タイトル:【東京】G3厚木に来るマスター:稲田和夫

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/04/28 21:39

●オープニング本文


 UPC軍が小牧基地を出発し、バグア軍・横浜前線基地を目指して動き出した。
 その報はすぐさま、長く東京に滞在している「ゼオン・ジハイドの14」こと、ミスターSにも伝わる。
「ふぅ〜ん、なるほど。あちらさんは数年来の悲願を達成しようって腹なのかな?」
 彼の飄々とした態度や仕草は、不思議と余裕を感じさせる。それを見た兵士は興奮を胸の奥にしまい、きわめて冷静に対応した。そしてハッキリとした口調で「いかがいたしますか?」と指示を仰ぐ。
「わざわざ名古屋から出てくるんだから、すぐに帰るとも思えないね。狙いは東京かな? とにかく前線基地である横浜は厳戒態勢だ。準備を急がせて」
 兵士は「了解しました、ミスター!」と敬礼すると、ミスターSは照れくさそうに微笑む。彼はすべての部下に「ミスター」と呼ばせており、本人もこの音の響きが気に入っていた。
 彼は通信に戻ろうとする兵士を呼び止め、慌てて指示を付け足す。
「ああ、横浜基地の幹部には無理しなくてもいいって伝えといて。危なくなったら、東京に撤退していいから」
 ミスターは兵士が立ち去るのを見送りつつ、ポケットから大きめのダイスを取り出し、それを手の上で何度も転がす。
「まだ早いでしょ、盛り上がるにはさ。横浜はジャブでいいよ‥‥」
 彼は不敵な笑みを浮かべながら、まずはUPC軍の出方を窺うことにした。

 一方、UPC軍の指揮を行う椿・治三郎(gz0196)中将は、横浜基地占領に参加する傭兵たちを集め、直々に作戦の内容を伝える。
「今回の作戦は、いわば奇襲だ。UPC軍が囮となり、諸君らが先手を打つ。それぞれが連携して動き、各基地の占領ならびに横浜本営の機能停止を目指す」
 椿は暗くなった部屋に映し出された地図を指しながら、作戦の概要をじっくりと説明した。
 厚木基地へはKVで空から、横須賀基地へは同じく陸から攻め、戦力を二分化させる。さらに浦賀水道に面する基地にも水中兵力で襲撃。混乱が最高潮に達したところで横浜本営になだれ込み、指揮系統を無力化する‥‥というのが今回の作戦だ。
「詳しい説明は担当の者に任せる。東京解放の第一歩だ、抜かりなく頼むぞ」
 椿がそういうと、兵士の間から自然と「おおー!」と雄叫びが上がった。

 つい最近まで、関東地方を統治していたミスターSの人柄のせいか、横浜本営の航空戦力を一手に引き受けるここ厚木基地でも、生粋バグア、強化人間、普通の人間を問わず戦意は高かった。
 しかし、この日来たるべき傭兵たちの奇襲に備えて、はるばるやってきた増強戦力は彼らの戦意を挫くのに十分であった。
 滑走路に颯爽と降り立ったビッグフィッシュが、まず酷かった。
 何の変哲もない、無改造のBFの胴体側面にでかでかと、『俺様専用最強型ビッグフィッシュ』と書かれていやがったのだ。しかもその表面にはどう見ても子供の落書きにしか見えない、へのへのもへじだのがペンキで書き殴ってある。
 唖然とする基地スタッフの眼前で、ハッチが開き、中からゴーレムとタロスが地響きを立てて現れた。
 中に、バグアの要人や強化人間が乗っている訳ではない。ゴーレムとタロスが、正確にはこれらの機体に埋め込まれた脳髄が合成音声で喋りはじめる。
『よう! 厚木基地の兵士諸君! 俺の名はグレート・ゴージャス・ゴーレム、略してG.G.G.! 隣のこいつはタロス・ザ・タフガイ略してT.T.T.だ!』
 ――沈黙。誰も突っ込まない。突っ込めない。あまりの非常識さに。だが、更に事態は非常識へと向かう。
『すげーよ兄貴! 俺たちの愛機がカッコイイから見とれてるよ! やっぱり兄貴のセンスは最高だね!』
 どうやらこの二人組、性能的に下位機種であるゴーレムの方が兄貴分らしい。だから何?と言われればそれまでだが。
『待て待て。 早まるなT3。 諸君! 君らの沈黙の意味は良く解る! よって今から私の力をちょっとだけお見せしよう!』
『キャー! 兄貴―! 痺れるー!』
 あんまり描写したくも無いのだが、あの顔があるのか無いのか解らない、独特の威圧感と異質さを持つタロスが、アイドルを前にしたファンのように、両肘を胸部に着け、頭部?の前で拳を握ってぶりぶりやるのだ。生理的にアレなことこの上ない。
『括目しな‥‥ゴォォオオレムゥゥゥ・マァァチィェットォォオオ!』
 マチェットとは、鉈のことであり、この場合はゴーレムの標準装備である特殊強化サーベルのことを言いたいのだろう。
 ゴーレムはいきなりこのサーベルを居並ぶ兵士たちの頭上を横切る形で放り投げる。強烈な風圧が兵士たちに吹き付けるが、誰も唖然として微動だにしない。
 サーベルは高速回転しつつ、見事なブーメラン軌道を描いて装備者の手に戻る――かと思いきや、手加減無しでこのワームの胴体に突き刺さった。
 ――沈黙、というか脱力。
『まあ、俺は本番に強いタイプだから』
『すげーや兄貴! 能ある鷹は爪を隠すだね!』
 もはや二機の間でさえ、会話が微妙にかみ合っていないのはどういう訳だろう。
『仕方が無い‥‥これはとっておきだったんだけどな』
 もう、やめて下さい。これがこの場にいる者の正直な心境であったろう。だが、はしゃぐタロスも声を背にゴーレムがポーズを取った。それが、典型的なゴーレムの射撃体勢であると気付いた時、基地の人員に戦慄が走った。まさか、この場でそれを撃つ気か!
「プロトンッッ! ビィィィイイイイムッッッ!」
 恐慌状態に陥り、逃げ惑う人員たち。 が、恐る恐る目を開けると、異常は無く、どう考えてもプロトン砲発射後とは思えない。
『いや、だってここで撃ったら危ないじゃん』
 しれっと、ほざくゴーレム。
『すげーぞ兄貴! 敵を欺くにはまず味方からだね!』
 この時、基地のバグア達は思った――この基地、終わったな。

 しつこい様だが、ここ厚木は、前線の航空戦力を一手に受け持つ。その広大な地下区画、無数のHW、本星型、タロス等のワームが整然と居並ぶ中、基地の司令官が立っていた。
『よう、またせたな』
 格納庫の奥からずしずしと、無遠慮な足音を立てて先程のゴーレムが歩いてきた。基地司令は何?今俺忙しいんだけど?とでも言いたげな疲れた表情を見せるが。自称G3は意に介さず、どうやって書いたのか、一応人間サイズの手紙らしきものを、でかい手で相手に手渡す。
 もういい加減にしてよ、と言いたげな指令官の顔はその手紙を見た途端急変した。
「どういうことですか!?」
『書いてある通りだ。 傭兵共が本気で来たら、この基地の戦力でも五分五分だ。 だから、ミスターは撤退OKと言った訳だ‥‥お前らも、解ってるだろ?』
 痛い所を突かれ、押し黙る司令官。
『いいか、ビッグフィッシュは輸送船だ。 後は、解るな?』
『交戦時は、普通に編隊を組め。 撃ちあいが始まるまでの辛抱だ‥‥なに俺と相棒は本番に強いタイプだからよ』

●参加者一覧

緑川 安則(ga0157
20歳・♂・JG
ハルカ(ga0640
19歳・♀・PN
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
瑞浪 時雨(ga5130
21歳・♀・HD
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
ロゼア・ヴァラナウト(gb1055
18歳・♀・JG
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
ユーリー・ミリオン(gc6691
14歳・♀・HA

●リプレイ本文

 A.M.0:00
 日本――厚木基地上空は分厚い雲に覆われていた。
 瑞浪 時雨(ga5130)の胸は高鳴っていた。この真下は、もう祖国の大地なのだ。
「ようやくここまで‥‥あと少しで‥‥」
 彼女の母校は更に先だ。それでも、この下はもう、慣れ親しんだ関東地方なのは間違いない。
「東京奪還の前哨戦だから、ここはきっちり成功させないとね。 だから、アーちゃんも、時雨さんも、みんなも、がんばらないと」
 彼女に同意するアーク・ウイング(gb4432)。
「アーク‥‥アーちゃん、生き残ったみんなでキャンパスの復興‥‥、出来るかな‥‥?」
 生き残っている人がどれだけいるか分からないので、それはとても淡い希望。不安になってつい、口に出してしまう時雨。
「もし、キャンパスが復興したら‥‥ユーリーも行ってみたいです」
 最近まで旧カナダ地区の音楽学校に通っていたユーリー・ミリオン(gc6691)には、彼女の気持ちが良く解るようだ。
 アークが元気づけようと、口を開いた時、緑川 安則(ga0157)の激励が全員の回線に響き渡った。
「瑞浪、貴公の胸中察するに余りある。 これから始まる作戦は、我ら傭兵の悲願。 名古屋防衛戦の意趣返しだ‥‥奴らに思い知らせてやるぞ。 人間は、ここまで強くなったとな!」
「私たちに、出来る事をする‥‥、今はただそれだけ‥‥ですね」
 淡々と、だが力強く時雨は言い――機首を下げた。全機、降下開始。分厚い雲を突き抜け、基地上空に布陣する敵大部隊へ――!
 
 まず、傭兵たちの目を引いたのは問題の『俺様専用最強型BF』である。そのあまりに舐めた外見。だが士気の高まっている傭兵たちは十分に警戒しつつもそれに惑わされたりしない。
「どう考えてもあのBFは普通じゃない! 絶対に逃がさないでくれよ! 道は切り開いて見せるからな!」
 緑川はそう叫ぶと、打ち上げられる紅い光条のど真ん中を突っ切って降下する。
「ブースト、さらにツインブースト起動、アタッケ、クードロア発動! マルチロック! K−02! フルファイア!!」
 緑川のフェイルノート2が、命中力を研ぎ澄ましたホーミングミサイルを斉射する。芸出的な軌道を描いた弾頭が、敵のフェザー砲に迎撃されつつもBF周辺のHWに突き刺さっていく。
 これに続いて、アークのシュテルン・GもK−02を発射。こちらは火力強化型であり、基地上空に無数の爆発が起きる。
「あの‥‥ちゅ、注意してください。あのBFは、何か、その、ふ、普通の目的ではない気がします」
 ロゼア・ヴァラナウト(gb1055)が、おどおどした口調でBFに向かう仲間にアドバイスする。行動に必要な情報を集め、相手の意図を読もうというのだ。
「まるで、落としてほしいみたいね?」
 覚醒し、ロゼアの白い髪が漆黒になる。彼女は冷酷な口調で感想を述べた。彼女自身は指揮官機に対峙する為に加速する。
 シラヌイS2型「剛覇」に乗る龍深城・我斬(ga8283)もK−02を発射しつつ、敵の指揮官機に目星を付けるべく、戦場を見回したが‥‥
「先ずは一撃っと‥‥ふむ、HWにタロスに趣味の悪いBFか‥‥さて、ボス格は‥‥本星型! あれだな、護衛も二機連れてるし!」
 この時、彼の回線はオープン状態であった。よって、当然の如く、この発言はG3とT3にも聞かれてしまった。
『あ、やっぱりあなたもそう思います? ですよねー』
『すげーや兄貴! 謙虚に自分の間違いを認めてこそ、人は成長するんだね!』
 オープン回線で響く殺意の湧くやり取り。同時に、本星型の側にいた二機が突出し始める。
『やっぱり、ちゃんとしたエンブレム発注したかったけど、予算の許可が下り無かったんじゃー、ボケがー!』
 一応、指揮官機だ。単純に突っ込んでくるのではなく、周囲の無人タロス一機とHWを先頭にして八つ当たり気味に飛来する。
 この時、味方の多くは初撃後の隙で大きくは動けない。小癪にも、呼吸を心得た漫才コンビの攻撃に味方が先制されそうにになった瞬間、またもやK−02が敵の先陣の足を止めた。
「頑張ってミユお姉さまに褒めてもらうのだー! 落ちちゃえー!」
 攻撃したのはハルカ(ga0640)のナイトフォーゲルR−01改だ。その圧倒的な攻撃力に、先陣のHWは壊滅的な被害を受け、無人タロスも破壊された。
 だが、危ういところでミサイルを免れたG3がサーベルを大きく振りかぶった。
『ようし! 俺も頑張ってリ、リリアお、おねおねえ‥‥とか、死んでも呼びたくねええええ! ゴーレェェエエエムゥッ、マッチェイトォォオ!』
『さすが兄貴だ! 上司に対する恥ずかしい呼び方はダンディーに似合わないね! フェッザァァ・カッノォォォン!』
 フェザー砲の光と、投擲されたサーベルが指揮官機迎撃に当たった三機に襲い掛かった。

 この不快極まりないやりとりにも、時任 絃也(ga0983)は冷静であった。
「さて、どうにも可笑しな敵とやりあう事になったな」
 そう言いながらも、自身は冷静に愛機ナイトフォーゲルR−01改に装備したMM−20ミサイルポッドとスラスターライフルで周囲のHWを撃墜するのであった。
 単に関わり合いになりたくないだけなのかもしれないが。

「投げた刃物は円軌道で戻って来る、ロボット物の常識だな!」
 我斬は、回転して襲ってくるマチェットの円軌道を的確に見切ってアクチュエーター併用で大く回避する。
 更に彼の背後からは、ハルカ機が47mm対空機関砲を指揮官機に発射。
 だが本星型は危うい所で、強化FFを展開。これを弾く。
『忌々しい‥‥!』
 苛立つ基地司令官。ロゼア機であるロビン『鴻鵠【狼火】』もマイクロブースターを使って3.2cm高分子レーザー砲による偏差射撃で援護する為、彼は、迂闊に三機に近付けないのだ。

「派手に花火を、此処で敵を叩けるだけ叩けば後が楽になるだろうしな」
 時任が号令し、曇天の下、無数の光条と爆発光が厚木基地の上空を瞬いては消える。戦闘開始から間もないとはいえ、すでにかなりの被害がHWに出ていた。

『総員、今から本気出す!』
 G3がオープン回線で叫んだ。
『しかし! まだ‥‥!』
 本星型の指揮官が叫ぶ。
『タダで撤退出来る訳はねえだろう! これでも遅いくらいだぜ!』
 広範囲に散開していたHW部隊の後衛が、まず離脱を開始する。同時にほとんど護衛戦力を失っていたBFも後ろに下がり始めた。
「逃すわけにはいかない‥‥ここで堕ちて‥‥!」
 それまで低い防御性能故に後衛にいた時雨のアンジェリカ『エレクトラ』が突出し、近距離からDR−2荷電粒子砲をBFに叩きこんだ。遂に、着弾点から火を噴くBF。同時にそのハッチが開き始める。
「アーちゃん、そんなことさせないんだから!」
 アーク機のガトリング砲「嵐」がその動作箇所に攻撃を集中する、ハッチがひしゃげ、発進口が爆発する。かろうじて、そこから散布された数機のキューブワームも、アーク機8式螺旋弾頭ミサイルによって、戦況に何ら寄与する事無く撃墜された。
 旋回する為に一旦飛び去ったアーク機に続いて、エンハンサーで知覚を極限にまで高めた時雨機が、止めとばかりGP−7ミサイルをBFに叩きこむ。圧倒的な火力の前に、悪趣味な落書きの装甲板が吹き飛び、機関部が爆発。巨体が黒煙を噴きながら落ちていく。
『くそーよくもおれたちのさいしゅうへいきをー。 けど、いいのかい? 基地の自爆スイッチ押しちゃうぞ!』
 通信でアーク機を挑発するG3。
「させないんだもん!」
 既に敵戦力が撤退を開始したことはアークも気付いていた。まだ戦闘が終了したわけではないが、重要な前線基地として機能し得るここを爆破させる訳にはいかない――! アーク機が急降下を開始する。
『かかったな! プゥゥウロットォオオン! ブィイイムッ!』
 今度こそ冗談抜きにP砲を真下のアーク機に発射するかと思われたG3。しかし、彼が振るったのは、二本の特殊強化サーベルであった。
「何がグレートだ。 笑わせんな、それを言うならこちとらスーパー地球人だぜ!」
 滑空して来た我斬機のソードウィングを、サーベルをクロスさせて受け止めるG3。
『そう、上手くはいかねえか!』
 火花が散る二機の背後から更に、ハルカ機が急接近。
「そっちがG・G・Gなら、こっちはリアル・ロマンティック・R−01。 略して R・R・Rなのだッ! 見よ! このマブいペイントをー!」
 そう言ってハルカは機体に描かれたKVペイント「ミユ」を見せ付ける。機体に輝くミユ・ベルナール社長(gz0022)の笑顔。堂々とした肢体が鋼の翼に映え、何というか、とてもイタい。
 気まずい沈黙。を突き破るかのごとく、ハルカ機が電磁加速砲「ブリューナク」をG3に発射した。背後からの直撃。グラリと揺れるG3。
『ふっ、負けたぜ。 どうせなら姉貴の方がヨリシロになって北米を‥‥うそです』
 そう、彼が呟いた時である。突然本星型が、ハルカ機と我斬機に突撃して来た。
『地球人共の好きには、させん!』
 フェザー砲が乱射され、怯む二機。
『何やってんだ! お前は、撤退の指揮をする手筈だろうが!』
 予定と違う基地司令の行動にG3は怒鳴る。
『私は、この基地をミスターから任されたのだ! 地球人如きに背を見せる等、あの方に合わせる顔が無い!』
 激昂する司令官の機体に、ロゼア機が高分子レーザー砲で狙いをつける。
「なら、墜ちて」
 冷酷な呟きと共にレーザーが発射される。
『出番だ! T3!』
『任せろ兄貴〜!』
 そこに飛び込んで来たのがそれまで撤退する戦力の援護を務めていたT3であった。高速のまま本星型に体当たりして、瞬く間に後方へ弾き飛ばす。
 同時にレーザーがタロスを貫いた。
『効くもんか〜! プゥウロトォォオン・キャッノォォン!』
 直撃を喰らいながらも収束P砲が応射され、ロゼア機にダメージを与える。
「あのシェアト(gz0325)をも驚愕せしめた(一応本当)俺の一撃受けてみろ! ウルトラスーパーグレートデリシャスデラックスワンダフルボンバー!!!」
『何の! やっと決まるぜ! フェッザアアアア・スプレィ・ガァァーンッ』
 G3は遂に我斬機のレーザーに貫かれたが、反撃の収束フェザー砲を相手に直撃させる。かくして、漫才コンビは同時に墜落を始めた。
『‥‥G、3閣下‥‥!』
 吹っ飛んでいく基地司令官の通信。初めてそのふざけた名前を呼んだのは、自らの軽率な行動で二機を撃墜させてしまった負い目故か。
『慣性を、制御して止まったりするんじゃねえぞー! そのまま全速離脱だー!』
『兄貴〜! やっぱり落ちる時は一緒だね〜!』
 これが、遥か眼下に広がる、基地から大分離れた山林へ落ちていく二機の最後の通信となった。
 
「ミサイルを撃ち尽くした! これより近接戦闘に入る!」
 HW部隊の掃討に専念していた緑川が通信で叫んだ。言葉通り30ミリ重機関砲での攻撃に切り換え、一機でも多く落とそうというのだ。
「逃がさん!」
 既にボロボロになっていた無人タロスを補足、機関砲を発射するが回避される。
 しかし、直後にユーリーのグリフォンが発射したホーミングミサイルがタロスに突き刺さり、撃墜に成功した。
 同じく、二つのミサイルポッドを撃ち尽くした時任もスラスターライフルでの掃射に切り替えている。
「ここで統べての戦力を投入するとは思えん、であるなら有象無象を囮にか‥‥あのBFも想定した通り、本命を逃がす為の囮だったのだろうな‥‥ならば、俺達で少しでも敵を削りたい所だが」
 時任が言う。
「残弾も少なくなってきてますが、それをよく了解して、駆逐を進める様にしたいですね」
 そう答えたユーリーも、僚機とは周囲警戒方向を分担して、お互いの死角を補う様に立ち回りつつHWを徹底的に落としていたが、やはり先程の攻撃で、ミサイルは全て使い切っていた。そこに、無人タロスが襲い掛かる。
 だが、ユーリーは慌てずに航空機動を駆使してプロトン砲を回避する。
「自分の兵装の射程は理解しています‥‥! 射線上に捉えて、確実に‥‥!」
 ガトリング砲の残弾全てをタロスに叩きこむグリフォン。だが、無人機はしつこく追いすがり近距離からの収束フェザー砲を狙う。
「そして、味方砲撃射線にも‥‥! そこは、射程延長線上っ!」
 再び攻撃を回避するユーリー機の背後から、緑川機と時任機がありったけの機関砲をタロスに集中させた。ユーリーは味方の射線を把握してそこに上手くタロスを誘い込んだのだ。
 今度こそ、大爆発するタロス。今の戦闘で、周辺のHWに逃亡を許したものの、タロスを撃墜スコアに加えたのは大きかった。作戦のクライマックスに相応しい戦果と言えよう。    
 既に、八機が攻撃できる範囲の敵戦力は全滅していた。残存部隊は、既にかなりの距離まで撤退している。
 数減らしに貢献した三機は、前述の通り、既にミサイルの残弾が尽きていた。指揮官機に立ち向かった三機は、被害が大きく追撃に参加することは厳しい。
 アーク機は一足先に基地に潜入し、エレクトラは余力を残すとはいえ、アンジェリカの装甲で単機での深入りは自殺行為である。
 とはいえ、本星型の逃亡は許したが、指揮官機二機は撃墜。その他の戦力も、厄介なタロスを三機撃墜し、残存戦力もここから眺めるとかなりの数が残っているように見えるが、それ以上の数が撃墜されているのだ。
 加えて、この時アークから届いた通信の内容は、この作戦が満足すべき戦果であることを保証した。
「あのねー! 自爆装置なんて無かったよー! だからみんな、安心して下りて来てー」
 脱力しつつも安堵し、今や奪還された厚木基地に降下していく傭兵たち。自爆装置は嘘だったにせよ、エレクトロリンカーの能力を生かして、アークが安全を確保してくれているのが有難い。
 時任が呟く。
「ブラフか‥‥最後まで人を食った、可笑しな敵だったな」

 曇天から小雨へ。
 しとしとと雨が降る厚木基地付近の山林の中、木々の間からタロス‥‥T3が顔を出した。既に自己修復で、何とか動ける程度には損傷は回復している。その手にはゴーレムのパーツの一部――G3の脳髄が納められた強固な容器を大事そうに抱えている。
『兄貴ー! 終わったみたいだぜー』
『やれやれ‥‥やっぱり随分落とされちまったなあ。 これじゃあ博士に大目玉だ!』
『そんなことはないよぉ? あの戦力相手ならぁ、まあ頑張った方じゃない? あの基地司令も名誉挽回の機会は持てそうだしぃ』
 突如二機に会話に何者かの通信が割り込んで来る。
 子供――少年の声のように聞こえる。
『博士〜!』
 T3が叫ぶ。
『すぐにこっちの勢力圏に入れるとはいえ、気を付けて帰って来てねぇ。 新しい体、調整しておくからぁ』
 喜劇は――まだ続く、のか?(堪忍して下さい‥‥)