タイトル:雪兎ト雪合戦マスター:戌井 凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/01/11 02:54

●オープニング本文



 とある地方では、例年では考えられない位の大雪が降っていた。
「今年も後僅かと言うのに、大掃除も出来やしない」
 一人の母親が慌しそうに家中を駆け巡っていた。
「ねぇねぇ、母ちゃん! あのねお外で遊んできてもいい??」
 子供達が目を輝かせながら、雪が積もる外を眺めていた。
「んー。仕方がないわね。ちゃんと温かい格好で行くのよ?」
 仕事をしていた手を止め、子供達に注意する母親。
「わーい! 行って来まーすっ!!」
「家の周りで遊ぶんだよ?! 遠くに行っちゃ駄目だからねー!!」
 飛び出す子供達に大声で叫ぶ母親。
 外で元気良く遊ぶ子供たちは、雪だるまを作ったり、雪合戦をしたりしていた。
 と、そこに。
 額に綺麗な紅い宝石を付けた真っ白のウサギがやって来る。
「あっ‥‥うさぎしゃん♪」
 末っ子の女の子がウサギを見つけ嬉しそうに指を差す。
「本当だっ! ん? あのウサギのおでこ」
 真ん中の女の子がキラキラした瞳で紅く輝く宝石を見詰めていた。
「宝石‥‥? あんなの初めて見たぞっ!!」
 一番上の男の子が不思議そうな目でウサギを見ていると、
 ウサギは慌てて森の方へと走っていった。
「よーし!! アイツを捕まえるぞー!」
「おー!!」
「うさぎしゃーん、まてまてぇー」
 三人兄妹は、母親に言われた事など忘れ、ウサギが走っていった方へと駈けて行く。

「うさぎしゃーん! 出てきてー」
 末っ子の女の子が兄と姉の後ろに隠れながら森の中で叫んでいた。
「雪って、歩きづらいなぁ」
「うん‥‥でも、うさぎってすばしっこいんだね」
 兄は気をつけながら先頭を歩き、真ん中の女の子は関心しながら周囲を見渡していた。
 森を抜け、原っぱに着くと。
「ぁ! うさぎしゃん見つけたぁー」
 末っ子が笑顔で前方を指差す。
「本当だぁ! やっと追いついたぁ」
 三人は嬉しそうに原っぱを駈けていったが、次の瞬間三人の笑顔が消えてしまう。
 なんと額に紅い宝石を付けたウサギが無数に群れをなし、
 其の中心には、子供達の何倍も大きい巨大なウサギが立っていたのだ。
 ウサギ達は、子供達に向って丸い白い玉を投げつける。
「い‥‥痛いの〜‥‥ふ‥‥ふえぇぇ〜ん」
 白い玉が当たった末っ子の額からは薄っすらと血が出ていた。
 雪で作られた白い玉の中には、硬い石が込められていたのだ。
「に‥‥逃げるぞッ!!」
 長男は慌てて末っ子を負ぶさり来た道を帰ろうとした其の時。
「う‥‥うわぁぁ」
 木の枝に足を引っ掛けてしまい転倒する長男。
 立とうとした次の瞬間、左足に激痛が走る。
「俺は後から行くから! だからコイツを連れて先に行っててくれ」
 長男は真ん中の女の子に末っ子を託す。
「で‥‥でも、あんちゃん」
「いいからっ!! すぐに追っかける」
 長男と真ん中の女の子は指切りを交わし、後ろ髪を引かれながらもその場を後にする妹達。
「‥‥これで‥‥これでいいんだ」
 激痛が走る左足を擦りながら呟く長男であった。

「か‥‥母ちゃんっ!! あんちゃんがっ!!」
 家に着いた妹たちは、起こった全ての出来事を母親に説明する。
「あ‥‥アレ程遠くに行っちゃいけませんって言ってたでしょうがっ!!!」
 母親の雷が妹達に降り注ぐ。
「ご‥‥ごめんなさい」
 只管泣きながら謝る妹達。
「そ‥‥そうだわ。今はそれど頃じゃないわ」
 母親は、防寒着を羽織り急いで仕度をする。
「か‥‥母ちゃん、どこに??」
「決まってるでしょ! 馬鹿を迎えに行くのよっ!!」
「な‥‥なら、私達も」
「馬鹿言ってるんじゃありません!! いい? 大人しく家で待ってるのよ!!」
 そう告げると、母親は慌てて外へと飛び出していった。
 どれ程の時が経っただろうか‥‥
「ただいまぁ」
 父親が仕事を終え帰宅した。
「あれ? 母さん達は??」
 不思議そうな顔で娘達を見つめる父親。
「あ! わかった! お前達また何かやったなぁ」
 笑いながら頭を撫でる父親に娘たちは、今日の出来事を打ち明ける。
「な‥‥なんだって?!」
 詳細を聞いた父親は顔を真っ青にする。
「そんなウサギは見た事ないぞ‥‥こ、こうしちゃおれん」
 父親は慌てて電話の受話器を取っていた。

●参加者一覧

鷹代 由稀(ga1601
27歳・♀・JG
キョーコ・クルック(ga4770
23歳・♀・GD
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
美紅・ラング(gb9880
13歳・♀・JG
片柳 晴城 (gc0475
19歳・♂・DF
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
高坂 永斗(gc7801
20歳・♂・SN

●リプレイ本文


 雪がシンシンと降る静かな夜、町へと辿り着いた一行の姿があった。
「すまないが、ここらの地図はないのだろうか?」
 町に着くや否や地図を貸してくれるよう願い出るキョーコ・クルック(ga4770)。
 差し出された地図を受け取り、メンバーと合流する。
 一方、メンバー達はというと。
 母子の健康状態が心配だったが、確認したい事があった為親子の家を訪れていた。
 美紅・ラング(gb9880)が父親に母子の靴の大きさなどを質問していた時。
「お父さん‥‥?」
 寝室で泣きつかれ眠っていた娘たちがやって来た。
「絶対に無事に再会させてあげるからね」
 優しい声で子供たちに声を掛けるキョーコ。
 一同は顔を合わせ大きく頷いてみせる。
「お姉ちゃん達が探しに行ってくれるの?」
「そうなのダ。絶対の絶対に約束なのダ! だから、安心して寝てるのダ」
 ニッと笑い拳を握り締め前へと突き出すラサ・ジェネシス(gc2273)。
「わかった。絶対に約束だよ?」
 娘たちと指切りを交わし娘たちがその場を去ったのを見届けると、
 父親に救急車の手配を頼むラサ。
 こうして親子と別れを告げる。
「兎美味しいかの山〜♪」
 キョーコが借りてきた地図を見ながら逃走ルートを調べる美紅。
「兎でも食べたいの?」
 美紅の頭を優しく撫でる高坂 永斗(gc7801)。
「ぅ‥‥そ、そんなことより今は緊急事態なのである」
 兎鍋も気になるが、本当は恋人の永斗が救出に向うと聞き美紅も志願したようだがそんな事は言える筈もなかった。
 其の為、少し動揺しながら地図と睨めっこする美紅。
「夜は更に冷え込む。早々に見つけ出さなければ」
 雪が降り注ぐ夜空を見上げる高坂。
 森の手前までやってくると――
『パァーーン』
 照明銃を空へと突き上げ空を照らし出すキョーコ。
 そうする事で、救出に来た事を伝えようと考えていた様だ。
「二次遭難ってやつよね、これ‥‥」
 まいったと言わんばかりに頭を掻きながら地図を確認する鷹代 由稀(ga1601)。
「時間との勝負、ですか‥‥」
 履いてきたブーツの具合を確かめつつ呟く比良坂 和泉(ga6549)。
「雪山で人命救助か‥‥よくあっちゃいけないけど、よくある話、か」
 こんもりと雪化粧された山を望みながら溜息を飲み込む片柳 晴城 (gc0475)。
「あたし自身の復帰ロードの一環でもあるし、ちゃんと二人とも救ってみせるわよねえ」
 子供を救う為に身を挺する母親も大したものだと感心しながら話す百地・悠季(ga8270)。
 一同は再度大きく頷き、そして森の中へと歩みを進めていくのであった。


 夜の暗い山、しかも雪が降り注ぐ中、母子を捜索する一行。
 地図と町の明かりを確認しながら現在地の方角等を確認するキョーコ。
 マチェットを片手に持ち木々の雪や枝を薙ぎ払いつつ先導する片柳。
「二人一緒とは限らないわ。そこんとこ注意しておいてね」
 森の中に薄っすらと続く足跡を追跡しつつ注意を呼びかける鷹代。
「確か母親の靴のサイズは24cmなのである」
 足元を念入りに確認しつつ周囲を警戒する美紅。
「足跡を踏まない様に注意ダナ」
 ランタンで明かりを照らしつつ、足跡を踏まないように注意するラサ。
 どれほど進んだだろうか――
 町の明かりも随分小さくなってきた其の時。
「あれは何かしら?」
 やや斜め左下に子供が一人隠れる事ができそうな雪で作ったかまくらを発見する百地。
「確認してくる。他の皆は警戒にあたってくれ」
 坂道をスレッドブーツで滑る事が出来るのかを確認したいという思いもあり、かまくらの下へと滑走する片柳。
 スレッドブーツの扱いは意外と難しいが、障害物がなかった為、さほど問題なく降りていく事ができた。
「一人で行かすわけにはいかないですね」
 敵が潜んでいた時の事を考え後を追う比良坂。
「グスッ‥‥グス‥‥」
 かまくらの中ですすり泣く一人の男の子。
「男の子を発見しました。皆さん、降りてきてください」
 男の子に歩兵外套を羽織らせつつ、一同に声を掛ける比良坂。
 助けに来た事を男の子に告げる百地。
 男の子は安心したのか泣きじゃくり百地に抱きつく。
「私は周辺を調べてくるわね」
 一同に言伝し、捜索活動を続ける鷹代。
「美紅も行くのである」
 鷹代の後を追うように出て行く美紅。
「もう大丈夫よ。お姉さん達が助けに来たからね‥‥お母さんはどこかな?」
 優しく頭を撫でながら温かい笑顔で問いかける百地。
「グスッ‥‥うさぎさんが‥‥来て‥‥ね‥‥それで」
 必死に説明する男の子。
 どうやら、大声を上げ木の枝を振り回し男の子を抱えここまで逃げてきようだ。
 夜の山と言う事もあり遭難を防ぐ為、かまくらを作り二人寄り添いあい夜が明けるのを待っていたらしい。
 だがしかし、そこに兎の群集が押し寄せたそうだ。
 ここに隠れているように伝えると子供を守る為に母親は身を挺して飛び出し駆けて行った様だ。
「まだ真新しい靴跡があっちで見つけたわ」
 周辺を散策していた鷹代と美紅が慌てて戻ってくる。
「了解。サクッと母親も見つけて連れて帰りますか」
 男の子に向って軽くウィンクする片柳。
「大丈夫だ。すぐにお母さんも見つけてやるから」
 大きな手で男の子の頭を撫でる高坂。
 男の子は必死に手の甲で涙を拭い、その場に立つ。
「うぬぬ、キメラに雪玉の代わりに鉛玉をプレゼントしようと思ったが、まずは救出ダナ」
 暖めておいたカイロを男の子に手渡し、ひょいっと抱っこしてみせるラサ。
 こうして一行は母親を探すべく雪の山道を再度駆け巡る事となった。


 発見した足跡を辿り、母親を探す一行。
 と、そこに悲鳴が響き渡る。
 一行は声の聞こえてきた方角に向って全速で駈けて行く。
「お前らのあいては、こっちだっ!!」
 母親と兎達の姿が見えた瞬間、大声で叫び兎達の気を引きつつ一気に左前方へと駆け抜けるキョーコ。
 取り囲んでいた数匹の兎達が一斉にキョーコの方へと跳ねていく。
 兎達をスコルを装着した脚で蹴り倒していくキョーコ。
 一方、援軍などによって逃走路に回り込まれる事を防ぐ為に右前方へと駈けて行く百地。
 百地の後を追う片柳。
「大丈夫です。お母さんは無事ですよ」
 男の子とラサを守護する為にその場に残る比良坂。
「そうそう比良坂君の言う通りだわ」
 周囲を警戒しつつ男の子の不安を取り除く鷹代。
 兎達がキョーコに惹き付けられている間に母親の救出に向う高坂。
 護衛の意味も込め、ブラッディローズを手に沿え後を追う美紅。
「大丈夫だ。もう少し、辛抱してくれよ」
「男の子も無事なのである」
 母親にそっと子供の安否を伝える美紅。
 兎達がまた襲いだしてくる前に、母親を抱きかかえ男の子の下へと連れ帰る。
『キュー‥‥』
 どこか哀しい鳴き声をあげる絶命する兎。
「すまない。あたしと代わろう」
 キョーコが兎達を始末し終え、高坂に話しかけていた次の瞬間。
『ズドドドド‥‥』
 原っぱの奥の方から地響きと共に大量の兎が出現したかと思うと四方に大量の雪玉が飛んでくる。
「一発でも通ると思うなよ?」
 ライオットシールドを構え、母親達を守るキョーコ。
「黄金の鉄の塊のメイドゴールドと我輩にそんな雪玉が効く訳は無かっタ」
 男の子を守るように雪玉をガードするラサ。
「可愛い見た目をして‥‥だが、キメラに変わりないな」
 キョーコの前に立ち、一呼吸しつつ奉天製SMGを構え兎に向って銃弾を浴びせる高坂。
「弾幕に怯んでいては、ガーディアンは務まりませんね!」
 降り注ぐ雪玉を掻い潜りながら不敵な笑みを浮かべ母子を守る為、前へ躍り出る。
 そして手に持っていたトンファーを用い兎へと雪玉を打ち返す比良坂。
『ムキュゥー!』
 自らが投げた雪玉に当たり、目を回す兎達。
「クリーンヒットですね」
 少し自慢げな顔をしつつ飛び交う雪玉を兎へと返す。
「子供にこんなもんぶち当てたってか‥‥その分は鉛弾食らってもらうわよ‥‥!」
 当てられた雪玉の中身を確認するや否や、怒り心頭する鷹代。
 兎の額にある紅い宝石に向って鉛玉を浴びせる。
『キュゥー』
 宝石が割れたかと思うと、兎はその場に倒れこんでしまった。
「雪玉に石って‥‥どこで覚えて来たんだか」
 二丁拳銃と言わんばかりにターミネーターを片手ずつ装備し兎を蹴散らしつつ、
 やや右方向に移動しながら兎を惹き付ける片柳。
「次から次へとどこから沸いてくるだんか」
 兎の雪玉攻撃を受けるも身体の細胞を活性化させる事で傷を塞ぎつつ、
 瞬時にマチェットへと持ち替え接近してきた兎の側面に回りこみ流れるように薙ぎ切る。
「あいつが親玉だっ!」
 親子を守りつつ冷静に状況を分析していたキョーコ叫びが木霊する。
 キョーコの指差した先には、一際大きく宝石が蒼い兎が立ちはだかっていた。
 ボスであろう兎に狙いを定め、一気に懐へと飛び込みつつ回し蹴りを試みる百地。
 だが、兎は身体の大きさからは想像できないくらい軽やかな動きで飛び攻撃を交わす。
「強くない個体の群れは、ただの鴨だ」
 飛び跳ねながら距離を縮め雪玉を止まる事無く放ってくる兎達を次から次へと撃ち抜く高坂。
「数だけは多いのである」
 燃え上がる様な炎のオーラを眼帯の奥の瞳から吹き上げる。
 味方がいない事を確認し、前方扇状に向って乱射する美紅。
 倒しても倒しても沸いて出てくる兎達。
「‥‥先行きなさい。ここで止める」
 兎の攻撃を受け流しては弱点である宝石を打ち抜きながら、護衛しているメンバー達に打診する鷹代。
「あたし達がここは引き受けるわ」
 大兎の爪をラサータで斬り流しつつ叫ぶ百地。
「了解。先に進路の安全確保をしてくる」
 百地の後方にて援護射撃を行っていたが母子を護送する為、逃走路へと先駆けて行く片柳。
「よし、行くぞ」
 母子とラサ、キョーコを護衛しつつ先導する高坂。
「無理は禁物なのダー。直に戻ってくるカラッ」
 男の子を抱きかかえその場を撤収しだすラサ。
「了解――もう少しの辛抱だから、がんばって」
 母親にコートを羽織らせ、背負いその場を後にするキョーコ。
「後ろは守りは任せてください」
 キョーコの背中を守るように森からの脱出を目指す比良坂。
「外野は完璧なのである」
 キョーコよりもかなり離れた場所から後退しつつ追いかけて来た兎達を撃ち抜く美紅。
 その腰には、倒した兎が数匹吊るされていた。
 こうして、護衛班は母子を町へと護送していった。
 一方。
 殿を買って出た百地、鷹代はというと。
「行くわよ」
 スコルが赤い光を纏ったかと思うと、大兎の後方へと回り込み下から上へと蹴り上げ、
 更に宙に舞いそのまま回し蹴りする百地。
 大兎は宙で数回転したかと思うと、そのまま地に尻餅をついていた。
 百地が更なる一撃を蹴り入れようとした其の時。
「やらせるかぁ」
 百地の後方より、荒々しい声と共に数発の銃声が鳴り響く。
 背後を陣取った兎達が百地に飛び掛ろうとしていたのだが、鉛玉を浴びせ阻止する鷹代。
「感謝するわ」
 礼を述べ周囲を警戒しつつ、護衛班が無事に撤退した事を確認する。
「まだやるのかしら?」
 お尻に付いた雪を振り払い尚も突進してくる大兎の攻撃を手甲で受け止める百地。
 仕方がないと言わんばかりに再度、爪で切払いながら強烈な蹴りの一撃をお見舞いする。
 大兎が後方へと少しよろめいた次の瞬間。
「今の私は虫の居所が悪いの‥‥手間かけさせんじゃない‥‥」
 ジャッジメントとCL−06Aをクロスに構え銃身を内側に向けると、鋭い瞳で額の宝石を睨み二発の弾丸を撃ち込む鷹代。
 弾丸は交差しながら額の宝石部分へと命中したかと思うと、
 ガラスが割れるかのような音と共に大兎が倒れてしまう。
 大兎が倒された事をしるや否や兎達は森の奥へと脱兎していった。
「ふぅ‥‥それじゃ、皆の後を追うわよ」
 兎達が襲撃する意思がない事を確認し護衛班を追いかける百地。
「そうね‥‥あっちも心配だしね」
 念の為、銃を携帯したまま百地の後方を行く鷹代。
 こうして一連の兎騒動は終着した。


 救出された母子は凍傷や重度の外傷がなかった為、
 手配された救急隊員達の応急処置で大丈夫だった。
「お母ちゃ〜ん。うわ〜ん、ご、ごめんなさ〜ぃ」
「ぅ‥‥ぐすっ。ごめんなしゃぃ」
 家の中から、子供たちが飛び出し母親に飛びつき何度も何度も謝る。
「良かった‥‥本当に無事で良かった」
 二人が無事に帰ってきた事を受け、安堵し瞳に涙を浮かべる父親。
「もう二度と森に行っちゃいけませんからね」
 母親は少し溜息混じりで子供たちに言い聞かしていた。
「大した怪我もなくて本当に良かったのダ」
 男の子の頭をワシワシ撫でるラサ。
 と、そこに鷹代と百地が合流する。
「親兎は倒したよ」
 ニッと笑いながら駆け寄ってくる鷹代。
「温かいポタージュは如何かしら?」
 切り株の机にポットセットを広げ、ティータイムの準備をする百地。
「頂きます」
 丁寧にお辞儀をしマグカップを受け取る比良坂。
「美紅は鍋とかが借りたいのである」
 母親に鍋セットを貸してくれるよう頼む美紅。
 不思議そうな顔をしつつ家の中からコンロと鍋を持って来る母親。
「これを食べるのである」
 撤退する際に捕まえておいた兎を自慢げに見せる美紅。
「それなら‥‥」
 母親は少し考えた後、家の中から野菜などを持ってきてくれた。
「鍋パーティーなのである。きっと美味しいのである」
「やっぱり食べたかったのか‥‥」
 地図を開きつつ歌っていた美紅を思い出す高坂。
 こうして、兎鍋を頂く事になった一行。
 そのお味はというと――
「うん。柔らかいのダ」
「意外と美味しいのね」
 兎の肉を恐る恐る食べたラサと鷹代の頬っぺたがおちる。
「これはこれでイケる」
「意外と肉臭さはないんだな」
 少し感心しながら食べる片柳と高坂。
「本当に‥‥野菜とかもいい塩梅に仕上がっているわね」
「皆でこうやって食べるのもいいものですね」
 野菜を舌鼓する百地と鍋を囲む喜びを噛み締める比良坂。
「これは少しでかくないか?」
 切り損ねたのか少し大きい肉があたり、苦笑するキョーコ。
「それはきっと気のせいである」
 美味しそうにパクパク食べていく美紅。
 お腹が空いていたという事もあったのか、見る見る内に無くなっていく兎鍋の具達。
 鍋パーティーを開始して約十五分で食べ終わる。
「腹ごしらえもできたし、我輩は残りの兎を始末してくるのダー」
 準備運動をした後、森へと駆けて行くラサ。
「運動がてら、美紅も行くのである」
 ラサを追いかける美紅。
 残ったメンバー達は顔を見合わせ、仕方がないと言わんばかりに二人を追う。
「アフターサービスも万全にネ」
 そんなラサの声が雪降る山に木霊していった。
 こうして一行は残存していた兎キメラを全て殲滅し、その後帰還するのであった。