タイトル:【Pr】地上の焔マスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2007/12/02 22:56

●オープニング本文


 さて、ガリーニンが日本へ向かっているその頃。キャスター・プロイセンは、とある研究所にやってきていた。
「放電管、フェイズ6まで進行中。予定通りです」
「フェイズ8まで進行すれば、反応も落ち着くんだがな‥‥」
 既に作業を開始しているらしく、スクリーンにはG4弾頭の絵が映し出されている。。まだ各種制御装置がつけられているところが作成途中だろう。
「問題は、敵さんが大人しくしていてくれない事か‥‥」
 そう呟くキャスターに、通信を告げるコール音が鳴った。相手は、ガリーニン専用滑走路の管制室からだ。
『准将、例のミッション、理事会が承認するそうです』
「‥‥だろうな。それしか方法がないし。連中も首を縦に振らざるを得ないだろう」
 さもあらんと言った表情の准将の手元には、『極秘』とパスワードまでご丁寧につけられたミッション・プランがある。それには『Praiwen』と書かれていた。
「プライウェンか‥‥。アーサー王の持つ盾だったな。確かに‥‥アレは盾なのかもしれん」
 感慨深げにそう呟くキャスター。そのミッションプランの下には、UPCが対抗手段として計画中の機体、ユニバースナイトのイメージ画像が見え隠れしている。
 と、その時だった。
『大変です、准将! 表の滑走路に、ワーム達が!』
 悲鳴染みた報告とともに、カメラが切り替わる。見ると、数機のワームが、襲い掛かってきている所だ。まるで滑走路を破壊しようとするかのように、ビームが鎌状に曲がっている。その周囲には、まるでお供のように、大型のキメラが何体も姿を見せていた。
「かぎつけられたか‥‥。こっちにこられるとまずい! 迎撃を!」
『わかってますが、何しろフォースフィールドが厚くて‥‥うわぁっ』
 画面がいきなり真っ暗になった。直前に、吹き飛んだ壁の間から、ワームの鎌が覗いていた所を見ると、警備詰め所が襲撃されたのだろう。
「く‥‥。まずいな‥‥」
 そう呟くと、キャスターは現在ガリーニンを迎えに行っているはずのミクを呼び出す。
『おじい様、どうしたの!?』
 ジャミング電波で聞こえにくくなっているのを聞いて、緊急事態だと悟るミク。
「傭兵達に伝えろ。お待ちかねの地上戦だとな!」
 そう叫ぶと同時に、データが高速通信で送られた。それは、G4に関わる研究所の位置情報だ。もちろん、すぐにガリーニンに搭載できるよう、移送と組み立てのプランも込みである。
『りょーかいっ!』
 そう言って、ミクはわたわたとラスホプに召集をかけるのだった。

『きんきゅー出動っ。ワームがガリーニンの専用滑走路を襲撃中! KVの使用を許可する! 待機中の能力者は、至急発進されたし!』

 鳴り響く警報。繰り返される出撃命令。

「間に合ってくれよ‥‥」
 モニターに映し出されるG4。危機は、間近に迫っていた。

●参加者一覧

ヴィス・Y・エーン(ga0087
20歳・♀・SN
鋼 蒼志(ga0165
27歳・♂・GD
ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
ファファル(ga0729
21歳・♀・SN
ベル(ga0924
18歳・♂・JG
水理 和奏(ga1500
13歳・♀・AA
潮彩 ろまん(ga3425
14歳・♀・GP
UNKNOWN(ga4276
35歳・♂・ER

●リプレイ本文

 滑走路は、一見するとだだっ広い基地のような大きさだ。まるで広場とも錯覚するようなそこで、ヴィス・Y・エーン(ga0087)はKVの操縦席へと収まっている。
「さーてと、ミクちゃんからの頼みだから頑張らないとねー。 それにあいつらを追い返さないと、大規模作戦に支障が出るし」
 ヴィィィン‥‥と軽く電子音を立てて、目覚めるKV。
「やれやれ。護送先での敵襲とは‥‥ままならんものだ」
 ヴィスの台詞に、KVの中でため息をつくファファル(ga0729)。その視線の先には、血気盛んな潮彩 ろまん(ga3425)と水理 和奏(ga1500)の姿が。
「秘密基地を護る為、ロボットに乗って悪い宇宙人の兵器をやっつける! お爺ちゃんはよく言ってたんだ、ボクの剣の腕は、悪を断つ剣なんだって」
「うん。僕のKV、力を貸して!」
 若い2人に、UNKNOWN(ga4276)は帽子を被りなおし、表情を隠すようにして、ため息をつく。その瞳に映っているのは、まだ着陸していないガリーニンばかりではないだろう。
「‥‥ここまで連れてきたんだ。G4の面倒まで見てやるさ」
 ガリーニンは、すでに日本海を抜け、名古屋上空へ差し掛かっていると、ミクから報告があった。数十分以内にここまでやってくる筈だ。
「撃ってきました!」
 ワームが、鎌状になったビームを、固定していた砲台へと発射する。走る衝撃に、警備兵へスクランブルがかけられる。
「タバコを一服する暇もないのか!」
 口をつけたばかりのビールをゴミ箱に投げ捨て、KVのキャノピーを閉めるアンノウン。
「反抗作戦失敗させはせんよ‥‥。Schnee、いきます!」
「迅速にワーム&キメラを殲滅してやるさ。ブラックウィドウ‥‥出る!」
 ファファルはそう言うと共に、エンジンを始動させた。アンノウンも、彼女にあわせ、飛行形態で格納庫から無理やり出発する。シャッターが何枚か吹き飛び、バリケード代わりか設置されていたドラム缶が、ころころと蹴倒され、軽く悲鳴を上げる。後で修理代が請求されそうだ。
「時にろまん君、君のその機体はS型ではないのかね?」
「うん。えっとね、登録する時、値段の高い方って言ったらこのロボットくれたんだよ」
 遅れて出てきたドクター・ウェスト(ga0241)に尋ねられ、にこっと笑顔で答えるろまん。高速度と重火力を得手とするS型が、バリバリ接近戦仕様に改造されている。
「なるほど、これもアリか。まぁ、そう言う改造は嫌いではないよ」
 彼女のこだわりは、ドクターにとっても参考になったようだ。超高速の一撃離脱戦法を行うよう作られているS型、別に近接攻撃用武器を使用するなとは、どこにも書いていない。
「管制室、関連施設および滑走路の位置をマップに表示してくれ」
 一方、ファファルは足元に広がる滑走路の地図を、准将に要求している。
『構わんが、ジャミングが酷い。ブーストした時しか映らないぞ』
「施設と滑走路の位置さえ分かれば良い。防衛機能は生きてるのか?」
 そう言っている准将の画像も、ノイズが走って音声しか聞き取れない。やはり、岩龍のない場所では、レーダーに頼る戦い方は出来ないようだ。
『砲台ぐらいはあるが、SESを搭載していない。牽制にしかならん』
「それでも良い。弾幕位は張っておいてくれ!」
 鋼 蒼志(ga0165)がそう答え、まずは敵を滑走路から引き剥がすべく、自ら切り込んで行く。一気に距離を詰める彼を見て、アンノウンもそれに従った。
「まずは五月蝿いハエから落すか‥‥。鋼、援護は任せろ。貴様は存分に暴れてくれ」
「もとよりそのつもりさ」
 ファファルの台詞に、ワームに肉薄した鋼、迷わずホーミングミサイルを撃った。2発ほど飛び立ったそれは、片方は命中したが、もう片方はあさっての方向へ逸れて行った。
「滑走路は傷つけるなよ! でないと元も子もないからな!」
 ファファルが、その打ち漏らしたワームに向けて、スナイパーライフルを放つ。研究所で強化されたKV用のライフルは、狙い違わずワームに命中し、ぴりぴりとスパークを放っていたワームを、1匹沈めている。だが、すぐさま新しいワームが現れて、目の前で戦っていた鋼へと、そのビームを振り下ろした。
『ドクター、鋼の方だ。ミサイルを頼む!』
 気付いたアンノウンが、無線で叫ぶ。ちょっと声がくぐもっているのは、機内でも咥えタバコだからだろう。
「了解。全弾発射、ポチッとな」
 飛行形態で施設方面からブーストをかけながら飛来したドクター、ヘルメットワームにホーミングミサイルを全弾お見舞いしていた。
「ふん、牙をお見舞いしてやろうじゃないか」
 それに合わせて、アンノウンのアグレッシブ・ファングが光を放つ。機体の錬力メーターががくんと落ち込んだが、致し方ない。
「さぁ、撃ち込むぜ!」
 一方、ホーミングミサイルの弾切れを起こした鋼は、そう言って肉薄、直後、人型へと変形する。しかし、その直後、ワームの腕からレーザーが放たれ、機体に大きく衝撃が走った。
「かわしきれんか‥‥だが、この程度なら!」
 ビービーと警告音が鳴っている。慣性制御を持つらしいワームに、ロックオンされたらしいが、囲まれているこの状況では、ガトリングで牽制する位しか出来ない。
「どこまでも、穿ち貫く!」
 二発目の衝撃に、装甲値が限界までダウンする。メトロニウムフレームを犠牲にしながら、近づいた彼は、両腕をツインドリルへと変形させ、ワームを挟み込む。
「‥‥捉えた。そこはすでに私の領域だ」
 その攻撃にあわせるように、ファファルがスナイパーライフルを放った。2人掛りで攻め込まれては、ワームも装甲を貫かれるらしく、黒煙を上げて沈黙する。
「さんきゅー」
「礼はいらん。さっさと片付けるぞ」
 鋼にそう答えるファファル。確かに、ワームは次から次へと現れていた。
「Silver Star 援護に回るわ!」
 その1匹を、ヴィスが遠距離射撃していた。空港のマップは極秘とか言われたが、倉庫や管制室はわかる。その建物の影にかくれるようにしながら、ライフルで狙いをつける。狙撃の都合上、人型と成っている彼女の機体を、ワームから隠すかのように、変形するドクターの機体。
「ナイトフォーゲル、トランスフォーム! もう攻撃してるけどロールアウトだね〜!」
 ずしん‥‥と、軽く衝撃が走った。滑走路を傷つけないように、その外側へと着地した彼に、近距離にいたワームが、ビームを発射する。
「ぶぁ〜るかん!!」
 そのビームを、メトロニウムシールドで受け止めつつ、バルカンを放つドクター。シールドに大きくヒビが入ったが、後で直せば良い事だ。
「しまった。バレた?」
 だが、ワームはついてこない。横合いから区切るように撃ってきたヴィスに気付いたのだろう。進路を90度曲げ、彼女の潜む管制塔へと近づいてくる。
「えぇい、近づかないで頂戴ッ」
 見付かってはまずい。そう思ったヴィス、ワームへ向けてガトリング砲をお見舞いする。本当はブースターで逃げたい所だが、錬力の残量を考えると、うかつには使えない。
「させないよ!」
 もたつくヴィスを援護するように、横合いからガトリングの弾が増えた。Silver Starの頭がぐるんと回る。と、そこでは、アンノウンのバルカンをバックに、ブースター吹かして接敵している最中だ。ワームが近づかせまいと、ビームを放つ。がんがんと衝撃が走る中、ろまんは構わず変形機構のスイッチを入れた。
「人呼んでサムライ装甲ナイトフォーゲル、ボクの波斬剣に断てぬもの無し!」
 そう言って、ディフェンダーでなぎ払う彼女。それを見て、ひょーうと口笛を吹くアンノウン。
「若い奴は勢いがあるねぇ。じゃ、その勢いを削がないようにしましょうか!」
 低空でバルカンを撃っていた彼は、そのまま人型変形し、滑走路へと着地する。そのままタイヤを滑らせて滑走路を横切ると、ワームを挟み込むような位置へと機体を固定する。
「やらせない! うわっ」
 そのアンノウン機を追い掛け回すワーム。そのビームが滑走路を壊そうとする。そうはさせじと、ディフェンダーを盾代わりに、射線カットに入るろまん機。大きく衝撃が走り、ビービーと警告音が、外装にヒビが入っている事を告げる。
「盾を持ってないんだ。無理に前に出るな」
「わかってる。だったら、やられる前に、斬る!」
 アンノウンが下がれと人型で合図するが、彼女は首を横に振り、地面を蹴る。ブーストを作動させ、天空へと舞い上がるろまん。
「ち‥‥。錬力も残り少ないって言うのに‥‥。潮彩、能力を使え。機体を信じろ!」
 すでにブースターを使っているアンノウンは、錬力残量を計算しつつ、そうアドバイス。
「‥‥見える、この子がボクの進むべき未来を教えてくれるんだ!」
 SESの出力装置が、つぎ込まれた錬力に呼応して、電子音を立てる。モニターに命中値補正がかかり、ワームのどこに当てれば良いかを教えてくれた。
「321‥‥GO!」
 アンノウンのカウントに、空中から勢いをつけたろまんが、ブレス・ノウの示すその一点へ、ディフェンダーを振り下ろす。フォースフィールドが展開されているが、かまう事無く。
「波斬剣、縦一文字斬り!」
 アンノウンの狙撃に、その装甲を半分削られていたワームは、勢いをつけた攻撃に爆散。派手な戦い方に、目を丸くする和奏。
『ベル。水理。左の奴を沈めるぞ』
「‥‥了解。キメラよりワームを殲滅する」
 和奏がじっとろまんを見つめてる一方で、アンノウンの指示に、ベル(ga0924)がそう応えている。なんだか冷たい感じに見えるが、和奏は全く気にせず、人型へと変形させた。
「滑走路には、絶対傷つけさせないんだからっ。その為に、メトロニウムシールド&フレームで固めた地上防衛戦仕様にしてきたんだしっ」
 名付けて、鉄壁わかなカスタム‥‥らしい。確かに、ペアを組むベルより、一割ほど装甲が厚かった。
「‥‥‥‥敵発見。迎撃に移る」
 そのベル、無表情にそう言って、レーザー砲をセッティングしていた。青白い光線が、空気を切り裂きつつ、3発程飛んで行く。だが、1発はフィールドにはじかれ、あさっての方向へ。もう一発は、受け止められて相殺、実際は1発しか当たっていなかった。
「‥‥‥‥この距離では、削りきれないな」
 その様子に、ベルはレーザーではなく、より数多くの弾をバラまけるガトリングへと切り替えた。だが、その隙をついて、ワームが体当たりを敢行して来る。
「く‥‥」
 短くそう言って、その体当たりをユニコーンズホーンで受け止めるベル。
「‥‥不意打ちなど効かない」
 彼女は、ワームを捕まえたまま、そのホーンの特殊能力を発動させる。その名の通り、ユニコーンの角を模したそれを、ちょうど額に当たる部分へと、押し当てるベル。だが、相手のワームも、好機とばかりに、レーザーを放った。
「させないっ」
 そこへ、横合いからバルカンの弾が飛んできた。おかげで、ワームの攻撃は、和奏へと浴びせかけられる事になる。強く衝撃が走り、装甲の一部が剥げ落ちるが、彼女は気にせずアグレッシブ・ファングを使っていた。
「危険な敵は、真っ二つっ!」
 ブースターを使い、上から押し当てるようにディフェンダーを振り下ろす。ろまんの技を参考にしたらしいが、まだ力任せの一撃で、ワームは転がるように滑走路の外へと押し出されただけだ。
「‥‥なぜだ」
 確か、知覚系の攻撃も苦手で、さらにレーザーに装甲が効かないかもと言っていたはずである。不思議そうにそう尋ねてくるベルに、和奏は明るくこう言ってきた。
「だって、壁になるのがお仕事だもんっ。頑張って、滑走路を守ろうねっ」
「‥‥ふん」
 まぶしそうに、和奏の台詞に目を細めるベル。
『‥‥ガリーニン、来たか』
 アンノウンが遠く、上空に見える機影を確かめた刹那、和奏が、戦闘機へと変形し、滑走路を使って、ガリーニンの方へと赴く。後ろから追いかけ来たワームを、ガトリング砲で弾きながら、彼女はこう叫んでいた。
「中佐! 地上は守ったから、安全だから‥‥帰らないで!」
 必死である。と、そこへ、ファファルとヴィスから、通信が入った。
『‥‥敵影なし。なんとか退けたか‥‥』
『撤退命令が出なくて良かったわ』
 見れば、滑走路の周囲では、ライフルや銃を肩に担ぐようにした2人は、親指を立てている。どうやら、追いかけてきたワームを迎撃したようだ。
「いやー、眼鏡がなかったら即死していたね〜」
 ふんっと一瞥しているのは、Gやら衝撃やらで、ぐったりしているドクター。伊達眼鏡のおかげで、かすり傷だと言い張っているが、見る限り、そんな軽傷でもなさそうだ。むろん‥‥KVもである。
「よかった。ありがとう、皆‥‥」
 和奏、すっかり誤解しちゃった状態のまま、ミクと共に、中佐を出迎えに行く。「‥‥少しはやるようだな」とお褒めの言葉を賜っていた。
「ミクちゃーん♪ 美味しーケーキ屋知ってるんだー♪ 食べに行かない?」
 一方ヴィスはと言うと、ミクをデートに誘っていた。まぁキャスターも茶くらいなら構わないと言ってくれたようだし、問題はなさそうだ。
「ありがとう、KV。僕の、翼‥‥よく頑張ってくれたよね」
 滑走路の代わりに傷だらけになった自分のKV。そのシールドを撫でながら、和奏はそう労うのだった。