タイトル:スッポン☆ポンマスター:一本坂絆

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/10/21 02:20

●オープニング本文


「やっぱさ、母性の表れって言うの? 胸は大きい方がいいねぇ。こう‥‥こういうさぁ!」
「大きければ良いってもんじゃないでしょ。やっぱ形だよ。スレンダーな体型に手に収まる程度の大きさ! ああ、まさに芸術だな〜‥‥」
「や、やっぱ―――ハァハァ。真っ平らな胸は―――フゥフゥ、純真無垢さと触れれば壊れてしいそうな儚さを演出していて、いいい良いと思うよ」
「ちょ、おまッ! 今時何処に人の目が光ってるか判らないんだから、そういう危ない発言は―――」
「うっせぇ! 人目気にしてて幼女愛でられっかよ!!!」
「うっわー、しかも逆切れ」
 浜辺で海パン姿の男達が、顔を突き合わせて熱弁を奮う。
 常人を寄せ付けない異様なオーラを放つ男達は、全員がUPC軍の隊員である。
「何だい何だい。夏の思い出が一つも無ぇってぇから、演習って名目で海に連れて来てやったつぅのに、パラソルの下でピーチクパーチク騒ぎやがてぇ」
 一向にパラソルの下から出ようとしない隊員達に呆れる小隊長。
 対する隊員達も、会話を中断して振り向き反論する。
「そうは言いますけど、完全に海水浴シーズンから外れてるじゃないですか。こんな時期に日焼けだなんてカッコ悪いッスよ」
 未だ日中は蒸し暑く、夏休み継続中の学生や、遅い休暇を得た海水浴客でビーチはそこそこの賑わいを見せているが、やはり海はシーズン中に来てこそだろう。
 そう主張する隊員に、隊長は目をきらりと光らせながら、不敵な笑みを浮かべて見せた。
「わかってねぇなぁ。こういうのはスキーと同じで、少しシーズンからずらした方が人混みに合わねぇし、楽しめるもんなんだよぉ」
「で、本音は?」
「シーズン中だと周りが眩し過ぎて、何か負けた気になるだろうが!」
 何だかんだと文句を言う隊員達だが、一人の隊員が「あ、際どい水着着たおねぇさん発見!」と叫んだのを皮切りに、一つしかない高性能双眼鏡を巡って壮絶な殴り合いを開める。
「お前無乳が好きだって言ってたじゃん!」
「うるせぇ、俺は今を生きてんだよ!」
 そんな男達の夢を掛けた戦いが、双眼鏡を手にした一人に集団で襲いかかるサバイバルな展開を向かえ、互いに牽制し合う膠着状態に入った時、出かけていた四人の隊員達が帰還を果たした。
「お〜い! 皆、お待たせ〜」
 この四人は隊内でも数少ない、『一般人の目をまっすぐ見ながら話せる』という特殊高等技能を持った精鋭達だった。彼等の任務は、一般人―――特に異性に対する意識調査及び、それを題材とした討論会への参加を促す事だ。
「決死隊が生還したぞ!」
「ヤッホイ!!」
 隊員達のボルテージが最高潮にまで高まった。
「どうだった!」
「悪い、全然駄目だった」
 戦士達を迎える歓迎の声は、怨嗟の叫びへと変わった。
「バッカ野郎! サンオイルダース単位で買っちまったじゃねぇか! どうしてくれる!」
「俺なんて、スイカ割りの練習しすぎて腕上がらないよ!」
「昨日シミュレーターを使って、あんなに練習したじゃない!」
 詰め寄る隊員達に、四人は頭を掻きつつ、
「いや〜、シミュレーターでやった通りにしたんだけど‥‥‥鼻で笑われちゃった」
「何てこった―――ばきぼきメモリアルの夏の水着イベントシーン名台詞、『俺は夏の太陽よりも、君の水着姿の方が眩しく感じるぜ』はリアルでも通用すると信じていたのに!?」
そんな不毛極まりない隊員達の罵り合いは、ビーチに響き渡る悲鳴によって中断された。
「キャー! キメラよー!!」
「おい、人が食われたぞー!」
 逃げ惑う海水浴客。
 そして、人々が指し示す方向から、海を割って巨大な影が出現する。
 小隊隊員達は、突如現れた脅威を呆然と見上げた。
「ス、スッポン?!」
 隊員の言葉通り、キメラは体長10mを超える、巨大なスッポンの姿をしていた。
 現れたキメラは口をもごもごと動かすと、勢い良く何かを吐き出した。先程食われたと言う人だろう。白く濁った唾液に濡れているせいで遠目からは判然としないが、どうやら全裸のようだ。一緒に吐き出された布の塊は、着ていた水着だろうか。
「どぉううううううりゃあああああああああ!!!!」
 隊長が吐き出された人影に向かって猛ダッシュする。彼我の距離を一瞬で縮めると、落下地点に滑り込んで、全身を使って受け止めた。そうして、抱きかかえた身体を引き起こしつつ顔を覗き込む。
「大丈夫ですかお嬢さんお怪我はありませんかおっと手が滑ったこいつは失敬!!」
「あ‥‥隊長。有難う御座いますぅ」
 隊長の腕の中、白濁した粘質の唾液にまみれた全裸の隊員(勿論男)が、ゆっくりと顔を上げた。
「何だよウチの隊員かよ! 汚ねぇもん触らすんじゃねぇ!」
 慌てて隊員を砂浜へ投げ捨てる隊長。その頭上に、大きな影が差す。
「ぅん?」
 振り向く間も無く、隊長はキメラの口内へと消えた。
 キメラは口元を動かし、器用に口内で隊長の水着を脱がせてから吐き出した。丸まった水着と共に砂浜に激突した隊長は、先程の隊員と同じく真っ裸で、白く濁った唾液に濡れている。
 隊員達は恐々と様子を見るが―――
「うわ! これは駄目だ! 最早猥褻物陳列罪なんてレベルではない! 産業廃棄物の不法投棄だ!」
「いや、俺は‥‥結構ありかな?」
「ウソ?! お前、もしや魔法使い候補生じゃなく、勇者の生まれ変わりか?!」
 遠巻きに騒ぐ隊員達の目の前で、全裸の隊長がゆらりと立ち上がる。
「お前等ぁ〜‥‥俺の国宝級のお宝を産廃扱いしやがってぇい!」
「ちょ、そんな格好でこっち来ないでください!」
「もうヤダこの人!」
 慌てて隊長とキメラから待避する隊員達。


 その後、一般兵では埒が明かないということで、このキメラ退治は傭兵達に一任される事となった。

●参加者一覧

相沢 仁奈(ga0099
18歳・♀・PN
メディウス・ボレアリス(ga0564
28歳・♀・ER
伊万里 冬無(ga8209
18歳・♀・AA
アリッサ・コール(ga8506
24歳・♀・DF
大鳥居・麗華(gb0839
21歳・♀・BM
巽 拓朗(gb1143
22歳・♂・FT
二条 更紗(gb1862
17歳・♀・HD
赤崎羽矢子(gb2140
28歳・♀・PN

●リプレイ本文

 ビーチに現れた八人の傭兵の誰もが、通常の衣服の替わりに水着を着ていた。
 水に濡れても動きやすいからか、得物を下げていなければ海水浴客にしか見えない格好だ。
 どこか浮かれた雰囲気漂う一団に在って、アリッサ・コール(ga8506)は他の者とは違った意気込みを抱いていた。エッチ撲滅を心情に掲げている彼女は、服を脱がせるというキメラに人一倍強い憤りを感じていた。
 そんなアリッサであったが、他の者と同じく水着を着用している。
 アリッサは改めて、他の者達の水着を見た。思った以上にワンピースの比率が高い。その無乳っぷり故、大人しいデザインを選んではいたが、やはりビキニは目立つだろうか。
(「いや、変に子供っぽい水着を選んだ方が逆に―――」)
 思考に浸るアリッサがふと我に返ると、周囲の視線が自分の水着に、と言うか胸元に向けられていた。
 メディウス・ボレアリス(ga0564)がヤレヤレと首を左右に振り、
「無理をして‥‥‥」
「そこ哀れんだ目でこっちを見ない! 赤崎さんは何で涙ぐんでいるんですか?!」
「可哀想に‥‥」
 赤崎羽矢子(gb2140)の涙を拭う仕草に、アリッサは目元を震わせた。
 その時―――二条 更紗(gb1862)が皆の視線の間に立った。
 二条は青いラインが走る白のワンピース型水着に包まれた慎ましい胸を反らして、両手を広げた。
「胸の大小で価値を決めるなんて間違っています! 胸が小さくて何がいけないと言うんですか! 良いじゃないですか、胸が小さくったって! 胸が小さければ小さいなりに、良い所が有るような気がするけど、実は無かったりするんですよ!」
 謎の教団の教えに従い人々が胸の大小両方好きになるよう洗脳しに来た、と自称する二条は力説する。
 その様子に、赤崎は呆れた顔で、
「‥‥‥御高説痛み入る。でも、本人が一番ダメージ受けてるよ?」
 言われて二条は、赤崎の指差す方向を視線で追った。その先では、アリッサが「庇われている筈なのに心が痛い」と砂浜に両手と膝を付いて首を垂れた。


 褐色の肌を紺色のワンピース水着で包んだ相沢 仁奈(ga0099)は、浜辺で騒ぐ仲間達の様子に苦笑を浮かべた。
 囮役を買って出た相沢は、腰までを海水に浸し状態で、頭に着けた兎耳のヘアバンドを揺らす。
「なんや、このまんま女の子同士で、キャッキャウフフしてるだけでもええ気がすんねぇ?」
「そんなの駄目ですよ嫌ですよ!」
 声は相沢の隣―――過度な飾り付けを施したゴシック風の水着姿の伊万里 冬無(ga8209)のものだ。
「折角人外の舌技を堪能できると聞きいてきたのに、このまま帰るなんてもったいないですよ!」
 伊万里は声高に主張した。
「アハハハハ! 冬無ちゃんは突っ切ってんなぁ」
 しかし相沢も、そういうのは嫌いじゃない。可愛らしい美少女達が裸に剥かれて白濁に穢される姿を想像するだけで、何とも言えぬ高揚感が湧き上がってくるのだ。
「あぁ、早よ堪能したいわぁ♪」
 相沢は水着に押し込めたはちきれんばかりの胸をときめかせながら、陶酔した声を漏らす。
 その為にも、キメラを砂浜まで誘き出さなければならない。
 時折、キメラらしき影が遠くの海面に浮かびあがるが、近付いてくる様子は無い。
「さて、どないすっかやな‥‥‥」
「きっと全裸になって正座で待機していれば寄って来ますよ。と言うわけで、麗華さん。水着を脱ぐの手伝いますね?」
 擦り寄る伊万里に、大鳥居・麗華(gb0839)はビクッと身を振るわせた。
「要りませんわよ! それ以前に脱ぎません! 自分のを脱げばいいでしょう!」
 大鳥居は急いで距離を取ると、両手で胸を守るように体を抱いた。
「嫌ですよ。私は自分で脱ぐよりも、無理やり脱がされる方が好きなんです」
 伊万里はわかっていませんねと肩を竦めた。


 囮役三人による作戦会議は、中断を余儀なくされた。
 幸か不幸か、騒ぎに誘われて接近してきたキメラが海を割って姿を現したのだ。
「ともかく、食べられる前にさっさと倒してしまえばいいんですわね」
 海上に浮かぶキメラの巨躯を見上げて、大鳥居が身構える。
 伊万里は口元に笑みを浮かべ、
「劇的瞬間を残しておいて下さいです♪」
 言って、浜辺を振り返ると、
「「任せろ!!」」
 力強い返答と共に、メディウスと赤崎がビデオカメラを構える。
「だめだこの人達‥‥早く何とかしないと‥‥ッていうか皆さん真面目にやって下さいー!」
 アリッサの叫びが虚しく響いた。
 伊万里は背後に確かな頷きを返し、キメラが口を大きく開いた所を見計らって、自ら口蓋へ飛び込んだ。伊万里を口に収めたキメラはそれだけで飽き足らず、距離をとろうとしていた相沢、大鳥居の二人も纏めて飲み込んだ。


 ビデオを回す赤崎は、一息に三人を飲み込んだキメラの姿に感嘆の声を漏らす。
「いや、しかし‥‥‥か―――」
「スッポン!」
「―――の頭だけあって伸びる首がやらしいなー」
 赤崎の言葉に不穏なものを察したアリッサが、声を上げて遮った。
 赤崎が横を向くが、アリッサは何事も無かったかのように無言を貫いた。
「というか、暢気に見ていないで今の内に攻撃を仕掛けないと!」
 いつの間にかAU−KVを纏った二条の言葉に、一同はポンと手を打った。
「おお、すっかり忘れてた。でも、移動したらビデオが‥‥」
「折角二つあるのんだ。死角を埋め合って、後で編集すればいい」
 赤崎はそれもそうかと納得すると、他の傭兵達と共に海水へ足を浸けた。傭兵達はキメラを取り囲むように展開すると、次々と攻撃を仕掛けた。
 二条がAU−KVを走らせ、海水を切り裂きながら、キメラに肉薄する。
「伊万里様、相沢様、大鳥居様。お三方の犠牲は忘れません―――」
 二条は直刀を振りかぶると、竜の爪を発動させて、キメラを切りつけた。
「三方の恨みプラスわたくしの渾身の一撃、受けなさい!」
 二条の脳内では、早くも裸に剥かれた相沢達の姿が踊っていた。
「こっちからも一発!」
 これまで女性陣に飲まれて今ひとつ目立てなかった、唯一の男、巽 拓朗(gb1143)が反対側から攻撃を仕掛けた。日本男児の小粋な正装―――褌ルックの巽は、掬い上げるように刀を振るってスッポンをひっくり返そうと試みるが、流石に体格差が大きく、上手くいかない。
 傭兵達の集中攻撃を受けたキメラは身を振るわせると、口に含んでいた三人を吐き出した。勢い良く吐き出された三人は、放物線を描いて砂浜に激突。砂浜に倒れる三人は、共に全裸で、衣服の替わりに白く濁るキメラの唾液を全身に纏っていた。周囲には、脱がされた水着が散らばっている。
 やがて伊万里が顎先から粘液を滴らせながら、ゆっくりと身を起こした。口元には不気味な笑みを浮かべている。
「うふふふ♪ 見事な腕、いや舌技ですっ♪」
 隣でうつ伏せに倒れる大鳥居が、頬を上気させ、荒い息を吐く。
「あんな‥‥太い癖に‥‥‥器用に動くだなんて」
「ケホッ! ケホッ! 生臭ぁ。これ、臭い取れへんで」
 相沢は咳き込みながら、口内に溜まった粘液を地面に零す。相沢が自ら胸を掬うように持ち上げると、褐色の肌に張り付く白濁液がにちゃりと重く粘ついた音を漏らす。
「麗華ちゃん、これ如何思いますですか♪」
「な、伊万里来るんじゃないですわ! って‥‥え? きゃぁ!?」
 胸と、身体に張り付く粘液をふるふると揺らしてにじり寄る伊万里から距離をとろうとする大鳥居であったが、下半身に人の体温と柔らかな重みが圧し掛かり、上手く動けない。見れば、脚に取り付いた相沢が―――
「あ、相沢さんは、一体何をしていますの?」
「ナニて、この粘液とらんと動き辛いやろ?」
「だからってそんな処を―――んぁあ!?」
 大鳥居の抵抗も空しく、甲高い嬌声が浜辺に響く。


「ん? どーした巽、前屈みになって」
 三人の様子をカメラに収めていた赤崎が巽を見る。
 中腰姿勢で肩まで海水に巽は恥ずかしそうに下を向き、
「いや、その‥‥不覚にも反応」
「若いな」
 メディウスがビデオを回したまま口の端を持ち上げる。
「うわ! なんだか滅茶苦茶屈辱的ッスよ! でも年上の女の人に罵られるのもイイ!」
 声を上げた巽が身をくねらせた。
 騒ぐ傭兵達に向かって、キメラが回頭した。
 傭兵達は慌てて散開するが、人間と水棲生物では水中での速度が違う。キメラは脚で素早く水を掻き、口を開く。
 巨体の進む先には巽の背があり、
「らめぇ〜!」
 悲鳴と共に巽が肉薄したキメラに飲み込まれた。数秒後‥‥‥全裸で海面に吐き出される。いくら白濁液で隠されているとは言え、身体を痙攣させながら尻丸出しで海に浮かぶ姿は余りに哀れだ。
 キメラの猛攻は続く。更なる回頭。今度は「巽の裸も取るべきか‥‥」と首を捻る赤崎へ向き直った。
「ちょっ! あたしはこういう役割じゃ―――」
 手を顔の前で振って拒絶の意を示す赤崎であったが、キメラがそれを理解する筈も無い。
「あっ! 嫌、やめて‥‥ひゃうっ?!」
 飲み込まれた赤崎は、太い舌で散々に弄ばれた。ざらつく舌に胸を舐め上げられて、肌が粟立つ。挙句には、全裸で海面へと吐き出された。
「ああ、カメラが‥‥」
 相沢と共に、ぐったりとした大鳥居を連れて戻ってきた伊万里は、海水に沈んだビデオカメラを見て悲痛な声を漏す。だがメディウスが「安心しろ、もう一台ある」と持っているカメラを見せると、「ならば良し!」と気を取り直した。
 一方、アリッサに助け起こされた赤崎は、全身から怒気を発して拳を握った。顔に張り付いた前髪の間から、つり上がった眼でキメラを睨む。
「ここがあんたの居場所じゃ無いってこと、思い知らせたげようじゃない!」
 叫び、全裸であることも気にせずに、翼を勢い良く広げた。その拍子に胸が大きく揺れ、羽から飛び散った白濁液が、アリッサの顔を直撃する。
「きゃ! ゲホ! これ、鼻に入って‥‥」
 顎や鼻先から垂れ落ちる白濁液を取ろうと四苦八苦するアリッサの様子に、仁奈がゴクリと唾を飲み込んだ。
「赤崎さん―――あんたは天才や!」
「私も自身の才能が恐ろしくなるよ‥‥」
 赤崎は怒りも忘れて、己の顎を伝う汗を手の甲で拭った。


 他の傭兵達が脱線している間に、キメラの猛威が二条を飲み込んだ。だが、キメラの卓越した舌技をもってしても、AU‐KVを脱がせる事はできなかった。
 二条は竜の爪を発動して、頭上へ掲げた直刀と両足を踏ん張り、キメラの顎を内側から強引に抉じ開けた。
「今です! わたくしの屍を越えて下さい!」
 駆動部を軋ませながら圧力に耐える。その姿に皆は顔を見合わせ、
「やはりAU‐KVまでは脱がせられんか。しかし皆、あれをどう思う?」
「うーん‥‥白濁液まみれの人型ロボットて、趣向としてはどないなん?」
「たまにそういうサイトもありますですし、これはこれでありだと思いますよ?」
「伊万里は普段から何のサイトを見ていますの‥‥」
 好き勝手な発言をする一同に、二条が四肢を震わせながら声を荒げた。
「いいから早く攻撃してください!!」
 二条の叫びに最初に答えたのは、アリッサだった。彼女は夫の形見だというクロムブレイドに、己が思いと両断剣のスキルをのせて叩きつける。
「エッチなのはいけないと思いますー!」
 気合一閃。
 一撃はキメラの喉元を切り裂いた。
 そこへ、メディウスから練成強化の支援を受けた大鳥居と伊万里が両手の得物を振りかざしてキメラへと襲い掛かった。
 伊万里はいまや衣服代わりとなった粘液を振り乱しながら、キメラの傷口を抉る。
「退け二条。キメラと共に焼かれるのは趣味ではあるまい」
 メディウスはエネルギーガンを構えて警告を発すると、二条が竜の翼で退避した瞬間、顎が閉じきる前に口蓋めがけて引き金を引く。フォースフィールドを持たぬ口内は電磁波の渦に耐え切れず、下顎が吹き飛んだ。
「デカイだけで女が悦ぶと思ったら大間違いだよ!」
 赤崎の刀が首の傷口を切り開き、半ばまでを両断した。
 首から上に集中攻撃を受けたキメラは、血で海をどす黒く染めながらゆっくりと崩れ落ちた。


 キメラを退治した後。
 アリッサはメディウスの姿を探していた。
(「先ほどの痴態を収めていたビデオを回収しなければなりません」)
 汚れた体もそのままに浜辺を歩くアリッサの腕に、赤崎が肘を掛けた。
「アリッサさん、顔に付いた粘液が胸元まで垂れてきてるよ。洗わないと」
「いえ、私はカメラを―――」
 言いかけて、腕を捕まえる力がいやに強いことに気づく。赤崎は目元に薄い笑みを湛えて、強引にアリッサを引きずって海へ入っていった。
「さぁ、私達も海に入りましょう!」
「私は代えの水着もありませんし遠慮しますわ‥‥て、ちょ、伊万里?! 放しなさいな!」
「まぁまぁ、麗華さん。この粘液も剥がさなきゃいけないですし? ウフフッ♪」
 大鳥居の身をよじる動きに、伊万里は肌を密着させる事で抑えとする。二人の身体に挟まれた粘液が、にちゃりと音を鳴らした。
 周囲で展開される光景を前に、二条は自身の胸に視線を向け、落とした視線を再度周囲へと向ける。
「皆さんやはりわたくしより大きいです、世知辛いです」
 二条は溜息と共に肩を落とした。
「何やぁ、胸の大きさ気にしてるん? せやねんやったらウチが手伝ったんで〜」
 陽気な声と共に、相沢が二条の胸に手を這わせる。
「ひぁ! ど、何処を触っていますか!」
「ん〜? どこやろなぁ‥‥ちゃんと言うてくれんとわからんわ〜」
 相沢は二条の困惑を楽しむように、耳元に唇を近づけて熱い吐息を漏らした。


 裸で戯れる女性陣から離れた場所で、巽は海を眺めていた。というか、状況が状況なために、近づけないだけなのだが‥‥
 こうしていても時間の無駄だし、せっかくの泳ぎ納めなのだ。一人で磯にでも行こうか。
 思い、巽が立ち上がったのと、メディウスが海から上がってきたのはほぼ同時だった。
 巽はメディウスの担いでいる物体に視線をやり、
「それって、あのキメラの肉ッスよね? どうするんすか?」
「食べるんだよ。血は殆ど流れたが、身は腐る程にある。調理の為の道具も持ってきた」
「食べられるんスか?」
「食べようとして食べれんものなどそうは無いさ。身体に良い悪いを別にすれば、だがな。どうだ、君も食べるかね?」
 そう言ってメディウスは担いだ身を掲げて見せた瞬間、巽の脳裏に閃きが走った。
 スッポンを食べる→ お腹一杯→ 漲る精力→ もしかしてお誘い? → つまりはOK!
「うおおおおお! 食べる前から漲ってキター! これがスッポンパ―――」
 巽が勢いよく立ち上がり―――
 ゴシャッ!
「‥‥‥落ち着いたか? 少年」
 メディウスが問うと、
「もうバッチリ」
 顔面に拳を打ち込まれた巽は、砂に没しながら答えた。