●リプレイ本文
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「これをここにセットして‥‥と」
人が入れる程大きい球状のポッドに入ると、結城 桜乃(
gc4675)は解説書通りに、カードデッキをスロットに入れた。
するとぼんやりとした光が全周囲モニターに灯り、システムがこう聞いてきた。
――服装の設定を変更しますか?
今回は初めてプレイするのだから。と、とりあえず『NO』を選択する。そうすると光が桜乃の体を走り、その眩しさに目を細めた。
光が収まり、暫くして目を開くと桜乃の口から感嘆の息が漏れる。
「うわぁ‥‥」
目の前には草木の花咲く高原が広がっていた。
ジョイランドと呼ばれるアミューズメントパークに設営された、球状のシミュレーター内に居るとは思えない。
ヴァーチャルリアリティ(VR)空間。
花の匂いすら感じるほどの、現実感溢れる仮想現実が桜乃の五感を刺激し、これが現実だと錯覚させる。
「おや、桜乃くん。服装の変更しなかったんだね」
声を掛けられ振り返ると、メイド服に身を包んだ三上 照天(gz0420)――テルが、なにやら邪魔になりそうな変わった機械を腕につけていた。
「せっかく自由にコスチュームチェンジ出来るんだからやれば良かったのに」
「そうそう。折角なんだから全部楽しんだ方がいいよ」
と、腕を組みながら胸を張るテルの後ろから、そう言ってお姫様役の阿部 愛華を連れてきたのは石田 陽兵(
gb5628)である。
時代掛かった騎士の鎧を身に纏ったその姿は、正しく姫を守る騎士に見えた。
「そうですよ〜。私なんて存分に楽しませてもらうつもりですよ〜♪ ふふっふふふふ」
魔法使いの格好をした住吉(
gc6879)が陽兵の言葉に続く。にやぁり。と言った笑みが、魔法使いと言うよりも死霊使いを彷彿とさせるのは――きっと気のせいだろう。
「嫌ですねぇ、ちゃんと魔法使いですよ〜♪」
杖型のアーカイブを手にし、外套ひらひらとさせながらそう言う。
うん。きっと筆者の疑問ではなく、周りの皆の視線を敏感に感じ取ってそう言ったのだろう。
「よく似合ってますよ。住吉さん」
「ですよねぇ」
愛華の言葉に満足そうに頷く住吉。
そしてその背後には漆黒の鎧を纏い、静かに皆のやり取りを見つめる仮面の男――その名はヘイル(
gc4085)。
槍を模したアーカイブを手にしたヘイルは、すっと愛華の――いや、自らが守るべき姫の前に膝を突き口を開く。
「貴女が勝てば良いと言う事だ。誰も殺さずにな。勝つ為に負かす必要は無い。得るために奪う必要もな。その為の俺達だ」
その言葉に愛華は、少しの間ぽか〜んとした表情を浮かべた後、このPVはそう言う設定だった事を思い出し、慌てて応えた。
「は、はいっ。よろしく、お願いします」
たどたどしいが、それはそれで戦争に戸惑いを覚える姫としては悪くないお芝居だ。
そこに慌てて陽兵が割り込んでくる。
「姫は俺が守ります。皆は――ガンガン行こうぜ!」
いい笑顔だった。しかしテルそのセリフに異議を放つ。
「男は前に立つもんだろ〜っ! 愛華はボクが守るから、キミがガンガン行ってこいよっ!」
「俺が一番、愛華ちゃんを上手に守れるんだ!」
「テルちゃん、陽兵さん喧嘩しちゃ‥‥」
愛華をはさんで喧々囂々。
――両名の主を守るその意気やよぉし!
自分が守ると譲らない二人を、気迫あるそんな台詞が制した。
びりびりと空気が震えるような裂帛の声を吐いたのは雲空獣兵衛(
gb4393)だった。
まるで流れの浪人のような格好をした獣兵衛は、若い二人のやる気をうんうんと頷きながら、感心の唸りを上げる。
「姫をお守りするためにも、拙者は三上殿へ就こうではござらんか」
と、ずずぃっ! と一歩前に出た。一々アクションに迫力がある。つーかガタイでかっ!? 2メートルを超えるその体躯はテルの倍くらいありそうに見える。
「三上殿の言うとおり、男は戦場に出るもの。いざ行かん戦場へ!」
獣兵衛はひょいとテルを担ぐと、ずんずんと歩きだす。
「ちょっ! 男はあっちっ!」
「それは小姓の装束でござるかぁ。世界は広いで御座るなぁ」
メイド服を着た三上にそういいながら、一人でうんうんと頷く獣兵衛。
どうやらテルの声は届いていないらしい。獣兵衛の大きな背中を苦笑を漏らしながら見送り、ヘイルは陽兵へと向き直る。
「姫を頼む。もしもの時はこれを。きっと力になる筈だ」
「あ、あぁ。任せとけ!」
「じゃあ、ぼく‥‥俺は末姫を抑えに行きます!」
「それでは私はそちらに行きましょうかね。搦め手には弱そうですし、ね」
住吉が桜乃の言葉に満面の笑みを浮かべながらそう応えると、ヘイルはこくりと頷き――
――戦いが終われば、また会おう。
そう、告げる。
その言葉に各々が頷きを返し、それぞれの戦場へと駆け出した。
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んぐんぐ。ごっくん。うまうま。
腰に手を当てフルーツ牛乳を飲み下すのは四条 ルリ(gz0445)。
「ぷはぁっ! やっぱり戦場ではフルーツ牛乳に限るね! ジグにぃちゃん!」
満面の笑顔でルリはジグ・ゼリア(
gc6512)に言った。ジグもこのゲームの世界観に合わせ、魔法使いの格好をしている。
アーカイブのデザインはグリモワール。所謂、魔導書型のカードバインダーを片手に抱えていた。
ところで、ここはVR空間だ。そのフルーツ牛乳の味も仮想現実が錯覚させた味覚である事をルリは知らない。と言うか分かっていない。
「ほら、ドレスに零さないようね」
「うんっ!」
苦笑しながらルリの頭を撫でるジグ。
真っ先に戦場に飛び出すかと思われたルリを、フルーツ牛乳で上手く足止め出来てほっと一安心である。
そんなジグは不意につば広の帽子を深く被りなおした。
「とりあえずボクは長女さんを優先的に叩こうと思うんだ」
ルリとジグのやり取りに割り込むように、藤原琥珀(
gc6939)がそう口にする。
ジグが帽子を被りなおしたのは、琥珀のその格好の所為だ。
ルリ姫に召喚された小悪魔と言う設定らしいが、コウモリカチューシャに三角ビキニと言うその格好は、琥珀の豊満な体を隠し切れない。というか全く隠すつもりがないと言える。
その魅力的かつ蟲惑的かつ魔性の魅力は、正常な男子には目の得‥‥もとい、目の毒である。
しかし、その。うん。正常な男子じゃない男がここに居た!
『YESロリータNOタッチ』がモットーの変態紳士! 村雨 紫狼(
gc7632)ここに有り!
琥珀の服には見向きもせず、頭の後ろで手を組みながら琥珀の言葉に同意する。
「そだな。ちょ〜っと、安奈たんのチームに嫌〜な気配を感じるんだよなぁ」
デュエルポッドに入る前の石枡チームの面子を思い出すと、妙に頭の切れそうな連中が集まっていた。
あの手この手の搦め手で、猪突猛進型のルリでは瞬殺される恐れも有ったが、ジグの機転で上手く時間が稼げている。
「石枡さんと愛華さんのチームが上手く潰しあってくれたら、その隙をつけるんですけど」
「ま、ルリたんがフルーツ牛乳を飲んで、満足したらそうもいかないだろうしな」
ジグのぼやきに紫狼が応えると、二人はお互いの顔を見て苦笑する。二人とも少なからずルリの事を理解しているのだ。
「その時はその時さ、ゲームなんだから思いっきり楽しもうよ♪」
「ですね」
「あぁ」
琥珀の言葉に二人はそれぞれそう返す。
そうだ。最後に皆で楽しかったと思えればそれでいい。
まずは一所懸命楽しむ事に重きを置こう。もしかしたら一点集中、猪突猛進が思いがけず良い結果を招くかもしれない。
「ジグにぃちゃん、琥珀ねぇ! サー! おにいちゃんサー! おもいっきり楽しもうねっ!」
「え? 最後のなんて‥‥?」
「サー! おにいちゃんサー! 紫狼にいちゃんの事はそう呼べって!」
‥‥‥。
「よぉし、ルリたん。いっちょママンに自慢できるようにガンバろーなっ!」
「うん!」
他の二人の訝しげな視線を余所に、ルリと紫狼の二人は気持ち新たに戦いに臨むのだった――。
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「火の消えやらぬ戦場ステージか‥‥」
周囲を見渡しながら辰巳 空(
ga4698)が執事姿で秋ピーマンを齧りながらそう呟いた。
このステージの属性は火・土。未だ消えやらぬ戦いの残り火が、今もなお戦場に残された戦士達の遺体を焦がす。
見渡す限り遮蔽物のないこの戦場を眺めて、八尾師 命(
gb9785)が口を開いた。
「でもこのフィールドの広さなら、私のデッキも全力を発揮できそうです〜」
「あまり気分の良いロケーションではありませんね」
その言葉に振り返ると、暗い赤色のドレスを身に纏った石枡 安奈(gz0395)が、言葉とは裏腹に表情も変えずこのステージへと視線を向けている。
「おお〜。とってもヴァーチャル! 凄くレベルの高いシミュレーターだね〜♪」
そうやって周囲のオブジェクトをつんつんとつついているのは、亜(
gb7701)。軽装の魔法使いの格好をし、アーカイブの形状は二刀のナイフ。どちらも禍々しい形をしているのは何故だろう。
「さて、と」
「どこに行くんです?」
戦場の瓦礫に腰を降ろしていた秋月 祐介(
ga6378)が立ち上がると、その背中に空が声を掛けた。
「そろそろ、来る頃だとおもってね――」
――『悪魔の右手』発動。ライフを支払い『光』属性の符術を打ち消す。
祐介はいつの間にか手にした札をかざし、静かにそう告げると、どこかから飛翔してきた光の矢が霧の様に消え去った。
「うわわっ!? ばれてるっ!?」
「だから言ったのだ! 姿を隠して攻撃を仕掛けるなどサムライにあるまじき事だっ!」
ばさぁっ!
今まで誰も居なかった空間から、突然テルと獣兵衛が姿を現した。
『姿隠しの外套』の効果で姿を見せずに接近していたのである。
「ボクはサムライじゃないって!」
「ほれ。男ならばきちんと名乗りを上げて戦うので御座る」
「だから男じゃないよぅっ!」
敵の目の前で言い合いを始める二人。
それに苦笑を漏らしながら亜が口を開き、自らのアーカイブからカードを引き抜いて構える。
「ふっふーん。やる気だねぇっ! 出ろっ! 火を喰らう溶岩竜っ!」
テルが一枚のカードを掲げると、カードの周囲に巨大な魔方陣が展開され、異界への門が開く。
奥から出てきたのは鱗が溶岩の様に煮えたぎる溶岩竜である。
召喚と同時に周囲の敵プレイヤーにダメージを与え、かつ次のターンより自分のターン終了時に継続ダメージを与える強力なカードだ。
溶岩竜が雄叫びを上げると、熱波が石枡チームを襲――
――『時の螺旋』。
良く通る声が宣言した。
「『時の螺旋』が攻撃対象になった場合、攻撃してきた対象を次のターンまで、場から取り除く」
空がそう告げると同時に、テルの召喚した溶岩竜が消え去った。
「え? え?」
「安心しろ。次のターンに戻ってくる。戻ってくるが‥‥次のターンまで生き残れるか?」
召喚タイミングの後ろ倒し。
地味な能力ではあるが、ここぞと言うときに低コストで強力なカードの発動を遅らせる事が出来るカードだ。何が起こったか分からないテルに簡単な説明をしてくれる辺りは親切だ。
「ダメですよ〜? 単独で敵の前に現れたら〜」
のんびりとした口調で命が一枚の札を手にし、それを――呼ぶ。
――我が呼び声に応え来たれ、氷妖精〜。
命の呼び声に応じ現れたのは、30cm程の大きさの妖精。
その手には長弓を構えたまま、命の肩へと控えている。
そして命の背後には、それと同じ妖精が規則正しく整列し命の命令を待っていた。
「放て〜」
「ちょっ!?」
命が手を振ると同時に、氷の矢がテルと獣兵衛に降り注ぐ。
「獣兵衛さんっ! なんか、なんかないのっ!?」
「ふぅむ。よく判らんがこのカードで戦うでござる」
そう言ってテルに向かって一枚のカードを投げて渡す。慌ててカードを掲げ、テルは声高らかにカード名を叫んだ。
――『変身!?』
叫ぶと同時にテルが光った。一瞬裸になったかと思うと、白のリボンがテルの体に巻きついていく。
光が集まりリボン等の装飾品に変わり、設定したメイド服がフリフリらぶりぃな魔法少女に変身し――
――魔法少女ミラクルみかみん!
びしっ! とポーズを決めた所で氷の矢がどすぅっ! と鈍い音を立てて突き刺さった。
「ぎゃーすっ!?」
どうやら、変身中は攻撃が先送りにされるカードらしい。先送りにするだけで、その攻撃はきちんと処理されるようだ。
完全に趣味のカードである。
石枡チーム全体に、どこか残念な二人組みに対し哀れみに近い視線が集まった。
「なんだよぉこれぇっ!? 獣兵衛さんっ! これ僕と契約して魔法少女になってよ的なアレかいっ!?」
「何でござるか? それ」
え? 『○兵衛』繋がり?
実に憐れだ。しかし――その哀れみの視線を受けてテルは意味ありげに笑みを浮かべた。
「でもボクを見てる余裕なんてあるのかい?」
――――来たれ『レギオン』。不破の盾にして払う槍よ。
そんなヘイルの声が戦場に響いた――。
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「チャンスかも知れないね」
石枡チームと愛華チームが交戦に入ったのを、『遠見の水晶』で遠巻きに見てジグはそう呟いた。
戦場と言う広いVR空間での戦いの為、このような偵察用カードや移動用のカードの追加がされたのも『三姫戦争』エキスパンションの特徴だった。
「チャンスなのっ!」
「しーっ! ルリちゃん声大きいよ?」
「ごめん! 琥珀ねぇ!」
全く分かっていないかもしれないルリである。
「隙を見て安奈たんを狙えれば、勝てるかも知れないな」
「勝てるのっ!? 紫狼にぃ!」
「ここからはタイミングが大事だ――もう少し我慢してね。ルリちゃん」
「うん。分かった!」
――ふふふ。そうはさせませんよ?
どこからか、そんな声が響く。四人は周囲に視線をめぐらせると不敵な笑みを浮かべた住吉の姿。その隣に桜乃が控えていた。
「くっ! 先手必勝! 初手で突き崩す!!」
「はいっ!」
ジグが言うと、琥珀はそれに応えて機械で出来た杖を構える。手元のトリガーを引くと、カードのセットされたシリンダーが回転し、火薬が爆発するような音をさせる。
杖の形をした召喚銃。とでも言うべきだろうか。
「『魔法少女の一団(ウィッチガールズ)』っ!」
琥珀の呼び声に応えたのは、魔法使いの少女の一団。『三姫戦争』で追加された符獣は群体。つまり、一枚で兵隊などの部隊を呼び出すカードが多い。
魔法少女達は黒を基調にした服を身に付け、可愛らしい仕草で魔法の杖を住吉と桜乃へと向ける。
「撃てぇっ」
炎の玉が轟音を伴って住吉と桜乃へと飛翔する。それに対し桜乃が動く。カードを引き、そして高らかに宣言する。
「来いっ! 風の王ゼフィロス!」
周囲の風を飲み込み、桜乃の背後に巨大な竜巻が現れる。その中から巨大な手が現れ、魔法少女達が放った炎の玉を吹き払う。それを見た琥珀の口から呻きが漏れる。
「まだだっ! 『先駆けの槍』発動! これにより魔法少女達の攻撃力を底上げする」
同時に一度ゼフィロスが吹き払った炎の玉が力を持ち直し、ゼフィロスを押し始めた――と、思われた。
「ふふ。そうそう。そうきますよね――」
――『精神暴走』。
住吉の持つカードが魔方陣に彩られたかと思うと、一度力を持ち直したかに見えた火球が力を失う。同時に。
「暴走した精神は、使用した者の心を蝕むのですよ」
ジグの体に出血エフェクトが走る。実際には痛みは無いが、自らのライフにダメージを受けたことを理解した。
『精神暴走』。付与魔法を打ち消し、更にその付与魔法を使用した対象に実ダメージを与える呪い系の罠カードである。
「やっべ。これ猛進型のルリたんじゃ相性悪そうだなっ!」
「紫狼さんっ! 琥珀さんとルリちゃんを連れて、石枡さんを倒しに行ってくださいっ」
「ははっ! 一か八かってか。だなっ! うだうだ考えるのはこのチームのガラじゃねぇか」
「よぉっしっ! ボクの出番だねっ! 行こうルリちゃんっ!」
琥珀がルリの手を引き走り出し、手に持った機械杖を振るい手元の引き鉄を引く。拳銃を撃ったときのような破裂音と共に、機械杖へと移動用のカード『飛翔』の効果を付与させ、空へと舞う。
舞い上がる二人を見上げながら、「え? 俺は走り?」みたいな事を叫ぶ紫狼。
「逃がすものかっ!」
追いすがろうとする桜乃を、巨大な壁が立ちふさがった。立ち往生する桜乃に視線を向け、ジグは腕を組んで言う。
「『咎人を阻む城壁』。3ターンの間、この壁を越える事は出来ない――」
――通せないよ。俺も良いとこ見せなきゃな。
ジグはそう言って二人の前に立ちふさがると、桜乃がそれに応じる。
「でも、通してもらいますよ。僕のターン! ――召喚『ちま針鼠サクノ』」
召喚に応えたのは、小さな、まるっこーい。マスコットキャラクターみたいな符獣だった。桜乃の名前を冠しているのは偶然だろうか。
ゼフィロスという巨大な符獣を召喚したにも関わらず、このちまっこいのを召喚したのは何か意味があるはずだ。ジグはそう警戒をする。
そして、何より後ろで笑みを浮かべてる住吉が怖い。先ほどの『精神暴走』といい、顔に似合わず、かなりエグいデッキ構成を予感させる。
「そしてゼフィロスでアタック!」
「くっ、『幻惑』発動っ! 確率でその攻撃を無効化する!」
宣言と共にゼフィロスの攻撃はジグをすり抜ける。苦し紛れに使った符術だったが、成功して胸を撫で下ろす。
だが――
――『妄想人形』発動。
住吉が、そう宣言した。
するとのっぺりとした無貌の真っ白な人形が、住吉の傍らに現れる。
プレイヤー、符獣などをサポートするカードが使用される度に『妄想人形』トークンを生み出すトラップカードだ。
「『妄想人形』を生贄に、『無名の胎児』を召喚」
生贄。と言う言葉を告げる様が妙に似合う笑みを浮かべ、住吉はそう告げる。
『妄想人形』は土へと還り、代わりに真っ黒に染め上げられた異形の胎児が暗い闇から生み出される。その瞳は虚ろで、名を付けられなかった孤独を嘆いているようにも見える。
「さて、これからジグ様は『無名の胎児』しか攻撃できません。私は平和主義ですから、こちらからは攻撃しませんので、ご安心くださいね」
くすくす。
――あ、ただ。『無名の胎児』を攻撃すると痛い目に会うかもしれないので、お気をつけて‥‥。
実に爽やかな笑顔で住吉はそう付け加えた――。
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「簡単に姫の下に行けるとは思わないで欲しいものだな」
祐介は魔方陣に束縛された『レギオン』の黒槍兵を睥睨しながら、薄く笑う。
『八方封魔陣』。
闇属性のカードを封印する符術である。『レギオン』は水属性であるにも関わらず、その束縛から逃れる事が出来なかった。
ヘイルは祐介の傍らに立つ符獣『奇略の謀士』を、憎々しげに睨み付ける。東洋風の服を身に纏ったその『謀士』は、計略カウンターを消費する事で1ターンの間、対象の属性等を変化させる。
――まずいな。
ヘイルは胸中で呟く。不意打ちで多少の損害を与えた物の、この状況は決していいとは言えない。
恐らく祐介は属性依存の直接カードを破壊するデッキだろう。
そして、『謀士』で属性を自由に変えられるとなると、符獣を召喚する度に一方的に破壊されるだけだ。
それを証拠に、召喚を先送りにされたテルの溶岩竜は命の『風妖精の竜狩り隊』に装備させた『竜殺しの剣』で瞬殺されている。
防御符術でこの場をしのいでは居るが、どんどんリソースを削られていた。
それに祐介の後方で、『時の記憶の探究者・イシュテグル』 を召喚し、積層型魔方陣をくみ上げている空はまずい。
「ファーディラントを呼ぶつもりかっ!」
以前、依頼の記録で見たことがある。
全方位を焼き尽くす要塞。『天空の超古代都市・ファーディラント』。この戦場でそれを呼び出されるのは負けを意味する。
ヘイルの言葉を耳聡く聞いた空は、ヘイルに余裕の笑みを返す。
そんな時、戦場に異変が起きた。
火の消えやらぬ戦場。その戦場に残る熱が消え、光溢れる『楽園』ステージへと切り替わる。
地獄のようだった戦場の過酷さから一転して、空も大地も太陽の温もりを受け、花が舞い散るその光景はまさに楽園――エリュシオンと呼べるステージだ。
「これが‥‥変転‥‥」
そのステージの変貌に、テルと獣兵衛二人と交戦していた亜が思わずそんな言葉を漏らす。ステージのその変わりようは、実に一大スペクタクル。
「これは、ステージ属性が光になったみたいだね。亜くんのカードはどうやら闇属性ばかりみたいだけど――いいのかな?」
テルが得意げに言うと亜はにやりと笑い、一枚のカードを手にして掲げる。
――混沌よ。世界の狭間からあふれ出せ。
亜の言葉と同時に楽園の空間が耳障りな音と共に裂け、亜の周囲に闇があふれ出した。その闇はテルと獣兵衛の周囲まで広がり、光を飲み込んでゆく。
「『混沌の呪縛』発動。俺と俺が戦っている相手のフィールド属性を闇へと変える」
「な、なんだって‥‥」
「俺はこれで調子がいいんですよ。アンタはどうかな?」
「な、なんか無いの獣兵衛さんっ!」
「うぅむ。拙者はよくわからんでござるからなぁ。正々堂々やるしかないのではござらんか?」
獣兵衛の言葉にうぅむ。と唸りを上げるテル。
「仕掛けてこないんですか?」
「うむむぅ! ならこいつだっ! 『光と見紛う者』召喚!」
くすくすと笑う亜にムキになったテルは、取って置きの符獣を呼び出した。3対の翼を持つ大天使。その大きさはざっとみて5m程度はあるだろうか。
「アタックだっ!」
テルの命令を受けて大天使が亜に迫る。その攻撃が亜に届くかと思った時、亜の唇が何事かを呟く。
「『薙ぎ払う獄炎』。地獄の炎は全てを焼き払う。攻撃してきた符獣はその炎によって、焼き尽くされる」
カウンター型の符術。だからこそ亜はテルを挑発し攻撃を誘ったのである。「うぁ‥‥ボクの取って置きが‥‥」と、その場にうなだれるテルをみて、苦笑を漏らしながら亜は優しく言う。
「ちょっと卑怯だったかな? まぁでもたまにはこんなのあってもいいんじゃないですかねぇ!」
あ、全然優しくなかった。
●
――‥‥ぁ、ぁぁぁあああ〜。
戦況を変えるものはステージの変転だけではなかった。空からも降ってきた。
ずずん。
そんな音と共に頭から思いっきり落ちて来たのは、敵の姫――ルリだった。
よもや一番最初に突っ込んでくるのが、姫とは思わず『石枡』も唖然として駆け寄って「大丈夫ですか? ルリさん」と声を掛けている。
「大丈夫だよっ! 痛くないもん!」
「ご、ごめんっルリちゃん! 手が滑ったっ!」
そうやって拳を振り上げるルリの元に、空から杖に乗った琥珀が申し訳なさそうに下りてくる。あ、落としたんだ‥‥。
「怪我が無くてよかったですね」
「うん! 私、もっともっと強くなんなきゃ!」
「ボクも応援するよっ!」
「よぉし! 勝つぞ〜! えいえいおー!」
「えいえいおー!」
ルリに怪我が無くてほっとした安奈の言葉に、敵陣のど真ん中で鬨の声を上げるルリチーム二人。まぁ、敵陣に入ってから鬨の声を上げるものではない。
しかし、これは――
――ルリたんっ! 安奈たんに攻撃するんだっ!
その声に振り返ると、息を切らせながらカードを構えた紫狼の姿。
「ルリたん! 変身だ!」
「応っ!」
紫狼がカードを発動させると、ルリが激しい炎に包まれる。
今まで身に着けていた瑠璃色のドレスがその炎に焼かれ、まるで翼を広げるように炎は広がりルリの姿を変えていく。
通常、プレイヤーは符術でしか相手プレイヤーに直接ダメージを与える事は出来ない。
しかし、変身する事により、プレイヤー自身が対象に直接ダメージを叩き込むことが出来るようになるのである。つまり、それは先程テルが変身したのも同様の効果がある。
つまり――
「ええええええぃぃっ!」
炎の中から釘バットが石枡へと振り下ろされる。
――この打撃も有効となるのだ。
金属が打ち合うような音が辺りに響く。攻撃に特化したルリ姫の攻撃は、先程溶岩竜の熱波を受けた安奈を葬るだけの威力がある。
だが、安奈とルリの間に花を模した盾を掲げた沢山の妖精たちが割り込んでいた。
「やらせませんよ〜」
命の召喚していた符獣『花妖精の重装歩兵』である。一体一体は小さく弱くとも、密集陣形を取る事で高い防御力を誇るはずだった。
しかし、炎の中から突き出された釘バットに一撃で粉砕される。命も予想が出来ていたとはいえ、ここで防御用の符獣を失うのは痛い。
そして炎が消え去った後、そこに現れたのは炎の戦士。
「『ウルトラマリン・ファイヤー』の誕生だっ!」
その姿は真紅の『ビキニ』に身を守られ? 雄々しく? 大地に立つルリの姿?
‥‥なんでビキニなのか。
「おぉ‥‥ルリたん。いいよ。凄くいいっ! 俺の炎も萌え萌えばーにんぐっ」
さっきまで遠くに居た気がする紫狼が、ルリの直ぐ近くに現れ、超ローアングルからスクリーンショットを取りまくっている。
生の写真ではないのがやや悔やまれるかもしれないが、ここはそれ。シミュレーターだから。
「勝機でござるぞ。三上殿っ」
「ああっ! 分かっているさ!」
テルはそう応え、獣兵衛に渡されたカードを発動させる。すると混乱を始めた石枡チームの中枢に一人の美女が召喚された。
その下半身は6の頭と12本の『触手』を持った――スキュラである。
スキュラはその艶かしい唇を一舐めすると安奈とルリ。二人の姫を触手で絡め取った。そしてその『触手』は‥‥。
「だ、ダメです。やめてくださいっ」
「うなぁぁぁっ!? ぬるぬるするよぉっ!?」
二人の姫になんとけしからん事をするのか。この辺りは具体的に書くよりも、このカードの名前を紹介するので、皆さんの想像で補って頂きたい。
『月下の白百合』。
そう、このスキュラは‥‥百合属性なのだ!
‥‥まさか、属性が百合とか‥‥筆者も考えていなかったわっ!
このカード自体は特にダメージソースとなることは無い。ただただとある製作者の純粋で不純な心から生まれた、このゲームの闇の部分と言えよう。
余談になるが同系列のカードに『真宿の赤薔薇(しんじゅくのあかばら)』と言うのがあるらしい。
決して描写はしたくないものである。
あ、当然の事ながら紫狼のスクリーンショットを撮る速度が、シミュレーターで処理できない程の速度になっていたことは言うまでもない。
なんかもう大混乱。
その中で動いた人物が3人居た。先手を取ったのはヘイル。
「この間合いは俺の≪領域≫だ。抉れ、闇槍――ガエ・ブルグっ!」
闇属性の符術。今この場では闇属性のカードは『八方封魔陣』により封じられている。しかし、『闇槍ガエ・ブルグ』は先手をとった場合、あらゆる効果を無効化し敵に直接ダメージを与えるのだ。
対象を貫いたという結果が先にあり、運命と言う因果を捻じ曲げる黒槍は、敵の姫である安奈へと飛翔していく。
「それを通させる訳にはいかないのでね、打ち消させて貰う! 『逆しまに回る懐中時計』!」
「『隠れ潜む賢者』発動――対象はイシュテグル」
祐介と空が申し合わせたように伏せていたカードを発動させる。『逆しまに回る懐中時計』は場にあるカードと手札を全て所有者の山札に戻しシャッフルするリセットカードである。そしてファーディラント召喚に必要なイシュテグルを『隠れ潜む賢者』の効果によって、『逆しまに回る懐中時計』の効果の対象から外したのだ。
つまり、場にはイシュテグル以外のカード全てが消えてなくなるのである。
消えて、無くなるはずだった――。
――俺がガエ・ブルグを使うとき、闇槍が敵を貫くのは確定している。
仮面の下でヘイルは薄く笑う。
「放たれた時点でもう遅い――貫け、『光槍アガートラーム』」
その宣言と共にヘイルが伏せていたトラップカードが、眩いばかりの光を放ち、『逆しまに回る懐中時計』を打ち貫いた。
同時にその発動がキャンセルされ、発動させた祐介へと実ダメージを与える。
「この中じゃ、このゲームのキャリアは俺が一番長いんでな――」
――負けるわけにはいかないんだ。
そして黒槍は安奈の胸を貫き、その命を奪い取った。それが運命に決定付けられていたとでも言うかのように。
●
「『熱光線(ヒートレイ)』っ!」
琥珀の持つ杖のシリンダーが回転し、爆発音と共に熱線が走る。
その熱線は楽園の花びらを散らし、そして鮮血を――
――きゃ、きゃすとおふっ!
ばきーん。
そんな音と共にメイド服を脱ぎ捨てたのはテルだった。
『たとえ己が臥しても』のカードは使用したと同時に、再びテルの手札に戻る。服を犠牲にして誰かのダメージを1軽減するカードだ。
既にライフも殆ど無いテルは、このカードで命を繋いでいる。しかし魔法少女の服に続いて、メイド服も脱ぎ捨て、既にテルはあられもない下着姿になっていた。
ちなみに知りたくは無いだろうが、同じカードを使用している獣兵衛も、褌姿になっていた。
「にゃあぁぁっ!? 獣兵衛さんってばこんなのしか持ってきてないのぉっ!?」
「入っていたカードがこれだったのでござるよ」
腕を組みながら、テルと並んで走る獣兵衛。たなびく赤い褌のエフェクトは無駄に凝っていると言えよう。
「もうっ! ちょろちょろとっ!」
何発か直撃してるにも関わらず、服を犠牲にして生き残る様はしぶといしぶとい。
「テルねぇっ! 覚悟〜っ!」
「ちょ、ルリちゃんっ! 手加減してよぉっ!」
「四条家家訓! 戦うからには息の根を止めろっ!」
「なんて事を教えてるんだぁぁぁっ!」
ルリの母の顔を思い浮かべ嘆くテル。そんな家訓絶対にいけないと思います。
「ルリちゃんっ! 下がってっ!」
琥珀の指示にルリが反応して、テルと獣兵衛から大きく距離をとった。
――ターゲットインサイト。
銃身となっている杖の先が二つに分かれ放電を始め、辺りの空気を飲み込んでマイクロブラックホールを作り出す。
「充填率120%! グラビトンバスタァァァァ!!」
超重力の黒球が空気を飲み込み、テルと獣兵衛へと飛翔し――直撃した。
空気が軋む。空間が歪む。まるで闇の獣が吼え猛る様な音。別名フェンリルの咆哮と呼ばれるカードの通り、それは触れるもの全てを破壊する。
テルさんと獣兵衛さんがログアウトさせられました。
そんな感じ。
その状況を見て「ふぅ」と満足そうに、ため息をつく琥珀の耳に、微かに聞こえた。
――それでも、俺たちの勝ちだ。
その言葉がした方を振り返ると、ヘイルの持つ槍がルリの胸を穿っていた。『極槍 両儀』。残ったライフを全て支払い、紫狼のサポートで上昇したルリの厚い防御を刺し貫いたのだ。
「ウルトラマリン・グランドォォォォっ!?」
守るべき姫を守りきれなかった紫狼の叫びが、楽園に悲しく響いた――。
●
――WIN。
そんな文字が陽兵と愛華、二人の目の前に浮かんでいた。
「勝ったのか? うわぁっ! 俺なんにもしてないよっ!? 色々用意してたのにっ!」
頭を抱えて嘆く陽兵を、楽しそうに見つめる愛華。
「私達、忘れられてたみたいですね」
「そ、そう、みたいだな」
そう言って、二人とも笑いあう
強い風が吹き、花びらが空に舞い散った。
「綺麗、ですね」
「あぁ‥‥」
――陽兵さんは、こんな世界を守る為に戦ってるんですよね。
不意に愛華の口から漏れた言葉に、陽兵は振り返る。
「ここはシミュレーターですけど、こうやって皆で一所懸命に遊んで、笑いあって、悔しがれるのは、陽兵さんたちが守ってくれてるから、なんですよね」
少しの間があって、陽兵は口を開く。
「たぶん、そんなんじゃないさ」
「え?」
「多分皆、自分達の守りたいものを好きに守ってるだけさ。それはプライドだったり、大切な人だったり――」
その言葉に愛華が不意に息を呑むと、陽兵は慌てて「と、とかね」とか誤魔化した。そんな陽兵に少し不服そうな顔をしてから、笑みを浮かべて言う。
「よーく、分かりました」
「いや、あの。愛華ちゃん?」
「良く分かったから、私も戦う」
「えぇっ!?」
「もちろん、陽兵さんたちみたいにはできないから、私なりのやり方で」
そう言ってカメラを構える様な格好をして、陽兵に向けてシャッターを切るジェスチャーをした。
「皆が、私たちの為に戦ってくれていることを、多くの人に知ってもらうために」
父の遺志を継ぎ、戦場カメラマンを目指す少女の目には強い意志の光が見える。その目に見据えられた陽兵は、自然に口を開いていた。
――なら、俺が愛華ちゃんを守るよ。
ただ、守りたいものを守る。そう、ただそれだけだから。と。
●戦の終わりに。
「ありがとうございます。お陰で迫力のあるPVが出来そうです」
傭兵達にペコリと頭を下げたのは、森皇 凱の秘書だった。
「社長はお疲れになったようで、もうお休みになっています」
そう言う秘書の背後には寝ている、というか気を失っているように見える森皇 凱の姿が見える。
恐らく、また乱入しようとした所を秘書に物理的に止められたのだろう。主に鈍器みたいなもので。
「いやぁ、なんか良くわかんなかったけど楽しかったなぁ」
「うん! 楽しかったね!」
ジグの言葉にルリがぴょこんと跳ねて応える。その元気な少女を見ながらピーマンを齧る。その傍らに祐介が並んだ。
「流石に混戦になると戦況が分からなくなるものだな」
「あの子の乱入で流れが変わりましたからね」
そう言って二人とも苦笑する。ルリが乱入してこなければあのままヘイルを押し切れたはずだった。この少女が敗因の一つだろう。
「もう一つの敗因は――」
「どちらのチームからも狙われたことですかね〜」
命がのんびりとした口調で言葉を継ぐ。おっとりとしているようで、戦況はきちんと見極めていたようだ。
「今度はタイマン勝負だ! 誰かかかってこーいっ!」
「んなら、俺が相手しますよ〜♪」
テルの挑戦を受けたのは亜だった。「ぉっしゃぁ」とデュエルポッドに潜り込む二人。なかなか良い勝負になるのではないだろうか。
「んじゃ、こっちはタッグで行くか。俺なんも出来なかったし」
「なら、相手になりますよぉ?」
「え、僕もですかっ!?」
にやぁりと笑みを浮かべて陽兵の対戦を受けたのは住吉。その隣にはやはり桜乃が引っ張られていた。
「なら、陽兵さんには俺が付こうかな、二人にはリベンジもしたいし」
今度は負けないと、不敵な笑みを浮かべるジグ。
そんな皆のやり取りを遠巻きに見ながら、壁に背を預けていたヘイルに声を掛ける者が居た。
「ヘイル! ちょっとボクにリベンジさせてよ! 一対一じゃ負けないからっ!」
「返り討ちになるのがオチだぞ?」
「だぁから! 負けないって!」
そう言ってヘイルの腕を掴み空いているデュエルポッドに向かう琥珀。
秘書はそんな傭兵達を見て、それなりに楽しんでもらえただろうか。と薄く笑う。
子供も大人も、懸命に遊び楽しむ姿は見ているこちらが楽しくなるものだ。だから秘書はこの仕事を続けているのだろう。
しかし――
「いやぁ、獣兵衛のだんな。あんたいい仕事したよ」
「拙者は我が姫を守るという、サムライとしてやるべき事をしただけでござるよ」
「ほんっと、あんたはサムライ! サムライマンだぜっ!」
紫狼が獣兵衛をべた褒めしていた。きっと、あの百合属性のカードの事を行っているのだろう。
――その楽しみ方は、私が望んだ楽しみ方ではきっとない。
そんな事を、秘書は思った。