タイトル:でんでんむしむし〜♪マスター:石倉蛇

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/06/16 01:08

●オープニング本文


 ここ最近、梅雨の時期には早いのに雨がずっと降り続いていた。
『ムリはいったいどこにいるマイ‥‥?』
 こいつはカタツムリ型のキメラのマイ。ムリとはマイの相方で同種のキメラである。
『ムリはいつも一人でどこかに行ってしまってこっちのことも考えて欲しいマイ』
 どうやらムリが勝手な行動を取って、はぐれてしまったようである。
『ほんといつも世話が焼けるマイ‥‥どこに行けば合流できるマイか‥‥』

『でんでんむりむり〜♪ カタツムリ〜♪』
 ノソノソ、ヌラヌラと大きな渦巻き状の殻を背負って歌(?)を歌いながら徘徊するムリ。
『梅雨の時期と照らし合わせて、雨をいっぱい降らせるムリ』
 実際は時期は少しずれてて、早い。そんな天然なところが少しかわいいムリ。
『雨をいっぱい降らせれば作物は枯れるし、災害が起こるし、いいことずくめだムリ』
 だが、考えることは至極真っ当・・・・ではなくキメラにふさわしく極悪なように感じる。
 そもそも雨というものは海の水が蒸発して空にたまったものをまた地上へと戻す行為だ。
 それを否応なしにし続ければ自然の摂理は壊れ、災害が起こるのは必至である。
 そう、その災害が起これば自分も危ない目にあうことがある。だがそんな事を考えているのかはいざ知らず、それほどの知能をキメラが持ち合わせていないといったこともあるだろう。
『どんな災害が起こるんだムリ。楽しみだムリ〜』
 そんな二匹のキメラであるが、実際にこのように考えられるのかはわからない。
 でも、犬や猫のようにこんな感じなのだろうということがうかがい知れるのだ。

 今回の雨が降り続いている原因は、UPCの調査によって明らかとなった。
「今回の件はカタツムリ型のキメラの仕業ということが分った。このまま雨が降り続けば甚大な被害になってしまう。数は二匹、触手と甲羅を持っている。水弾も使ってくるようだ。大きさは1メートル弱。退治するか弱らせれば雨を止ますことはできるので対処して欲しい。場所は集まり次第報告するが森なので探索の準備もしておいてくれ。健闘を祈る」

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
植松・カルマ(ga8288
19歳・♂・AA
御凪 由梨香(ga8726
14歳・♀・DF
虎・紅海(ga8980
16歳・♀・BM
緑(gb0086
15歳・♂・GP
黍瀧(gb0631
35歳・♂・BM

●リプレイ本文

●いざ森へ
 早朝、2つの班に分かれてカタツムリ型キメラを探索、退治することにしていたが、森に入る前に事前確認のため隊員達は集まった。
 森を探索するということで、皆それ相応の格好をしてきている。
「災害を防ぐのもだけど、ずっと雨が降ってると気が滅入っちゃうよね。早く倒して雨を止ませよう」
 御凪 由梨香(ga8726)が言ったの聞き、皆同意して森へ入ることとなった。

「かたつむり、かぁ‥‥ちっちゃいころ、よくツノつんつんして、遊んだ、なぁ」
 森に入ってすぐに、緑(gb0086)がつぶやくように言った。
 この班、つまりA班はドクター・ウェスト(ga0241)、植松・カルマ(ga8288)、虎・紅海(ga8980)、緑である。
「レイニースネイルと言ったところかね〜」
「日本では雨を降らすなんて‥‥カタツムリじゃなくて‥‥これ、アメフラシとか、言いませんか‥‥?」
「おう! 雨を降らすのはカタツムリじゃなくてアメフラシっすよ!!!」
 森の中は、雨は比較的大降りにはなっていない。木々が遮っているせいもあるだろう。
「雨が気持ちいいぜぇ‥‥嵐になる前ならよぉっと」
 虎が先頭で草をかき分けながら上を見上げた。

 一方同じ空の下で行動しているB班のナレイン・フェルド(ga0506)、辰巳 空(ga4698)、御凪、黍瀧(gb0631)もまた草をかき分けながら森の奥へと進んでいた。
「雨の山は久しぶりだ、よく歩き回ったものよ。うり坊を追い回してみたりしてな」
 そう言いながら黍瀧は先頭を歩き、他の三人を誘導していく。
「森とか山とかは虫が多そうで絶対に一人では嫌だわ‥‥」
 げんなりした様子でナレインが応対した。
「でも、克服するために今回来たのじゃろう?」
「ええ‥‥いろいろと失敗が重なって‥‥」
「だけど、克服しようと思うって偉いですね!」
「私もこの手の生物はあまり好ましくありませんが、苦手なモノをなくすのは難しいですからね‥‥」
 御凪と辰巳も会話に混ざってくる。
 そうこうしているうちに結構奥へと来ていた。
「ん? もしかしてあれじゃろか?」
 でかい葉の上でノソノソと行ったり来たりしているモノがそこにいた。
「きゃっ‥‥ヌメッとしてそうで気持ち悪い‥‥」
「気づかれていないようですね」
「A班に連絡入れてから退治だね!」

 A班ではこの広い森で大きいとはいえキメラは見つかるのだろうかという不安が過ぎっていた。
「んー、見つからないッスね‥‥B班に連絡を入れてみッスよぉ」
 植松は無線機を取り出してB班へとつなぐ。
「こちらA班ッス、そちら状況はどうッスかぁ?」
「‥‥ジジッ‥‥はい、こちらB班、辰巳。今連絡を入れようと思っていたところです。キメラを一匹確認したのでこれから排除します」
「B班の方は見つかったみたいッス」
 植松は他の三人にB班が発見したという事を伝えた。
「‥‥ジジッ‥‥そちらはどうでしょうか?」
「おっと、こっちはまだ見つかってないッスよぉ。がんばって探すッス!」
「‥‥ジジッ‥‥了解。それではまた後で」
「ういッス! また後で!」
 植松が無線機での会話が終了したのを見計らって、ドクターが切り出した。
「こっちも早く見つけてしまわないとだな」
「そうッスねぇ」
 虎がまた空を見上げていた。
「‥‥おい、ちょっとあいつじゃないか?」
 皆、一斉に上を向く。
「こんな、身近に、いるとは‥‥」
「ヒャッホー! 見つけたッスよぉ!」
「ちまちまと隠れおって‥‥皆、戦闘準備だー」

●ぬめぬめっとしたモノ
 B班が見つけたキメラはマイの方であった。
 ムリを探して彷徨ってるところを見つけたようだ。
『ムリ‥‥どこにもいないマイ‥‥』
 まず前衛要員の辰巳が瞬速縮地を使いキメラに接近し仕掛けた。
 ズガンッ!
 貫通弾を用いたショットガンでキメラを打ち抜いた。
「甲羅なら‥‥あんまり気持ち悪くない、かな‥‥」
 そしてキメラの後ろに回っていたナレインが瞬即撃を使った。
『なにするマイ! かなり痛いマイ!』
 マイは近くにいるナレインに触手で反撃した。
「いやぁぁあああ!」
 あまりの気持ち悪さにとっさにしゃがみ込んでしまうナレイン。
 だが、それが功を奏してマイの触手は空を切った。
 マイはまだ攻撃の手を止めない。少し離れている御凪に向かってシュッという音と共に水弾が放たれる。
「んっ」
 少し離れていたため、かすった程度ですんだがそれでも多少のダメージを負ってしまった。
 しかし、隊員達はひるまずに攻撃する。
「さて、天狗というものを見せてやろうかの。まあ葉団扇も蓑も持ってはおらんがね」
「雨を降らせるのは、そろそろ止めてもらうよ!」
 この波状攻撃はマイにはたまらなかった。
『四対一とか卑怯すぎるマイ。とりあえず逃げるマイ』
 ノソノソ、ヌラヌラと隊員達がいない方向へと向かった。
「鬼ごっこかね? 嫌いではないが、もう少し晴れた日にしたいものだ」
 瞬速縮地で一瞬にして黍瀧はマイの行き先へと回り込む。
『あわわわわ。殻に隠れるマイ』
「キメラが逃げていっているのに‥‥これ以上、情けない姿‥‥見せるわけにはいかないわよね‥‥」
 殻の中に逃げ込んだマイなのだが、カタツムリには蓋がないのである。ナレインはその開いている穴へと爪を突き刺した。
「‥‥‥‥」
 ナレインは急に黙ってしまった。感触が嫌だったのだろう。
 次に口を開いたのはやはり拒絶の言葉だった。
「やっぱりダメ‥‥」
 ナレインはその場に座り込んでしまったが、辰巳がその出入り口である穴に銃口を入れる。
「逝ってしまいな!」
 ズドンッ! ズドンッ! ズドンッ!
 計三発の銃声が森に木霊する。
 そしてマイは完全に沈黙した。
「終わったみたいだね。A班に連絡とるね」

 A班が見つけたキメラはムリの方であった。
『ムリムリ』
 ムリの方から先に水弾をあちこちに飛ばしてきた。
 一つの水弾が緑の横を掠めた。
「うわ‥‥これ、直撃すると、洒落にならない、かも‥‥」
 移動速度は極端に遅いのを考慮して虎は獣突で反撃した。
「ったく、こういうのは苦手なんだがやるしかねぇか!」
『ぎゃぁああムリ』
 後方に吹き飛ばされるムリ。
 緑が瞬天速を使い、その吹き飛ばされた位置へと回り込み挟み撃ちの態勢をとる。
 戸惑っているムリに植松が流し斬りと両断剣を使い強力な一撃をお見舞いする。
「大々災害大々混乱なんてこの俺が起こさせないッスよ!!」
 ズシャッ!
「やべっ! 今の台詞カッケー!」
 その喜んでいる植松に対しムリが触手を伸ばしてくる。
 バシッ!
 攻撃を受け止めたのは緑だった。
「うおっ、ありッス」
 そしてもう一度同じように虎が獣突を使用し、緑が回り込む。
『どうすればいいムリ‥‥』
 そして今回はドクターが植松に練成強化する。
「けひゃひゃ、我が輩がドクター・ウェストだ〜」
 植松は再度流し切りと両断剣を使用してトドメを刺しにかかった。
「すっげぇ一撃を! 喰らいやがれェッ!!」
 ズシャッッッ!!
 ムリは真っ二つに引き裂かれ全く動かなくなった。
「フフッ、俺に惚れるとキケンっすよ‥‥?」
 そう言って、A班唯一の女性である虎に流し目を送る。
 そこにドクターの無線機にB班から連絡が入る。
「‥‥ジジッ‥‥こちらA班、御凪。キメラの退治が終了しましたがそちらはどうですか?」
「御凪君。こちらも今し方終わったとこだよ」
「‥‥ジジッ‥‥見つかったのですね! よかったです」
「ああ、あの後すぐに見つかったってところかね」
「‥‥ジジッ‥‥では、はじめに集合したところで落ち合いましょう」
「うんむ。わかった」
「‥‥ジジッ‥‥それでは、また後で」

●晴れ渡る空
 森を出る頃には雨は上がり、雲の間から太陽が覗いていた。
「怖かったぁ〜‥‥早く家に帰りたいわ」
 森から出るとげんなりとした様子でいるナレインに虎が声をかける。
「おーい、生きてるかぁ? もう虫はいねぇぞ?」
「ええ‥‥なんとかかな‥‥」
 ドクターは一人キメラについて考え事をしているようだ。
「雨を降らす能力があると言われたが、一体どんな現象なのかね〜?」
 晴れ渡る空を見て、皆うれしいそうに談笑している。
「うーん、やっぱり雨が上がった後は気持ちが良いね」
「やっぱり、ジメジメしているより良い天気じゃないとね」
「そうだな、いい天気だ。航海するにゃ晴れってな」
「あ、虹が出てるよ!」
「マジッスか!? おおー!」
「神様の、大きな、弓‥‥」
 そして一人、木の上に登っていった黍瀧は空を仰いでつぶやいた。
「やはり、空は『蒼』が一番だの」
 晴れ渡った空、太陽が一所懸命照らしている姿は皆に微笑みかけているようだった。