●リプレイ本文
●扉と隊員
早朝、隊員達は博士が作った扉の前に集合した。
「勘弁してくれ‥‥またあいつか‥‥」
「ですね‥‥またあの博士ですね‥‥懲りませんね」
前にも博士にあったことがあるメンバーである草壁 賢之(
ga7033)、天狼 スザク(
ga9707)、ジェット 桐生(
ga2463)らが博士についてしゃべっているのを聞いてエリアノーラ・カーゾン(
ga9802)が質問を投げかけた。
「え、これって訓練じゃないの‥‥?」
「ああ、どちらかというと博士のいたずらな討伐依頼だな」
「前にも同じような訓練と称した依頼があったんだよ」
ここで雷(
ga7298)が会話に割ってはいる。
「ふーん、そうなのか、俺は雷だ! 博士とやらのことは良く知らんがよろしくたのむぜ!」
「こちらこそよろしく頼みます」
「あ、私はエリアノーラ。でも長いでしょ? ネルでいいわ」
そして皆、様々に挨拶を交わした。
すると突然上の方から声が聞こえてきた。
「皆さん、今回の暗号はどうだったかね? 解けないだろう!」
これは、聞き覚えがある方もいるだろう。博士の声だ。
「ふふん。解けないときは私を呼び給え! ふはははははは!!!!」
それだけ言うと博士の気配は消えてしまった。
全員ボー然としていた。それもそうだろう、わざわざこんな朝早く出てきたのはキメラを退治しなければいけないからである。
でも、博士は皆が集まるのを見計らってさっきの言葉を言ったのが予測できる。博士はいったい何時からここら辺りに潜んでいたのだろうか。
「えっと、暗号は‥‥はい、さっぱりわかりません。私は皆さんの意見に身を委ねることにしましょう」
まず言葉を発したのは天狼だった。それに雷が続く。
「暗号? んなもん俺もよくわからん! 相棒に任せるぜ!」
と言いつつ賢之の方に目配せをした。
皆、博士のことは無視することに決めたようで着々と暗号の解読がなされていく。
「これは個々の文字を、一定のルールに従って変換する暗号だ」
ジェットがある一定の法則を言い、五十音順が書いてある紙を取り出した。
「あっそういうことですか〜」
石動 小夜子(
ga0121)がその紙を見て手をパチンと打ち鳴らした。そこに草壁も解読を手伝う。
「うんうん、カエサル暗号みたいに文字ずらせば‥‥ぉ、いけるいけるッ」
「おおっ! なるほどな」
「変換といっても今回のは簡単で、ひとつ前の文字にずらせばいい。前半は『キメラのしゅるいはキメラアントで、ちいさいくろいこんちゅうでキバをもちます。かずはふめいです』後半は『にんげんとじかんとせいめい、これらかられんそうされることがらとはなにか? ヒントはダーウィンである』だ」
この暗号の単語にいち早く反応した二人がいた。
「数不明って、わざわざ暗号にせんでも」
「キメラアント‥‥かぁ。黒くなければいいんだけど」
ルフト・サンドマン(
ga7712)が苦笑いをしながら言ったのにたいして、ネルは落胆して肩を落としている。
「んー、前半は良いとして後半のはどういう意味だろう?」
「むぅ‥‥二重の暗号ってヤツか‥‥? ヒントがヒントになって無い‥‥」
ここで辰巳 空(
ga4698)が案を出した。
「やはりダーウィンと言えば進化論ですよね‥‥でも、そうすると‥‥」
そして八人が導き出した答えは『進化』、『能力者』、『突然変異』を順に試していくというものだった。
「よし、博士のことだからまだ何か仕掛けてあるかもしれないが、とりあえず『進化』を入力してみる」
皆、うなずきその様子を見守る。
電光ボードに『し』『ん』『か』と順に映し出され‥‥決定キーが押された。
ドーンッやらバーンッやらの音もなくただかすかにカチッと音がしただけだった。
「開いたんですよね?」
「たぶん?」
ジェットが前に出て、押すと扉はすんなり開いた。
「開いてるな‥‥」
「おお、忘れないうちに。ネル、これを」
「あっランタンね。ありがと、ルフト」
●洞窟の中で
隊員達は覚醒して洞窟の中へと入ると、それぞれが持参してきた懐中電灯やランタンの明かりをつけた。
「ちっ」
入り口近辺には特にキメラが一匹しかいなかったことにたいして、雷が持っているバスタードソードを投げ放ちながら舌打ちをした。
「入り口近辺にはあまりいないのね」
「だから博士も中に入ることができたんじゃないでしょうか?」
「ふむ、だとするともう少し行ったところに居そうですね」
「注意しながらツーマンセルで進もう」
石動とネル、ジェットとルフト、辰巳と天狼、賢之と雷で行動を共にし、洞窟の奥へと進んでいった。
途中、照明弾も使いながら注意して奥へと進んでいくが、なかなかキメラは見あたらなかった。
そして、ようやく気配とカサカサという音が聞こえだしてきた。
「近いな‥‥」
「これはうじゃうじゃと‥‥発見です」
「くるぞ!!」
叫び声と共に石動にキメラアントが飛びかかった。
「飛ばないだけアレよりマシ‥‥アレよりマシ‥‥アレよりマシ!」
すかさずネルが間に入り防御の態勢を取った。
「奥に固まっていたか‥‥」
ざっと見ただけで十数匹はいるような黒い絨毯となっていた。
大きさはバスケットボールくらいはあろうかという巨大な蟻であった。
「うぁ‥‥驚きとドン引きと恐怖を足して焼酎で割った感じだなこれは‥‥」
まず石動が周りに注意しながら刀で一閃する。
「ハッ!」
また少し離れたところでは辰巳がキメラアントの頭上に刀を振り下ろしていた。
だが、キメラの数は果てしなくどんどん隊員達へと向かってくる。
「多いな‥‥」
ジェットが向かってくるキメラを攻撃と同時に吹っ飛ばしながらつぶやいた。
ルフトもその横に立ち隊員全員に向かって励ましの言葉を送る。
「数が多いだけじゃ! 注意して戦えばどうということは無い!」
「あ゛〜畜生、めんどくせぇ! 博士後でシバく!」
そう叫びながら、天狼も近くの敵を弾き飛ばす。
ここで雷が不敵に笑い賢之を見た。
「待ってたぜ、この時を! 行くぜ、グラたん!」
「ああ!」
「俺のエミタが囁きかける!」
「キメラを滅せと雄々しく咆える!」
そう言いながら雷は剣を構え、賢之は即射を使い準備をした。
「連激!」
「必殺!」
「「フォッカー・レイジィィィィィ!!」」
そして雷は縦方向に剣を回転させながら前進していく。その合間に賢之は瀕死になっているキメラにトドメを刺しながら雷の援護をした。
「ちょっ!!! 突進したら囲まれるぞ!」
ジェットが言ったのは時すでに遅く、雷は敵のど真ん中にいた。
雷と賢之の攻撃は周りの敵を蹴散らせることは蹴散らせたが、その周りの周りまでには攻撃が及んでいなかったのだ。
わさわさと雷の方へとキメラ達が寄っていくが、
「虫のくせに」
「甘い!」
石動とネル、辰巳と天狼のペアが雷の方へと応戦した。
これで大分とキメラは殲滅されて、残りの駆除となった。
「ほら、そっちにいったぞ! 足元だけでなく壁にもいるぞ!」
「軍隊アリに道開けろっての‥‥ッ!」
最後の一匹もようやく倒せた。
「これで全部だな」
●いたずら
外に戻ってきた隊員達は扉の前で少ししゃべっていたところに、博士がひょうひょうと現れて言った。
「おろ? お主達まだこんなところにいるのか? しょうがない暗号は教えてやるとするかのぅ」
皆、呆然とする他なかった。
「君、なんか馬っぽいね」
博士は扉に行くまでに雷のことを指し、そんなことをぼやいた。
「ぬあっ! 開いているじゃないか! ということはもう訓練は終わったのだね」
動揺を悟られまいと、冷静にゆっくりと隊員達の方へと向き直る博士。
「お久しぶりです。今回はまともな服ですみません」
「おほん。うむ、久しぶりだのぅ。なかなか早く訓練も終わったようだし君たちは優秀であるな」
「博士、よくも虫型キメラなんか連れてきてくれたわね!!!」
「黒い虫なんて、全部絶滅すればいいのに‥‥」
石動が博士の胸ぐらをつかんで食ってかかり、その後ろにはネルが控えている。
「いや、すまん、いや、ちょっと待て、もう一つ言わないといけないことが‥‥」
「それでは、お仕置きの時間ですか‥‥」
ルフトやジェットといった輩が博士を取り押さえ、他の皆が博士の白衣をはぎ取りセーラー服を着せ、コサージュを着けていく。
「ククク‥‥似合っていますよ」
「お前‥‥た‥‥ちっ!」
「さぁ、みんなで記念写真を撮りましょう」
わははははと笑いながら博士を真ん中にして皆で写真を撮った。
「また次の依頼で相手になりますよ」
「写真の現像お願いします」
「皆で暗号を解くのは楽しかったな。博士、次も面白いのを頼む」
そして博士は半べそをかきながら隊員達が去っていく方向を見て叫んだ。
「今回はお詫びしようと‥‥思ったのに‥‥次こそ覚えてろよおおおおおおおおおお!!!」