タイトル:【GR】憩いの温泉を守れマスター:壱南 藍

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/16 21:49

●オープニング本文


●GR鉄道計画
 その計画は、カンパネラ学園の関係者を集め、チューレ基地跡を利用する形で、行われる事になった。
 残骸と化した基地は、言い換えれば資材の宝庫でもある。そして、上手い具合に空いた土地を放って置くのも勿体無いだろうと言う事で、話はまとまっていた。
 しかし、かの地にはまだ、敵も多い。
 莫大な資金のかかる事業に、極北と言う観点から工事を請け負ったのは、かつてシベリアに鉄道を通したプチロフ。
 その代表マルスコイ・ボーブルは、作業員達の安全確保を、その条件に求めた。
 さもありなんと頷いた学園側の総責任者は、ウォルター・マクスウェル卿。
 加えて、会長でもある龍堂院聖那、技術部門の責任者はキャスター・プロイセン准将と、それぞれの関係者が、それぞれの役目を持って、再び極北の地へと赴く事になる。

 グリーンランドに鉄道を。

 基地を作り、街を作り、それを結ぶ。絆と‥‥共に。




 現在建設中の鉄道近くを、朝早く一台の小型トラックが走っていた。

「やぁー寒いね、しかし」
 ハンドルを握るのは三十代半ば程の男性。他に走るものも無い道をゆったりと走っていく。
「真坂燃料が思っていた以上に減っていたとは‥‥分けて貰えたから良かったようなものの、今度からもっと計画的に頼んでおかないとね」
 助手席。そこに座るのは同じ年くらいの男性。運転手が体育会系なら、こちらは文系な雰囲気を漂わせている。そのどちらもが分厚い防寒着に身を包んでいた。
 そんな彼らの後ろ、荷台には燃料や食料が積まれている。
「そうだな。今日のパーティに間に合わなかったら大変なところだった」
 彼らが向っている先は、つい昨日完成した温泉だ。
 場所は鉄道から少々外れた山側。歩いても行けるが、現在はまだ鉄道が通っていないため、車しか交通手段が無い。

 そこは元々、鉄道建設最中に偶然見つかった間欠泉の一つ。それを作業員たちが手の空いているときに少しずつ整備して、人が入ることのできる湯船を作っていったのだ。その後もあれこれと付け加えていき、気づけばそれなりの温泉施設ができあがった。
 今はまだ温泉だけだが、ゆくゆくは宿泊施設も作ろうという話も出ている、作業員たちにとっては憩いの場所だ。
 冒頭の二人も、鉄道建設のためにグリーンランドにやってきていた作業員である。しかし、いつの間にかこの温泉施設の管理を行うようになり、現在は許可を取って温泉施設の管理専門となっていた。
 そして今日は完成を祝い夕刻から小さなパーティを開く予定となっていたため、その準備に走り回っているのだ。

 そして三十分も走った頃だろうか。
 温泉の建物が見えてきたのだが‥‥。
「何か、変じゃないか?」
 遠目からではあるが違和感を感じる二人。
 その原因は近づいていくとはっきりした。

「ひでぇな‥‥。どうしたんだこれは」
 車を止め、二人が下りた先の建物は、何かが突っ込んだのか壁やドア、窓が壊されていた。その破片が周辺に飛び散っている。
「俺たちが出ている間に一体何が‥‥、あ!」
 建物の裏から雪を踏む音がする。
 そしてそこに立って二人を睨んでいたのは、角が立派なトナカイ。その後ろから更に数匹同じようなトナカイが姿を現した。どのトナカイも赤い瞳で二人を見ている。
 すると、最初の一匹が一歩を踏み出し‥‥。その直後、あっという間に二人のすぐ目の前まで迫っていた。
「危ねぇっ!」
 すんでで避けている間に、他のトナカイ達も地を蹴って迫ってくる。普通の動物ではありえない動きだ。
「逃げるぞっ! 早く車にっ!!」
 車から離れていないことが幸いした。
 慌てて飛び乗りトラックを発進させ、一目散に走る。
 ちらりと、助手席に座った男がサイドミラーを覗くと。
 数メートル追いかけてきたトナカイ達は、縄張りから追い払った後は追撃するつもりもないのか、立ち止まってじっとトラックを見つめていた‥‥。


●参加者一覧

エレナ・クルック(ga4247
16歳・♀・ER
リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
しのぶ(gb1907
16歳・♀・HD
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
椎野 こだま(gb4181
17歳・♀・ER
日野 竜彦(gb6596
18歳・♂・HD
タイサ=ルイエー(gc5074
15歳・♀・FC
セラ・ヘイムダル(gc6766
17歳・♀・HA

●リプレイ本文

「そろそろキメラの縄張りだ。皆注意してくれ」
 そう皆に声をかけたのはリヴァル・クロウ(gb2337)。
「みなさんの憩いの場を壊させはしないですっ」
 こぶしを握り応じたのは、エレナ・クルック(ga4247)。セラ・ヘイムダル(gc6766)も
「皆さんの憩いの場を取り戻す為、頑張ります♪」
 リヴァルを見ながらそう言った。リゼット・ランドルフ(ga5171)は周囲を警戒しつつ、
「ええ、パーティに間に合わせられるよう、頑張りましょう」
 と答える。一方。
「温泉、温泉〜♪ たのしみだねっ! 効能は何かなぁ?」
 うきうきと話すのは、真っ赤なリンドヴルムを纏ったしのぶ(gb1907)。その胸に書かれた『全力全壊』が彼女の人となりを物語っている。
(あ〜、俺ものんびり温泉入りたいな)
 隣でその台詞を聞いた日野 竜彦(gb6596)も心中で、そう同調していた。
「それにしてもトナカイなんて、クリスマスにはまだ‥‥早いですよね」
 そう呟くのは椎野 こだま(gb4181)。隣に居たタイサ=ルイエー(gc5074)は、しのぶに向かい
「温泉はキメラを退治してからだ」
 そう突っ込みを入れた。
「だ、大丈夫だよ! ちゃんとお仕事するよ!? 復帰後初任務だしねっ!」

 そんな八人の気配に気づいたのか。
 縄張りから数メートル踏みこむと、温泉施設の影から三匹のトナカイが現れた。

 それに気づき、トナカイを施設から引き離すために急接近したのはタイサ。彼女の動きにつられ、二匹が徐々に施設から離されていく。
 その方角で待ち受けていたのはしのぶ。『猛火の赤龍』によって強化された一撃がエネルギーガンから放たれる。
「全力! 全壊っ!!」
 攻撃は的確に一体を捉えた。そこへ更に追撃を加えようやく仕留める。
 タイサの方も攻撃に転じていた。トナカイに近づくと、まずは両手のデビルズクローで『刹那』による一撃を叩き込む。怯んだ隙に態勢を低くし、今度は『円閃』を使い心臓を狙った一撃を繰り出した。一撃は見事に決まり、トナカイが地面へ倒れる。

 一方、タイサと同じくトナカイへ接近していたのはリゼット。覚醒し、残った一体の脚へと銃口を向ける。
 ぱんっ
 弾は外れたものの、狙われた一匹がリゼット目がけて突進してきた。それを誘導する形で施設から引き離していく。途中、角の攻撃を受けそうになるも、手にした太刀ではじきながら建物と距離を置き、攻撃に転じる。
 まずは『迅雷』で相手の懐に飛び込みつつ斬り込む。トナカイが反撃を繰りだそうとするが、その反対側へと回り更に追撃を加える。攻撃に耐えきれずよろめいたところへ、『円閃』での薙ぎ払いが決まり止めを刺した。

 そんな交戦の気配を感じたのか、先ほどトナカイが現れた場所から更に三体が飛び出してきた。一斉に交戦中の場所へと向かってくる。

 まず、しのぶへ向かっていたトナカイに、竜彦が向かった。
「油断は禁物だけど、練習やリハビリには丁度良い相手ではあるな」
 にっと笑って『竜の鱗』と『竜の翼』で強化されたAU−KVを纏い、トナカイへ体当たりを食らわせる。
 トナカイの角による攻撃は、手にした大太刀によって受け流す。攻撃を捌き切り、太刀をトナカイへと振り下ろし見事命中させた。

 タイサへと向かっていたトナカイに気づいたのは、後方で支援を行っていたこだま。
「タイサさんへ一体、向かってきています!」
「任せてくださいっ!」
 答え、トナカイへと攻撃を行うのはセラ。見た目は横笛の超機械「スズラン」による電磁波攻撃で上手くタイサから引き離し、縄張りの限界と思しき辺りまで引き寄せた。
 丁度そこでトナカイが飛びかかってきたが、待ってましたとばかりにセラが『呪歌』を歌いあげる。途端、トナカイの動きが鈍くなり、すかさず電磁波攻撃を繰り出して、こちらも止めを刺した。

 リゼットへ向かっていたトナカイは、そばに居たエレナとリヴァルが対応していた。
 トナカイにぎりぎりまで近付き攻撃を回避していたエレナだったが、避けた先を思うより早くトナカイの角が襲ってきた。
「危ないっ!」
 間一髪のところを手にした盾で防いだのはリヴァル。数度の攻撃をはじいた後、手にした銃を撃ち込む。
 トナカイがよろめいたところへ、
「いきますよ〜っ!」
 そう叫びながら、エレナが『電波増強』で強化した機械爪の一撃を叩き込む。致命傷を受けトナカイはその場に崩れおちた。

「これで全部のようですね」
 各々がトナカイを倒した後、セラがバイブレーションセンサーで周囲を窺うが反応は無い。
「では、後片付けにうつりましょうか」
 エレナの言葉に応じて、建物の修繕や片づけ、今日行われる予定のパーティ準備へと分かれるのだった。



 エレナ、しのぶ、リヴァル、タイサの四人は修繕に回っていた。
 まずは施設の損傷確認のため、手分けして施設を見て回る。
 鹿の角によってえぐられた場所はあるものの、大規模な破壊跡はなさそうであった。

「落ちてる壁材も、結構そのまま使えそうですから再利用しましょう」
 以前復興依頼にも参加したことのあるエレナが言う。
 リヴァルは手にした紙へと必要なものを書き出していた。依頼者の今後の負担が減るようにとの配慮である。
「じゃ、先にその辺に散らばってるのを集めるか」
「ああ。それで修理出来そうな場所を先に済ませよう」
 タイサの一言にリヴァルが答える。
「力仕事なら任せて〜!」
 しのぶも得意分野とばかりに張り切った声をだす。

 そこから、四人手分けしての作業に入る。
 エレナは力仕事よりも細々とした作業と、経験を生かして現場指揮を。
 リヴァルとタイサは施設の修繕を。
 そしてしのぶは、力任せが性に合うとのことで、廃材撤去や片づけへと走りまわるのだった。


 一方、竜彦、こだま、リゼット、セラの四人はパーティ準備を行っていた。
 中でも竜彦とこだまは、退治したトナカイを解体しようとしている。
「毒とか、無ければいいんですが」
 温泉施設の横。修繕作業真っ最中の場所にずらりと並んだ六体のトナカイ。その一体をこだまが自身の武器である長剣ヴィアで捌き始める。
 小さく切り取った肉を、匂いや噛んだ味で毒がないか確かめるが、おかしなところは無さそうであった。
「大丈夫そう」
「じゃ、何体か捌くか」
 その言葉を聞いた竜彦が内臓を入れるためのバケツを取りにいった。その間に修繕中だったタイサもキメラを捌くのに協力してくれることに。
 更に、戻ってきた竜彦がトナカイを捌くため施設の軒先へ吊るそうとしていると、通りかかったリヴァルが。
「この様な重労働を少女がするべきではない」
 と言うや、三匹のトナカイをてきぱきと吊るして、また修繕へと戻って行った。
 よもや、その『少女』に自分がカウントされていたとは竜彦は知る由もなかったが。

 その間にリゼットとセラは、施設内部のキッチンで食事の準備を行っていた。
 既に討伐の連絡を受け、依頼主でもある管理人達がパーティに使う材料を運んできていたのだ。
 リゼットはサラダやバゲットサンド、デザートの下ごしらえを、セラもデザートの準備やメイン料理の準備を行っていた。
 三十分もすると、肉を調達した竜彦やとこだまも合流する。
 竜彦は肉料理としてシチュー・ハンバーグ・カツ、更にドライカレーを準備し始める。シチューやカツに使うトナカイ肉への下味付け、ハンバーグも豚・牛肉と混ぜ込み熟成不足を補うというプロ顔負けのテクニックを使っていた。
 既に用意されたパンやドライカレーに、自由にトッピングしてもらおうということらしい。
 こだまもトナカイ肉でステーキと煮込みを作り始めた。彼女の場合量音痴なため、事前に少なめの量を言われていたはずだが、確かに多めの量を作っていた。

 そんな中、修理道具を取りに来たリヴァルが通りかかる。
「リヴァルさん、丁度デザートができあがったんです。味見してもらませんか?」
 友人でもある彼を呼びとめたのはリゼット。その手には既にタルトが一切れ。
「ああ‥‥すまない両手が塞がっていて」
「はいあーん」
 言ってリゼットがタルトを口へ運ぶ。
「うん。美味しい」
 素直にリヴァルが感想を述べていると、キッチンの奥からセラが駆けてきた。が、何かに躓いたように突然倒れる。
 勿論両手が塞がった彼はそれを受け止められるはずもなく、もんどりうって一緒に倒れるが。
 全てセラの計算通りである。
 躓いたのは『ふり』。そうみせかけ、彼の襟元を掴みつつ、足払いをかけ倒れこむ。
「うわっ!?」
「きゃっ! ごめんなさいお兄様っ!」
 言いつつ、彼女の胸元にはちょうど下敷きのリヴァルの顔が。セラ曰く、『せくしーと純情アピールを同時にこなす作戦』。
「だ、大丈夫ですか!?」
 そんなこととは露知らず、リゼットが慌ててセラとリヴァルに手を貸すのだった。

 そんな騒動はありつつも、施設の修繕は備蓄していた材料も使うことで、ほとんど修理で済ませることができた。
 パーティ準備の方も、四人の協力のおかげで豪勢な食事、更にリゼットの手によって、会場の机には可愛いテーブルクロスがかけられ、華やかに整えられていた。

 一時はパーティ自体が断念されるかもしれなかっただけに、集まった作業員数十人からは感謝の言葉が何度も送られ、八人も作業員達と共にパーティを楽しむのだった。


 そしてパーティが飲み会へと変わる頃、八人は順に温泉へ向かっていた。


 最初に温泉へと向かったのは竜彦。彼はパーティ半ばからリンドヴルムを外で洗浄していたのだ。
「さすがにこの寒さの中水仕事はツライ」
 かじかんだ手をこすり、待ちに待った温泉へ。湯船につかれば芯から温まる心地になった。
 するとそこに、リヴァルが入ってきた。ようやく一仕事終わったらしい。
「あ、お疲れ様です」
 湯船から竜彦が声をかけた。だが、この時点でリヴァルは竜彦を女性だと勘違いしているのだ。
「!? 違うんだ、のれんが男風呂に」
 大慌てで踵を返そうとするリヴァル。その様子を見て竜彦もようやく気付いた。
「あってますよ。俺は男ですし」
 はぁ、と溜息をつきつつそう言った。
 数秒の沈黙。
「‥‥し、失礼した」
 気まずそうに向き直り、頭を下げるリヴァル。
「いや、気にしてないですから」

 一方。
 男風呂の前のセラが、リヴァルに突撃するため男女の暖簾を取換えていた。そして直後、こだま、しのぶ、エレナ、リゼットの四人が女風呂の暖簾を潜ってしまった。

「温泉、温泉〜! 待ってました!!」
 先頭きって入ったのはしのぶ。
 が、彼女もまたリヴァルと同じ勘違いをしていたのだ。だから、
「何やってるのリヴァルっっ! 日野さんから離れなさいっっ!!」
 指をびしぃっと突き刺してそう叫んだ。
 勿論その声に驚いたのは他ならぬリヴァルだ。
 驚いた拍子に思わず視線を向かわせて、更に慌てる。なにせ、しのぶは出るところが出ている体型。タオル一枚なので余計にそのラインがはっきりしている。
「リヴァルさんっ!?」
 後から入ってきたリゼットが驚きの声を上げる。彼女は嫌な予感がしたために水着で入ってきたのだが、それが効を奏していた。
「リヴァルさんに、日野さんっっ!?」
 エレナも驚きの声をあげつつ、後ずさった。彼女はしのぶ同様タオルを一枚巻いただけだ。
「‥‥これは、どういう状況?」
 最後に入ってきたこだまが、白い目でリヴァルを見ていた。彼女はタオルを当てていただけなので、ほぼ裸と言って良い。
 視線に気づいたこだまが、冷たく
「怒ってない‥‥お嫁に行けない体になっただけ」
 と言い放ちながらジーっと睨んでいた。
 そんな絶体絶命のリヴァルを横目に、竜彦は明後日の方角を見ながら、
「‥‥はぁ〜、極楽極楽‥‥何も見えない、何も聞こえない」
 呑気に呟いていた。

「違うんだっ! 俺が入ってきた時は男風呂だったんだ!!」
 そんな必死の言葉にも、しのぶは耳を貸さない。
「リンド(ヴルム)持ってきてタコ殴りにして、張り付けか簀巻きにしてやるっ!!」
 怒りに満ちた言葉のまま、本気でAU−KVを持ち込む気だ。それに待ったをかけたのは竜彦。
「一つ言っておきますけど、俺は男です。ちなみに俺が入ったとき男風呂でした」
「日野さんって女の子じゃなかったの?」
 しのぶが尋ねた。
「男です」
「ええー!?」
 四人は顔を見合わせる。一人ならまだしも二人も証言しているのだ。ぶつぶつと文句を言いながらも、揃って男風呂を後にする。

 さて、ようやく女風呂に入ることができた四人。
 しのぶが、鬱憤を晴らすかの如く湯船にダイブ。こだま、エレナ、リゼットも各々湯船に浸かりゆったりくつろいでいた。
 そこへ遅れて入ってきたのは長い三つ編みをほどき、ロングストレート状態になったタイサ。
 元々平坦な胸に加え、男のようにタオルを腰に巻いた姿で入ってきたのを見て、一瞬四人はぎょっとしたのだが。
「お疲れさん」
 その声に『タイサさんか』と納得し、ほっとするのだった。
 そしてタイサが、まるで男の子のような烏の行水で体を洗い湯船に浸かっていると。
「いいな〜わたしも大きくなりたいな〜」
 しのぶの胸を見ながらエレナが溜息をつく。
(平和だな‥‥)
 そんな四人を横目に、タイサは一人温泉に浸っているのだった。

 こちらは風呂から上がったリヴァル。そこへ、待ち構えていたセラが入って行った。
「え!? お兄様っ‥‥!? どうしてこちらにっ!?」
 さも慌てたようにセラが言うと、リヴァルも慌てる。
「きゃっ!」
 ほぼ先程と同じ手で、セラが半裸のリヴァルへ抱きついた。
 勿論リヴァルは、大慌てで謝りながら離れる。
「すまないっ‥‥! 今日は何度も迷惑をっ!!」
「私の方こそごめんなさいっ、間違えてしまいました!」
 それだけ言って、慌てた風を装いセラは脱衣所を出る。密かにガッツポーズをしながら。

 ようやく上がった女性四人。タイサはまだ入浴中だ。
 四人とも用意された浴衣に着替えている。もうしばらくはここでのんびりできることになっているからなのだが、そこにリヴァルと竜彦が合流した。
 そんな時だ。
 着なれない浴衣の裾を思い切り踏み、エレナがこけた。
 あわや顔面激突寸前で、彼女の体は止まる。
「大丈夫か?」
 彼女を抱えていたのは、後ろを歩いていたリヴァル。咄嗟に手を出して支えていたのだ。
「はわっ‥‥ありがとうで‥‥」
 言いかけて、彼女の顔はみるみる赤面していく。
「ふにゃ〜><」
 そう。偶然にも下着もつけていない胸に浴衣越しとはいえ触れられて支えられていたのだ。
 慌てて離しても後の祭り。
「リヴァル最低〜っ!!」
 しのぶが叫び、同行していた仲間から言われもない非難の目を向けられ。
「誤解だっっ!!」
 そんなリヴァルの悲痛な叫びが、温泉にこだましたという。