●リプレイ本文
●ゾンビへ挑め
原因不明のゾンビ大量発生。瓦礫も少ない廃墟は、見目おぞましいゾンビで溢れかえっていた。それは、まるで死者の絨毯である。そのゾンビの発生源を探し、潰す事が今回の依頼だ。
「なんてB級ホラー系なのかしら‥‥」
たわわな果実を実らせた胸を張りながら、橘 緋音(
gc7355)はそう呟く。あのアリのように群がるゾンビ全てが、衣類を剥ぎ、恥ずかしい格好にしてくるのだ。
「着衣を脱がすゾンビですか、なんともエロイ思考のゾンビです、作った奴の性格が伺えそうですねぇ」
二条 更紗(
gb1862)はおっとりとした口調ではあるが、若干の嫌悪感を覚えているようだ。
「何ともまぁ‥‥破廉恥な敵ね?」
月臣 朔羅(
gc7151)はこんな痴れ者共は、さっさと殲滅するに限るわと、戦闘の準備を進めていた。
「不浄なるモノに神罰を与えてくれる」
ルリム・シャイコース(
gc4543)はシザーハンズの装着具合を確認しながら、ゾンビ達を睨みつける。彼女の放った不浄とは、ゾンビそのものに向けられたのか、それともその行為に向けられたのか‥‥。
「皆さんが来て頂いて、本当に助かりました」
巫女の格好をしたリズ・ミヤモト(gz0378)が、皆の前でお辞儀をする。着ている巫女服は脇の部分が何故か露出しており、まるで空を飛ぶ程度の能力がありそうな感じだ。
「こんにちはリズ、今回も宜しくね、って巫女さんなんだ‥‥って、凛の格好は気にしちゃ駄目なんだぞっ、偶々ゾンビと戦う賞金稼ぎの役やってそのまま来ただけなんだからなっ!」
そう言う勇姫 凛(
ga5063)だったが、どう見てもシスター風の格好である。凛は必死に突っ込まれる前に、言い訳をしていた。
リズはとりあえず、全員に何故自分が参加する事になったか、事情を説明した。
「良いですか、リズさん。巫女と言うのは本当は触手に、ふぎゅっ!」
日本人としてリズに『正しい』巫女の知識を与えようとした伊万里 冬無(
ga8209)であったが、一緒に来た大鳥居・麗華(
gb0839)によって口を塞がれてしまう。
「あ・な・た・は、何嘘を教えてますの! リズ、巫女というのはですわね‥‥」
麗華から本当の正しい巫女の話を聞くリズだが、何故かちょっとガッカリしたようにも見える。
「さあ、放置してたらそれなりの状況になっちゃうから、阻止する為に張り切っていくわよー」
何故か嬉しそうな表情の樹・籐子(
gc0214)は覚悟完了とばかりに胸を張った。ブラウスにタイトスカートという格好だと、実に膨らみが強調される。
そして、傭兵達はゾンビへと向かっていった。
●嵐の前
冬無、麗華、ルリム、緋音の四人は前衛として、ゾンビの前に立ちはだかる。
「連携の確認と行くわね」
緋音は戦闘前に各々の行動を再確認する。
「あはぁ、久し振りに大暴れもできそうで‥‥素晴らしいです♪」
「浄化派の名の下に不浄為りしモノ共に今こそを神罰を下さん」
興奮してしまっている冬無に、ゾンビの殲滅しか頭にないルリム。
「あなたも苦労しているようですわね」
「大鳥居さんには負けるわ」
麗華と緋音はお互いに盛大なため息を吐いた。
前衛四人に更紗を加えた五人で、ゾンビの侵攻を食い止める事になった。ゾンビは広範囲に存在しており、面単位で攻撃しなければその侵攻を防げそうにない。
「とりあえずは正面を削りますか、さて土塊にして差し上げましょう」
バイク形態のAU−KVに跨り、ガトリングを携えた更紗が先制攻撃を加える。一秒に20発を越える鉛玉がゾンビの体を粉砕した。
更紗が攻撃している間に、前衛もゾンビの群れに接触する。
覚醒してその顔から感情が消えたルリムが、ゾンビの群れに突入した。装着したシザーハンズで的確にゾンビの急所を滅多刺しにする。五指を揃えて力を込めて捻りを加えつつ突き刺し、直ちに抉る様に引き抜く事でその威力を高めていた。
「倒しても倒してもキリがないわね‥‥」
緋音はゾンビと適度な距離を保ちつつ、拳に付いたゾンビ達の血を払う。既にそれなりのゾンビを倒した筈だが、その数は一向に減らない。早く元を断たないと、いずれ囲まれてしまう事は目に見えていた。それでも今は一体でも減らす為に、拳をゾンビに叩き込む。
別の場所では冬無が麗華を引っ張りながら、ゾンビの群れに突撃していく。
「お任せ下さいです♪ さぁ、麗華さん! 行きますですよ、あは、あはは、あははははははっ♪」
「ちょ、待ちなさいな! それはきk‥‥伊万里ーー!?」
その頃、ゾンビの発生源を探索する班はゾンビに気を付けながら、ゾンビ達の湧き出て来る方へと進んでいた。籐子、朔羅、リズは探査の眼を使用し、凛は双眼鏡を覗きながら発生源を探す。
「さて、事の元凶はどこに隠れているのかしらね‥‥?」
朔羅はゾンビとの交戦を避けながら、慎重に発生源を探していた。大まかな位置は判るものの、特定にまでは至っていない。
「大丈夫、何があっても凛が守るからっ!」
凛は探索班の護衛として同行していた。
「前衛も頑張ってくれてるし、早く発生源を見つけないとねー」
前衛がゾンビの気を引いているお蔭で、探索班はゾンビに狙われる事なく探索を行えている。籐子は軽い調子で言っているが、発生源を探す目は真剣そのものであった。
「――あそこではないでしょうか?」
広範囲にゾンビが出没していたが、やはり中心点というモノが存在しているようだ。朔羅がその発生源らしき場所を突き止める。
「間違いないようね」
籐子も朔羅が指し示す方向を確認するが、間違いないようである。
「これ以上は、戦わずに接近出来ないみたい‥‥」
限界まで近づいたリズだが、これ以上は戦闘を避けられそうにない。今まで控えていた凛が大鎌を構え、籐子は無線機で発生源の大まかな位置を仲間に伝えた。
黙々とゾンビを貫くルリムは本物の機械のようで、正確に処理をしている。一切の淀みなく行われる処理は、危なげなく淡々としていた。
「いい加減にして欲しいわね!」
緋音が倒してきたゾンビは既に二桁を越えており、ボンテージには返り血がべっとりと付着している。ゾンビの動きは緩慢で脅威は無いが、問題はその数であった。
「流石にこの数じゃ、捕まるわね」
ゾンビの一体が緋音の腕を取る。一瞬、自由が奪われただけだが、それが命取りである。無数の手は、次々と緋音へと殺到した。
「あは、あはは、あははははははっ♪」
ゾンビの真っ只中でありながら、冬無はその衣装は剥がされる事もなく、次々とゾンビを切り刻む。巨大鋏で真っ二つにされたゾンビは、臓物を振りまきながら宙を舞って行った。
「全く‥‥面倒ですわね!」
麗華は両手の剣でゾンビの頭部を狙っていく。剣が閃く度に、ゾンビの頭部が脳漿をぶちまけながら吹き飛んでいった。
「いやぁ、こういうの久し振りでつい♪ って、あ、麗華さん、危ないです!」
「ゾンビ程度にそうそう遅れを取りませんわ! あ、後ろから来ようとみえて‥‥な、伊万里!? しま‥‥きゃぁぁ!?」
甲高い金属音と共に、連携が乱れた二人の武器が宙を舞う。急ぎ武器を拾おうとするが、その前に無数のゾンビが立ちはだかった。
あ〜‥‥あ〜‥‥
奇妙な呻き声を発しながら、ゾンビ達の手が二人に殺到する。そして、ついに彼女達の服を剥ぎ取った。
「きゃあぅ、やめ、あぁっ♪ いやぁぁんっ♪」
ゾンビは冬無のメイド服と下着を剥ぎ取った。冬無はエプロン、カチューシャ、手袋のみというハレンチな姿になってしまう。
「い、伊万里! 大変な事になってますわよって、こっちもですの!?」
麗華もゾンビ達に囲まれて、その装備を奪われてしまう。そして、ランニングとレオタードという、実にスポーティーな装備だけが残された。
●決戦!
「凛が突破口を開くよっ!」
凛は獣突でゾンビを蹴散らしながら、ゾンビの発生源へと向かう。
「委細構わず突貫、刺し、穿ち、貫け!」
連絡を受けた更紗は探索班と合流すると、AU−KVを装着してユビルスを装備する。そして、竜の咆哮でゾンビ達をビリヤードよろしく弾き飛ばした。
「どうやら、発生源が見えてきたようねー」
籐子の視線の先には城門のような何かがある。その門からゾンビが続々と排出されていた。特別大きな施設があるようには見えない。どうやら、あの門から無尽蔵に出て来るようだ。
「ここまで近づくと、ゾンビの数が凄――ッ!」
先に進むリズにゾンビの一体が躍りかかる。
「ふふ‥‥巫女さんが脱がされたりしたら、問題あり――でしょう?」
朔羅はボディーガードでリズの代わりにゾンビの餌食となってしまう。リズは朔羅へ手を伸ばそうとするが、覚悟を決めたその顔を見て手を止める。彼女の犠牲を無駄には出来ない。
「さぁ、裸Yシャツでも靴下オンリーでも何でもきなさい‥‥!」
遠ざかる朔羅の声が辺りにこだました。
「危ないっ‥‥って、わわわ、とっちゃ駄目だ、返せっ‥‥わぁ、見ちゃ駄目、駄目なんだぞっ」
城門に近づくにつれて、ゾンビの排除が間に合わなくなっていく。そして、ついに凛がその毒牙にかかってしまった。
「身包み剥がれるのは問題ないが、戦闘力の低下は避けたい」
更紗も少しずつ装備を奪われているが、その戦闘力は維持してゾンビを蹴散らしていく。
「全く、厄介ねー!」
籐子はゾンビを文字通り蹴り飛ばして先へと進む。もう、下着くらいしか残っていない。
装備を奪われながらも、探索班は発生源の城門へと向かっていく。
緋音は装備を完全に引っぺがされて、ブラジル水着(正式名称:スリングショット)を着せられていた。
「ああ! もう! ‥‥でも普段と余り変わらないよね」
あまり格好を気にしない緋音は以前と変わらず、拳をゾンビに叩き込んでいく。そこにゾンビを倒し続けてきたルリムが合流した。
「また、随分と変わった格好になったわね」
ルリムは小さ目の体操着にブルマという格好にされていた。それでも、全く気にする様子は無く、黙々とゾンビをシザーハンズで滅多刺しにしている。
緋音とルリムは共に数の減ってきたゾンビを打ち倒していく。
「な、なんですのこれはー!?」
麗華は自分の姿を見て、絶叫を上げる。瑞々しい青い葉っぱが、局部を隠すだけという格好であった。
「麗華さんも素敵な格好になりましたです♪」
そう言う冬無も、極小の貝殻水着にされていた。
「ふ、ふふふふふ。もう許しませんわ! 全力全壊で行きますわよ、おーっほっほっほっほ!」
弾いてしまった武器を拾い上げると、笑みを浮かべた二人はゾンビ達へと襲い掛かる。血飛沫が舞うその戦闘は、一方的な虐殺でゾンビ達が哀れに思えるほどであった。
「ようやく辿り着いたわね‥‥」
探索班がゾンビの発生源へと到着する。ゾンビから揉みくちゃにされた一行は心身共に疲れ果てていた。
「りっ、凛、なんにも見てない、見てないんだからなっ」
先陣を切っていた凛は城門に着いた事で、にこっと微笑みつつリズの方を振り返る。だが、凛は顔を真っ赤に染めてすぐに前を向いてしまった。
何故なら、リズの格好はほぼ全裸だからである。巫女服は剥ぎ取られ、下は前ばり、上は絆創膏のみとう格好であった。生えていないリズだからこそ、セーフなのだろう。
凛も白のハイレグ水着という状態になっているが、やけに似合っていた。
「お互い、いい格好になっちゃったわねー」
籐子はさらしに、褌という格好で苦笑いを浮かべていた。
「絶対に許さない‥‥」
更紗は旧スクール水着(ゼッケンに名前入り)を着せられた事が、相当お気に召さなかったようだ。ユビルスを構えた更紗はそのままゾンビを蹴散らしながら、城門へと突進する。
凛、籐子、リズも更紗に続いて攻撃を仕掛ける。
城門を攻める最中、後方からゾンビを蹴散らしながらやってくる人影があった。ゾンビの波にさらわれた朔羅が合流する。
「これは‥‥兵士さん達の恨み! そして、脱がされた仲間の恨み! 更に、私の恨み! もう一つ、私の恨み! まだまだ、私の恨み!」
帯の無い浴衣を着せられた朔羅は、丸見えになるのも恐れず、城門に向けて双剣を振るい続ける。だが、若干涙目になっていた。
「抱きしめたらお互い気持ち良いわねー」
城門の反撃によりダメージを受けたリズに、籐子がギュッと抱きついて蘇生術で回復を行う。更に申し訳程度の前ばりに手を付けて‥‥。
反撃に耐えつつ、攻撃を繰り返した結果ボロボロになってきた城門へ、最後の攻撃が決まる。
「そのふざけた機能、終わらせる」
「もう、作らせない、見るなーっ!」
更紗が城門を突き破った後、凛の大鎌が真っ二つに切り裂いた。そして、城門はその機能を停止する。
●ゾンビの後
城門がその機能を停止すると、生々しい血を流し、臓物をまき散らしていたゾンビがただの土くれへと変化する。廃墟に溢れていたゾンビはいなくなり、今までがまるで夢のようであった。
「発生源は潰せたようね」
「浄化完了」
緋音と、若干顔を赤らめたルリムが合流する。ルリムは覚醒を解いた為、感情が戻って来たようであった。
覚醒を解いた更紗は冷静を振舞っているが、自分がされた事、今の状況を思い返し内心テンパってしまう。そして、緋音とルリムのたわわな果実を鷲掴みにした。
「ん‥‥! それはダメよ‥‥」
「そこは‥‥」
二人が揉まれている最中、城門を破壊してすぐに姿を消した朔羅が服を回収して戻ってくる。泥にまみれた服はすぐに着る事ができなかったようだ。すると、すかさず更紗がその胸を狙う。
「‥‥あら、そんなに巨乳がお好き?」
朔羅はこめかみをひくひくさせ、怒りが爆発するのを耐えている。
「ケシカラン敵でした」
更紗の一言に朔羅が限界を迎える。
「さて‥‥そこに直りなさい?」
更紗を正座させると、ジト目の朔羅が説教を始めた。
「はぁー‥‥♪ スッキリしましたです♪」
城門を倒す前に流れたゾンビの血はそのままのようで、真っ赤に染まった冬無と麗華も合流を果たす。
「くぅ、酷い目にあいましたわ! 伊万里、まずは綺麗にしに行きますわよ! さぁ、リズもいっしょに――って、何してるんですの!」
籐子の足元で息を荒くしたリズが倒れているのを見た麗華は、叫ばずにはいられなかった。
「麗華ちゃんと冬無ちゃんも一緒にいかがかしらー?」
その後、なし崩し的になってしまったのは、言うまでもない。
「りっ、凛は何も見てないんだからなっ」
唯一の男性である凛は女性陣に背を向けて、その姿を見ないよう心がける。
傭兵達の活躍により、街はゾンビに襲われる事なく無事平穏が保たれた。だが、このゾンビに関わった者全てに、ある疑問が残った。
あのゾンビ達は何処から、あんな恥ずかしいモノを持ってきたのか‥‥。
それは、誰にも分からない。