●リプレイ本文
●仮装傭兵集合
ミイラ男、狼男、魔女、ヴァンパイア‥‥仮装した来場客が溢れかえる中、傭兵達も仮装して集合していた。ハロウィン一色のジョイランド内でも、全く違和感が無い。
「今日は、よろしくお願いしますね。‥‥先日の依頼メンバーがフラッシュバックするのは気のせいでしょうか?」
長い耳を付けて、白い衣装を纏い、破魔の弓を手に持ったエルフの仮装をした諌山美雲(
gb5758)が苦笑いを浮かべている。山奥の村で起きた一件の事を思い出したようだ。
「さくっとキメラを倒してアトラクションを楽しみましょうですわ」
胸元が大きく開いた衣装と、際どいミニスカートの衣装を纏い吸血鬼の仮装をした大鳥居・麗華(
gb0839)がその一件を忘れるかのように、元気に振舞う。
「皆さん、お集まりありがとうございます」
自称魔女の仮装をしたリズ・ミヤモト(gz0378)が神妙な面持ちで、集まった傭兵に今回のあらましを説明する。その最中、妙に内股気味でソワソワした様子のリズに、傭兵達は訝しんだ。
「リズは大変だったみたいだね‥‥凛達が、しっかりキメラを退治して、取り返してくるから。で、何取られたの?」
黒衣を纏い、身長を遥かに超える大鎌を肩に背負った死神の仮装をした勇姫 凛(
ga5063)は、ニコニコと無垢な笑顔をリズに向ける。「下着を‥‥」とリズが顔を赤くしてポツリと呟くと、凛の顔も同様に真っ赤へ染まっていった。二人はお互いに顔を見合わせたまま、黙ってしまう。
「女性の下着を狙ってくる‥‥何て、何て、何て――何て素敵なキメラでありますですか! 興奮してきましたです♪」
顔にはピエロのメイクを施し、生地が少ない割には派手な彩色をしたミニスカートのピエロ衣装、そして両手にはナイフを持った伊万里 冬無(
ga8209)が声高に笑う。その格好は純真な少年少女には見せる事を憚られた。
「‥下着を盗むキメラ‥‥このような不埒な輩を送り込んでくるなど許せません。遊びにいらしている方々に被害が出る前に、手早くお掃除してしまいましょう」
普段のメイド服にブラウンの猫耳と尻尾を身に着けワーキャットの仮装をしたリュティア・アマリリス(
gc0778)は静かな口調ではあったが、その瞳は怒りに燃えているように見える。
「許せない‥‥」
黒のワンピースの上に、黒のマントを羽織、大きな鎌を両手で持つ死神の仮装をするL3・ヴァサーゴ(
ga7281)の言葉は抑揚が無いものの、底冷えするような冷たさを帯びていた。
「‥‥ふむ‥‥まぁ、気にするな?」
中世時代に流行ったような海賊服に黒のホットパンツを身に着けた幽霊海賊の仮装をしたネジリ(
gc3290)がリズの肩にポンと手を乗せる。
「下着を知らない間に取るとか、じつはすごいスキル?」
頭に角、背に蝙蝠の羽を付け、黒のミニワンピースを着た悪魔娘風の仮装をした柚紀 美音(
gb8029)は感心しながらも少し落ち着かない。早く遊びたくてうずうずしているようだ。
こうして、八人の傭兵とアルバイトはキメラ退治の為、アトラクションへと向かって行く。
●ハロウィン大作戦
野外型天候シミュレータアトラクション『ウェザーレポート』。
森を模すために、木や切り株、雑草に花々のレプリカが所々に置かれている。その近くには「STAFF ONLY」と書かれた扉があり、奥は倉庫となっていた。
麗華、美音、ネジリ、美雲の四人は、まず倉庫へと向かうと戦闘準備を行う。
「倉庫は、ある程度片付けて戦闘可能なスペースを確保しなきゃですねっ」
倉庫内を片づける美雲と共に、ネジリも壊れやすい物と可燃物を他の場所へと移す。
「‥‥ふむ、これにこれ‥‥あと、それか」
麗華、美音も手分けして、それを手伝った。
丸太型コースターアトラクション『SPACE NINJA』
やけに派手派手しいネオンと、忍者を完全に間違えた派手な格好の忍者刀を持った男の絵が凛、ヴァサーゴ、冬無、リュティア、そしてリズの五人を出迎えた。
やたら楽しそうに凛がその建物を見上げているのを、他の四人が暖かい視線を送っていた。その視線に気づいた凛は仲間の方を慌てて振り返る。
「べっ、別に凛、ここに来るの、楽しみにしてたわけじゃないんだからなっ!」
凛の言い訳を聞きながら一行は建物へと入っていった。
関係者権限を使って、早々に乗り込む一行。丸太に跨って出発を待つ。
「リズ様、いかがなさったのですか?」
リズの調子が悪い事に気付いたリュティアはリズを気遣う。
「んっ‥‥な、何でもない‥‥はぁ」
リズの妙に顔を赤らめて、呼吸を荒くしている様子はとても尋常とは思えない。先程までは元気だったはずなのだが。
そして、丸太のコースターが動き出す。徐々に高度を上げていき、先のレールが見えなくなると猛スピードでレールを下っていった。
表情の変わらない者、驚きの顔の者、喜ぶ者、顔の赤みが増した者と、色々な反応を見せてくれた。
勘違いした忍者達が宇宙を飛び交う中、世界観にそぐわぬカボチャ型の浮遊物を発見する。
「居たっ、あそこ! ‥‥襲ってくるSAIGAの影」
凛はランタンを指差す。リュティアは苦無を投げてランタンを誘導すると、冬無が跳び上がりランタンを切り裂いた。その後、華麗に丸太へと着地する。
倉庫の片付けを終えた麗華、美音、ネジリ、美雲の四人は、施設内に隠れているだろうキメラを探す事にした。
「お菓子がありますよ〜〜っ!」
美雲は大量のお菓子を抱きかかえて、キメラを呼び出そうとする。
近場にあった装置を美音が操作すると、突風が吹きスカートを捲り上げていった。
「美音、キメラがどこからくるかわかりませんし周囲に注意ですわよ‥‥あら? ‥‥きゃ!?」
美雲のチェック柄ショーツ、麗華の青と黒のショーツ、そして、美音の可愛いお尻の形がはっきりと浮かび上がる白のスパッツが露わになる。
キシシシシ
馬鹿にされたような笑い声が聞こえる。パンチラに釣られてやってきたジャックの手には、ネジリの水着が握られていた。
「トリックorトリート‥『お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ』‥‥か」
ネジリはキャンディセットをチラつかせながら倉庫へと誘導する。すると、ランタンもお菓子に釣られてやってきた。
美音が機械を操作すると突如のにわか雨に襲われた。
「美音、何してますの! ‥‥きゃ!?」
着ていた衣装が濡れて肌に張り付く。麗華は自分の胸に違和感を覚えて、手で触ってみた。すると、生地越しに直接膨らみを感じる。衣装は透け、美しい体のラインがはっきりと浮き出た。
「ど、どういう事ですの!?」
「いつのまに取られたんでしょうか! はわわ」
美音も体を触って確認する。黒いワンピースなので透ける事は無くとも、豊満なモノがはっきりと分かった。その先端は少しツンとつり上がっている。
ジャックの手には彼女たちの下着も一緒に握られていた。
美雲の白い衣装は透けてしまい、出産を間近に控えた美雲の大きなお腹もはっきりと見えてしまっていた。
「ちゃ〜んと付いてきてね〜♪ ふふふ‥‥」
美雲は『お菓子の家』作戦で路上に点々とお菓子を落とし、倉庫へと誘う。
「扉、閉めますよっ!」
全てのキメラが倉庫内へ入った事を確認した美雲は、倉庫の扉を閉めた。
「早く倒してしまいましょう!」
美音はフェアリーテールを起動させる。
「ちょ、スカート! 危ないですわよ! 下着じゃないから恥ずかしくないもん! とは行きませんわよ!?」
麗華は慌てて美音のスカートを押さえる。だが、実は麗華本人は前しか押さえてなくて、みずみずしく食べ頃な白い桃が露出してしまった。
「そんな物より目の前の敵に応対しろ!」
ネジリは必死にジャックを狙うが、攻撃は空を切る。
ジャックはお菓子を奪い食べつくすとセクハラに興じ始めた。
キシシシシ
美雲のブラまでジャックに盗られてしまい、そのブラを頭上で振り回す。
「うふふ‥‥、胸が小さくて悪かったですね‥‥」
ブラを盗られた事で雰囲気が一変した美雲は、ジャックの心臓めがけて矢を射った。だが、その動きは捕らえられない。
そんなジャックをネジリが羽交い絞めにする。ジャックはわざと捕まり、背中に感じる二つの膨らみを堪能していたのだ。
「ふっ‥‥くたばれ!!」
ネジリは羽交い絞めのまま、ジャーマンスープレックスを決めた。
下着の無い状態で黒のホットパンツが際どく食い込んでいる。それはまさに、全世界の男子が待ち望んだ絶景であった。
だが、ジャックの姿が忽然と消える。閉じたはずの倉庫の扉が開けられていた。
「ふ、ふふふふ‥‥。恥ずかしい目に合わされた以上、逃したりしませんわ!」
瞬速縮地を使って麗華はジャックを追うが、倉庫を出た先で流出した傷ついた人狼と出会う。麗華はその人狼の首根っこを掴むと倉庫内に引きずり込んだ。
「邪魔した報いを受けて頂きますわ‥‥」
手負いの獣より、獲物を逃がした獣の方が恐ろしい。
『SPACE NINJA』へと向かった五人は、倉庫内でランタンとの戦いを終えていた。ジャックを逃がさないよう、一匹を囲んでいる。
「‥‥! な、何を‥‥冬無?」
「私は何もしてませんですよ?」
ヴァサーゴは何かされたような感じに冬無を疑う。
キシシシシ
突如現れたジャックは頭に白いドロワーズをかぶっていた。
「‥‥? ‥わ、わた‥我の、下着‥‥!?」
ヴァサーゴはスカートの上から確かめるが、やはり下着が盗られていた。
「凛がみんなを守るからなっ!」
凛は仲間達の前に立つ。だが、微かに風を感じた瞬間には、妙な解放感があった。
「‥‥凛は男だっ!」
顔を真っ赤にして凛が怒鳴ると、ジャックは残念そうにため息を吐く。
「隙だらけで御座います!」
迅雷で一気に接近したリュティアが双短剣でジャックの首を狙う。回避したジャックの手には大人の雰囲気が漂う下着が握られていた。
「な、なんて不埒な‥‥」
リュティアはとっさに自分の下着を確認すると、やはり盗られていた。
「あはははっ♪ 下着を盗むだなんて、お茶目なキメラじゃないですか♪」
冬無は道化師の笑いを上げながら、アーミーナイフを投げてジャックを牽制していく。
「この‥‥変態‥‥!」
冬無の攻撃で誘導されたジャックに向けて、ヴァサーゴは大鎌「プルート」を薙いだ。
キシシシシ
次の瞬間、その不快な声はなんとヴァサーゴの近くから聞こえて来る。
「ヴァサーゴ様! 後ろです!」
リュティアの言葉より先に、ジャックは長い舌でヴァサーゴの人形のような整った顔を思う様に舐めまわす。
「不埒な悪戯は、ダメなんだからなっ!」
凛の大鎌「紫苑」が通過する頃には、ジャックは別の場所へと向かっていた。
その先にいるリュティアが双短剣を構えるが、ジャックは忽然と姿を消した。
「ど、何処にいったのでしょう‥‥ひゃんッ!」
リュティアの長いスカートがごそごそと蠢いている。今彼女は下着を取られており、その状態でスカート内を荒らされているとでもいうのだろうか。
「んっ! はぁ‥‥。そ、そんな所、はしたないですわ‥‥」
一体、あのスカートの中で何が起こっているのか、何故かピチャピチャという水の音が倉庫内に響く。
「な、何してるのよ!」
リズが大剣を構えながら向かって行く。しかし、途中でリュティアのスカートが大人しくなった。リズの背後にジャックが現れる。
全員の視線がリズに集まった所で、ジャックがスカートを捲り上げる。
(「は、生えていないッ!」)
リズの禁断の地はメンバーの前に晒されて、ばっちり目撃されてしまう。
「それはやり過ぎでありますですね♪ 私もそこまではやりませんですよ!」
冬無の一撃がジャックのスカート捲りを止めさせる。リズから距離を取ったジャックへ凛とヴァサーゴが駆け寄った。
「きみは前からお願いっ! 凛は後ろから行くからっ!」
凛の言葉にヴァサーゴは無言で頷く。そして、二つの大鎌がジャックを捕らえると、そのまま両断した。
ポンという小さな爆発と共に、下着が倉庫の中に舞い踊った。
凛は下着を拾い上げると、立ちすくむリズに近づくと下着を差し出す。リズが下着を見ると、可愛いクマさん描かれたトランクスがある事に気付いた。
「リズ、取り返したから‥‥って、そっちは凛の、見ちゃ駄目なんだからなっ」
「ご、ごめん! 下着、ありがとね」
リズは顔を逸らすと黒い下着を受け取る。
●作戦後のお楽しみ
「この度は下着まで取り返して頂き、本当にありがとうございました」
閉園後の園内でリズは傭兵達の前で頭を下げた。涙目のリズに向けて、ネジリが同情の視線を向ける。
「飴‥‥食うか? ‥チョコもあるが?」
「ありがとうございます」
ネジリから貰った飴は何故か塩の味がした。
「凛はまだ撮影があるから、じゃあねっ」
元気よく手を振りながら、凛は撮影へと戻っていく。
「私は後片付けに向かいますね」
「あ、私も行きます!」
リュティアは倉庫へと向かうと、リズもその後に続いた。
貸切となった園内で、ローランド城が良く見えるベンチにネジリが寝転がっていた。作戦に使ったお菓子の余りを口に放り込む。
「あむっ‥‥ふむ、やっぱり悪戯より菓子だな‥‥甘」
ネジリは甘いお菓子を心行くまで堪能した。
美雲は相方が一緒では無いので、一人で園内を散策して楽しむ。グッズ売り場に立ち寄った美雲は生まれてくる子供に向けてプレゼントを探していた。
「あ、この帽子可愛いですね♪」
美雲は動物の着ぐるみに似た帽子を手に取り、子供がかぶる姿を想像して微笑んだ。
ローランド城からは黄色い悲鳴が聞こえて来る。
「お城とは私にぴったりの場所ですわね♪」
と余裕たっぷりだった麗華はお化け屋敷だと知らなかった。脅かされる度に大声で叫びながら、ヴァサーゴに抱きつく。
「美音‥怖いなら‥我、ついていよう、か‥‥?」
「怖いです! ひゃわっ!」
美音はヴァサーゴとヴァサーゴに抱きついている麗華に抱きついて、むぎゅむぎゅする。
「あはははっ♪ 私も怖いでありますですよ!」
全員を押し倒す感じで、冬無がダイブしてくる。全員を押し倒した冬無はみんなの体をまさぐっていた。
「って、冬無‥‥!? か、斯様な処で、こ、こんな事‥‥!?」
「何? 何ですの!?」
「わ、わ、冬無さん大胆です!」
脅しに来たスタッフが、逆に驚いたことを切実に語っていたがそれはまた別のお話。
ローランド城を堪能した四人。
「おーっほっほっほ! ま、まったくこ、怖くなかったですわね」
そう言う麗華の膝が笑っていた。
「はぁ〜たのしかったです♪」
夢見心地で美音は顔をポッと赤く染める。
傭兵達は貸切のジョイランドを心行くまで堪能した。