タイトル:奪還!蒼穹の空マスター:風亜 智疾

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/26 00:01

●オープニング本文


 その日から街はゴーストタウン状態だった。
 バグアの造り出したキメラだけでも、一般人には恐怖だったというのに。
 そう。あの、東方の国で言う所の死者の還る時期になった途端、それらは現れた。
 始めにそれらを見つけたのは、街にある展望台に勤める若者だった。
 暗闇に紛れたそれらを、最初はUPCのKnight Vogel、通称『KV』だと思っていた。
 しかし、徐々に大きくなり、その姿を確認した瞬間。
 若者は悲鳴を上げた。

 それは、KVという自分達の救世主ではなく。
 ワームという、地獄への案内人だったのだ。

 街は、5機のワームに空を支配された。
 外を歩けば攻撃の放火を浴び、古い建造物はあっけなく崩壊していった。
 数多の人々が犠牲になり、そして残された人々は恐れと悲しみに心を支配され続ける事になった。
 一般の建造物では命を護れないと、町長は非常事態宣言を発令し、生存者は街に建造された1ヶ所のシェルターへと非難する事となり。
 そして街は、5機のワームが破壊と殺戮のみを続けるゴーストタウン状態へと突入したのだった。

 事態を重く見た時の町長は、街の緊急事態を即座に人類最後の砦『ラスト・ホープ』へと知らせ、至急能力者達を派遣してくれる様、要請した。
 軍では掃討しきれない。そう、懸命な判断を下したのだ。

 今日もまた、街の空は5機のワームに支配されている。
 この事態を解決出来るのは、最早能力者しかいなかった。

●参加者一覧

ケイ・リヒャルト(ga0598
20歳・♀・JG
ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
ハルトマン(ga6603
14歳・♀・JG
八神零(ga7992
22歳・♂・FT
ルナフィリア・天剣(ga8313
14歳・♀・HD
憐(gb0172
12歳・♀・DF
如月・菫(gb1886
18歳・♀・HD

●リプレイ本文

●現地まで30km地点・集合
「街一つがゴーストタウンとはな‥‥好き放題してくれる」
 ポツリと呟いて、愛機・フェンリルをそっと一撫でした八神零(ga7992)が空を睨む。
「初出撃ね、相棒。ふふ、ちょっと緊張するけど宜しく、ね」
 愛機から降り、微笑の中にも厳しい視線をたたえたケイ・リヒャルト(ga0598)の側で、ルナフィリア・天剣(ga8313)が好戦的な視線を空へ向ける。
「蟲ごときがやってくれる‥‥」
「‥‥わーむは‥‥絶対に‥‥許しません‥‥」
 無表情なまま同じ様に空を見上げていた憐(gb0172)が、ポツリと呟く。
「一先ずさ、ちゃちゃっと行って片付けちゃおうよ!」
「さっき、依頼主の町長さんに挨拶してきたけれど、事態は結構酷いものだったわ」
 元気良く笑ったミア・エルミナール(ga0741)に、少し苦笑気味な表情でそう告げたのは遠石 一千風(ga3970)だ。
「こうしてる間にも街は破壊されているのでしょう‥‥」
 ハルトマン(ga6603)が小さく呟いたその言葉を拾ったのは如月・菫(gb1886)。
「あまりここで時間をくう訳にもいきません。大丈夫、ちゃんとシミュレーションも作戦も立てたんですから。行きましょう!」
 確かに、早めに街へと向かい、ワームを撃墜する必要がある。
「それじゃあ、行きましょうか」
 先陣を切って言ったケイの言葉に、全員が頷きそれぞれ機体へと搭乗を始めたのだった。

●搭乗
 各々無線を介してスタンバイ状況を告げる。
「こちらケイ、準備OK。ミア、強襲にかかるわよ」
「了解〜! 他の皆、誘導をお願いするねっ!」
 強襲班として行動をするケイとミアの言葉を受けて、他のメンバーが声を上げる。
「憐にゃ。一緒にきょーしゅーするにゃー」
「遠石。強襲班に参加するわ」
 覚醒に伴い、興奮を抑えきれない声の憐と、苦笑気味の遠石。
「4人が強襲なら、残りの僕達が誘導」
 八神の言葉に、ルナフィリアとハルトマン、如月、の残りメンバーが無線越しに了解を告げる。
「キューブワームが1体でもいるのが厄介だが」
 ルナフィリアの呟きに、憐が言葉を返す。
「‥‥逆に言えばきゅーぶわーむさえ倒してしまえば敵は大幅な戦力ダウンにゃー」
「なら、まずは誘導班のうちらが先行して、ヘルメットワームをキューブワームから引き剥がします」
 ハルトマンがそう言うと、彼女と今回ロッテを組むルナフィリアが同意の言葉を返す。
「では行くぞ」
 愛機・岩龍を操ってルナフィリアが先陣を切った。
「遅れを取る訳にもいかないか‥‥僕達も行くぞ」
「はいっ!」
 八神の掛け声に、菫が元気良く答える。
 4機のKVが先行し、その後に残りの強襲班4機が続いたのだった。

●戦場・誘導開始
 街の上空で破壊活動を行なっていたヘルメットワームが、急速に接近してきた4機のKVを確認する。
「あれは‥‥スタックビートルか!」
 八神がフェンリルを駆りながら、敵の主力4機を確認して舌打ちする。
「強襲班がキューブワームを撃退するまでの間、街への攻撃を極力避ける必要があるな。こちらルナ、上空から威嚇射撃を開始する」
 岩龍で郊外から遠距離攻撃を行ない、敵を引き付けるルナフィリア。
「こちら菫! 私も遠距離射撃を行ないます!」
 翔幻に装備した長距離バルカンでスタックビートルの動きを誘導する菫。
 遠距離からのルナフィリア、菫の誘導射撃に、ハルトマンが飛行形体のままでスタックビートルの前方を引き付ける様に空を駆る。
 4機のスタックビートル達が、術中にはまり誘導班達の後を追い始めたのを確認して、ケイが声を上げた。
「強襲班! キューブワームへ攻撃開始!!」

●戦闘・対キューブワーム戦
「見えた! あれか!」
 遠石が軽く唇を湿らせながら、眼前のキューブワームを睨みつける。
「キューブワーム単体なら、攻撃力は大した事ないよねっ!」
 言った直後、愛機・阿修羅に搭乗していたミアは、ブーストを使い一気にキューブワームへと接近し。
「いっくよーっ!!」
 主兵装のヘビーガトリング砲から50発の弾丸を、キューブワームへと叩き込む。
 ミアの言葉と攻撃を見た後、ケイが離脱するミアを援護する為にディアブロを駆り、至近距離からガトリング砲のトリガーを弾く。
「これだけの数、当たらないとは言わせない‥‥っ!」
 40発の弾丸が、近距離からキューブワームへと命中していく。
 攻撃を受けたキューブワームが、鈍く輝く。
「きゅーぶわーむは、確かにやっかいだにゃ。けど、数で圧倒すればこっちにも勝機はあるにゃー」
 ディアブロに搭乗していた憐が、ブーストを使って一気にキューブワームへと接近し、反撃の暇を与えずにヘビーマシンガンで攻撃を加えていく。
「いまにゃ! 一千風!」
 立て続けの攻撃に隙を見せたキューブワームを確認して、声を上げた憐に答える様に、愛機・ミカガミを駆って接近した遠石が、主兵装の高分子レーザー砲を叩き込み。
 豪雨の如き連続した攻撃を受けたキューブワームは、跡形もなく打ち落とされていったのだった。

●戦闘・対キューブワーム戦中、スタックビートル誘導班
「狙撃はあまり得意じゃないが‥‥止むを得ないな‥‥」
 八神は接近してきたスタックビートルへとスナイパーライフルで牽制を続けるが、それでも尚迫る敵機を確認すると、ブーストを使い一気に回避行動を行なう。
 一方、ルナフィリアも2機のスタックビートルを引き付け続けるが、機体性能の差からスタックビートルが急速に接近しつつ攻撃態勢に入る。
「やはり足の遅さはどうにもならんが‥‥なめるなよ?」
 低い声で呟き、ブーストを使って一気に距離を取った。
「援護します」
 ルナフィリアが距離を取ったのを確認して、ハルトマンが愛機・ハヤブサの主兵装スナイパーライフルで牽制射撃を行なう。
「こちらも誘導を続ける」
 言って敵機から距離を取った八神が再度スナイパーライフルで郊外へと誘き寄せる。
「私もお手伝いします!」
 如月がそう告げて、翔幻の主兵装長距離バルカンで八神の後を追うスタックビートルを攻撃する。
 だが、次の瞬間。誘導攻撃を受けて、スタックビートルがポジトロン砲を放つ。
「しまっ‥‥!!」
 如月の焦りの声の直後。
 彼女の機体直ぐ側、郊外に辛うじて形を止めていた時計塔が、大きな音を立てて爆散したのだった。
「強襲班はまだキューブワームを叩き終わらないの!?」
 焦ったハルトマンの言葉の、数秒後。
「こちら強襲班! キューブワームを撃墜完了!」
 無線から元気のいいミアの声が響いた。

●戦闘・対ヘルメットワーム『スタックビートル』戦
「これ以上‥‥街を壊させはしないわ」
 ケイの声が無線から響く。
「お待たせ! 騎兵隊のお出ましだぁ! ‥‥なんつって」
 景気良く声を上げて、主兵装のヘビーガトリングを1機のスタックビートルへと放つ。
 それを援護する様に、ケイが高分子レーザー砲で遠距離からフォローを行なう。
 八神と如月が引き付けていたうちの1機を、ケイとミアが背後から攻撃する。
 方向転換をした1機を確認して、八神が小さく笑う。
「鬼ごっこは趣味じゃないんでね‥‥始めるか」

 郊外へと誘導が終わっている事を確認して、背後から迫るスタックビートルへと向き直る。
「接近戦を仕掛ける。菫、援護を頼む」
「了解しました!」
 接近武器ソードウィングを使い、迫り来るスタックビートルへと攻撃を開始した。
 スタックビートルの反撃によるダメージを受けながらも、八神は尚も敵機への攻撃を止めない。
「援護開始!」
 ホーミングミサイルを使用し、八神から敵の視線を僅かでも引き離す。
 その効果はあったのだが、スタックビートルは視線だけでなく攻撃対象までも如月へと移し。
「っきゃあ!」
 ダメージを受けて、一瞬機体のバランスを失いかけるが。
「そうはさせるか!」
 八神のスナイパーライフルによる牽制で、敵機は再び対象を八神へと戻す。
「う‥‥これが本当の空戦‥‥難しいですよ」
 どうにか体制を立て直した如月が、ポツリと呟きながらも再度援護を始めた。
「これで終わりだ‥‥」
「私だって、やれば、できるんです!!」
 八神がソードウィングでスタックビートルへと攻撃を加え。そこに如月が援護射撃を行なう。
 大きな音と共に、1機目のスタックビートルが爆散する。
「魔狼の牙に砕けぬ物はない‥‥」
 欠片も残さず消え去るスタックビートルを確認して、八神は小さく呟いたのだった。

「暁光の魔帝、ルナフィリア・天剣‥‥参る」
 自身の機体に迫る2機のスタックビートルを確認して、ルナフィリアが方向転換する。
 敵機と正対して、照準をスタックビートルへと定める。
 高分子レーザー砲で2機のうち1機をロックオンし、的確に攻撃を加えた。
「援護します」
 ルナフィリアの攻撃の後、彼女にダメージが加わらないようにとハルトマンがミサイルの残弾を全て叩き込む。
 しかし、残りの1機までにはダメージが行かなかった為、残機の攻撃がルナフィリアへと着弾してしまった。
「っ‥‥舐めるなよ、蟲!」
 低く声を上げて、ダメージを受けながらもルナフィリアが反撃を行なう。
「1機は引き受けるにゃー」
「遅くなってごめんなさいね」
 そこに飛び込む様にやって来たのは、キューブワーム戦から戻って来た憐と遠石だ。
「憐、一千風。そいつは頼んだ」
「分かったにゃ」
「それじゃ、うちらはこっちに集中します」
 憐と遠石が1機を引き離し、ルナフィリアとハルトマンの眼前に残ったのは1機だった。
「蟲如きが空を支配出来ると思うな‥‥」
 高分子レーザー砲で攻撃を加えるルナフィリアと、それをスナイパーライフルで援護するハルトマン。
 しかし、攻撃が絶えた一瞬。敵機が今度はターゲットをハルトマンへと移し、ポジトロン砲でダメージを与えた。
「‥‥っ!?」
 ダメージコントロールを行なうハルトマンへ、更に攻撃を続けようとする敵機に。
「余所見する暇などもう与えん‥‥」
 ルナフィリアがレーザー砲で止めを差す。
 爆散する敵機を確認して、ルナフィリアが無線越しにハルトマンへ声をかける。
「ハルトマン、大丈夫か?」
「は、はい。何とか直撃は避けられましたから」
 態勢を整えて、二人は残り2機の行方を視線で追ったのだった。

「行くわよ」
 遠石が、誘き寄せた敵機に対して主兵装で攻撃を仕掛け始めた。
「援護するにゃー」
 その後ろから、スナイパーライフルで援護射撃を行なう憐。
 高分子レーザー砲の攻撃を受けながらも、敵機は照準を近くの遠石へと合わせ、反撃を開始した。
「っ‥‥まだまだ!」
 体勢を持ち直す遠石の援護として、再度憐が射撃を行なう。しかし、その直後に敵機が今度は憐へとポジトロン砲を放った。
「‥‥っ!!」
「憐!」
 遠石が声を張り上げ、高分子レーザーをスタックビートルへ浴びせる。その間に憐は体勢を立て直した。
「大丈夫にゃ。あと少し!」
 スナイパーライフルを可能な限り撃ち尽し、反撃の暇を与えない様に遠石が再度高分子レーザーを浴びせる。
 攻撃を受けたスタックビートルが、大きな音を立てて爆散する。しかし、残った残骸の一部が街へと落下していく。
「そうはさせない、間に合え‥‥!」
 遠石が咄嗟にガトリング砲を放ち、それを粉砕したのだった。

「他の3機は撃墜完了だって! それじゃあたし達もやっちゃおう!」
「無茶はダメよミア」
 残り1機。他のメンバーの声を無線から拾って、眼前のスタックビートルへと向き直るミアと、その援護を行う為に距離をとるケイ。
「いくよっ!」
 近距離から主兵装のヘビーガトリングで攻撃を仕掛けるミアへ、プロトン砲を発射するスタックビートル。
 近距離に配置していた為、避ける事が出来ずにミアは被弾してしまう。
「ミア! 今の内に体勢を整えて」
 距離を取った場所から高分子レーザー砲とガトリング砲で敵の意識を自身に向けて、ケイが声を上げる。それに答える様にミアが体勢を何とか持ち直す。
「やってくれたね!」
 掛け声と共に、ヘビーガトリングで再度スタックビートルへと攻撃を与える。
 遠距離からそれを高分子レーザーで援護するケイだったが、今度は敵機がケイへとポジトロン砲で反撃に出る。
 ダメージコントロールを行なっているケイを確認して、ミアがケイと敵の間に機体を滑り込ませた。
「ケイさん、平気?」
「えぇ、何とか大丈夫よ」
 ケイの機体が持ち直したのを確認すると、最後のスタックビートルを睨みつけて。
「これで終わりだよっ!」
 言葉と同時に、近距離から打ち込まれる50発のヘビーガトリング砲。そして、僅かに機体をずらしたケイのディアブロから放たれる高分子レーザー砲。
 立て続けの攻撃に、最後の1機だったスタックビートルは、音と共に破片一つ残さずに爆発し、消え去ったのだった。

●戦闘終了・ちょっとしたボランティア
「ケイ、私は今から街の瓦礫撤去に行こうと思うが」
 無線から響いてきたルナフィリアの声に、ケイがそうね、と言葉を返す。
「ルナ、あたしも一緒に行くわ。ちょっとしたボランティアね」
「アフターケアもきっちりと‥‥か‥‥」
 八神も機体の高度を下げ始める。
「‥‥憐も‥‥いきます‥‥」
「あーっ! ならあたしも!」
 ゆったりと同意する憐と、元気良くまるで手を上げている様子が見える様なミア。
「私も行きましょう。それ位のお役には立てるはずですから」
「うちも参加します。街の人に、少しでも早く復興してもらいたいですから」
 遠石とハルトマンも、高度を徐々に下げていく。

 後日。
 街は時計塔を失ってしまったが、その代わりに8機のKVによって、瓦礫の撤去が行われた為、想像よりも早く復興が行なわれたという連絡が、8人の元に届けられたのだった。

 END