●リプレイ本文
●アーク川 探索開始
イングランド・アーク川。その近郊に出没するキメラを殲滅しに集まったのは6人の能力者達。
「じゃ、作戦確認しとこっかー」
キリマンジャロコーヒーを配りながら、まひる(
ga9244)は笑顔で全員を見やった。
手渡されたそれの香りを確かめる様にカップを軽く揺らしながら、カララク(
gb1394)が頷く。
「‥‥ん、美味い」
「それ作戦じゃないでしょう‥‥確かに、美味しいですが」
アルヴァイム(
ga5051)の呟きに、風花 澪(
gb1573)は笑ってコーヒーを口に含み。
「ごめんー。お砂糖ってない?」
「俺はこれ位が好きだな」
コーヒー好きな草壁 賢之(
ga7033)が、味わいながら笑うその隣。
「俺は熱いの好きじゃないぜ」
猫瞳(
ga8888)が顔を顰めて言い放つ。
「作戦の確認をするのでは?」
アルヴァイムの言葉に、全員が『あぁ、そういえば』といった表情を見せた。
「分かってるって! ‥‥苦っ」
自分で淹れておきながら、しかめっ面をするまひる。
「えー、今回は2人1班で行動。組み合わせは‥‥」
「僕と忍者さん、ひーちゃんとカベさん、猫ちゃんとラクさん。で合ってるよね?」
「ひーちゃんって、私の事?」
「カベさん‥‥」
「っつーか、ちゃん付けすんな」
「ラクさん‥‥一昔前日本で流行った時代劇に出てきそうな呼び名だな」
風花の愛称呼びに、アルヴァイム以外が何とも言えない表情になる。だが本人はその呼称を変えるつもりはない様だ。
全員は諦めの表情で会話を続ける事にした。
「ワニに似た姿なら、水辺か水中かのどちらかにいるだろう」
カララクの言葉の後に、まひるが笑って告げる。
「なら、頭を踏んづけて挑発してあげればいーじゃん」
「僕は囮になって川辺に近づくよ」
「力で引きずりだしゃーいいんだよ♪」
どうやら前衛メンバーは各々キメラを誘き出す行動を練っていた様だ。
「まぁ、後衛の俺達は只管援護射撃だな」
「そうですね」
「私達で、パートナーの怪我を最小限にしましょう」
結局、全員やる気の様だ。
「じゃ、僕と忍者さんは西の方を探してみるよ! 行こ、忍者さん!」
「えぇ。頑張りましょうね風花様」
そんな会話をしながら、川の西側へと向かい始める風花とアルヴァイム。
「元気だねぇ。んーじゃ、私と賢之は東に行こっか?」
「無理はするなよ、まひる‥‥」
「ちょっ! 待って下さいよまひるさん」
カララクの言葉を受けて、手をひらひらと振り走り出すまひるの後を、慌てて追いかける草壁。
2組が既に散ってしまった為、カララクと猫瞳に残された選択肢は一つだけだった。
「なら、俺達はここで様子見しようぜ。どっからくんのか分かんねーなら、動かなくっても出てくるかもしんねーし」
「‥‥そうだな」
3班に分かれて、いざ、探索開始!
●アーク川西方面 遭遇
「今度のキメラはワニ! キメラっていろんな種類がいて飽きないよねー♪ そこ『だけ』はバグアに感謝感謝っ♪」
「楽しそうですね、風花様は」
「だって! 僕、ワニ退治って聞いて楽しみにしてたんだ!」
西へ約200m程歩いた所で、風花とアルヴァイムは談笑しながら川辺を探索していた。
「忍者さんは僕から少し離れて歩いてね」
「射程距離ギリギリは確保しておきますよ」
水際すぐ。前を歩く風花の後方で、風花の前や周囲を警戒しながら、何かあれば直ぐに覚醒して攻撃態勢を取れる様にアルヴァイムは彼女に言葉を返す。
――ピシャンっ
微かな水音が、風花とアルヴァイムの耳に響いた。
「‥‥来たっ!」
元気良く、且つ楽しそうに刀とアーミーナイフを手にした風花の両腕に浮かぶ紋様。それは、彼女が覚醒した事を表す現象。
「さて、我等の相手は何体だろうな?」
双眼鏡を覗いて水面を睨みつける。揺らぎは1ヵ所。アルヴァイムは即座に風花から借りた無線機で他の班に通信を入れた。
「西200m地点、キメラ1体確認。これより戦闘に入る」
他の班に伝わった事を確認して、無線を切り両手にドロームSMGを構える。口調の変化は、アルヴァイムが覚醒した際の特徴だ。
「さぁがんばろっか♪」
「我は後方から援護を行なう」
風花・アルヴァイム組。キメラ1体と遭遇。戦闘開始!
●アーク川東方面 遭遇
「風花達の方は1体かぁ。私達はどうだろーね、賢之?」
前をふらふらと歩くまひるは、くるりと後ろを向き既に覚醒している草壁へと問い掛ける。
「さぁ。今の所は目立った音源・熱源は見当たらないけど」
「なら、こっちから呼んでみる?」
「‥‥ほーら、俺は別に美味くないぞー。こっちのお姉さんの方が美味しそうだから出ておいでー」
「あはは! 賢之棒読みー」
そんな会話を続けながら、東へ約300mの地点で、草壁が足を止めた。
「ん? どしたの賢之」
「水中に熱源‥‥数は、1」
その言葉を受けて、まひるは瞬時に覚醒する。
「東300m地点、熱源確認。数は1。戦闘を開始します」
「水中戦は無理だーね。じゃ、陸に上がってもらいましょーか」
やる気十分のまひると草壁。
「うしッ、チクチク駆逐してくとしますかッ」
まひる・草壁組。キメラ1体と遭遇。戦闘開始!
●アーク川待機組 遭遇
「西と東、其々1体ずつか。4体とも分散しているのか、それとも‥‥」
「ったく、集団で来てくれりゃ楽だってのに」
まひる・草壁組から1台借りてきた無線機で他班からの連絡を受け、冷静に分析するカララクの前。水面を見やっていた猫瞳がぼやく。
「余計な事を言うな。本当に固まって来たらどうする」
「そんときゃ俺が纏めて蹴散らして‥‥」
ふいに、猫瞳が口を噤む。訝しげに猫瞳を見やって、その視線の先を追いかけると。
「だから言っただろ‥‥」
水面から顔を出している二つの頭。その姿は報告通り角の生えたワニだ。
「こちら待機組。キメラ2体を確認。状況を見て戦闘に入る」
「川から引きずり出してやるぜ」
瞬時に覚醒した二人が、キメラの動きを観察する。
猫瞳・カララク組。キメラ2体と遭遇。戦闘準備!
●アーク川西方面 戦闘開始
川辺に立っていた風花の体温を感知したのか、キメラが陸へと姿を現す。
風花の後方30m地点、アルヴァイムは風花に流れ弾が当たらない様に注意しながら、ドロームSMGをキメラへと向けた。
「それじゃ、いっくよー!!」
元気良く声を上げて、風花が刀とアーミーナイフを手にキメラとの間合いを詰める。そして、急所突きでキメラの目に目掛けて攻撃を仕掛けた!
皮膚から露出した弱点の一つを攻撃されて、キメラが絶叫を上げる。
「まだまだっ!」
二撃目を即座に繰り出すが、硬い皮膚に阻まれてしまう。体勢を崩した風花へと、キメラが角で攻撃を繰り出す!
回避を行なう風花だが、4本の角によってダメージを食らってしまう。
「貴様!」
風花を攻撃対象にしているキメラの隙を突いて、アルヴァイムが影撃ちでキメラへと弾を叩き込む!
微かに距離を置いたキメラを確認すると、アルヴァイムは立て続けに急所突きで的確に射撃を行なう。
「大丈夫か?」
「僕なら平気っ!」
答えながら風花が、キメラへと三度斬撃を加える!
徐々に体力が削られていくキメラが、大きく口を開き。そこから拳程の『水弾』を放った!
「うわぁっ!」
回避が間に合わずにダメージを受ける風花を見て、アルヴァイムがSMGの照準を開いたままの口へ定める。
「貴様の相手は我だ!」
強弾撃を使用したアルヴァイムの弾4発が、キメラの口内へと叩き込まれる!
「これで最後っ!」
風花の刀が豪破斬撃によって一瞬赤く輝く。風花は素早くキメラの側面へと回りこみ、流し斬りでキメラの胴体を二つに切り裂いた!
大きな絶叫の後、キメラは地に倒れ動かなくなった。
●アーク川東方面 戦闘開始
水中から出てこないキメラに、まひるは笑う。そのまま瞬天速を使ってキメラの頭部を踏みつける!
「はいよ、こんちは! あーんど、さいならー! あはは!」
そしてすぐさま跳躍し、元の場所へと離脱した。
激昂したキメラが口を大きく開きながら、陸へと現れる。
「無茶するなぁ、まひるさん」
そう言いながら、草壁のブラッディローズはキメラの口へと向けられ。
「口は災いのもと‥‥ってね。塞がせてもらうぞ‥‥ッ!」
強弾撃を使用した4発の弾は、吸い込まれる様に狙った場所へと打ち込まれる!
口内へと攻撃を受けたキメラが、怒りに任せて角で近くに立っていたまひるへと攻撃を繰り出した!
「わっ!」
回避しきれず、まひるがダメージを食らってしまう。
「よっくも、やってくれたーね!」
そのまま距離を詰めたまひるは、即座に4本の内の1本の角を掴み、上顎へと愛刀・炎舞で二度斬撃を加える!
口内と上顎、両方にダメージを食らったキメラは、口を使った攻撃が出来なくなった。
「大丈夫ですか!?」
まひるがキメラの直ぐ側にいる為、フォルトゥナ・マヨールーでの攻撃へと切り替えた草壁が、狙撃眼を使用して目や関節へ4発撃ち込んだ!
絶叫を上げるキメラに、先手必勝を使用したまひるが攻撃の暇を与えずに、炎舞とサーベルを構える!
「お返しっ!」
三度の斬撃で、キメラの首が刎ね。同時にキメラは動かなくなった。
●無線
「西方面、1体殲滅完了。これより合流を開始する」
「東方面、了解。こっちも1体殲滅完了。至急合流します」
「こちら待機組。2体を確認するも、動きは見られず。合流を待って‥‥」
「俺が引きずり出してやるって♪」
「‥‥悪い、出来る限り早めに来てくれ」
●アーク川待機組 戦闘開始
「狩りの始まり、か」
フォルトゥナ・マヨールーとクルメタルP―38を構えて、カララクは水面に頭を見せたままのキメラ2体を睨む。
「何だよ、攻撃してこないのかー?」
そう言って、ふと猫瞳が悪戯を思いついた様に目を輝かせた。
「なら、ちょっとコイツを‥‥」
そうして手に持ったのは。
何と、近場に転がっていた大き目の石だった。
「んじゃ、行ってこい!」
景気のいい掛け声と共に、投げられた石は、一直線にキメラへと向かう。石を投げられた1体のキメラが、大きく口を開いて。
「‥‥破壊力バツグンか」
粉々になった石を見届けて、カララクが呟く。
しかし、石を投げた事でキメラ達は攻撃態勢を取り始め。特に石を投げられたキメラは、口を開き水弾を放とうとする。
「攻撃力も分かったし、1体は口をあけたまま。一石二鳥だぜ」
超機械ζを装備した猫瞳が、面白そうに笑った後。
「こぉぉぉぉぉ」
独特な呼吸法で気を高め、そして。
「喰らえ! 二段撃真音電磁斬!」
右手に真音獣斬、左手に電磁波の二段撃を使用し、キメラへと強襲をかけた!
キメラが絶叫し、そのまま勢いよく陸へと上がる。前進し体当たりを猫瞳へ喰らわす直前。
「‥‥及ばずながら、全力で援護する」
後方で待機していたカララクのP―38から、3発の弾が放たれる!
関節や目を狙った攻撃は、突進していたキメラの行動を止めるには十分の威力を発揮していた。
「もう1体は‥‥」
注意深く周囲を観察するカララクの目が、もう1体、水中に残ったままのキメラを捉える。
「猫瞳!」
鋭い声に、眼前のキメラから視線を外した猫瞳に向けて、もう1体のキメラから水弾が放たれた!
「チッ!」
何とか回避するが、流石に2体同時に攻撃を仕掛けられては面倒だ。2人がそう考えた、次の瞬間。
発砲音が空を切り裂いた。
●アーク川近郊戦 合流
「間に合ったか」
狙撃距離ギリギリから水中のキメラへと急所突きを使用し攻撃を仕掛けたのは、西方面から戻って来たアルヴァイムだった。
「遅くなってごめんねっ!」
その後から現れた風花が、刀とアーミーナイフを構えてキメラ達へ向き直る。
「先越されちゃったね賢之」
「無事で何よりです」
僅かに遅れて現れたのは、まひると草壁の東方面組だ。こちらも同じく戦闘体勢を取っていた。
「無事合流、か」
呟いて、カララクはフォルトゥナを最初に攻撃を仕掛けてきたキメラへと向け。
「草壁、忍者。アテにしている」
その言葉を受けて、草壁とアルヴァイムがそれぞれ頷く。
「引きずり出してやる」
言って草壁はブラッディローズの照準を水中のキメラへと合わせ、急所突きで攻撃を仕掛ける!
散弾した3発の弾が、キメラの目や口の周りへと着弾した。攻撃を受けた水中のキメラが、陸へと上がり始める。
「僕は猫ちゃんと一緒に攻撃するねっ」
風花が間合いを詰めて、斬撃を仕掛ける。閃く3本の軌跡がキメラの目や関節を斬り裂いた!
「そこだ」
声を上げようとしたキメラの口へ、影撃ちを使ったカララクの弾が吸い込まれ。立て続けの攻撃に、キメラがのた打ち回る!
「まだまだ、俺を忘れんなっ!」
そこへ、追い討ちをかけるように猫瞳の正拳突きが3発打ち込まれた!
絶叫を上げるにも口へダメージを受けているキメラには、鳴き声を上げる事すら出来ない。
「私も忘れないでねー」
もう1体のキメラへ間合いを詰めて、まひるが炎舞とサーベルで三度斬りつける!
痛みに暴れるキメラが、角でまひるへと攻撃を加えた!
「まひる! ‥‥野郎‥‥ッ」
怒りを堪える様に歯噛みして、カララクが低い声で呻く。
「だいじょーぶ!」
笑顔のまま、敵から目を離す事なくまひるが応える。
「動きを封じてやる」
アルヴァイムが急所突きを使用して、猫瞳と風花が相手をしているキメラへと強襲をかけた!
4発の弾全てが見事にキメラの急所を貫く。
「止めは俺がやってやるぜっ!」
布斬逆刃を使って物理攻撃へと性質変化を行なった猫瞳が、声を上げる。
「コレが噂の電磁波物理攻撃拳! 『猫瞳コレダアアアアー!!』」
猫瞳の拳がキメラへと叩き込まれる!
大きな音を立てて、3体目が倒れた。
「後1体!」
草壁が影撃ちを使用して、キメラの口内へと確実に攻撃を与える!
「反撃の暇は与えん」
間髪入れずに急所突きを使用したカララクの攻撃によって、キメラが痛みのあまりに倒れ込んだ!
「じゃ、ばーいっ!」
炎舞とサーベルを翻したまひるが、最後のキメラの胴を斬り裂く!
倒れ込んだキメラが、再び動く事はなかった。
●アーク川近郊 戦闘終了
「まひる、大丈夫だったか?」
「んー? へーきへーき!」
「これで依頼は解決ですね」
「ねぇねぇ! 何か武器とか貰えるかな?」
「さぁ‥‥それは私にも分かりませんね」
「ぶっちゃけ、どんな武器を作ってるのかは気になるな」
其々が武器を収めて会話を交わす。
「でもとりあえず、オレンジジュース飲みたい‥‥」
風花の言葉に、他の5人は顔を見合わせると、揃って噴出したのだった。
●後日談
数日後、報酬と共に6人の能力者達の元へと届けられたのは、シンプルなデザインの銃だった。
『依頼解決、感謝します。これはほんのお礼です。
私達が開発の元としているもので、外部へ出しても何ら支障はありませんので、1人1丁お受け取り下さい。
セブン&ジーズ社』
END