タイトル:【東京】蟻塚爬虫類軍団マスター:稲田和夫

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/31 10:00

●オープニング本文


 UPC軍が仕掛けた東京開放作戦の第一目標、横浜戦はUPC軍の勝利に終わった。
 この勝利は、後に続く東京への足掛かりとなる事は間違いないが、それ以上に関東平野における戦力図は大きく書き換わる事となるだろう。
 さらに小牧基地を出発した部隊は、静岡空港予定地に建てられたバグア軍基地の占領に成功。芦ノ湖や富士の樹海攻略と作戦は確実に成功を収めていった。
 そして――UPC軍の進撃は、早くも第二目標を目指して動き出している。
 そう、UPC軍には東京23区へ駒を進める前に、落とさなければならない土地があったのだ。
 かつて銀河重工の工場があった土地であり、幾度かの強行偵察で苦渋を飲まされた土地。
 既にアジア決戦にてフレア弾を投下、さらに横浜本営を陥落させた――今。
 再度、あのバグア中継基地へ戦いを挑む時である。
「‥‥諸君らも忘れてはいまい」
 椿・治三郎(gz0196)は情報士官達へ八王子蟻塚への進軍を静かに告げる。
 机の上に広げられた関東平野の地図には、八王子に赤い駒が置かれている。バグアの重要拠点と目され、UPC軍の23区入りを阻んできた憎き蟻塚。この蟻塚を叩き潰す機会を、UPC軍はようやく得たのである。
「しかし、中将。 本来であれば海路も同時に制圧して23区へ陸路と海路から攻め上がるべきではないでしょうか」
 情報士官は敢えて進言する。
 今回の東京開放は確実性を喫する方が良い。海路から羽田空港、アクアラインを奪還。その上で八王子蟻塚を陥落させる事ができれば23区は間近である。確実に戦力を推し進めるならば海路は外す事はできないだろう。
 しかし。
「八王子は山梨東部、埼玉南部とも接する。 さらに東京からも援軍の可能性を考えれば、戦闘はさらに激しさを増すだろう。 海路での進軍は継続、秋葉原レジスタンスから情報提供を得るための諜報活動を続ける。 しかし、我々は保有戦力状況を鑑みた上で、東京外縁の要所である八王子へ駒を進めるべきである」
 椿は、ゆっくりと答える。
 今回の東京開放は電撃作戦である。バグアが23区へ戦力を終結させる前に、八王子蟻塚を叩いておきたい。 作戦に招聘される傭兵からすれば休暇は皆無と言え るだろう。だが、UPC軍――否、人類にとって大きな二歩目である事は、作戦に参加する傭兵達の心に刻んでおくべきであろう。

 一方、バグア側ではUPCの先手を打つ動きがあった。
 アーバングレー隊と水桐タカヤは、八王子へ向かう途中にUPC軍を強襲。高官を捕虜として攫う事に成功していた。この事で、蟻塚周囲の戦力を壊滅させた後で高官救出作戦を敢行する必要が出てきたという訳だ。
「なるほど、次は八王子ですか‥‥」
 東京を支配するバグアの副官、水桐タカヤは静かに呟いた。
 UPC軍が八王子蟻塚に拘っている事は過去の作戦から見ても明らか。横浜へ強襲をかけた事から考えても、そのまま陸路で八王子まで軍を押し上げる事は間違いない。
 タカヤはそう考えていた。
「蟻塚は23区と外縁を繋ぐ中継基地‥‥落とされると厄介だ」
 蟻塚が落とされれば、東京という土地は目の前だ。UPC軍にとっては待望の23区であるが、逆に言えばバグアにとっては八王子も重要な拠点であるという事である。
「ここは私が、八王子まで行かなければならないようですね」
 タカヤは、特殊バイク部隊「アーバングレー」の出動準備に取りかかるのだった。

 厚木基地陥落後であり、G3とT3が群馬県で傭兵たちと交戦する少し前のこと。雨の降る中、蟻塚の滑走路にBFが降下した。ハッチが開き、暗闇の中に無数のコンテナ、そして巨大な機影が浮かび上がる。
『待たせたな。 まず極北みやげだ』
「ほう、『純白の恋』とかいう北海道の銘菓ですか」
 元・厚木基地指揮官の意外な冗談にG3はしばし沈黙した。
『‥‥良くねえな。 堅物がそういうこと言うの、良くねえぜ』
「何、閣下に少し、影響されてみただけのことですよ」
『‥‥悪いな。 博士は元々出不精だし、こっちも下っ端だけあってヤボ用が多くてよ、八王子でのドンパチには、手え貸してやれねえんだ』
「代わりにこのワームですか。 成程、素晴らしい機体だ。 博士にはよろしく言っておいて下さい」
『ありったけ、かき集めて来たメイズリフレクター共とこの機体じゃあ、やれる戦術(こと)も限られてるだろうに‥‥博士ももう少し汎用性の高いのを調整しろっつーの』
「確か北米の絶滅した生物でしたな。 中々のフォルムだ‥‥もし現生しているのなら、上のバグア連中から、ヨリシロとして引っ張り蛸かもしれませんな」
『オイ、お前まで博士みてえな悪趣味に目覚めることはあるめえ』
「冗談です‥‥しかし、決死の覚悟で駆るに値する機体だ、というのは本当ですよ」
『つまんねえこと言ってねえで、根性見せろよ』
 補給物資の引き渡しを終えたG3はそういうと、背を向けBFに歩いていく。
「私とて、名誉は挽回したい。 が戦場で力及ばぬならば、その時は――」
『地獄で飲もうぜ。 強化済みでも、この星で死ねば、墜ちる所は同じだろうよ』
 G3がそう呟くと同時に、BFのハッチが静かに閉じた。

 蟻塚東方面を守備する、厚木基地の残存人員を中核とした守備隊は、中生代の大型草食恐竜を模した砲撃ワームを指揮官機とし、相模原から八王子市内に伸びる八王子バイパスを最終防衛ラインとしていた。
 最前面にはMRを盾として配備。その背後からタートルワーム、砲撃・狙撃戦装備のゴーレムとタロスが厚い弾幕を張り、動きの素早いレックス・キャノンがMRの壁を越えて、動きのとれないKV部隊に切り込む。
 傭兵たちの動員に先だって行われた第一次攻撃で、判明した情報は以上である。

 緒戦は、その厚い防衛線で押し寄せるUPCを押し返した、元・厚木基地司令官であったが、本番はこれからであることを十二分に理解していた。
 傭兵を動員した蟻塚への大規模な作戦が始まったことはバグアも察知していた。接近する敵機の存在を重力波が感知する。
 指揮官は、厚木基地の生き残りである部下たちへの通信を始めた。
「――より、各有人ワームへ。 戦闘準備。 何としてもここを守る。 水桐閣下とミスターへの忠誠を示すぞ。 全力で雪辱を果たせ」
 ちょっと間をおいて、こう付け足してみた。
「総員、これから本気出す」

●参加者一覧

新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
飯島 修司(ga7951
36歳・♂・PN
シエル・ヴィッテ(gb2160
17歳・♀・HD
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
奏歌 アルブレヒト(gb9003
17歳・♀・ER
ラサ・ジェネシス(gc2273
16歳・♀・JG
ネオ・グランデ(gc2626
24歳・♂・PN
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA
煌 闇虎(gc6768
27歳・♂・DF

●リプレイ本文

 ブロント88のコクピットで、指揮官が部下から状況報告を受けている。
「近接航空支援は?」
「駄目です! 蟻塚航空部隊、敵航空戦力と交戦中!」
「横田基地からの援軍も、出撃直後に足止めを喰っている模様!」
「合流予定の陸上戦力も、立川、武蔵野付近で会敵! 早期の突破は困難とのことです!」
「他の蟻塚の陸戦部隊は、現在相模湖周辺で戦闘中!」
「そうか。 問題ない」
「司令官‥‥」
「数分前から蟻塚内部との通信も途絶している、か。 今は、水桐閣下と、朱呂奇閣下のご武運を祈ろう」
 元厚木基地司令官は静かに言った。
「ラプトル隊は、敵がMRの壁をこじ開けるまで待機。砲撃戦がお気に召さぬというのなら、それでも構わん」
 総司令官は、敵の動きを確かめそう命令した。
 
 戦闘開始から20分が経過。蟻塚東の最終防衛ラインに攻撃を仕掛けて来た傭兵部隊は、敵の布陣を分析し、的確に攻めた。
「恐竜軍団の好きには、させないのデス!」
 フェイルノートII、愛称『Queen of Night』に乗るラサ・ジェネシス(gc2273)がPCB−01ガトリング砲をMRのコアに撃ち込む。が、本家のCWより弱いとはいえ、かなりのジャミングが働いていることもあり、必中とはいかず、反射ダメージがラサを襲う。
「‥‥ラサさんは、全体の指揮をお願いします‥‥」
 今回の作戦で、最終的な細かい班分けを担当したのは、ラサである。奏歌 アルブレヒト(gb9003)の言う通り、常に全体を広く見、味方との連絡を取り連携を調整する指揮の役割にはこの場合彼女が適任であった。
 役割を交代した奏歌は、ラサに庇ってもらいつつ、ガンスリンガー『Schwalbe・Schnell』のSシュートを起動した。
「‥‥MR親機を発見‥‥排除します」
 そして、親機に狙いを絞り、バルカンで掃討していく。
 一方、オウガに乗る御守 剣清(gb6210)は、機盾『ウル』を構えた煌 闇虎(gc6768)の雷電『スルト』に護衛を受けつつ、スパークワイヤーを振り回し、突破口を開くべく、MRを払い除け、その親機を狙う。
「させるかよっ!」
 攻撃を受け止めた闇虎が叫んだ。
「フゥ、神経が疲れるな、コリャ‥‥」
 戦闘中に細かい作業を強要され、呟く御守。
 この間、新居・やすかず(ga1891)のリヴァイアサンがその穴からスナイパーライフルで敵ワームの射撃際の隙を狙い、二人を援護する。
「これだけ数が減れば十分なのデス! 恐竜軍団に突撃デス!」
 ラサが指示を下す。
 先陣を切るのは、機槍ロンゴミニアトを構えた飯島 修司(ga7951)のディアブロだ。
「ラプトルを三匹だけ、前に出せ」
 マグナム・ラプトルが、大地を蹴立て飯島機に突進する。
「この『竜王殺し』の悪魔の前に立つのであれば、それ相応のご覚悟を」
 飯島機は、ラプトルの攻撃をものともせず、縦横無尽に機槍を振るう。
 最初の一薙ぎで、一匹目の上半身が消し飛び、次の一突きで二匹目の下半身が肉片と血煙へ変じ、返す払いで最後の一匹が全身を叩き潰された。
「ふむ、あの機体は厄介だな‥‥」
 ワームの体液を浴びて、傲然と構える飯島機を見て司令官が僅かに眉をしかめた。
「各機、砲撃をあの機体以外に集中させろ」

「皆サン! MRへの攻撃を緩めないで下サイ! 飯島サンに近付けては、反射で危険デス!」
 ラサがマルコキアスで応戦しつつ、叫ぶ。
 MRの壁に穴を開けた傭兵たちであったが、僅かとはいえ、MR自体にも移動能力がある。防壁に穴が空けば、その穴を塞ぐように周囲が群がってきたり、増殖を始めようとするのだ。
 この為に、傭兵たちは、魚鱗の陣(敵の方を向いた三角形の陣形)を強要され、その最先端に飯島機が位置する形で交戦していた。

「敵精鋭機ディアブロ! 孤立しました!」
「全ラプトル隊突撃! 目標敵精鋭機!」
 指揮官の命令で、全てのラプトルが飯島機に殺到した。
 まず。新居が敵の体色から、耐性を判断し、Lカノンとマルコキアスを使い分け弾幕を張り、何とか一匹を撃破する。
「援護します‥‥! ‥‥バレット・ファスト起動‥‥!」
 続いて、奏歌機は、ラプトルの群れの足を狙って射撃を開始した。彼女の機体の攻撃力では一撃とはいかないが、脚部を狙えば、その機動性を削ぐことは可能であり、二匹を転倒させた。
 が、残ったラプトルが一斉に飯島機に飛び掛かる。瞬く間に二機がロンゴミニアトの餌食となった。しかし、長柄武器で敵を迎撃すれば、その懐に隙が出来る。そこに、姿勢を低くした一匹が足を狙って組みついて来たのだ。
 咄嗟にレーザー砲で迎撃する飯島。しかし、飯島もラプトルの体色に注意を払うべきであった。そう、組みついてきた奴の体色は、赤だったのだ。
 無論、飯島機の攻撃力の前では、焼け石に水ではある。だが、耐性のおかげで一撃で完全には殺せなかったのが災いし、飯島機は地面に転倒させられてしまう。
 そこに、ラプトル全てが群がった。真っ先に噛みつきで射撃武器を食い千切り、触れれば消し飛ぶ威力のHDと機槍を振るわせまいと、その手足にも喰らいつく。
 フォローしようとする周囲の傭兵にはここぞとばかり、射撃装備のワームが火線を集中させ、動きを封じる。
 ラプトルのモデルとなったドロエマオサウルス科の最大の特徴である後足の発達した鉤爪が、機体の装甲の隙間と言う隙間にねじ込まれ、手当たり次第に回線や内部機構を破壊する。
「これ以上、飯島サンに手ぇ出さねぇでもらえるかい?!」
 何とか、乱戦の隙を突いて御守機が『新月』とスパークワイヤーで、ラプトルを引き剥がす。
 気が付けば、全てのラプトルは機能を停止していたが、飯島機も行動不能。更に、コクピットのハッチも狙われており、飯島は重傷であった。
「今日の私は‥‥少々荒っぽ過ぎましたな‥‥クソッタレの寄生虫(バグア)どもに、してやられました‥‥」
 だが、逆に言えば、飯島機が敵の機動力に富む戦力を全滅させたという事でもある。
「後は‥‥皆さんにお任せします。 何、心配は入りません。 見覚えのある町並みや道路を眺めて‥‥休憩させていただきますよ」
 静かに、目を閉じ、恋人の形見のドッグタグを握りしめる飯島であった。
 この時、さすがのMRの壁も、徐々にその減少が実感できるくらいの数にはなっていた。
 敵との距離も縮まり、崩れかけたバイパスの高架道路に布陣する敵機が肉眼でもはっきりと見えていた。
 そして、敵影の中で明らかに他の機体の二倍近い身長を誇る巨体、それこそが敵指揮官機であろう。
 オウガ愛称『ミーティア』に搭乗するシエル・ヴィッテ(gb2160)が、操縦稈を握り締め呟いた。
「あれが相手か‥‥でも、突破口を開くにも、あれを倒さなきゃどうにもならなそうだし、やるしかないよねっ!」
 彼女のオウガを始めとして、それまで指揮官機対応の為に温存されていた。ブロント88対応班が後衛の援護の下、密集隊形を取り始めた。
「東京奪還のための大きな関門だね。こんなところで躓く分けにはいかないから、何としても勝たないと」
 アーク・ウイング(gb4432)は改めて気合を入れ、乗機シュルテンGの錬剣『白雪』を構えた。

「司令官。 敵部隊の一部が突出しそうな様子を見せています」
 タロスに乗る強化人間の一人が、報告した。
「この機体を狙っているな。 各有人機は、無人機を盾にして戦え」
「了解しました。 しかし、司令官は‥‥?」
「ご指名とあらば、行かぬわけにはいかんだろう?」

「敵指揮官機が前進開始‥‥ここからが本番だな‥‥全兵装全砲門解放、超過駆動開始する」
 敵陣から悠然と歩み出した指揮官機を見たネオ・グランデ(gc2626)がシラヌイ改『蒼獅子(ブラウ・ローヴェ)』で『超伝導アクチュエータ』を起動し、同時にゲイルスケグルを構え、走り出した。
「ふふふ、雷竜と戦えるとは夢のようですわね。うちのぎゃおちゃんが喰らい尽しますわよ」
 ある意味、今回の戦闘に一番気合十分なのはこの人かもしれない。竜牙のカスタム機『ぎゃおちゃん』に搭乗するミリハナク(gc4008)も味方の援護を背に、愛機を進撃させる。
「門番で敵の防壁を潰すことになるとはな。 門破りにでも改名するか‥‥?」
 愛機スルトの語源を省みて、そう呟いた闇虎は、愛機を跳躍させそのまま空中で変形させた。無論味方の援護のおかげで邪魔は無い。
「グレネードの攻撃座標を送っておく! 指揮官機対応班は気をつけろ! ‥‥空から援護する!」
 一旦、高度を取ったスルトは、指揮官機を補足すると、一気に急降下を開始した。
「PRMシステム・改、起動するよ! アーちゃんから行きます!」
 錬力を高めたアーク機は、『白雪』と、機盾『ウル』を構え、ブロントに接近戦を仕掛けた。後方のワーム部隊が、砲火をアークに向ける。
「イロモノじみた機体に乗っている割に、堅実な指揮官ですね。 油断ならない相手と見た方が良さそうです」
 だが、新居は、敵機の射撃の瞬間を狙い、的確に味方をサポートする。連続使用していたシステム・インヴィディアでスナイパーライフルを放ち、次々と敵を撃ち抜いていく。
 アークが敵に切り掛かる。最初の一撃は、浅い。
 追撃を入れたいところだが、アークはこの巨体を警戒して、あくまでも一撃離脱に徹する心積もりであった。素早く機体を後退させ、危ないところでブロントの首のブレードを盾で受け流す。
「電撃戦で一気に決める‥‥重武神騎乗師、ネオ・グランデ、推して参る」
 一方、グランデは、一気に勝負を決めようとあえて近接戦に出る。アーク以上に接近し果敢に敵機の足をゲイルスケグルで攻め立てた。
「体当たりや踏みつけの方が、砲撃を好き勝手撃たれるよりはマシだ」
 だが、体格差をはそう簡単には覆らない。足に槍を突き立てたと思った瞬間、その脚がローヴェを蹴り倒す。そのまま相手を踏みつぶそうと、後足だけで大きく立ち上がる雷竜。
「どこ見てんだ、こっちも構ってくれよな!」
 その時、闇虎のスルトが、急降下して来た。狙いは、ブロントの背部に積まれた兵装群でる。
「直上ってのは、死角になりやすい、だろ?」
 だが、背中に武装を満載したブロントにとって、真上は死角とはいい難い。まして、背部のプロトン砲は、対地攻撃武器であるグレネードより射程も長いのだ。
 背部のプロトン砲が、光条を撃ち出す。直滑降が仇になり、スルトは反撃も出来ぬまま直撃を受けた。
 命中を確認した雷竜は、止めを刺そうと前足で、強い衝撃を受け動けぬローヴェの上にのしかかろうとする。
「させるかよっ! これ以上、味方は落とさせねぇぞ!」
 だが、戦闘中SURTシステムを起動してモーションパターンや各演算を『庇う』ことに最適化させていたスルトが、最後の力でローヴェを庇う。
 二機はまとめてブロントに踏みつぶされ、大破した。闇虎とグランデも重傷を負ったが、闇虎が庇ったおかげで二名とも一命はとり取りとめたようである。
「懐に潜り込むよっ、援護お願い!」
 シエルが叫ぶ。
 大破した二機を踏み越えて、なおも進撃するブロントを止めようと、KV用チェーンソー『悪夢の再来』を構えたシエル機が立ち塞がった。
「今度はこっちの番だよっ!」
 首のブレードによる攻撃を、圧錬装甲で受け、逆に錬力に変換するミーティア。
「成る程‥‥派手な武装の割に、防御にも抜かりは無い、か」
 司令官も、感心したように呟いた。
「ならば、これは受け切れるか?」
 ブロントの巨体が、大地を揺らし、突進を仕掛けて来た。
 これに対し、シエルはツインブーストBを起動した。
「この一撃で全てを切り刻むよっ! いっけぇぇ!」
 彼女の狙いは、敵の体当たりチェーンソーで受けて、カウンターでその脚を切り刻むことである。
 傭兵たちの援護射撃にも怯まない巨体の体当たりを、真正面から受け止める。その衝撃は凄まじく、機体は大きく弾き飛ばされ、大破した。シエルも受けが幸いして、重傷まではいかなかったものの、激しくコクピットの壁に叩きつけられ、全身を打撲する。
 だが、ソーの刃は先程グランデが傷つけた脚の傷口に食い込み、脚の一本を深々と切り裂いていた。
 更に、ミリハナク機が、口腔内から放った荷電粒子砲「九頭竜」が雷竜の背面の武装の一部を破壊する。
「本気の竜の味はいかがかしら?」
 得意そうに言うミリハナク。
 これで、雷竜は、完全に歩行不能にはならないものの、大きく歩行速度を低下させ、更に踏みつけや蹴りは使用不可能となった。アークは、この好機を生かし再び一撃離脱で、残った背面の武装を破壊する。
 それでも、雷竜は残ったミサイルを連射する。
「‥‥撃ち合いなら‥‥シュワルベも負けません‥‥」
 そこに、奏歌が、ミサイルの発射口が開いた瞬間を狙って、レーザーカノンで集中攻撃をかける。内部誘爆により、背面部で大爆発を起こすブロント。
「狩りの時間ですわね。 大きいだけの雷竜が暴竜には敵わないことを教えて差し上げますわ」
 雷竜の武装がすべて破壊されたことを確認したミリハナクが、ブーストで突撃する。暴君竜のディノファングが雷竜の首の付け根を噛み砕く。
「訂正させていただきますわね! あなたの機体、アパトサウルスの方が、名称として、正しくってよ!」
 だが、雷竜もその首を素早く暴竜に巻き付け、同時に噛みつき返した。
 ブレードと噛みつき、そして締め上げにより。暴竜の装甲が軋む。
「何、私もそのことは知っていたさ! だが、ここ日本では、雷竜の語源となったブロントの名称の方が、通りがいいと、この機体の提供元から教わったのでな!」
 マニアな会話を繰り広げながら、双方、装甲を軋ませ、暴竜相食む状態が続く。
 既に、東方面の戦闘はほぼ終了していた。
タロスとゴーレムの無人機はほぼ全滅し、タートルワームも、半数以上はまだ動いていたが、奏歌機に砲塔を破壊され、実質無力化が完了している。
 後方からは、防衛線突破の報を受けて、正規軍の陸戦部隊が殺到しつつあった。
 そして、遂に決着の時が来た。
 暴竜が、噛みつきあったまま、オフェンス・アクセラレータ併用した荷電粒子砲をゼロ距離から発射した。モニターに広がっていく光を眺め、厚木基地の司令官は呟いた。
「ここまでか‥‥ク、閣下、来るのなら、なるべく遅く‥‥!」
 一閃の閃光が、雷竜の背を突き破り、迸った。同時に、雷竜の首のブレードが、相手の機関部や駆動系を切り裂き、暴竜もまた、爆発、大破した。
 噛み付き合ったあったままの姿勢で擱座する二機。
 重傷を負ったミリハナクが、辛うじて脱出ポッドを射出させた。
「パイロット! 生きているなら脱出してくれ!」
 御守が、ブロントに叫ぶ。それは降伏勧告であった。
 だが、返事は無い。
 ワームのコクピットは、既に荷電粒子砲に貫かれていたのである。