツェロート・M(ga0657
18歳・♀・ST
聖・真琴(ga1622
19歳・♀・GP
最上 憐 (gb0002
10歳・♀・PN
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
南 日向(gc0526
20歳・♀・JG
獅堂 梓(gc2346
18歳・♀・PN
レインウォーカー(gc2524
24歳・♂・PN
悠夜(gc2930
18歳・♂・AA

●リプレイ本文

●触手蠢く砂浜
 傭兵達が海水浴場に到着すると、そこは触手が人々を襲うという地獄絵図が広がっていた。前もって班分けをした救護班は、逃げ遅れた利用客を誘導して安全な場所まで避難させる。
 その間、陽動班がイカキメラへと接近し、注意を利用客から逸らす。

「‥‥ん。イカを。食べに。私。参上」
 最上 憐(gb0002)は、瞬天速でキメラの目前に現れると、その辺の触手を切り裂いて注意を引こうとした。だが、キメラはまるで憐を気にしない。どうやら、キメラは青い禁断の果実には手を出せないようであった。(倫理的な意味で)

「これ以上はやらせん!」
 リヴァル・クロウ(gb2337)はキメラに隣接し、豪破斬撃を乗せた拳を叩き込む。だが、軟体の体を持つイカキメラに効果は薄かった。
「んっ! いやんっ!」
 その瞬間、触手に捕まった女性客から、桃色の声が漏れてきた。どうやら、キメラ本体へ衝撃を加えると、触手が強く締め上げているようだ。
「うふふ‥‥肌が火照っておりますですよ‥‥♪ 触手に締め上げられて、感じておられるのではございませんですか?」
 ペルツェロート・M(ga0657)はとてもいい笑顔で、捕まっている女性客を眺めていた。その隙を逃すイカキメラではなく、即座に体液を吐き出す。
「これが、キメラの体液‥‥。木工用ボンドみたいにドロドロ、やけにイカ臭いでございますです‥‥。向学のために味も確認‥‥。しょっぱ苦いでございますですわ」
 うっとりしながら、ペルツェロートは体液を弄んでいる間に触手に捕獲されてしまう。だが、これも作戦の内。

 ペルツェロートの活躍により、触手一本を使用不能にした。その間にも、女性の形をしたオーラを纏った悠夜(gc2930)が触手を小銃で吹き飛ばす。
「触手プレイでお楽しみ中悪いが、イベントタイム終了だぜ!」
 その後ろにいた獅堂 梓(gc2346)は、長弓に弾頭矢を番える。キメラ本体ではなく、足元の砂浜を狙って発射した。
「鬼さんこちら♪ ってね!」
 見事に砂浜に着弾した弾頭矢は爆発して、砂煙を巻き上げる。注意を逸らされたイカキメラはその先にいる梓へと触手を伸ばした。
「イカ野郎! 梓に手ぇ出すんじゃねー!」
 悠夜は銃撃で触手の攻撃を防ぎ、梓を魔の手から救う。

 イカキメラの注意を引きながら戦闘を行っていると、避難誘導が終わったのか救護班がこちらへと向かってきた。
 女性客を締め上げていた触手は、ついに下着の中に侵入を試みる。文章で書くのも危険な状態になりながら、女性客は顔を真っ赤に染めていく。
「うふふ‥‥、中々に積極的でございますですね。こちらも、サービスして差し上げますですわ」
 いち早く捕獲され、触手を堪能するペルツェロートは、ノリノリで大きな二つの果実で触手を挟み込むと、その先端をチロチロと舐めていた。男性陣にはちょっと刺激の強い光景だった。

 リヴァルと憐が触手を薙ぎ払うと、聖・真琴(ga1622)がその間から利用客を捕獲している触手を撃破。
 落ちてくる女性を抱きとめると、限界突破と瞬天速でその場から一瞬にして離脱する。
 そして、安全な場所で女性を解放した。女性は真琴に一礼してからその場から急いで走り去っていった。
「がんばれよ、悠夜。たまにはかっこいい所を見せてみろよぉ」
 友人である悠夜に一言告げると、疾風を纏ったレインウォーカー(gc2524)が利用客を捕縛する触手へと接近する。
「こいつ(大鎌紫苑)の慣らしにはちょうどいいかなぁ」
 紫苑をくるくると回し構える。そして、遠心力を最大限に利用した一撃で触手を一閃し、女性を解放する。
「無事だな。こいつから離れる、しっかり掴まってなぁ」
 女性が自分にしがみついたのを確認すると、迅雷で安全な場所まで離脱する。
 避難誘導を終えた南 日向(gc0526)は、覚悟を決めるために変身ポーズをとって覚醒を試みる。
「変‥‥身!!」
 瞬時にして、黒と黄色のSFヒーロー風の格好へと変身した。武器である小銃を構えて、援護しやすい場所へと移動する。
 イカキメラは相変わらず梓を執拗に狙っており、体液まで吐いてきた。
「あぶねぇ!」
 射線上に梓がいる事に気づいた悠夜がかばって体液を受ける。悠夜が動けなくなっている間に、次の体液を梓にぶっかける。
「ふぇ?! ちょっ?!?! ゃぁああっ!!」
 梓は白濁色のドロドロした体液にまみれて、身動きが取れなくなってしまう。当然、顔にもべっとりと付着して、まるで練乳を零したようだった。
 復活してくる触手を憐が瞬天速を使って刈り取っていく。その隙を突いて、真琴が利用客を解放すると、スキルをフルに活用してその場から逃げていった。
「このイカもバグアの仕業だったんですか!? ゆるせん! のです!」
 正義に燃える日向は絶好のポジションから、制圧射撃を使用。かろうじて体液を吐けたイカキメラだったが、真琴にあっさり避けられた。
 その間にも触手は梓を捕獲。
「や‥‥だっ! この! はなせぇ!!」
 梓は駄目元で触手に噛み付くが、触手にもフォースフィールドがあるのか、まるで効果がない。
「アッ!? このイカ野郎! よくも俺の梓に手を出したな!! ブッ飛ばしてヤる!」
 悠夜の女性型のオーラにつられた触手の攻撃を受けながらも、悠夜は鬼のような怒りの形相でキメラを睨みつける。
 レインウォーカーは捕まっていたバイトを颯爽と救出。これで、最初に捕まっていた利用客と従業員を解放した。

 先程から狙われている真琴に向けて、日向が援護射撃を行う。
 だが、砂に足を取られた真琴は、体液をその体にぶっかけられた。
「ちょっ‥‥く〜ちゃん! 見てないで助け‥‥やンっ?!」
 白濁液に塗れた真琴に目を奪われていたリヴァルが、その言葉に我に返る。だが、時すでに遅し、触手が真琴を捕獲してしまう。
 次いで日向に向けて、体液を吐きだした。
「ぅう‥‥。イカくさぁい‥‥」
 嫌がっている日向はあっさりと触手に捕獲されてしまう。
 こうして、戦いは振り出しに戻ってしまった。

●触手にお仕置き
 ペルツェロート、梓、真琴、日向の四名は利用客を助けるために奮闘し、その結果逆に触手に捕らわれてしまった。
「あら? 貴女がたも楽しんでおられますですのね」
 触手とのバトルの末、ペルツェロートは触手を支配下へと置いてしまう。その手腕に触手もメロメロになってしまった。
「や‥‥だっ! この! はなせぇ!!」
 梓は必死に暴れるものの、そんな彼女の服の中に触手は先端を潜り込ませる。
「んっ‥‥うそっ! そこは‥‥駄目!」
 触手の執拗な攻めに体を震わせてしまった。
 触手に捕まった真琴の近くで、憐が四角い金属を取り出した。
「‥‥ん。偶然。こんな所に。カメラが。丁度良いので。記念撮影。笑って」
 構えたカメラのシャッターを連打する。パシャッと小気味いい音を立てながら、その痴態が収められていく。
「そこっ写真撮るなぁっ!? 隊長命令っ!!」
 身動きが取れず太もも、脇を執拗に攻められながらも、真琴は気丈に憐へと命令した。だが、そんなのお構いなしに憐は写真を撮り続ける。
「ぅやっ、くすぐったいですよ!」
 黒と黄色の鎧の上を白い触手が這っていく。身動きが取れない為、豊満な果実に対する触手の責めを甘んじて受けるしかなかった。
「ああん! そ、そこはだめぇ!」
「ちょっと、止めなさ‥‥て、いやぁん」
「んっ‥‥そんなところ、駄目ですよぉ!」
 砂浜にピンクな悲鳴が響き渡る。

「真琴ぉ!」
 そんな中、真琴が捕まっている触手へと、リヴァルが突進。
「テメ‥‥いつまでアタシの身体触ってやがンだぁぁぁ?! こンのエロイカ!  ぽっぽ焼きにして喰っちまうぞオラぁ!」
 暴れ始めた真琴に手こずっている触手を殴りつけ、その衝撃で真琴を解放する。落下していく真琴を上手にキャッチすると、すぐにその場から離脱した。
「大丈夫か、真琴!」
「く〜ちゃん! 遅い〜!」
 同時期、体液によって身動きが封じられていた悠夜が復活していた。
「梓! 今助けるっ!」
 悠夜は触手に接近すると、銃撃で触手にダメージを与える。そして、落下する梓を見事にキャッチ。その場を急いで離脱した。
「悠‥‥」
「悪い。守れなかったな」
 悠夜は梓に付着した白濁液をぬぐってやると、梓は目を細めて身をゆだねた。
「やれやれ。予想通りで笑えないなぁ」
 レインウォーカーは捕まった仲間を見上げると、軽くため息を吐く。
 そして、疾風を纏い近くの触手を刈り取った。すると、ペルツェロートがレインウォーカーの腕の中に落ちてくる。
「そろそろ飽きてきましたですし、ちょうどよかったでございますですわ」
 ペルツェロートはペロリと顔に付着した白濁液を舐めとると、不敵にほほ笑む。そして、レインウォーカーに錬成強化、イカキメラに錬成弱体を使用した。
「仲間の救助、お願いしたしますですわ」
 ペルツェロートはそれだけを言うと、レインウォーカーは無言で日向が捕まっている触手へ迅雷で移動。触手を刈り取り、日向を救出した。

 仲間をすべて救出し、反撃へと移る。
 先ず、憐が先行して周囲の触手を刈り取る。
「隙は作る。その間に吶喊しろ、真琴」
 真琴は指を鳴らしながら、怒りの形相でイカキメラを睨みつけた。その間に、リヴァルは全てのスキルを使用し、まるで炎のような衝撃波をキメラにぶつける。
 衝撃波を受けて派手に揺らぐキメラに、真琴が連続攻撃を叩き込んだ。
「さぁ、エロイカに鉄槌を下す時間のはじまりだよ! 悠! 援護するからやっちゃえ!」
「オウ! マッハで蜂の巣にしてヤんよー!!」
 梓は影撃ちと強弾撃によって、イカキメラの瞳を貫く。その隙を突いて悠夜がブラッディローズを乱射した。
 瞬く間に穴だらけになっていくキメラに追い打ちが加えられる。
「さっきはよくもやってくれたですよ! ゆるせん! のです!」
 怒りに燃える日向は、弾丸が尽きるまで銃撃を続けた。
 突進するリヴァルが豪破斬撃を乗せた拳で、キメラの体を殴りつける。その拳を体の奥にめり込ませた。
「‥‥楽に死ねるとは思わない事だ」
 先ほど使用した炎のような衝撃波で、キメラの体に風穴を開けると、そのまま力なく倒れる。そして、触手の一本も動かせなくなり、息絶えた。

「びえええええっ、気持ち悪かったです‥‥っあ、カキ氷!!」
 覚醒を解いた日向は緊張が解れて大泣きしてしまう。だが、海の家にあるかき氷に反応して、瞬時に笑顔に戻った。

●真夏の渚
 イカキメラが絶命して30分程度。海水浴場はキメラ襲撃前以上に賑わっていた。何故なら、キメラを捌いてイカ焼きを振舞っていたからだ。
「白濁液を溜めていた部分のみ頂戴致したく存じますです。‥‥こう、向学(性的な意味で)の為にございましてでして。他意はございませんですよ?」
 ペルツェロートがキメラを捌いていたバイトに要求すると、快く提供してくれた。

「‥‥ん。おかわり。おかわり。まだまだ。全然。行ける」
 イカを焼いているその隣で、憐はひたすらイカ焼きを頬張っている。戦闘終了後からずっと食べ続けていた。
「美味しいね。憐ちゃん」
 真琴はフリルをあしらったホルターネックの青いワンピース水着を纏い、憐と一緒にイカ焼きを頬張っていた。真琴は先ほど着替え終わったばかりで、イカ焼きを食べ始めたばかりである。
「‥‥悪かった。機嫌を直してくれないか?」
 触手に捕まって少し拗ねている真琴に、リヴァルが謝る。真琴は少し頬を膨らませて、リヴァルをじっと見つめた。
「‥‥じゃぁ、後で一緒に泳ご? そしたら許したげる♪」
「‥‥まったく。解った、付き合おう」
 機嫌が直った真琴はリヴァルにイカ焼きを渡す。
「次はイカ素麺たべたいです!!」
 憐とともにイカ焼きを食べていた日向が次のリクエストをした。
「ゲェ〜‥‥マジでキメラ食うのかよ‥‥俺はゴメンこうむるぞ」
「悠は食べないの? ‥‥美味しいのに」
「エッ!? あ、いや美味しいと言われても‥‥キメラだぜ? 抵抗アリアリだっつの」
 白地にオレンジの花柄のビキニタイプの水着を身に纏い、腰にはパレオを巻きつけた梓は、イカ焼きを口にしている。悠夜はその様子をげんなりと眺めていた。
「悠も試しに一口、はい、あ〜ん!」
「ウグッ!? あ、あ〜ん」
 悠夜は眉をしかめながら、そのイカを口にする。
「美味い‥‥美味いけど‥‥キメラなんだよな〜コレ」
 悠夜は微妙に引きつった笑顔で、イカを咀嚼していった。
「そちらの傭兵さんは、食べないっすか?」
 バイトがレインウォーカーにイカ焼きを差し出す。
「いや、僕は遠慮しておくよぉ。他の人にあげなよ」
 レインウォーカーは笑顔でさらっと回避した。
「イカばっかりだと水分がないのです! お茶とオレンジジュースを貰ってきました! 冷え冷えです!!」
 先程まで泣いていたとは思えないフットワークの軽さで、日向が大量のお茶やジュースを抱えてきた。仲間は冷たい飲み物で喉を潤す。

 お腹を満たした傭兵達は海へと繰り出した。
「邪魔者は排除したし、やっと遊べるねぇ〜」
「ようやくだぜ!」
 梓と悠夜は海水につかりながら、お互いの肌を密着させる。今までそういう事をあまりしなかったせいか、その距離はかなり近い。そんな二人の様子をレインウォーカーが遠くから眺めていた。
「ほらっ! くらえっ、く〜ちゃん!」
 波打ち際で、真琴がリヴァルに向けて海水をかける。真琴はリヴァルが付き合ってくれたこで、ご満悦であった。
「お、おい、止めろ」
 その海水を防ぎつつも、リヴァルはまんざらでもない様子であった。
「ん〜‥‥。気持ちがいいのです」
 海岸から少し離れた場所で、日向は浮き輪の上でぷかぷかと浮かんでいる。持ってきた水着を着こんで、太陽の日差しと、潮風を堪能していた。

 砂浜では憐がいまだに、イカ焼きを食べていた。だが、違うものを食べたくなってきたのか、次の行動を開始する。
「‥‥ん。この写真を。バラまかれたく。無いなら。海の家の。食べ物を。買い占めて来て」
 近くでドリンクを飲んでいたペルツェロートを脅迫する。だが、ペルツェロートは憐の持っていた写真とネガを興味深く観察すると不敵な笑みを浮かべた。
「他の人の写真もあるのでございますですね。うふふ‥‥、全て頂きますですわ!」
 何かのスイッチが入ってしまったのか、ペルツェロートは素早く写真を奪おうとする。だが、憐はさっと回避した。二人は無言で写真の争奪戦を繰り広げる。ペルツェロートの捨て身の一撃が憐の持っていた写真をかすめると、二人は折り重なるように倒れこんでしまった。
 憐の手を離れた写真とネガは風に乗り、偶然にも真琴とリヴァルが遊んでいた海辺へと舞い落ちる。それを拾った真琴は、笑顔のまま握りつぶした。
 こうして、海水浴場の平和は守られたのであった。