●リプレイ本文
●救助班突入
落ちたBFが見える場所で、救助班は待機していた。
「陽動班が始めたみたいね。じゃあ、行きましょう!」
BFからキメラが離れていく様子を見て、シャロン・エイヴァリー(
ga1843)が先頭に立ってBFへと向かう。
「行くぞ、ティナ。依頼中はお前で遊んだりはしないので安心しなぁ。‥‥依頼中は、ね」
レインウォーカー(
gc2524)は陽動班を心配するティナ・アブソリュート(
gc4189)に向かってニヤリと笑う。
救助班はBFの後方から内部へと突入した。陽動が上手く行っている為、艦内にキメラの姿は殆ど見えない。
「囚われている方々を無事に救出できる様、全力を尽くします」
硬い決意を胸にリュティア・アマリリス(
gc0778)は二本の短剣を握りしめる。
「今回の任務は、捕らえられた人達の救出‥‥。必ず助ける‥‥、この身に代えても‥‥」
悲痛な想いを胸に御沙霧 茉静(
gb4448)は、先が見えない程長い通路を見つめた。
●救助者を救え
作戦時間は5分。時間が非常に少ない為、救助班は左右二手に分かれてBF内を探索する事にした。
A班の構成は相沢 仁奈(
ga0099)、シャロン、遠石 一千風(
ga3970)、茉静の四名。
A班は先ず左手にある部屋へと侵入する。
「ウチは先頭に立って行動するでー」
仁奈と共に先頭を進む茉静は部屋の扉を開けた。次の瞬間、部屋の奥から触手が伸びてきて、仁奈と茉静を拘束すると部屋の中に引きずり込む。
「! こ、これは‥‥!」
ぬるぬると蠢く触手が仁奈と茉静をがんじがらめにすると、その肉体を味わうように撫でまわす。触手は容赦なく服の間にまで入り込んできた。
「んっ‥‥はぁ‥‥こ、これが触手なんやね‥‥」
「そんな‥‥そこは‥‥駄目‥‥」
うっとりとする仁奈と茉静をシャロンが眺め、一千風は背を向けて顔を真っ赤にしていた。
「何でかしら‥‥あんまり罪悪感を感じないのだけど‥‥」
シャロンは苦笑いを浮かべると、二人が脱出するのを待つ。
B班の構成は樹・籐子(
gc0214)、リュティア、レインウォーカー、ティナの四名。
「集中集中‥‥よし!」
ティナはいつものように自分へと言い聞かせる。
B班は右手を進んでいくとあからさまに怪しげな通路を発見する。周りの通路とは材質が違い、うねうねと蠢いていた。
「‥‥なんて悪趣味。女性陣は気をつけなぁ、って言っても遅かったかぁ」
レインウォーカーは女性達に注意を促したが、既に遅かったようだ。
「お姉ちゃん、どちらかというと絡まれるより絡む方が好きなのよねー‥‥」
先頭を進んでいた籐子が突如伸びてきた触手に絡まれた。その豊満な体を弄ぶように、触手が籐子の体を拘束し這っていく。
「籐子様が引き受けている間にお早く!」
触手に捕まった籐子の隣をB班は通り過ぎて行った。
「はぁんっ! ‥‥うんっ‥‥はぁ‥‥」
上気した顔の籐子の口からこぼれる色っぽい声が、廊下中に響く。ティナは顔を真っ赤にして視線を落とした。
B班は無事に触手廊下を通過する。その奥には扉があり、開ける為に手をかけた。
同時期、キメラと接触したA班は戦闘へと突入していた。
「‥‥ここの設計者、ホント嫌いだわ」
グールを見つけたシャロンは手にしたガラティーンを二回振るうと、その息の根を止める。死者を持て遊ぶような設計者に対して、真剣に怒っているようだ。
その先にある部屋へと慎重に踏み込むと、謎の装置を見つける。
「もしかして、キメラプラントかしら‥‥」
一千風はその装置を見て、顔をしかめた。悲痛な表情を浮かべた茉静は、その機械を見上げながら、武器の刀に手をかける。
「間違いなさそうやね。こんなモンとっとと壊すッ!」
「こういう力仕事は任せなさい!」
A班はプラントを一瞬で破壊し尽くすと、さっさとその部屋から出て行った。
扉を開けたB班は部屋の奥へと入っていく。すると、突如扉が閉まり三体のグールが出現した。
「死んだ人間の再利用、か。合理的なのは理解できるけど、悪趣味すぎて反吐がでるなぁ」
最初に動いたのはレインウォーカーであった。疾風で回避力を上げておき、刹那で目にも止まらぬ一撃を放つ。そして、円閃を使用した一撃を決めた。
「参ります‥」
レインウォーカーが攻撃したグールに対して、リュティアが二刀の短剣を振るい止めを刺した。
「援護します!」
ティナが真デヴァステイターの銃口をグールに向けると、射線に気を付けながら発砲する。それに合わせて籐子もターミネーターを乱射した。
残ったグールは突っ込んで来ると誰彼かまわず噛み付いてきた。レインウォーカーは回避したが、他のメンバーはダメージを負ってしまう。
リュティアが銃弾を受けたグールに止めを刺すと、残りのグールをレインウォーカーがダメージを与える。
「これで、止めです!」
ティナの放った銃撃を受けてグールは息絶える。
B班は部屋の奥にある装置を操作して、扉を開き外へ出た。
その時、A班も同じようにキメラ部屋に侵入していた。
「やらせない」
一千風の放ったエーデルワイスによる素早い攻撃で、グールは既にバラバラになっていた。
「私も負けてられないわね!」
シャロンも例のごとく、グールをあっさりと料理した。
「ウチもいっくでー!」
仁奈は両手に装着したベルニクスでグールをズタズタに切り裂く。
「お願い、これで引いて‥‥!」
素早い太刀筋でグールを切り裂くが、命までは奪わない。茉静は完全に無力化され床に倒れるグールを寂しそうな瞳で眺めていた。
作戦開始から1分経過。
A班、B班共に大した被害無く、BF内を探索していた。
A班は扉を見つけるとすぐに突入した。つい、シャロンと一千風が先行して突入してしまった。
「きゃああっ! ふ、服ひっぱるんじゃないわよっ!」
「このっ、こんなので」
運悪くそこは触手部屋で触手に捕まってしまう。
「二人だけずるいで!」
仁奈はちょっと違う所で怒っていた。
B班も同様に触手の餌食となっていた。
「ここは、自力で‥‥何‥とか、致し‥ます、皆様は‥‥進んでっ‥‥下さい」
先頭を歩いていたリュティアが触手に捕まっていた。戦闘用のメイド服に触手が巻き付いており、その姿は妙に色っぽい。
「可愛い子が絡まってる状況も悪くないねー」
籐子がリュティアの姿を堪能している後ろを、レインウォーカーは無言で通り過ぎていく。
「い、いけません‥‥そ、そんな‥‥所‥‥」
ついに触手がスカートの中を襲い始めた。
「さ、先を急ぎましょう」
ティナはリュティアの名誉を守る為、籐子を連れて先へと進む。籐子は残念そうな表情をしていたが、大人しく指示に従った。
何とか触手部屋を抜け出したA班が通路を進んでいると、突然グールが襲い掛かってきた。先頭を歩いていた仁奈と茉静はダメージを受けてしまう。一千風はその素早い身のこなしで難なく回避した。
「邪魔やでー! とっととどきな!」
仁奈が攻撃を仕掛け、一千風が止めを刺す。
「先に進みましょう」
一千風は時間を気にしながら、先に進もうとする。
「待って。通信機から‥‥」
茉静の言葉でA班の全員は無線機に耳を傾けた。
B班は扉の前でリュティアを待っていた。
「送れて申し訳ございません」
触手から抜け出したリュティアは軽く肩で息をしていた。乱れていたメイド服もある程度整えられている所から、メイドとしての拘りが窺える。
四人揃った時点で扉を開けると、そこには触手に捕らえられた人々がいた。
●犠牲を乗り越えて
触手を片っ端から切り裂いて、捕まった人々を救出する。
人数は15人。
先ずは捕らえられた人たちの健康チェックから始めた。
触手によって人々が捕らえられていた事を思い出した籐子は、嫌悪感を露わにした。
リュティアとティナは怪我をした人がいないか一人一人見て回る。
「‥‥酷い格好だなぁ。ほら、貸してやるよぉ。後で返せよぉ」
レインウォーカーは一際酷い格好をした女性にコートを貸してあげた。
「あ、あのお名前を‥‥」
「ボクは、ただの道化さぁ」
名前を聞いてきた女性に対して一言いうと、その女性の前から去っていく。
15名救助した事を無線機にてA班に伝え、B班は脱出の準備に取り掛かった。
無線を受けたA班は少しホッとする。別働班は上手く要救助者を助けられたようだった。
「15名‥‥無事でよかった‥‥」
「次はウチらの番やね!」
仁奈と茉静は意気込んで先に進む。そして、見えてきた扉を開けた。
「‥‥なんでここまで‥‥ホントにもう!」
中は一面触手だらけ。10名程度が捕まってぐったりとしている。その様子を見たシャロンは嫌悪感を露わにした。
「な、何てことを」
一千風はこんな仕打ちをするバグアに怒りを覚えつつ、触手を斬って要救助者を助けていく。
一千風と茉静は要救助者の体調を見て回る。実験に使われていた為か、外傷は治っており体調も良好そうであった。
「ウチらが来たんや、もう安心やでー」
「助けが来たんですね‥‥ありがとうございます」
黒髪に黒い瞳の日本人風の女性が、仁奈に頭を下げる。どうやら、傭兵の一人のようだったが、詳細は分からなかった。
「全員、目を覚ましなさい! 脱出するわよ!」
シャロンは11名いた要救助者に対して檄を飛ばす。脱出の事を考えると、いつまでもゆっくりしている訳にはいかない。
茉静は無線機で11人全員無事であることを、B班に伝えた。そして、A班は要救助者を連れて脱出する。
作戦開始から2分経過。
B班の元に茉静からの救出連絡が入った。これで、後は脱出するだけである。
「全員無事と‥‥後は脱出するだけだなぁ」
「ええ、本当によかったです」
そんなレインウォーカーとティナの前に触手通路が立ち塞がる。流石に捕まったばかりの要救助者達は、その触手に少々怯えた。
「ここは、お姉さんに任せないさいよー」
籐子が触手通路へ足を踏み込むと、あっという間に触手に拘束される。再び獲物を得た触手は、喜ぶかのようにその体を堪能していた。
「さぁ、皆さん今なら安全です」
リュティアが要救助者を誘導していく。
「んっ‥‥これ‥‥中々じゃない‥‥の」
要救助者達は赤くなった顔を伏せながら、触手の脇を通って行った。
作戦開始から3分経過。
要救助者のスピードに合わせている為、探索時より時間がかかっていた。ゆっくりと進むしかないが、その分慎重に動ける。
「今度はウチの番やからね!」
触手通路を前にした仁奈は嬉々として突撃していった。すぐさま触手に絡まれた仁奈の隣を通って行くと、その向こうにはグールが接近していた。
「食い止めるから、進んで」
一千風が先手をとってグールへと突っ込んでいくと、あっという間にグールを切り刻む。
仁奈の豊満な体に触手もご満悦のようで、その体を舐めまわすように這っていった。
「う、ウチ‥‥おかしくなりそうや‥‥」
仁奈も触手にご満悦である。
B班も同様にキメラと交戦中であった。背後から迫ってきたグールの対処を行う為、後衛のティナとレインウォーカーが戦っていた。
「うんっ‥‥皆さま‥‥早く‥‥お願い‥‥見ないで‥‥」
「早くしちゃってねー。こら、そこ見上げないの!」
触手通路で囮となったリュティアが触手の餌食となっていた。迫るキメラから逃れる為、リュティアが犠牲となり、籐子が要救助者を誘導していた。
後衛はまずティナがゼフォンで敵を切り裂くが、止めには浅い。
「レインウォーカーさん!」
ティナとの連携で、レインウォーカーは【OR】黒刀「歪」に円閃を乗せて振るう。
「嗤って逝け。この世に留まる必要はないだろぉ」
無表情にそう告げるが、グールは既に息絶えていた。
一方、前方からもキメラが襲い掛かってきた。
「アタシそういうの気に入らないんだけど?」
覚醒して冷徹になった籐子がターミネーターを撃ちまくる。だが、グールは徐々に接近して来ていた。このままでは要救助者が攻撃範囲内にという所で、メイド服を乱したままのリュティアが颯爽と現れる。
両手には機械剣をもってグールへと斬りかかる。そして、止めとばかりに全スキルを発動した。
「参ります‥‥死の舞踏(ダンスマカブル)!」
二連撃、疾風、迅雷を併用した連続攻撃がグールをバラバラに切り刻んだ。
「新しい敵戦力! バグアと、とんでもないキメラだ!」
突如、無線機から別働隊の連絡が入る。その声はかなり焦っているようであった。
A班もB班も先ずは任務を遂行する事を優先する。
A班は再び触手通路に出くわす。触手係の仁奈はまだ前の触手に捕らわれたままだ。
「早く、脱出しなくては‥‥」
前衛を務める茉静が意を決して触手通路へと足を踏み入れ、その餌食となってしまう。その肢体を這いまわりながら、触手は茉静を拘束した。
「‥‥設計者、頭おかしいんじゃないのっ?」
「私は、大丈夫‥‥。皆を連れて早く外へ‥‥!」
後衛のシャロンは茉静の代わりに前衛に立つと、要救助者を先導していく。茉静の犠牲を無駄にしないためにも、シャロンと一千風は心を鬼にして通路を進んでいった。
そして、この廊下には仁奈と茉静の艶っぽい声が響き渡る。
「こちらターニャ・クロイツェン。艦内北東部に大量のキメラを視認、退却します」
また別働隊からの通信が入る。その様子はかなり深刻なようだ。
「北東部、男性が倒れています、至急応援を」
作戦開始から4分経過。
距離的に近かったB班が先に出入り口へと到着する。そこで待ち構えていた別働隊が要救助者を運んでいく。
レインウォーカーは毛布にくるまれた女性から、コートを返してもらうと無言で羽織った。そして、B班は増援を考慮して出入り口でキメラを待ち構えた。
だが、キメラの増援が来ることは無く、A班が到着した。
●任務完了
要救助者26名を誰一人負傷させる事なく、任務は終了した。
ティナは任務終了を陽動班に向けて無線機で報告した。
「無事終わったなぁ、ティナ。言っただろ、依頼中は真面目だって。しかしまあ、疲れたねぇ。帰ったらゆっくり休んで、たっぷり遊ぶとしよう‥‥お前でぇ」
「え? え? なんで、私でなんですか!」
服装をしっかりと正したリュティアが頭を下げる。
「皆さまお疲れ様でした」
「お姉ちゃん服がボロボロになっちゃったわー」
そういう割に籐子は楽しそうであった。
「お疲れ様でした‥‥」
「ウチはもう少し触手と遊んでたかったなぁ」
茉静は疲れた様子だったが、仁奈はまだまだ元気いっぱいであった。
「あんなモノ、私は二度とごめんですから!」
「みんなが無事で良かった」
怒りを露わにするシャロンと、穏やかに微笑む一千風は対照的に見える。
救助任務は成功で幕を閉じた。
だが、気になる通信をキャッチしていた為、傭兵達の心にはわずかな不安が残る。だが、別働隊も同じ傭兵、きっと無事任務を全うするに違いない。