●リプレイ本文
●集合
「何処へでも出てくるなキメラは」
そう呟くのは殺(
gc0726)。頷きつつ、
「一般人の生活空間を脅かすとは、早々に討伐させて頂きましょう」
と返したのは神棟星嵐(
gc1022)。そして殺を見て
「殺殿、依頼で一緒になるのは初めてですね。宜しくお願いします」
そう挨拶する。
「ヨナカにごそごそバケモノが出てくるんだってー! ‥‥ナンダか怖いのボク‥‥」
と少々びくついているのは火霧里星威(
gc3597)。
「あ、でもおにーちゃんおねーちゃん居るからダイジョウブだよね!?」
「星威も当てにしている。頼んだぞ」
星嵐がそう言って頭を撫でた。
「白い蛇ですか‥‥本来は富をもたらす弁才天様のお使いなのですがね〜‥‥」
やれやれ、と住吉(
gc6879)が言えば。
「まだ誰も襲われていないからいいけど、危険だし。‥‥ちょっと不気味だし。今のうちに退治しちゃわないとね」
内心怖がりつつ月居ヤエル(
gc7173)が奮起する。
「アオの興味はいつだって、アオの音楽のことですわ」
そう言い切るのは日下アオカ(
gc7294)。
「ただ、村人がご自身の平穏な日常を取り戻したいというなら、取り返して差し上げたいと思うのは、別に普通のことですの」
と付け加える。
「彷徨える魂(農民)達の為にその知勇をふるう‥‥ふふ。蛇退治如き、豪華客船に乗ったつもりで任せておけ!!」
言い切ったのはジリオン・L・C(
gc1321)だ。
「ああ、早く殴りてぇ。血が騒ぐんだよぉ」
最後に、そう物騒な言葉を楽しそうに言ったのは杜若トガ(
gc4987)。
早速、夜に動く蛇を待ち伏せするために村での情報収集班、蛇の経路探索班、周囲の地形探索班に分かれることとなった。
●情報収集班
村人から話を聞くことになったのは星威とヤエル。まずは蛇を目撃した青年から話を聞くことに。
「‥‥えっとえとソレでー? どんなフーなオトしてたのぉ? 見えたの? 色わぁ?」
「音というと重い袋を引きずったような。大きくて真っ白でした」
星威の問いに青年がそう答える。
「一番荒らされた畑って何処なんでしょう?」
ヤエルが尋ねるとちょっと考えて
「毎日違う畑が荒らされて‥‥」
ふむふむ、とヤエルが頷く。
「えっとね、その日のお天気はぁ?」
「晴れてました。雨の日も畑は荒らされていたみたいです」
「そーだ畑の周りにワナとかある?」
星威の一言にヤエルがはっと気づく。
「そうでした、何か獣よけとかあるんでしょうか?」
「一応網は張ってあるんですけど、それくらいです」
二人は青年に礼を言い、更に他の村人から話を聞くために移動するのだった。
●村側経路探索班
一方、蛇が辿った路を調べるため畑にいたのは、星嵐とジリオンとアオカ。
「早速、荒らされた現場を一通り見て待ち伏せに最適なポイントを決めましょう」
星嵐の一言に二人が頷く。被害場所は民家を前後に挟む形なので分担。
「よし、俺はこちら側から蛇の跡を辿ろう」
ジリオンが指差したのは崖側の畑だ。
「さっき崖のことを聞いたら、崖下には洞窟があるらしい。恐らくそこに巣食っているのだろう」
「ではアオは崖とは反対側の畑から痕跡を探ってみますわ」
「じゃあ自分は一通り畑を回ってみましょう。恐らく一時間半ほどあれば回れそうですし」
二時間後、今居る場所へと集合することを決めて三人は探索を開始した。
ここは崖とは逆方向にある畑。
食い荒らされた野菜が散らばる畑に、アオカが立っていた。
「これですわね」
太い縄のようなものが通った跡を見つける。見ればそのまま近くの茂みまで続き、草がきっちり一部分だけ折れていた。それを追ってアオカも茂みの中へ。
一方崖側の畑。
荒らされたのが先だったのか、すでに片づけが済んだ場所が多い。そこに立つのはジリオン。
「真! 勇者! アーーイズ!」
高らかにそう叫び、探査の目を発動させた。歩き回ること数十分。太い何かが這った跡を見つけると、そのままそれを追いかけ始める。
二時間後。
畑を一周し、残る畑や作物に損害が被らない場所をチェックしながら戻ってきた星嵐と同じく、アオカとジリオンがそれぞれ同じ方角から戻ってきた。各々の報告を纏め、気になる場所をもう一度確認することにした。
●周囲探索班
殺、トガ、住吉の三人は手分けして周囲の地形を確認していた。
殺は徒歩で崖から遠ざかるように、トガはバイクで崖の方から村の周辺を、住吉は徒歩で崖付近から蛇の痕跡を探しつつの探索である。
崖付近にやってきた住吉は早速探査の目を発動させ辺りを伺う。すると、蛇の跡のようなものが何本も崖付近から近くの茂みへと消えていた。分岐はするものの、明らかに何度も何かが這った跡を見つけ、それを追いかけていく。
「ふむ‥‥こんな感じに犯人の痕跡を調査してますと、気分はすっかり『迷探偵スミヨシ』って所ですね〜♪」
とノリノリであった。
●打ち合わせ
全員が連絡をとりあい集まった頃には、日も傾き始めていた。
「‥‥というわけで、この崖側の畑に隣接した茂みを待ち伏せ場所にしてはどうかと思います」
星嵐が全員にそう報告する。
「蛇は多くても5匹じゃないかって。荒らされてる箇所からそれくらい居ないと荒らせないって聞いたよ」
ヤエルがそう言った。
「下手に向こうの畑近くだと、手が回らなくなりそうだしなぁ」
「同感だな。向こうだと不意打ちも受けやすそうだった」
付近を見て回っていたトガと殺が交互にそう告げる。住吉、ジリオン、アオカの報告で崖から茂みを必ず通っていることも確認済みだ。
「最初から不利を抱えて戦う必要なんてありませんわ」
とのアオカの言葉に、
「では、蛇の経路上で待ち伏せする班と、経路から外れて蛇の背後を突く班に分かれましょうか」
星嵐がそう纏め、順次班分けを行った。
班分けも終わった頃。
「あれ? ジリオンさんは?」
星威の一言にその場の全員が辺りを見回すと、村人と話すジリオンの姿。
「野菜を売ってくれないか? 売り物にならなそーなやつで蛇が喰った畑の奴とかでいいぞ!」
「売り物じゃないのに金は貰えないよ。それにわざわざ来てもらってるんだ、必要な分言ってくれよ。そんなのでよければ持ってくるから」
そんな村人の肩を叩き
「苦労しているのだろう‥‥? 貴様らの魂、俺様がしかと受け取るからな」
「ああ! だから頑張ってくれよ!!」
激励の後、ジリオンの元には確かに売り物としては並べられなさそうな野菜が山と届けられた。
●待ち伏せ
月明かりが落ちる時間。
蛇が村に入る直前、高確率で通っているらしい経路上。すぐ横には鬱蒼とした茂みがあり、畑からは少し距離があるその場所で星嵐、ジリオン、トガ、アオカがそれぞれ戦闘準備をしていた。
星嵐はアスタロトに跨り当初ライトをつけていたが、トガに
「蛇はピット器官を持ってる、熱はなるべく冷ましたほうがいいぜぇ」
と言われライトは消している。
そのトガはリンドヴルムを既に装着はしているが、前述どおり主機を落とした状態。
ジリオンは茂みの中で蛇が通ったらしき場所へ籠と野菜を、自分の鎧にも野菜を括り付けていた。
「ふふ‥‥これぞ勇者スタイル」
そしてアオカは暗視スコープをセットしながら、茂みをじっと見つめていた。
一方、蛇が通った跡が確認されず、待ち伏せを行っている仲間達のもとに駆けつけられる距離の茂みの中。奇襲のために殺、星威、住吉、ヤエルが身を屈め、こちらも戦闘準備に入っていた。
「さて、後は仕上げは何とやら」
右手に颯颯、左手にライトピラーを持ちながら殺が辺りを見回す。暗いとはいえ、真っ暗というほどでもない。持ってきたランタンはつけずに置いてある。
「‥‥うぅ‥‥怖くないもん‥‥コワくないもん‥‥」
その一方で、星威がそう自分に言い聞かせていた。
住吉は隠密潜行を行い気配を消し、暗視スコープをつけながら探査の目も使い辺りを伺っていた。
「ふむ‥‥こんな物を装備してますと暗殺者の気分ですね〜‥‥昼は迷探偵、夜は暗殺者‥‥これ如何に〜?」
と楽しそうだ。
ヤエルは連絡用に持ったトランシーバの具合を確認し、腰に下げた懐中電灯がOFFになっていることも確認する。
全員準備万端。
そして。
●蛇退治!
「あれは、蛇、か?」
茂みを見ていた星嵐の目にちらり、と白いものが映る。
即座にアオカがバイブレーションセンサー(以下VS)で辺りを確認すれば、三匹の蛇らしきものが纏まって向かってきている。
「あと数秒でこちらに来ますわ」
その一言に、待ち伏せ班の三人が頷く。
そして夜目にも映える白い蛇が前後しつつも三匹、待ち伏せ班の目の前に現れた。
「うおお!勇者パーティー!出撃だ!」
そう叫んだジリオンの方へ、何故か蛇は向かってくる。どうやら野菜の仕掛けは効き目があったらしい。
しかしジリオンが動く前に、蛇が来る直前でエンジンをかけたトガが、一匹に竜の翼で特攻を仕掛けた。ライトも灯され、辺りが明るくなる。驚いた蛇が向きを変えようとするが、トガの拳が蛇を捉えていた。なおも蛇が逃げようとするが、そのライトを合図に奇襲班の殺が蛇の後ろから躍り出た。胴体に向かって円閃を使い右下から左上へと颯颯で斬り上げる。間をおかずにライトピラーの上刃で右から左へ、そして腕をあげ今度は下刃で蛇の上から切り下ろした。
絶妙なタイミングでの連続攻撃に、蛇が一匹その場に崩れ落ちた。
「敵の姿を確認した。これより仕掛ける」
こちらも蛇が目前に迫ったと同時にアスタロトを装着した星嵐が、竜の鱗を使い蛇の斜め前方に移動する。蛇の方もまだ攻撃を受けていない蛇とで挟撃しようとしてくるが。
「そうはいきませんわ」
アオカが子守唄で一匹を眠らせる。直後、もう一度VSを使い、どうやらこの三匹しか周辺に居ないことを確認し、ヤエルへ通信を入れる。
「現時点で三匹ですわ、そちらは上手く裏をとってくださいませ」
「わかったよ!」
茂みの中で、敵に近づきつつタイミングを計るヤエルがそう返す。
ヤエルの横では、蛇を見ながら
「うえぇ‥‥ナンカおっきーの‥‥やなのぉ‥‥」
と星威が顔をしかめていた。
一匹が眠った隙に、星嵐は残った一匹の攻撃を左右に交わしながら、凄皇弐式で斬りつけダメージを与える。
「星威、今だ!」
無線での合図に、星威が茂みを飛び出し蛇に向かった。
「‥‥オバケなんかやっつけちゃうもんっ!雷神のジュツぅ!いっくよー!」
瞬天速で敵に近づき、星嵐とは逆側から攻撃するも、蛇は倒れない。それどころか、眠った蛇を起こそうとするが、星威がそれを阻止する。
「なーんにもサセないもんっ! ミンナやっちゃえーっ!」
その言葉と同時に、今度は住吉が奇襲を開始した。
「ぎゃお〜、お化けだぞ、食べちゃうぞ〜‥‥てね♪」
蛇の周りに誰も居ないことを確認して、電波増幅を使う。そして、両手の扇を振るった。まずは天狗ノ団扇で星嵐達が攻撃していた蛇を。次いで扇嵐での攻撃で眠っていた方の蛇が竜巻に飲まれる。
星嵐達が戦っていた蛇は今の攻撃で退治できたようで、ピクリとも動かない。
だが、眠っていた蛇は目を覚まし、一直線にアオカへ向かってきた。
「うねうねと気持ち悪い動きですわね」
奇襲は折込済みとばかりに、即座に疾風を発動し相手の攻撃を引き付けつつ回避する。
「いきますわよ、ヤエル?」
通信で呼びかけながら、蛇に対しては踵落とし、回し蹴りの脚技を披露する。だが、蛇は小うるさそうに鎌首をもたげて上から攻撃しようとしてきた。
「アオちゃん!」
そこに、背後から覚醒したヤエルが瞬速縮地で割り込む。獣の皮膚で防御を上げたヤエルに、蛇は攻撃をはじかれてたじろいだ‥‥その瞬間を見逃さず、手にした鉄扇で畳み掛けるように攻撃。
なす術もない蛇が地に落ちた。
「ひとまず、片付きましたわね‥‥」
言いかけたアオカの言葉にかぶさる様に
「お! あれは同じ蛇じゃないのか!?」
それまで全員の応援を後ろでしていたジリオンがそう言った。見れば、少々離れた場所に確かに白い何かが動いている。が、まっすぐこっちに来る様子はない。
「あと二匹は居るんでしたわね」
すぐさまVSをアオカが使う。
「あの一匹と、逆方向にもう一匹居ますわ。こちらから距離を置く気ですわね」
その言葉に、星嵐とジリオンが二手に分かれて動く。
まずは、ジリオンが瞬天速を使い蛇の前方へ立ち塞がる。そしてすぐさま扇嵐で攻撃。竜巻に飲まれた蛇がなおも後退しようとするが、既にトガが竜の翼で追いすがっていた。
「クカッ、逃げてんじゃねーよ。もっと俺を楽しませろよぉ!」
右往左往する蛇を、竜の咆哮で弾き飛ばした。飛ばされた蛇は地面へと激突し、動かなくなる。
一方星嵐も竜の翼で追撃し、蛇を捉えていた。
「この一撃で仕留める。凄皇弐式の一撃、受けてみよ!」
言葉と共に振り下ろされる攻撃に蛇は真っ向から当たったものの、しぶとく動いていた。そこに、瞬速縮地を使って移動してきたヤエルが追いつき、鉄扇で攻撃。その攻撃で蛇は残りのメンバーが居る場所まで押し戻された。地を這う蛇に殺が向かい、
「逃げようたってそうは行かない」
そう言って刹那を使い颯颯で斬り突けると、その場で蛇は倒れ伏した。
その後時間を空けてみたものの、新たな蛇が現れる様子は無い。
蛇はこれで全部だったことを確認し、後片付けをはじめるのだった。
●ご苦労様!
「わーんボクコワかったよぉー♪」
言いながら星威は星嵐にジャレついている。
「これでこの村の農作物も大丈夫でしょう」
と星嵐は畑を見ながら言った。
少し離れたところでは、バイクに凭れるように座りながら煙草に火をつけたトガが
「かー、やっぱ転職して弱くなってんな。マジでだせぇ」
とぼやいていた。
この後どうするか話していると、殺は荒れている畑を戻す手伝いをすると言う。
「戦う以外はこうゆう事しか出来ないからな」
との言葉に手伝えそうな人は手伝おうか、という話になる。
「それにしても、こういった村にキメラが寄り付かない良い案はないでしょうか」
嘆息しつつ星嵐が言った。
そんな頃、ヤエルは一応何も残っていないか、茂みの中を見て回っていた。アオカも共にだが、手分けしているため離れている。
そしてヤエルの後方、茂みの中をこそこそとジリオンが移動していた。
勇気とはを説きたくて、つい。だ。
そして。
瞬天速でヤエルの背中に
「ヴァぁああかめぇえ!!!」
叫びながら張り付いた。
予想もしてなかったヤエルは怖さがMAXに陥り。
「こ、怖くなんてないんだからー!!」
ほとんど絶叫に近い言葉と共にぐーぱんち炸裂。
ジリオンは星になった。
余談だが、その絶叫にお化けが出たと勘違いした星威は怖がって星嵐から離れられなくなったという。
こうして、無事畑も荒らさず蛇退治は終わり、畑も手伝いのおかげで綺麗に片付いたのだった。