タイトル:【竜宮LP】竜宮の遣いマスター:氷魚

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/13 21:33

●オープニング本文


それは、人間が地球上に誕生した頃から地上に蔓延っていた。
 意識空間が拡大し、他の存在を意識し始めた頃より生まれし感情。

 誘惑。
 渇望。
 欲求。
 そして――獲得。

 人は、自身が持ち得ない物を欲さずには居られない。
 人は、欲していた物を手に入れても新たな持ち得ない物を見つける。

 端から見れば愚かな行為だったとしても、それこそ『人が人らしく生きていく』事の証に他ならないのだ‥‥。


■悪戯に生み出す者。
 薄暗い闇の中を、少年は乾いた靴音を響かせながら歩いていた。
 白衣のポケットに手を突っ込み、そのあどけない顔には似合わない笑みを浮かべながら闇の中を進む。
 少年が進む闇の中に、ぼんやりと光って見えるのは円柱型の調整槽。
 中にはバグアが生み出した異形の獣――キメラが浮かんでいた。
 『そこ』には調整槽がいくつも並んでおり、先の方は闇に溶け終わりが見えない。
 少年は『そこ』の中心部にたどり着くと、一際大きい調整槽の前で立ち止まる。
 目の前には四つの円柱が東西南北の四方に立てられていた‥‥いや、この場では方角など無意味なのだが。
 少年が調整槽の一つを覗き込むと、一人の少女がこちらに視線をやり不思議そうに少年を見ている。
「外に出たいのかい?」
 優しく微笑みながら言う少年の言葉に、少女は首をかしげる。その無邪気な表情に少年は酷薄な笑みを浮かべる。
「そんな事思うわけないよねぇ――」

 ――そう云う風に調整したんだからさぁ。

 そう言い放つと実に愉快そうに。見ている者を不愉快にさせる笑い声を上げた。醜く歪むその顔はあどけない少年のものとは思えない程禍々しい。
 少女の名前は「紅」。
 耳障りな笑い声を上げるこの少年に、キメラへと改造された哀れな少女だ。強化人間ではなくキメラとして生み出したのは少年の趣味でしかない。
 ペットには知性など必要ない。そして人間は、誘拐されキメラに改造されてしまった、そんな哀れな少女を悩み苦しみながら――それでも殺すのだ。
 こんな愉快な事があるだろうか。こんな面白いものがあるだろうか。
 ふと、少年はある事を思い出し、笑うのを止めた。
「そうだ紅。お前の故郷はこのすぐ近くだったねぇ――」

 ――せっかくだから、遊んでおいでよ。

 そう言って少年は薄暗がりの中、どす黒い笑みに顔を歪めた――。

■炎と踊る少女。

 爆音。逃げ惑う市民。そして炎。炎。炎。

 中国沿岸のとある都市でそれは起こった。
 辺り一面を焼きつくす炎が、夜の星空を赤々と焦がす。
 その中心には一人の少女。赤に染め上げられたゴシックロリータの服を着た少女――あの少年に紅と呼ばれた少女である。
 紅の背中には赤く燃え上がる炎が、まるで翼の様に広がっていた。
 町を歩くと、紅の興味を引く可愛らしいものがあった。それに手を触れると途端に火が付き、耳障りな音を立てて動かなくなった。紅はそれが人の子供である事を知らなかった。
 町を歩くと、紅に寄ってくるものがあった。それは紅に触れると目から水を流しながら、炎に焼かれていった。それは、紅が紅と呼ばれる前に父と呼んだ者だと言う事を知らなかった。

 知らない。知らない。知らない。

 そう、少女はそう言う風に作られた。

 何も知らない――そう、その町が少女が生まれ育った街だと言う事すら。

●参加者一覧

木場・純平(ga3277
36歳・♂・PN
魔神・瑛(ga8407
19歳・♂・DF
加賀・忍(gb7519
18歳・♀・AA
カーディナル(gc1569
28歳・♂・EL
夜咲 紫電(gc4339
20歳・♀・FC
ダンテ・トスターナ(gc4409
18歳・♂・GP
ミコト(gc4601
15歳・♂・AA
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

●壊された人形

 ――少女は心を壊された。

 ――少女は人ではなくなった。

 ――少女はそれすらも、理解できない。

 知らない。と言う意味すら知らない――紅。
 その瞳は赤々と燃える炎を照り返し朱に染まる。
 言葉にならない鳴き声を口から漏らし、ただ無邪気な笑みを浮かべながら触れるものを焼き尽くす。
 赤に染め上げられたゴシックロリータの服を着て、背中からはその名の通り紅の翼を広げながら、四車線の広い道路の真ん中をまるで散歩でもするかのように歩いていく。
「夜の街に佇む炎の天使、ねぇ。絵面としちゃ結構好みではあるんだがな‥‥」
「でも、人を傷つけるんだったら‥‥倒すしかないよね」
 建物の陰に隠れ、少女――いや、キメラを確認して呟くカーディナル(gc1569)にミコト(gc4601) がそう応じた。
「火を扱うキメラ‥‥ね」
 カーディナルに倣ってミコトもキメラを確認する。情報で聞き及んでいた通り、辺りに炎を撒き散らしながら楽しげに歩く。

 ――打ち合わせ通りにやるぞ! 準備は良いか?

 ミコトの持つ無線機から魔神・瑛(ga8407)の声が聞こえる。短く「了解」と応えカーディナルに視線を投げる。その視線にカーディナルはこくりと頷きを返し銃を構えた――。

●その炎は焼き尽くす。人の心さえも――
「先ずはコイツでも喰らいな!」
 魔神のそんなセリフと共に戦いの火ぶたは切って落とされた。魔神の持つハンドガンから鉛玉が吐き出さる。逆の建物の陰から走り出してきたカーディナルも同様に拳銃を構え、キメラに向かって弾丸を撃ちこんだ。
 不意をつかれたキメラは銃弾に頭を弾かれ、道路に倒れ伏す。
「お、っと‥‥意外にも効いたかっ」
 魔神の呟きに対し、キメラは両手を地面に突きゆっくりと立ちあがった。そして魔神の方に視線をやると、にこりと笑みを返してくる。
「‥‥ま、そう上手くいかねぇか」
「ならば、行く」
 淡々とした口調でそう言い、魔神の脇から飛び出したのは加賀・忍(gb7519)。抜き放った月詠が周辺の炎を照り返し紅く染まる。迅雷を思わせる速度でキメラの懐に踏み込み鋭い突きを頭に向かって繰り出す。
 キメラはその鋭い突きをすんでのところで避けた――しかし、至近距離まで踏み込んだ忍の体が回転し、十分に遠心力を載せた刀をキメラに打ち込む。その剣を無造作に手で受けようとしたキメラの腕を弾き飛ばした。
 その瞬間、忍の持つ刀を伝い炎が走る。その炎は瞬時に忍の身体へ燃え移り皮膚を焦がした。舌打ちをし地面を転がり火を消す忍を横目に、体勢を崩したキメラに飛びかかる影があった。
 雷の様な勢いと共に、夜咲 紫電(gc4339)がキメラの胴に向け、紫電が走る右手に握った蛍火を振るう。
 キメラのフォースフィールドに刃が触れた瞬間、不可視の壁が炎の舌を紫電へと伸ばした。襲い来る紅蓮の炎を散らしながらも、紫電の刃は不可視の壁を切り裂き胴を薙ぐ。
 少女の恰好をしたキメラは、その痛みに鳴き声を上げる。しかしキメラはその傷を炎で焼き、強引に傷を塞いだ。それは生存本能が成す無意識の行動である。
「くっ!?」
 身体を焼く炎を纏いながら、間を取ろうとした紫電にキメラが手を伸ばし、それに従う様に炎の翼が紫電を襲う。
 しかし――一発の銃弾がキメラの手を撃ち抜いた。
「ヘイ! ファイアガール! 俺が遊んでやるッス!」
 キメラは声がする方へと視線を向けると赤髪の男――ダンテ・トスターナ(gc4409)が銃を向けている。
「紫電さんに手は出させないッスよ!」
 ダンテの言葉を余所にキメラは撃ち抜かれた手をぼんやりと見つめる。見つめる間に、炎がその傷を焼き塞いだ。
 それを確認した後、再びダンテに視線を向け二コリと笑うと、その小さな体を跳躍させた。
 目標は――ダンテ。
 背中の炎を爆発させ、ミサイルの様に飛翔するキメラ。
 その勢いでダンテに衝突する瞬間――キメラとダンテの間に素早く入り込む影があった。
 掲げた盾が炎を遮り、熱波からダンテを守る。
「君に‥‥」
 盾を構えていた少年はその攻撃を受けながら口を開く。
「君に悪気が無くても‥‥君を止めなくちゃいけないんだっ!」
 何かを振り払う様な怒号と共に、炎に巻かれた盾を下げドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751) は細身の剣を突き出す。刹那の如く繰り出される突きはキメラの肩に命中した。
 深く抉られた肩にキメラは喘ぐ。肩を押さえながら二歩、三歩と後ずさった。痛みにもがくキメラ――いや、少女‥‥に一瞬ではあるが剣先が鈍る。
「バカっ!」
「下がれぇっ!」
 一瞬でも攻撃を躊躇ったドゥに鋭い声と共に、バケツに組んだ水をかけたのは紫電だった。ドゥに燃え移っていた炎が音を立てて消える。紫電自身も髪の先から水を滴らせていた。予め用意して置いた水をかぶり、自分に付いた火を消したのだろう。
 その紫電の背後からミコトとカーディナルが飛び出し、キメラをその場から遠ざける。
 紫電は蛍火を手に油断なく構え、キメラを見据えたままドゥに言う。
「あの子はもう人間じゃないんだっ! 可哀そうとか上から目線の同情はしちゃ駄目なんだよっ」
 紫電の言葉に、ドゥは少し。ほんの少しだけ辛そうな顔をしてから、キメラに向かい直り剣を握り直す。
「はい。も、もう大丈夫ですっ!」
 そう応え紫電と共にキメラに向かい駆け出した。

●少女はその身を炎に焦がす。
 少女に攻撃を仕掛ける度に、身体を強烈な熱が焦がした。その熱はじりじりと体力を奪って行く。しかし炎に巻かれながらもミコトは前へ、前へと前進した。
「この熱さが贖罪になるとは思わない‥‥よ」
 ――でも、覚えておく事に意味はある。そう、思いたい。
 全ては口にせず、このキメラが放つ熱を自らの身体に刻みつける。その姿は、この哀れな少女の記憶を心に刻みつけるかの様にも見えた。
「無茶すんなミコトっ!」
 カーディナルの持つ驟雨から衝撃波が放たれ、キメラの周囲に撒き散らされる炎を切り裂きながら、ミコトを襲おうとしていた炎の翼を弾き飛ばす。
 翼を弾かれ体勢を崩したキメラに、魔神がクロムブレイドを手に斬りかかる。キメラはそれを大きく後ろに飛んで避けるが、その刃は皮膚を浅く切り裂いた。
 魔神は一瞬炎にまかれるが、気合いと共に剣を振るい炎を吹き払う。
「くぅ〜、やっぱ火傷の痛み方はちぃっとキツイぜ」
 ぼやく魔神の視界にキメラに駆けこむ忍が見えた。それに気付いたキメラが忍に向かって炎の翼を伸ばすが、疾風の様な動きで忍はかわし再び懐にもぐりこむ。
 斬り上げる刃がキメラの胸を斜めに裂いた。その一撃でキメラはその場に膝を突く。しかし忍は油断をせず止めとばかりに剣を振り下ろす――

 ――あああああああああああああああっ!

 しかし忍の刃がキメラに届く瞬間、キメラの体を炎が包んだ。
 今までキメラ自身には燃え移る事が無かった炎が、キメラの――少女の小柄な体を焼く。
 自らを焦がす炎を周囲に撒き散らすキメラ。それは今までの攻撃とは比べ物にならないほど広範囲に広がっていく。
 そして、その炎が落ち着いた後――傭兵達の目の前には人の形をした炎が立っていた。その顔からは表情は窺えない。
 その場に居た傭兵達は皆息をのんだ。
 このキメラを‥‥少女をこんなにした者の狂気に。
 おそらく、少女はもう痛みを感じない。何も感じない。いや、何も‥‥知らない。ただ、その場にあるものすべてを焼き尽くす。自らの体も含めて何もかも。

 ――そう、作られた。

 息をのむ傭兵達の中、口を開いたのは紫電だった。
「本当に、本当に悲しい相手だね、君は‥‥ボクは、泣いてしまいそうだよ」
「紫電さん」
 そう言って、歯を食いしばり剣を構える紫電に、ダンテが隣に立って声をかけた。そして二人は揃って走り出す。
「こんな火遊びじゃビビんないッスよ!」
 ダンテは叫びと共に拳に装備したラサータを繰り出す。的確に急所を狙って繰り出される拳を、キメラは避ける素振りすら見せなかった。
「っ!?」
 当然の様にその悉くが命中し、その場でたたらを踏むキメラ。避けもしないキメラに、ダンテは逆に戸惑う。しかし、その一瞬が命取りだった。
 キメラから爆炎とも言える炎の渦が、ダンテに向かって襲いかかる。戸惑いから判断が遅れたダンテが回避できるタイミングでは無かった。
「ダンテっ!」
 そう叫びながら、紫電の体は無意識にダンテの盾になろうと駆け出していた――しかし、キメラを挟んで逆に回っていた所為もあり届かない。
 無情な炎が至近距離でダンテへと、死の食指を伸ばす。
 爆音と共に紅蓮の炎の柱がその場に立ち上りダンテを飲み込む。
 そして、その炎が収まった時、ダンテの前に盾を構えたドゥが立ち塞がっていた。
「君に‥‥これ以上やらせない」
 盾の陰からキメラを見据えるドゥは、息も絶え絶えで今にも倒れそうだったが、その瞳には強い意志が感じられた。ふらつくドゥをダンテが支える。盾で防いだとは言え、あの爆炎にその身を晒したのだ。死ななかっただけでも僥倖と言える。
 炎のキメラはドゥの瞳をどこか不思議そうにじっと見つめ返していた。何かを考えるように、何かを思う様に、そして小首を傾げる。
「アンタを元に戻す手段を知らねぇ。悪いが此処でくたばってもらうぜ」
 そのセリフと共に、魔神の放った衝撃波が動きを止めたキメラを襲った。無防備にそれを受けたキメラはアスファルトの上に倒れる。
 同情はいらない。感傷に浸るのもいらない。今は守れるものを守らねばならない。だからこそ魔神は手に持った剣を振り下ろす。
「その通りだ」
 冷たく響く声。
 弱々しく立ちあがったキメラの背後に回った忍が、その一言と共にキメラの胸を貫いた。
 キメラは胸から突き出た冷たい刃を不思議そうにしばし見つめる。

 ――知らない。

 死と言うものを。

 ――知らない。

 自らが死ぬと言う事を。

 ――少女は‥‥知らない。

 そう言う風に――作られた。

 忍がキメラの胸から剣を引き抜くと、支えを失ったキメラは道路に倒れこむ。少女の体を包んでいた炎が、弱々しく揺らめき‥‥そして消えた。

●戦いの終わり――そして弔い。
 辺りの炎は少女の死と共に急速に収まっていった。魔神が消防隊・救急隊に連絡を入れたので、間もなくそちらも到着する事だろう。
 言葉少なになっていた傭兵達の中、ミコトは少女の亡骸を抱きかかえていた。ただ、静かに。冥福を祈る様に。バグアに弄ばれた少女を慰めるかのように。
 そしてしばらくした後、少女を抱きかかえたまま立ちあがり仲間に振り向き口を開いた。
「‥‥さぁ、退治も終わったし帰ろう。ここでのんびりしてても仕方が無いしね」
 そう言って笑うミコトにカーディナルが「あぁ」と応える。ミコトが笑っているからこそ、それだけしか言えなかった。
 ミコトがカーディナルの心遣いに少し申し訳なさそうな笑みを浮かべて空を見上げると、空からちらほらと雪が降り始めていた。
 まだあちこちから煙が上がる中、空から舞い散る雪はどこか感傷的なものを感じさせる。

 ――せめて最後は‥‥幸せな夢を‥‥

 舞い散る雪を見上げながら、ミコトはそう願った――。


 海が良く見える丘の上だった。
 日が沈む直前のこの時間は、海が夕日を照り返し紅に染まる。傭兵達は知らなかったが、「紅」と言う色はこの少女が呼ばれていた名前だった。
「ここなら見晴らしも良いッスね」
 ダンテの言葉に紫電がこくりと頷く。紫電の手には琥珀色の液体が入った瓶が握られている。目の前の十字架は夕日を浴びて、長い影を引いていた。
 紫電は瓶の封を切ると無造作に十字架に振りかけた。琥珀色の液体が十字架を伝い、辺りにアルコールの匂いが漂う。
「お酒の味も知らずに死ぬのは、悲しいと思うよ」
 そう言って、十字架の下に眠る少女と杯を交わすかのように自らも煽る。飲み下したアルコールは奇妙な程身に染みた。
「ただのキメラだったら、ボクはこんな事はしない」

 ――君が人間だったからこうするんだ。

 そして、もう一度酒瓶を煽り、胸の中にわだかまった何かと一緒に飲み下した――。


 二人と入れ替わる様に、少女の墓の前に一人の男が現れた。男は十字架の前で煙草に火を点ける。そして紫煙を吐き出すとぽつりと「‥‥すまねぇな」と呟く。
 そしてしばらく十字架の前に佇む。
 冬の冷たい風が男の頬を撫でつけて行き、男が吐き出す煙を散らして行く。
 何本目かの煙草に火を点け溜息と共に吐き出した時には、既に海の向こうへと太陽は消え、大きな月が空に浮かんでいた。
「‥‥せめてあの世で位は、幸せに暮らせよ」
 空を仰ぎながら、そうカーディナルは呟いた。

●蠢く悪意。

 ――死んだか。

 暗い闇の中で少年は呟く。
 辺りは薄ぼんやりと光る調整槽が並び、一際大きい四つの円柱型の調整槽の内一つには何も入っていない。
 中に入っていた実験動物は傭兵と呼ばれる連中に殺されたからだ。
 その実験動物には戯れに「紅」と名を付け、少なからず気に入っていた。
「まぁ、いいさ」
 そう呟く少年の口元はうっすらと笑みが浮かんでいる。
 紅が戻ってこなかったのは残念だが、それでもまぁ楽しめた。
 代りは幾らでも攫ってくればいい。丁度あの小僧が手ごろな人間の子供を手当たり次第集めているはずだ。
「さて、と――」
 少年の姿をした「それ」は、白衣を翻し闇に溶けた――。

 ――そして、悪意は人知れず蠢く。