タイトル:【HD】魔族の秘密兵器マスター:岩魚彦

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/11/11 23:21

●オープニング本文


※このシナリオはハロウィンドリームシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません

 ここはごく普通の剣と魔法の世界。通称、ファンタジーワールド。
 人間と魔族が対立し、戦闘を繰り広げている。

●とある魔族の貴族が支配する城
 荘厳な装飾品が大量に飾ってある部屋の中央に、より一層豪華な玉座があった。そこに腰かけているのは、青白い顔をした魔族の貴族、ハインリヒ・バァン四世。彼は口元を緩ませて、配下である騎士が来るのを待っていた。
「ハインリヒ様、何用でしょうか?」
 玉座の前に傅くのは、全身を甲冑で覆った騎士であった。頭部も兜に覆われており、その素顔を窺う事は出来ない。
「おい。どうして人間より優れている魔族が、未だに人間を根絶やしに出来ないか理由は分かるか?」
「え? それは人間の数が多すぎる事かと‥‥」
 騎士の答えにハインリヒは口の端をつり上げ、ニヤリと笑む。
「数など、魔法の前には無力!」
「では、何故?」
 突然、ハインリヒは立ち上がると、身に着けている黒いマントを翻す。
「分からないか? 道具だよ。鎧、剣、盾‥‥。人間と猿の違いはそこだけだ」
「ですが、一体どうすれば‥‥」
 ハインリヒのマントが微妙に揺れる。それはハインリヒが笑いを堪えて、肩が震えた為であった。
「私はついに完成させたぞ! 忌々しい装備だけを溶かす魔法生物を! これを見よ!」
 マントの奥から出て来た緑色のドロドロとした液体。それは意志を持っているかのようにプルプルと動き出す。
「こ、これは一体‥‥」
 騎士はその液体を触れようと手を伸ばす。
「止めておけ。お前の鎧も溶かされてしまうぞ?」
 その言葉に、騎士は手を急いで引っ込めた。その様子をハインリヒは満足そうに見つめている。そして、懐出したナイフを取り出した。金の装飾が付いた高価そうなものである。それをおもむろに床へと投げ捨てた。すると、緑の液体はそのナイフめがけて飛びついてくる。
「なんと‥‥」
 騎士は夢でも見ているのかと思った。緑の液体がナイフに纏わり付くと、ナイフが一瞬にして溶けてしまう。そして、ハインリヒが触っても何の影響もない。
「これこそ、私が対人間用に開発した『ギャ・ルゲスライム』だ!」
 騎士にとってその名前がどんな意味を持つか分からないが、とにかく凄いという事だけは分かった。
「おい、準備をしろ。早速出撃だ!」

●ハインリヒの城近くの都市
 比較的な豊かで、それなりの防衛機構を有していた都市が、今や阿鼻叫喚の地獄へと変貌していた。
「ひぇー、おかちゃーん!」
 情けない声を上げながら、パンツ一丁で逃げていく屈強な男。それに続くように何故かパンツ一丁になった男達が大量に逃げ回っていた。
「ははは! 見ろ! 私の考え通りだ! 装備を失った人間など猿同前!」
 都市を守っていた門を突破して、大通りを悠々と歩くハインリヒ。その前には完全防備を施した騎士が歩き、ハインリヒを守っている。その周囲には緑色の液体、ギャ・ルゲスライムが蠢いていた。
「キャー!」
「嘘でしょ?」
 都市の内部にいた女性達もギャ・ルゲスライムの毒牙にかかり、溶けた衣類を抱えながら逃げていく。ハインリヒは人間の逃げ惑う姿を満足げに眺めていた。

 市民たちは遠くから魔族の横暴を見ている事しか出来なかった。武器があれば戦えるが、その武器を溶かすあのスライムがいる限り、戦う事すら出来ない。
「くそっ! このままこの町は蹂躙されるしかないのかよ!」
 一人の青年が声を荒げて憤怒する。だが、具体的な解決方法はなく、ただ怒りを露わにするだけであった。
「こんな時に勇者様がいたら‥‥」
 服の半分以上を解かされて、布を抱く事で露出を押さえる女性が祈るようにつぶやいた。
 そこに、貴方を含む仲間がその場を訪れる。
「あ、貴方達は旅の方ですね! お願いします! あの魔族を追い払って下さい!」
 貴方達はその依頼を了承すると、目標の魔族を見据える。

 この街を魔族の恐怖から救えるのは、貴方しかいない‥‥。

●参加者一覧

伊万里 冬無(ga8209
18歳・♀・AA
大鳥居・麗華(gb0839
21歳・♀・BM
シャーリィ・アッシュ(gb1884
21歳・♀・HD
加賀 円(gb5429
21歳・♀・DG
周太郎(gb5584
23歳・♂・PN
柚紀 美音(gb8029
16歳・♀・SN
セリム=リンドブルグ(gc1371
17歳・♀・HG
空言 凛(gc4106
20歳・♀・AA

●リプレイ本文

●救世主登場
 魔族の貴族、ハインリヒ・バァン四世とその部下は人間の街を恐怖のどん底へと貶めていた。老若男女関係なく下着だけにされ、抵抗する術もなく一方的に蹂躙されるしかない。まさに、町は阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。
「人間など我々魔族の前では無力ゥ!」
「ハインリヒ様の言う通‥‥!」
 今まで倒される事のなかったギャ・ルゲスライムが、切り裂かれ退治された。今までにないでき事にハインリヒは、不機嫌な視線をそちらに向ける。
「何者だ!」
 その呼びかけに答えるよう、鉄の具足に覆われた足が一歩踏み出す。
「我が名はシャーリィ・アッシュ(gb1884)‥‥ハイドラグーン‥と言えばわかりやすいか?」
 白い鋼に覆われ、その手には聖剣「ワルキューレ」が握られている。純白の鎧の左肩と右肩の後ろには赤竜の紋が入っており、まさに『高位の竜騎士』と呼ぶに相応しい。
「アーマーナイト、加賀 円(gb5429)。悪逆非道の数々を許せません、この剣にかけて私が成敗します!」
 全身甲冑「ミカエル」を纏い、巨大な大剣ワールドオブワンを両腕で支えるその姿は、女性の声と不釣り合いであった。
 更に二人の間から、武闘家と思しき姿の女性が現れる。
「ふっふっふ‥‥疾風の剛拳・空言 凛(gc4106)参上! 貴様らの悪事もここまでだ! ボッコボコにしてやるぜ!」
 武闘着を纏った凛は空言流拳闘術と独自の流派を合わせた独特な構えを取った。
 その三人とは別の方向から、悲鳴とは若干違う叫び声が聞こえて来る。
「ええい! 何者だ! 緊張感が台無しだ!」
「断罪、断罪です! って、あぁぁっ♪ ぜ、全然意味がありませんでしたです♪」
 シスターと思しき女性が既にスライムの中に飛び込み、若干衣類が溶けた状態で、スライムを切り刻んでいた。
「あは、あははははっ♪ 粛清担当執行官、首狩りフユナ‥‥逝かせて頂きますです♪」
 シスターとは思えないメイド服のような衣類を纏った伊万里 冬無(ga8209)はハインリヒを無視する。
「半獣人の狩人、ミオ! 服だけ溶かすなんて、もっとやれ‥‥いや退治しなければ!」
 ワンピースにウサギの耳と尻尾を生やした柚紀 美音(gb8029)が弓を引きながら、構えを取る。
「せっかく街についたから宿で優雅に過ごそうと思いましたのに‥‥」
 狼の耳と尻尾を生やした大鳥居・麗華(gb0839)は怒りに満ちた視線をハインリヒに向けた。
 ハインリヒはその視線に答えるように麗華を見つめている。そこに、何者かが斬りかかった。
「お前の相手はここだ、優男」
 不意の一撃を受けたハインリヒは少しよろめく。そして、追い打ちのように、矢が飛んでくると、ハインリヒに命中した。
「今度は、誰だ!」
「ペネトレイトソード、周太郎(gb5584)──ただの騎士崩れだ」
「カールスラントの賞金稼ぎ、レンジャーのセリム。‥‥魔族の首、此処で貰い受ける‥‥!」
 周太郎とセリム=リンドブルグ(gc1371)は他の仲間が名乗っている間に、ハインリヒの後方へと回り奇襲をかけたのだ。
「ハインリヒ様!」
「ふふふ。これは楽しくなってきたな‥‥」
 ハインリヒは不敵な笑みを浮かべ、マントを翻した。

●ドキッ! 下着だらけの大決戦!
 周太郎とセリム以外は、ギャ・ルゲスライムを越えないとハインリヒと騎士の元にはたどり着けない。
「ハァッ!」
 シャーリィは強化魔法で機動力を上げると、スライムの群れを飛び越える。一回の跳躍では飛び越せないので、途中建物の壁を蹴って魔族の騎士へと斬りかかった。
 ガキィィンという、激しく金属がぶつかる音が鳴り響く。
「手合わせ‥‥願おうか」
「いいだろう」
 魔族の騎士はシャーリィのワルキューレを自らの剣で受け止めていた。シャーリィは騎士の兜の奥にある瞳と見つめ合う。
 その頃、凛は武闘着が溶けるのも気にせず、スライムの群れの中を騎士に向かって突進していた。
「よ、鎧まで溶かすなんて!」
 スライムに向けて大剣を振るっていた円は、自慢の鎧が溶け始めるのを見て驚愕する。
「ファイアーとるねーど!」
 美音が炎の魔法でスライムを焼いていく。だが、スライムには効果が薄く徐々に接近してきた。
「やだ、倒そうとすればするほど、服が解けちゃう‥‥」
 美音のワンピースは、裾から徐々に溶かされていく。
 冬無や円、美音の装備が溶けた事や、下着だけになった住民を見ていた麗華は、おもむろに衣類を脱ぎ捨てた。
「おーっほっほ♪ 溶かされて恥ずかしいのなら、最初から着なければ問題なしですわ♪」
 麗華の下着はゴージャスで金の縁取りがあり、露出多めで結構ぎりぎりであった。服を溶かされる心配のなくなった麗華は、スライムの中に飛び込むと鋭く尖った爪で切り裂いていく。
「あはぁっ。レイカさん、素敵なお姿です‥‥♪」
 冬無は瞳をハートマークにして、麗華へと抱きついた。緑色のドロドロに塗れながら、二人は地面を転がる。
「フユナ、いつもよりテンション高いですわ!」
「あは、あははははっ♪ 今日は下着を穿いていないのですよ!」
「いけませんよ? ガードは大事です。履きましょう♪」
 冬無の服は殆ど溶けてしまい、申し訳ない程度に大事な部分を隠す程度でにもかかわらず、仁王立ちで胸を張る。その姿を見た美音は息を荒くして下着を片手に、冬無達へとダイブした。
「あぁ! 伊万里さんの悪い病気が‥‥い、今助けます!」
 円が冬無へと手を伸ばす。だが、冬無はその手を引っ張り込み、円まで巻き込んでしまった。

「下着ぐらい穿け!」
 パーンと乾いた何かを叩く音がする。
「な、何事!」
「すまん、突っ込む相手が遠すぎたのでな」
 突如、周太郎はハインリヒに向かって平手打ちをかましていた。ハインリヒは突然の事に涙目になりながら、叩かれた頬を押さえる。
「貴様らの装備も溶かしてやろう!」
 ハインリヒが召喚を行うと、周太郎とセリムの周囲にまで緑色の液体が現れた。屋根の上にいるセリムは兎も角、周太郎はスライムと戦わざるを得ない。
「男が露出したってな‥‥エアブレイド!」
 衝撃波によって周囲にいるスライムが飛び散り、周太郎の体に付着していく。もちろん、衣類が溶けだしていく。
「行きます! シープアロー!」
 セリムは周太郎と、騎士と戦う二人に対して援護を行う。
「まずはテメーからだ!」
 武闘着はほぼ溶け白と水色のブラとショーツが丸見えの状態で、オマケに凛の体には緑のネバネバが付着している。だが、本人はまるで気にする事なく、拳を振り抜く。
「ちぃ! 硬てぇな‥‥ならこれでどうだ!」
 凛は騎士の腕を取ろうとする。だが、その事に気付いた騎士は警戒し、中々隙を見せない。
「遠距離攻撃とは‥‥邪魔だな!」
 右手をセリムへとかざしたハインリヒは、掌から火球を出現させると、そのまま放った。放たれた火球は一直線にセリムへと襲い掛かる。
「セリム!!」
 周太郎は咄嗟に迅雷を使ってセリムの元へ急ぐ。
 セリムはレンガ造りの屋根を踏み抜くと、目をギュッと閉じながら室内へと落下した。多少の痛みは覚悟していたのだが、痛みを感じないので恐る恐る目を開ける。
「大丈夫か?」
「周ちゃん‥‥嬉しいけど‥‥その格好、どうにかならないな?」
 セリムをお姫様抱っこで受け止めた周太郎だったが、装備は溶かされ既に黒地にホワイトラインのトランクス一丁である。
 そして、二人の周囲にはスライムが接近しつつあった。

「‥‥って、下着姿じゃ結局恥ずかしいじゃないですの!」
 今更になって、麗華は自分の失策に気付いて、突っ込みを入れた。
「あ、変なとこさわっちゃいました‥‥ぽ」
 冬無に下着を穿かせようとした美音は、苦戦しつつも何とか穿かせることに成功する。
「さっさとこんなスライムは倒して、そこの馬鹿をボコりますわよ!」
 怒りに燃える麗華は冬無を押しのけながら、スライムを切り裂き続けた。その姿は緑の液体でベトベトに汚れている。
「ふふふ‥‥伊万里さん、ここがよろしいのかしら? それともこちらかしら?」
 鎧を全て溶かされた円は、紺のブルマとブラだけの状態で、その女性らしい体を晒していた。だが、それ以上に雰囲気が、がらりと変わってしまう。冬無を責め立てながら、Sっぽい嘲笑を湛えていた。
「あぁん♪ ちょ、皆様そんな今場所で、あうぅん♪」
 冬無は責められながらも、こっそりと反撃を試みてスライムを相手にぶつけたり、擦り付けたりしていた。
「はぁ、はぁ、下着まで溶かしてくれれば‥‥あはっ♪ そうだ、こうすれば良いんですね!?」
 冬無は美音の下着に手をかけると脱がそうと試みる。
「放しませんよ‥‥むぎゅむぎゅ」
 すると、美音は冬無に抱きつくと、ギュッと力を込めた。密着し過ぎて下着をずらすどころではなくなってしまう。

 近接攻撃が得意な周太郎はスライムを、遠距離が得意なセリムはハインリヒをそれぞれ攻撃する事となった。周太郎はシャドウオーブの魔法を使ってスライムの接近を阻む。
「周ちゃん‥‥分かったわ!」
 セリムが放った矢は真っ直ぐにハインリヒへと向かう。魔族の騎士が間に入って阻止しようとすると、シャーリィが挑発を行った。
「魔族と言えど騎士であろう‥‥逃げるのか?」
 その一言で騎士の動きが一瞬止まってしまう。
「いくら硬くても関節は関係ねぇぜ?」
 その隙に凛は騎士の腕を取ると、関節技で腕をへし折りにかかる。だが、腕に少々ダメージ与えるが、鎧のせいで折る事は叶わなかった。
 その頃、セリムの矢は見事にハインリヒの腕に突き刺さる。
「いい腕だ‥‥」
 ハインリヒは再び火球をセリムに向けて放つ。周太郎とセリムは炎に包まれてしまった。
「‥やむをえん、奥の手を使わせてもらうか‥‥聖剣‥‥解放!」
 シャーリィが全ての力を解き放つと、竜の紋章が黄金色に輝く。
「この状態も長くは保てない‥‥一気にケリをつけさせてもらうぞ!」
 聖剣「ワルキューレ」の強烈な一撃が騎士の剣と盾を砕いた。ワルキューレを振り下ろせば、騎士は両断されるだろう。
「シャリア、ナーイス! テメーも溶けやがれ! どりゃあ!」
 騎士の背後に回った凛は、おもむろに騎士をスライムの中へと放り投げた。
「なっ!」
 その突拍子もない行動にシャーリィは絶句する。
 ハインリヒの魔法で周囲のスライムは蒸発。二人にはあまりダメージは無い。
「周囲のスライムは退治出来たんだけど‥‥」
 セリムの纏っていた衣類は全て溶け、白と水色の下着だけになっていた。
「これでも着ていろ、我慢は出来る」
 周太郎は何故か溶けずに残っていた道具袋から、コートを取り出すとセリムに被せる。
「ぅぅ‥何となく予想はついてたんだけど‥‥ありがと、周ちゃん」
 周太郎に礼を言ったセリムはハインリヒを睨みつけた。

 黒く長い髪に、膨らんだ胸元を隠す女性騎士の姿があった。鎧を溶かされ、花柄の可愛らしい下着を露出させた魔族の騎士は、羞恥に顔を真っ赤にしている。
「キャァァ!」
 下着姿を見られた魔族の騎士は主人を残したまま、逃げ出してしまった。
「おおい! 戻ってこい!」
 人間の町にハインリヒ一人が取り残されてしまう。
「あなたもこの恥ずかしさ味わうがいいですわ!」
 麗華は手に持っていたギャ・ルゲスライムを、ハインリヒへ向けて投げ付ける。ハインリヒの衣類はすっかり溶けて、黒いビキニパンツ一丁になっていた。
「いい恰好ですね! お似合いですよ」
「あは、あははははっ♪ それにしても、貧相な体ですね♪」
 冬無と円はハインリヒを蔑むように、なじってみせた。ハインリヒは激怒し魔法を使おうと、右手をかざす。
「覚悟は出来ていますよね?」
 シャーリィは聖剣を胸の前に構える。竜の紋章はいまだ黄金色に輝いていた。
「シザースローがいいかしら? それとも、シザーソニックがお望み?」
 麗華は長い爪を構えると、ハインリヒを睨みつける。
「どうやって、あのスライムを作ったのか教えてください♪」
 美音は笑顔のまま、ハインリヒのこめかみ近くで、弓矢を引き絞り脅して見せた。
「その捻じれた回路、一回叩き直してあげるよ!」
 覚醒したセリムは燃え上がる炎をバックに、弾頭矢を番えてハードヒットの準備をする。
「すまないが、これには同情できないな‥‥」
 周太郎はサングラスをかけ直すと、ハインリヒから視線を逸らした。
「貫け! 必殺! マグナムブロォオオ!」
 凛の鍛えられた拳から、超回転のコークスクリューブローが放たれる。
「ギャァァアア!」
 貴族の悲鳴が街全体にこだました。

●戦い終えて
「ケッケッケ‥‥」
 怪しい笑いを浮かべる凛はこそこそと、何かをしていた。
 戦闘が一段落して気が緩んだシャーリィはようやく自分の状態に気付く。鎧は全損、衣類も殆ど溶けてしまい、可愛らしいブラとショーツが見えてしまっていた。
「キャァァァ!」
 ぼむっと顔を真っ赤にして、凄い悲鳴を上げると建物の影に隠れて顔だけを出している。
「は、早く何か着る物を持ってきてください! これでは出るに出られませんっ!!」
 麗華はドロドロになった尻尾や髪を気にしながら、宿屋へと向かおうとする。
「どろどろで気持ち悪いですわ! さっさと綺麗にしませんと」
 そこに、スライムが飛んできて麗華の頭に直撃する。
「ヒャッヒャッヒャ! ユナナン、コン、まーちん、ミィ、セリセリ! 逃げられないぜ!」
 凛は拾い集めたスライムを手当たり次第に投げ付ける。
「あぁん♪ その勝負、乗りますですよ♪」
「私も負けないわ!」
 冬無と円も協力して、手当たり次第にスライムを投げ付けていった。
「よくもやりましたわね!」
 当然、麗華もスライムを掴むと手当たり次第に投げ付ける。
「わっ、わっ」
 露出が苦手なセリムは何とか飛来するスライムを避けようとするが、流石に数が多すぎた。
「セリム、無事か?」
 周太郎が盾となりセリムを守る。だが、それが仇となってしまう。
「オラ! シュータ、行ってこい!」
 凛に背中を蹴られた事で、周太郎はセリムを押し倒す形になってしまった。周太郎とセリムは顔を至近距離で見合わせて硬直してしまう。
「うひゃひゃひゃ! 生きて帰ってこいよー!」
 凛は愉快そうにそう言うと、二人から離れて行った。
「スライムを飼いならしたら面白いことが‥‥ふふふ」
 美音は一人、生きたスライムを抱きかかえて妄想に耽っていた。

 その後、ハインリヒはというと――
「ハインリヒ様、その、服を着ていただけませんか?」
 玉座で優雅に寛ぐ、黒のブーメランパンツ一丁のハインリヒの姿があった。新しい鎧を纏った騎士は視線をそらすようにしながら、そう提言する。
「ふむ。実は服を溶かされた時に裸の方が気持ち良い事に気付いたのだ。お前も裸になるがよい! 私は寛大な心でその無礼を許そうぞ!」
「‥‥お断りします」
 露出に目覚めていた。