タイトル:秋の味・収穫!マスター:壱南 藍

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/19 23:57

●オープニング本文


 
 早朝。
 赤や黄色に色づいた山の中。歩道というより獣道と呼べそうな雑草だらけのそこを、二人の男女が歩いていた。

 男性の方は、地図とコンパスを眺めながら時折メモ帳に何かを書き込んでいる。
 女性の方は、首から一眼レフのカメラを提げ、目に付く紅葉にレンズを向けていた。
 二人とも山歩き用にジャンバーを羽織り、リュックサックを背負った格好である。

「今年も綺麗ですねっ」
 カメラを下ろしながらそう言ったのは、地元新聞社と契約しているフリーの女性カメラマン。例年紅葉の写真をこの山に撮りに来ている地元民だ。
「そうだな。とても同じ世界で戦争してるとは‥‥思えないよな。この平穏さは」
 そう答えたのは地元新聞社にたった一人の記者である男性。彼もまた地元民だ。

 彼らが暮らす戦乱の只中から外れたその町は、この時代においても別世界のような平和さを保っている。
 秋になれば山に紅葉を見に行く人たちも居れば、栗拾いに子供たちがくることもある。
 今日はその取材に朝も早くから、二人は山に入っていたのだ。

「今日は二箇所でしたっけ?」
「ああ。栗とキノコが採れる場所を聞いてきた。栗はよく子供の頃に拾いに来たよ」
「私もです。懐かしいなぁ」

 そう言って二人が歩いていくと、そのうち足元にとげとげした物体が転がり始めた。
 秋の味覚、栗である。
「籠でも持ってくれば良かったですねぇ」
 そんなことを言いながら、落ちている栗に寄ったり、あたり一面の栗の木を撮影し始める。
 それを見ながら、記者の男性も栗を拾ってみたり、辺りを見回しながらメモを書き付けていく。

 そんな時。彼らの後ろから、落ち葉を踏むような音がした。

「こんな早くに誰か来てるのか‥‥取材でもし‥‥」
 振り向いたのは記者。カメラマンは熱中していて気づいても居なかった。
 そして、記者が言葉を飲み込んだのは。

 視線の先に、『多分、栗』があったからだ。
 多分、というのは栗にしては大きいから。丁度記者の男性の肩の高さ‥‥1m50cm位だなぁ、と呑気に記者は考えていた。
 呆然としていた、とも言う。

 気づけば、その奥からも同じような栗が転がってきていた。ごろごろと、そのうち音を立て加速をつけて二人に突っ込んできた。
「お、おい!逃げるぞ!!」
「え、どうしたんですか‥‥。なっ、何あれ!?突然変異!?」
「そんなわけないだろ! 栗が自分から転がってくるかっ!!」
 さすがカメラマンというか。女性は逃げながらもたまに振り返りシャッターを切っている。
 男性の方は走るので精一杯だった。


 走って走って‥‥。
 先ほどの場所から東に1kmほど行った場所。
 そこでようやく二人は立ち止まった。
「はぁ‥‥あ、あれが噂のキメラか!?」
「栗、でしたよねぇ。凄く大きかったですけど」
 先ほど撮影した写真を見直しながら、女性がそう呟いた。
「撮ってたのか」
「そりゃあカメラマンですからっ」
 胸を張る彼女に。
「そこは逃げることに全力になろう‥‥うん」
 力なく記者が突っ込みを入れた。
 そうして、上がった息も落ち着いてきて、早く町へ降りようとした時だ。
 またしても、後ろ側で落ち葉を踏む音がする。

「‥‥今度は何だ?」
 早く逃げれば良いものを、思わず身構えつつ待ち構えていると。

「‥‥キノコ、ですよねぇ?」
 二人の目の前に現れたのは、よく山に生えていそうな柄が白く、傘が赤地に白斑点のキノコ。見たからに毒っぽい。そして何故か手と足がついていた。二足歩行でじわじわと二人に向かってくる。
「とりあえず一枚」
 パシャッと、間抜けなシャッター音が響くのと、記者がカメラマンの手を引っつかんで回れ右したのは同時だった。

 そして運良く無事に町へと戻った彼らの通報により、このキメラの討伐依頼がされることとなる。

●参加者一覧

夕風 悠(ga3948
23歳・♀・JG
神撫(gb0167
27歳・♂・AA
宵藍(gb4961
16歳・♂・AA
未名月 璃々(gb9751
16歳・♀・ER
ジリオン・L・C(gc1321
24歳・♂・CA
シャルロット(gc6678
11歳・♂・HA
月居ヤエル(gc7173
17歳・♀・BM
星和 シノン(gc7315
14歳・♂・HA

●リプレイ本文

●いざ栗退治!
 紅葉舞い散る秋の山。引率の先生と生徒‥‥に見えなくも無い四人が、栗キメラ目指して歩いていた。

「二人とも良く聞いて‥‥道中秋の味を大量に集めること‥‥続きは言わなくてもわかるね?」
 シャルロット(gc6678)が真剣そのものの口調で、両隣を歩く二人へと声をかける。
「勿論だよ、シャル君っ!」
 その言葉に右側を歩く月居 ヤエル(gc7173)が頷く。
「秋の味覚を守るガーディアンを倒して、収穫を得るクエストだね。 了解だよっ!!」
 左隣をいく星和 シノン(gc7315)は事前に行っていた情報収集の際、カメラマンが撮影した写真を見て『栗とキノコのキメラは眷属を守る守護者』と思い込んでいるようだった。
 この三人同じ演劇部に所属し、今回の依頼を部長の『秋の味覚が食べたい』の一言で受けたのだ。肝心の部長は不在だが、キメラ退治のついでに秋の味覚を堪能する気満々である。三人の中で一番年長なヤエルは、
(今回は私が一番お姉さんだし。二人にケガさせないように頑張らなきゃ!)
という決意も胸にしていた。
 そんな三人を半歩遅れで見守りながら、
「はーい、はしゃぎ過ぎないでちゃんと周りに注意してくださいねー」
と夕風 悠(ga3948)は先生のような発言をするのだった。

 おおよその場所は既に聞いていたため、四人は一直線に目的の場所へ向かっている。辺りを警戒しながら、徐々にキメラが目撃された栗の木へと近づきつつあった。ちなみにその道中、
「モンブラン‥‥マロングラッセ‥‥栗ご飯‥‥」
とシャルロットはヤエル、シノンの耳元でやる気を促すために呟き続けていた。

「この辺り、みたいですね」
 悠が辺りを見回せば、三人も辺りを同様に見渡す。そこから先にはたくさんの栗が落ちていて、その先から‥‥栗が転がってきていた。気づけば取り囲むように、四方から一個ずつ。
 あっという間に四人のすぐ傍まで迫ったその時。二人分の歌声がその場に響いた。
 呪歌という相手を呪縛する歌がシャルロットとシノン二人の口から紡がれると、二人の前方に迫っていた栗がその場に縫いとめられる。
 残り二個の栗へは、
「栗ご飯、モンブラン‥‥」
 手にした扇でヤエルが栗へと踊りかかる。呟くのは先程シャルロットに吹き込まれたメニュー。それで集中しつつ伸ばされた棘を扇で折りながら近づき、丁度棘が折れた箇所へ扇を叩き込んだ。
「部位狙い‥‥したいとこだけど、どこが狙い目か分からない!」
 近づかれる前に能力によって強化された弓を射ながら、悠が叫ぶ。放たされた弓は一本目で棘を弾き飛ばし、二本目で棘が折れた場所を正確に射抜いていた。内側付近は弱いらしく、それぞれの栗は攻撃を受けてぱかりと割れる。見える中身は普通の栗そのものだ。
 そして、シノン達も攻撃に転じていた。
「行くよー!」
 シノンが手にしたビスクドールから電磁波が放たれ栗を捉える。が、まだ内側に攻撃が届ききらず、棘が折れながらも栗はごろごろと転がってきた。
「シィちゃん!」
 それを走ってきたヤエルが鉄扇で殴り飛ばした。致命傷を受けて栗はやっと止まる。
「ありがとー、ヤエル!」
 一方では。
「演劇部の台所を預かる僕の為に美味しく料理されろぉー!」
 手の甲についた宝石から、まるで雷のようなエネルギーを放つシャルロット。それを受けてなお動く栗には悠の弓矢が飛び、こちらの栗も止まった。
 一息つけたのもつかの間、先程よりも加速のついた栗が二個、転がるというよりは突進してくる。
「わっ!?」
 直線コースに立っていたヤエルは慌てて距離をとり何とか逃げ切り、同じくシャルロットも能力を使って突進を回避していた。
 その間に、コースから外れていたシノンが歌い栗を止め、悠が弓を放つ。上手い具合に棘の合間に矢が二本刺さり、栗を止める。
「やえるん、僕が止めるから!」
 言ってシャルロットが歌う。その歌で足止めされた栗へ、距離を置いていたヤエルが持ち替えた銃で撃ち込む。棘が折れ内部付近に銃弾が届き、動きが遅くなった間に突撃したヤエルが扇でとどめを加えた。
「ふぅ、どうやらこれで全部みたいですね」
 六個の大きな栗が転がる中、悠は辺りを見回す。四人で手分けして辺りを探索するも、それ以上異様な栗は見当たらず。
「じゃあ栗の収穫だ〜っ!」
 シノンが嬉しそうに言って、四人で倒したキメラと辺りに落ちている本物の栗拾いを楽しむのだった。


●いざキノコ討伐!
 一方、栗班とは別ルートからキノコ討伐へ向かう四人が居た。
「あんなのがのさばってちゃ、折角の紅葉も見れやしない。本物の山の幸だってシーズンだろうし、秋の味覚の為にもいっちょ頑張るか」
 栗班と一緒に被害者から情報収集をしていた宵藍(gb4961)が地図を眺め呟く。
「しかし、バグアは旬を知ってるな‥‥戦力としてあんなの作るのは微妙すぎるが」
 隣を歩く神撫(gb0167)は、事前に見た写真を思い出していた。手足の生えたキノコ。シュールと言う以外になかった。
 そんな二人の前方と後方には対照的な二人が歩いている。
「私、此処まで来るのに精一杯なので、皆さん、戦闘はお任せします」
 後方から息を切らせつつ言ったのは未名月 璃々(gb9751)。そして先頭切って歩いているのが、まだ見ぬ敵に対し啖呵を切るジリオン・L・C(gc1321)だった。

 辺りを警戒しつつ歩いていくが、特におかしなものは存在しない。
「あ、この辺りだな。聞いてた場所」
 宵藍の声に四人が立ち止まり周辺を見回す。確かに付近の木の下には、食用か否かはともかく色々なキノコが生えていた。
「‥‥あ。あれ」
 一番後ろに居た璃々が指差す先。茂みに隠れた大きなキノコの傘の部分が見えていた。気配を感じてか、そのキノコが立ち上がる。同時に別方向から二本のキノコも歩いてきた。
「キノコ型って胞子飛ばしたりするよな。今回のもやりそ‥‥っははははは! って、あはは、やっぱりかいっ!」
 気づかぬうちに撒かれた胞子を吸い込み宵藍が笑い始める。そして同じく、
「俺様が、未来のぶはははあーっはっはっはーっ!」
ジリオンも胞子を吸い込んだらしく名乗りを上げそこなった。
 そんな様を、マスク着用で胞子の影響を受けていない璃々が撮影しながら、
「キノコに手足、ランジェリーを身に付けていれば間違いなく、変態キメラに相当します」
と冷静に呟いていた。
 そして神撫は無言。何故なら涙が止まらないからだ。それでも何とか前に出て、目前へと迫っていた一本を手にした斧で空高く打ち上げる。そこまでは良かったのだが、矢張り涙で前方がゆがみ、続けての攻撃が僅かに逸れてしまった。切りつけた内、当たったのは二撃分。しかしそれで十分だった。キノコは手で裂いたごとく、綺麗に三等分され、地面に落ちてくる。さすがにこの状態では動かなかった。
 その一方で両側から向かってきたキノコが、残る三人に更に胞子を飛ばしてきている。
「演技派アイドルたるもの涙くらいコントロール出来‥‥なかったっ」
 今度はぼろぼろと大粒の涙をこぼしながら叫ぶ宵藍。
「い、いくぞ!! ゆーしゃパーティー! ふひ、ひひ! 出撃だ!」
 なおも笑い続けるジリオンはそろそろ苦しげである。のた打ち回る二人の様子をこれまた冷静に撮影してから、
「現実は、辛いですか」
深刻そうな言葉を呟いた後、璃々は能力を使って宵藍とジリオンを胞子攻撃から救うのだった。
「よくもやってくれたなっ! アイドルは顔が命なんだぞっ!!」
 ようやく立ち直った宵藍はキノコの脚を狙いソニックブームを叩き込む。続けてよろけるキノコへと近づき、低い体勢から逆袈裟斬上げ、落下を利用し斬下ろし‥‥次々と決まるそれはまさに剣舞であった。斬られるごとに裂け、最後は鍋に入れるのに丁度良さそうな形へ。
「うおお! 勇者! ‥‥ガン!」
 こちらも立ち直ったジリオンが銃弾を放つ。だが笑いすぎた後のため狙いが定まらず、ようやく一発当たるもどんどんキノコが近づいてきていた。

 更に音がして後方から二本、やはりキノコが迫ってくる。
 一本は同族を攻撃しているジリオンに向かって。一本は一番後ろで撮影している璃々へと向かってきたが、彼女は先程一本倒して戻ってきた神撫の後ろへと隠れていた。
「お、お、俺様の! 歌を! 聞けえええッ!」
 挟撃される形となったジリオンがやぶれかぶれに『子守唄』と呼ばれる歌を歌い始める。笑いすぎて声が掠れているが、キノコ二本は棒立ちとなった。どうやらそれで眠っているらしい。
 それと同時に、璃々達へ向かっていたキノコは怒り覚めやらぬ宵藍によって切り刻まれる。
「う、うおお! い、いそげ勇者パーティー! こいつらを俺様が抑えている隙に‥‥!」
 一本がすぐに目を覚ましたため、慌てて銃で応戦しながらジリオンが叫ぶ、が。

「それくらいどうにでもできるんだろ? ゆうしゃさま?」
 にやりと微笑み神撫は傍観を決め込んだ。
「勇者の活躍用の敵はちゃんと残すぞ」
 ぐっと拳を握って良い笑顔で宵藍も傍観する。
「絶体絶命の勇者ですかー。良い絵です」
 カメラを向けながら璃々までもが言い切った。

「何だとぉぉッ!? それでもお前達は勇者パーティかぁッ!!」
 そんなジリオンの叫びが森に轟いた。


●秋満喫パーティー
 森の入り口で合流した八人。入り口には、麓の町で用意したアウトドア道具が置かれている。
「お疲れ様。みんな怪我はないかな? じゃぁおいしい物を食べるとしますか」
 朗らかに言う神撫。その横には妙にぼろぼろになったジリオンが居る。何があったかは推して知るべし。
 両班それぞれ、討ち取ったキメラを数体持ち寄っていて、研究材料にと璃々が調理される前に一部採取していた。
「もうちょっと何か採ってきましょうか。他にも山の幸がありそうですし」
 悠がそう言うと、
「しぃはもっと栗拾ってきたいー!」
 シノンが手を上げて答える。
 そうして、辺りの周辺確認がてら、採取や紅葉見物をすることになった。
「こっちの準備はしておくから気をつけていってらしゃい。迷子にならないようにね」
 神撫がそう言うと、シャルロットもそこへ残ると言う。
「さっき拾ってきた栗で栗ご飯を作りたいので♪」
 そうしてヤエルとシノンは栗拾いへ、悠と璃々は紅葉見物をしながら辺りの確認、宵藍やジリオンも別方向へ採取と周辺確認へ向かった。

 そして、一時間後。

 手に手にキノコや栗、山菜を手に全員が戻ってくると、竈にかけられた鍋から良い匂いが漂っていた。
 鍋の横には鉄板と鍋がもう一つ。こちらはキノコを焼いたり山菜を揚げるためである。
「シャルー、栗ご飯マダ〜?」
 手に茶碗と箸を持ちながらシノンがねだる。
「もう炊けるよ。皆さんもどうぞ」
 配膳をヤエルが手伝って、栗ご飯が全員へと行き渡った。

「じゃあ、いただきます」
 神撫の号令に全員がならう形で食事が始まる。
「このご飯美味しいですねー。運動の後だから余計に美味しいです」
 悠がそう言いながらご飯を口に運ぶ。
「うん、シャル君の作ってくれたご飯、ほくほくでとっても美味しい!」
 ヤエルをはじめ、全員が口々に栗ご飯を絶賛していた。璃々は食事を取らず、全員の食事風景や紅葉を撮影することに徹している。
 その間に、シャルロットと神撫がキノコや山菜の調理を始める。調理とは言ってもバーベキューのようなものだが。
「あ、しぃのお皿にキノコ入れたら泣くし!!!」
 焼けたキノコをシャルロットが順次皿に盛っていたところ、シノンがそう言った。
「そこ! 好き嫌いはしない!!」
「そうだよ。キノコは栄養があるしね」
 神撫にまでそう言われる。
「うう〜、神撫さんまでそう言うなら‥‥」
 渋々受け取った皿からキノコを食べるシノン。その様子を見て神撫はシノンの頭を撫でるのだった。

 そんな中、用意してあったらしき酒を片手にジリオンが演説を始める。
「勇者のたしなみとはな! 四季折々の食材を愛で! 万人からの感謝を一身に浴び!」
 何事かと全員の注目が集まった所で、最後の一言。
「‥‥女を愛でる事だ!!」
 言いながら熱視線を女性陣や、確かに見た目は女の子のように可愛い少年陣にも向ける。
「ああいう大人にだけはなっちゃ駄目だよ、皆」
 特に年少組みへ向けて、神撫が言う。
「俺はアイドルであっても勇者になる気はないなぁ」
 苦笑しながら宵藍が言い、ほどほどに食べ終えたので手近にあった栗を竈の火に向けて放る。ばちん、と音がして爆ぜた栗にシノンが食いつき‥‥真似をして一気に栗を放り込んだところ、盛大に弾けて大慌てとなったのはご愛嬌だ。

 そんなこんなで無事にキメラ討伐を果たし、美しい紅葉を眺めながら束の間の平和を楽しむ八人であった。


●お邪魔します
 パーティ中の八人に、キメラに遭遇した記者達が取材にやってきた。
 実際の新聞に載ったのはごく一部だが、実際にはこんなやり取りがなされていた‥‥。

「キメラとか相手にしてて怖くないの? とかたまに聞かれるけど僕の友達も頑張っているからね‥‥泣き言は言わないよ?」
 シャルロットがそう言って記者を感動させ。

「こういう綺麗な所、ずっと平和に残るといいよね」
 ヤエルが純粋な意見を口にする。

 シノンは分かっているのかどうか、
「ねぇ、見て見て〜。栗キメラの殻と小枝で巨大ハリネズミ作ったの〜! 我ながら上手に出来たと思うんだー♪ 記念撮影してっ!!」
と撮影をねだっていた。

 璃々は、自身が撮影した写真をコピーして渡すことを約束しながら、
「能力者でも戦闘ばかりしてる訳じゃないんですよー」
と意外と知られていないことをさらりと言う。

 悠は戦闘の様子などを問われるまま語った後‥‥。
「私って何歳に見え‥‥いえ、何でもないです!」
 過去に未成年だったのに二十代呼ばわりされたことがあるため、そんな質問をしかけていた。

「泣き笑いしつつの戦い。手強い敵だった‥‥顎や腹筋的に。目が赤いのは泣いてなんかないんだからね!」
 思いきり泣いた後の顔で宵藍はツンデレぶりを発揮する。

 一方で神撫はカメラマンの女性に説教していた。
「逃げながら写真取るとか、どれだけの記者魂ですか。今回は何事も無かったから良いですが、もし今度同じようなことに遭遇したらすぐさま逃げてください。ね?」

 そして、新聞上で最も内容が割愛されたジリオンはこう語っていた。
「ふはは! 俺様の無敵街道はまだまだ続くぞ! いいか!俺様はいつだってスポンサーの協力は受けて立つぞ! 宣伝効果 は ばつぐんだ! 運命の女神も無論募集中だ! ‥‥アディオス!」

 次の日、新聞の一面には取材内容と、八人が揃った写真、そして感謝の言葉で締められた記事が載ったのだった。